知の日比谷 - 都立日比谷高等学校

校長室だより
知の日比谷
第
平成25年9月20日発行
34
号
発行責任者
東京都立日比谷高等学校長
武 内
彰
ボストン・ハワイ島研修 part3
8月25日(日)は午前3時起床である。3時35分にはホテルを出発し、ボストンの
ローガン空港へ向かう。ボストンからアトランタまで国内線でのフライトである。約2時
間20分でアトランタへ到着。アトランタからホノルルまで10時間弱のフライトであっ
た。更にホノルルからハワイ島のヒロまでは別の飛行機に乗り換えて1時間弱のフライト。
10代の若者たちは元気であるが、引率者たちには疲労が蓄積していく。機内ではできる
だけ睡眠時間を確保するようにした。ヒロのホテルには、現地時間で午後6時30分頃に
到着。ボストン時間だと午後11時30分に相当する。長い移動日が終わった。
8月26日(月)午前8時に専用バスでホテルを出発。火山国立公園のトレッキングへ
向かう。ガイドは毎年お世話になっている日本人のF氏である。1960年のチリ地震の
際、ヒロにも津波の被害があり、海岸線の学校などは流されてしまったという。それ以来、
ヒロ湾沖には防波堤が造られたので、湾内の海水はあまり循環しないらしい。ハワイ島の
人口は19万9千人。キラウエアは楯状火山であり、巨大なクレーター(直径4.9km)
の中にハレマウマウと呼ばれる直径85mの火口が白煙を上げている。この火口では20
08年3月15日に小爆発が起き、マグマがあることがわかっている。クレーターには1
974年の溶岩が横たわっている。今日はそこへ向かっていくのである。細い道を1列に
なってクレーターを目指して歩き続ける。時折、植物や木々の植生などに注目して、生徒
たちは説明を聞きながら、写真に収めている。途中でアメリカ本土から観光に来た若いカ
ップルと出会う。二人は、ハレマウマウの火口に近づくのだという。危険なチャレンジで
はないか、と思った。
やがてキラウエア火山のクレーターに到着。一面、溶岩などで覆われていて、地球とは
思えない風景である。生徒が「岩を持ち帰りたいけど、ペレの怒りをかうからやめた方が
いいね。」と言う。ハワイの神話を勉強している人には意味が通じる一言である。F氏も、
持ち帰った人には必ず不幸な出来事が起きているという経験談を話してくれた。
降りてきた道を逆戻りして、ボルケイノ・ハウスへと向かう途中のことであった。上空
をヘリコプターが横切った。F氏によると、先ほどのカップルがレンジャーに発見されて
連れ戻されたのではないか、という。ハレマウマウ火口は随時監視されていて、近づこう
とする観光客がいると、レンジャーたちは「本土から地質学者たちがやってきたぞ。」と言
って、ヘリを出動させて確保するようだ。その費用500ドルも支払わなくてはならない。
まさしく無謀なチャレンジといえよう。
クレーターへのトレッキング
ハレマウマウ火口
熱心にメモをとる生徒たち
クレーターにて
この日の午後は、ハワイ大学のD教授によるサルファーパーク及びジャガーミュージア
ムのトレッキングである。こちらはすべて英語による解説となるので、一同耳を澄まして
集中力を高めなくてはならない。様々な固有植物や硫黄が付着した岩石、水蒸気が噴出し
ているベントの観察、ミュージアム内の展示物の解説を聞くといった時間を過ごした。生
徒たちも積極的に質問していた。ふと、近くにいた生徒のフィールドノートに目をやると、
何と英語で記載されていた。どうもいちいち日本語に変換するよりも書きやすいようだ。
D教授には、毎年日比谷生がお世話になっているが、今年はボストンへ寄ったこともあり、
半日だけのおつきあいとなった。
教授に質問する生徒たち
ジャガーミュージアム前にて
硫黄が付着した岩
ジャガーミュージアム前にて
その後、ホテルへ戻り、休憩時間をとる。夜の星空観測に向けて気力と体力を養ってお
かなければならない。しかし、ホテルの廊下を歩いていると、部屋の中から生徒たちの元
気な声が漏れ聞こえてくるのであった。
午後5時30分、大型バスに乗車してホテルを出発。二つの山マウナケアとマウナロア
に挟まれたサドルロードを上っていく。途中で10分ほど下車して休憩。夕陽が傾いてい
るその場所では、影が極端に長くなる。生徒たちは自分たちの影を写真に収めていた。
まもなくして標高2800mのオニヅカ・ビジターセンターへ到着。満天の星空観察の始
まりである。ハワイ大学ヒロ校に留学中の日本人学生2名がボランティアで星座について
解説をしてくれた。その後は、思い思いに観察や写真撮影を楽しんだ。バスの運転手のJ
氏も天体に詳しく、望遠鏡でさまざまな星を見せてくれた。私は、生徒に混じって大学1
年生のとき以来見ていなかった土星を見させてもらった。初めて土星の輪を見たときの感
激を思い出していた。流れ星もいくつか観察することができた。生徒たちにとって、楽し
い時間はあっという間に過ぎていくようであった。
(つづく)
星空観測前の高所順応兼夕食
星空の様子