大都市における基礎杭を利用した地中熱空調システムの普及・実用化

大都市における基礎杭を利用した
地中熱空調システムの
普及・実用化に関する研究
高効率水冷式ヒートポンプの開発
平成16年度第1回地下熱利用とヒートポンプシステム研究会
ゼネラルヒートポンプ工業株式会社
高効率水冷式ヒートポンプの開発
ニーズ
地中熱利用の空調システムに対応する容量:15HP∼150HPに
対応する高効率な水冷式ヒートポンプチラーが必要
開発目標
1台15HPの水冷式ヒートポンプチラーをモジュール方式により
10台まで連結できるタイプとし、最小モジュールの15HPの水冷式
ヒートポンプチラーの高効率化開発(COP5.5以上を目標)を行う
ことにより15HP∼150HPのすべての容量に対応する。
実施内容
① 高効率化開発(後述)を行う
② ゼネラルヒートポンプ工業㈱本社工場(愛知県名古屋市)におい
て試作・性能試験を行う
③ 得られた性能試験結果に基づき解析を行い、改良点を明らかに
する
④ ①∼③のステップを数回繰り返す
⑤ 製品化に向けての技術資料作成を行う(仕様表・能力線図・図面・
技術マニュアル等)
モジュール方式(模式図)
15HPモジュール
•15HP基本モジュールの開発
•連結することにより30,45,60,75,90,105,120,135,150HPに対応
•台数制御による容量制御が可能
•システム稼働率の向上
•分割して搬入することができます
•コンパクト:機械室扉やエレベーターに対応
150HP地中熱源対応水冷式ヒートポンプシステム
冷凍サイクルの工夫
圧力[MPa]
加熱
動力
冷媒配管
水配管
水配管
膨張弁
過熱ガス
過冷却液
気液
比重
液ガス熱交換
PH線図
熱交換器
(蒸発器)
熱交換器
(凝縮器)
温度低
温度高
液ガス熱交換器付きサイクル
冷却
圧縮機
改良
単段冷凍サイクル(従来)
単段冷凍サイクル
比エンタルピー[kJ/kg]
冷媒配管
水配管
水配管
膨張弁
液ガス
熱交換器
• 蒸発器においてドライアウト面積がなくなること(湿り面積の向
上)による伝熱面積の向上
• 使用領域の冷媒温度が下がるために蒸発器内温度差が上昇し
能力が向上(非共沸混合冷媒)
• 過冷却増大により膨張弁前のフラッシュガスの防止
熱交換器
(蒸発器)
熱交換器
(凝縮器)
圧縮機
液ガス熱交換器付きサイクル(新型)
• さらに四方弁を組み込んだサイクルとする
• 設置面積を小さくするために、冷媒配管の集積化と筐体のコン
パクト化の設計についてもメンテナンス容易性を考慮しつつ行う。
熱交換器・圧縮機の見直し
多重管熱交換器
プレート式熱交換器
プレート式熱交換器
(従来方式)
(同等伝熱面積)
(伝熱面積増加:新型)
熱交換器(凝縮器・
蒸発器)を従来の多
重管方式からプレー
ト式熱交換器に組替
え、伝熱面積を増加
させることにより蒸発
温度向上と凝縮温度
低減により高効率化
する。
・R407C対応スクロールコンプレッサー(15HP相当)
・従来機のコンパチブル開発された製品
・垂直方向のコンプライアンスをなくすことにより摩擦ロスを低減
・半径方向のベアリング遊びを大きくし遠心力によりシーリングを
行うことにより性能向上
・インバーター運転による容量制御にも対応予定
従来
新型
性能試験設備
電磁流量計
製造・試験場所:ゼネラルヒートポ
ンプ工業本社工場(名古屋市緑区)
動力制御盤(タッチパネル付き)
PT100Ω温度計
試験室
監視システム(デー 空冷ヒートポンプチラー
タ保存・監視・制御)
(温度変更・恒温化)
ポンプ
技術資料(能力線図の作成)
8
冷却水(温水)
出口温度[℃]
7
25
加熱標準条件
30
6
加熱COP
5
40
45
50
4
3
2
1
0
7
目標:COP5.5以上
6
冷却水(温水)
出口温度[℃]
25
冷却標準条件
30
開発により向上
5
35
冷却COP
・ 仕様書・負荷計算の元となる
能力線図・COP線図を作成
・ 数点のポイントを測定し、線
図を作成する。
・ 開発機は従来機に比べて消
費電力減少・能力増加により
COPが向上し、冷却COP(冷
水12→7℃,温水25→30℃
時)5.5以上を目標とする。
35
4
40
3
45
50
2
1
0
-10
-5
0
5
10
冷水出口温度[℃]
15
COP線図(従来機15HP)
20
①冷凍サイクルの工夫(サイクル設計)
液ガス熱交換器システムを含めた配管・サイクル設計
冷温水出口
40A
熱源水出口
40A
熱源水入口
40A
熱源熱交換器
熱源水熱交換器
熱源水出口
熱源水入口
膨張弁
チャッキ弁
ドライヤー
ドライヤー
冷温水熱交換器
冷温水出口
冷温水熱交換器
改良
可溶栓
膨張弁
冷温水入口
可溶栓
チャッキ弁
液ガス熱交換器
四方弁
アキュームレーター
圧縮機
オイルセパレーター
圧縮機
オイルセパレーター
改良点
高圧計
低圧計
アキュームレ−ター
•液ガス熱交換器
高圧計
従来機
•プレート式熱交換器
•新型圧縮機
低圧計
開発機
冷温水入口
40A
①冷凍サイクルの工夫(サイクル設計)
液ガス熱交換器システムを含めた性能理論計算
圧力[MPa]
動力
加熱
表 計算プログラムによる液ガス熱交換器の評価
過冷却液
3'
過熱ガス
3
2
気液
液ガス熱交換
4'
4
温度低
液ガス
熱交換機
冷却能力
(kW)
COP
COP比
なし
35.9/42.7
5.28/5.12
100%
あり
38.6/45.6
5.70/5.48
108/107%
比重
5
温度高
1
設計条件
(50/60Hz)
冷水12→7℃,温水25→30℃
新型圧縮機使用
プレート式熱交換器:縦528mm×横246mm×80枚
液ガス熱交換器付きサイクル
冷却
単段冷凍サイクル
比エンタルピー[kJ/kg]
図 通常サイクルと液ガス熱交換器サイクル
従来サイクル 1→2→3→4→1
液ガス熱交換器サイクル1→2→3→3’→4’→5→1
液ガス熱交換器採用により計算上は7
∼8%の能力・COP向上となる。その他
にもフラッシュガス防止や蒸発ガスのミ
スト分除去の効果も期待できる。コスト上
昇は全体の5%程度
4
3
4’
冷媒配管
水配管
水配管
膨張弁
水配管
冷媒配管
3
膨張弁
水配管
液ガス
熱交換器
熱交換器
(蒸発器)
1
熱交換器
(凝縮器)
圧縮機
2
図 通常サイクル
3’
5
熱交換器
(蒸発器)
熱交換器
(凝縮器)
1
圧縮機
2