便秘症の治療薬について

便秘症とは, 排便回数や一回排便量の減少, 便の硬化などにより排便困難, 残便感, 腹痛な
どの不快な症状が生じている状態です。 これまで, 便秘症の治療薬として塩類下剤である酸化
マグネシウムや刺激性下剤であるセンノシドなどが繁用されてきましたが,
年 月に約
年ぶりに, 新しい便秘症治療薬としてルビプロストン (アミティーザ ) が発売されました。
そこで今回は, 主な便秘症治療薬の特徴についてまとめてみました (表)。
膨張性下剤は, 安全性が高く, 特に軽度の慢性便秘症に対して第一選択薬として使用されま
す。 しかしながら, 服用しづらく効果があまり強くないといった問題があります。
塩類下剤である酸化マグネシウムは, 慢性便秘症の治療薬として有用性が高く, 大量の水と
ともに服用するとより効果的な薬剤です。 副作用として高マグネシウム血症が知られています
が, 通常の投与量では生じることは少ないとされています。 ただし, 腎機能障害, 心機能障害
のある患者へは慎重に投与する必要があります。 また, 酸化マグネシウムは他の薬剤の吸収に
影響を与えることがあります。 特に, テトラサイクリン系抗生物質, ニューキノロン系抗菌剤,
ビスフォスフォネート系薬剤はマグネシウムと難溶性のキレートを形成し, 薬剤の吸収を阻害
するため併用注意になっています。 セフェム系抗菌剤であるセフジニル (セフゾン ) におい
ては, 酸化マグネシウムと一緒に服用すると, 機序は不明ですがセフジニルの吸収が低下し効
果が減弱するおそれがあります。 これらの薬剤と併用する場合は, 時間以上間隔をあけて投
与することが推奨されています。
大腸刺激性薬剤は, 比較的服用しやすく, 速やかに良好な効果が得られるため, 患者に好ま
れています。 一般的には, 膨張性下剤や塩類下剤を単独で服用しても効果を示さないときに大
腸刺激性薬剤を加えます。 しかし, センノシドやセンナは腹痛や悪心などの副作用発生や, 長
期連用により耐性, 習慣性が生じる可能性があるため, 短期間使用を原則としています。 一方,
ピコスルファートナトリウムは大腸刺激性薬剤の中では比較的緩徐に作用し, 副作用や習慣性
も少ないことから, 幼小児や高齢者にも頻用されています。
炭酸水素ナトリウム・無水リン酸二水素ナトリウム配合剤は, 直腸に便があるにも関わらず,
排便困難となっている患者に有効な薬剤です。 坐剤を挿入後, 排便作用があるまでに坐剤が肛
門の外に出ることのないよう, 激しい運動は避ける必要があります。
ルビプロストンは, 血清電解質に影響を生じないことがラットにおいて確認されているため,
酸化マグネシウムが使用しづらい患者に処方しやすいと考えられています。 しかし, マグラッ
クス
(酸化マグネシウム) が 錠
円であるのに対し, ルビプロストンは カプセル
円と他の薬剤より高い薬価設定となっています。 また, 重度の腎機能障害患者または中
等度以上の肝機能障害患者には, 患者の状態や症状によりリスクを考慮することが必要なこと
から, 本剤を投与する場合には 回 μ を 日 回から開始することとなっています。
参考文献
添付文書, インタビューフォーム, 今日の治療薬
鹿児島市医報
第
巻第 号 (通巻
号)
(平成
, 治療薬マニュアル
年)
鹿児島市医報
第
応
巻第 号 (通巻
号)
カルメロースナトリ
ウムとして, 通常成
人 日 ∼ (本剤
∼
) を, 多量
の水とともに, 回
に分割経口投与する。
なお, 年齢, 症状に
より適宜増減する。
センノシド ・ と
して, 通常成人 日
回 ∼
を就寝
前に経口投与する。
高度の便秘には,
回
まで増量す
ることができる。
なお, 年齢, 症状に
より適宜増減する。
・便秘症
ビサコジル
通常成人 回 ∼
を 日 ∼ 回経口投与
する。
なお, 年齢, 症状によ
り適宜増減する。
通常, 成人に対して 日 回 ∼
滴( ∼
)を経口投与する。
小児に対しては 日 回, 次の
基準で経口投与する。
なお, 年齢, 症状により適宜
増減する。
ビサコジルとして, 通
常 回, 乳幼児は を,
日 ∼ 回肛門内に挿
入する。
なお, 年齢, 症状によ
り適宜増減する。
通常 ∼ 個を出来るだけ肛門
内深く挿入する。 重症の場合
には 日 ∼ 個を数日間続け
て挿入する。
炭酸水素ナトリウム・無水
リン酸二水素ナトリウム配合
新レシカルボン 坐剤
ゼリア新薬工業株式会社
円 個
直腸内で融解して二酸化炭素を
徐々に発生し,この二酸化炭素に
より直腸粘膜を刺激, また直腸
を拡張し, 拡張反射により排便
刺激を与える。 また, 直腸粘膜に
対する拡張刺激が 状結腸に伝わ
り, 大腸の蠕動運動を誘発する。
・便秘症
(鹿児島市医師会病院薬剤部
(平成
年)
指導上の
注
意
服用しづらく, 効果 高マグネシウム血症をきたす 長期連用における耐性・習慣性を生じるため, 短期間使用を原則とする。
はあまり強くない。 ことがあるため, 特に腎, 心 腹痛や悪心などの消化器症状が現れることがある。
機能障害のある患者には注意。
相互作用による併用注意薬剤
が多い。
大量の水とともに摂取するこ
とで効果大。
使用時, 坐薬を少量の水で濡
らすと使用しやすい。
挿入後, 激しい運動をすると
坐薬が外に出ることがあるの
で, 排便作用があるまで激し
い運動を回避する。
年齢 カ月以下: 滴 (
)
年齢 ∼ カ月: 滴 (
)
年齢 ∼ 歳: 滴 (
)
年齢 ∼ 歳: 滴 (
)
年齢 ∼ 歳: 滴 (
)
急性腹症, 重症硬結 記載なし
過敏症の既往歴, 急 センノシド製剤に過敏 過敏症の既往歴, 急性腹症 急性腹症, 痙攣性便秘, 過敏症の既往歴
便
性腹症, 痙攣性便秘, 症の既往歴, 急性腹症,
重症硬結便, 肛門破創,
禁
忌
重症硬結便, 電解質 痙攣性便秘, 重症硬結
潰瘍性痔核
失調
便, 電解質失調
重大な副作用
記載なし
高マグネシウム血症
記載なし
記載なし
記載なし
ショック
軽度の慢性便秘症に 慢性便秘症の治療薬として有 酸化マグネシウムやカルメロースが無効時に使用
は小児への適応あ 直腸性便秘症に使用
り
薬剤選択 対する第一選択薬 効性が高い
の 特 徴
用法用量
(便秘症)
適
薬理作用
ラキソベロン 内用液
帝人ファーマ株式会社
円
大腸細菌叢由来のアリルスル
ファターゼにより加水分解さ
れて生じた活性型のジフェノー
ルが大腸粘膜を刺激し, 蠕動
運動を亢進させると共に水分
吸収を阻害する。
ピコスルファートナトリウム
刺 激 性 下 剤
大 腸 刺 激 性 下 剤
テレミンソフト 坐薬
味の素製薬株式会社
円 個
結腸・直腸粘膜の副交感
神経末端に作用して蠕動
をたかめ, 腸粘膜への直
接作用により排便反射を
刺激する。 また, 結腸腔
内における水分や電解質
の吸収を抑制する。
・便秘症 (痙攣性便秘 ・各種便秘症
・便秘症
除く)
・術後排便補助
・消化管検査時又は手
・駆虫剤投与後の下剤 ・造影剤 (硫酸バリウム) 投 術前後における腸管
与後の排便促進
内容物の排除
・手術前における腸管内容物
の排除
・大腸検査 ( 線・内視鏡) 前
処置における腸管内容物の
排除
・便秘症
・下記疾患における制酸作用
と症状の改善, 胃・十二指
腸潰瘍, 胃炎 (急・慢性胃
炎, 薬剤性胃炎を含む),
上部消化管機能異常 (神経
性食思不振, いわゆる胃下
垂症, 胃酸過多症を含む)
・尿路蓚酸カルシウム結石の
発生予防
酸化マグネシウムとして, 通
常成人 日 を食前又は食後
の 回に分割経口投与するか,
又は就寝前に 回投与する。
センナ, センナ実
・便秘症
センノシド
表
マグラックス 錠
プルゼニド 錠
アローゼン 顆粒
吉田製薬株式会社
ノバルティスファーマ株式会社 株式会社ポーラファルマ
円 錠(
)
円 錠
円
腸内において重炭酸塩となり, 腸内細菌の作用でレインアンスロンを生成
腸内の浸透圧を高めて腸内腔 し大腸の蠕動運動を亢進する。
へ水を引き寄せ, 腸内容物を
軟化させるとともに, 腸内容
物が膨張し, 腸管に拡張刺激
を与える。
酸化マグネシウム
剤
塩 類 下 剤
バルコーゼ 顆粒
エーザイ株式会社
円
服用した水とともに
腸内で粘性のコロイ
ド液となり, 便塊に
浸透して容積を増大
させ, 腸壁に物理的
刺激を与える。
下
主な商品名
販 売 元
薬
価
緩
膨張性下剤
カルメロースナトリウム
類
一 般 名
分
記載なし
酸化マグネシウムが使用
できない患者, 酸化マグ
ネシウムでコントロール
が難しい患者に使用
肝, 腎機能障害の患者に
対しては適宜減量する。
血清電解質に影響しない。
頓用としての適応がない。
薬価が高い。
大量の水とともに摂取し
ても効果は変わらない。
腸閉塞, 妊婦, 過敏症の
既往歴
通常, 成人にはルビプロ
ストンとして 回 μ を
日 回, 朝食後及び夕食
後に経口投与する。
なお, 症状により適宜減
量する。
・慢性便秘症 (器質的疾
患による便秘症を除く)
アミティーザ カプセル
アボット ジャパン株式会社
円 カプセル
腸管上皮のクロライドチャ
ネルを活性化し, 腸管内
への水分分泌を促進し,
便を柔らかくし, 腸管内
の輸送を高める。
ルビプロストン
そ の 他
クロライドチャネルアクチベーター
医療トピックス
福元
裕介)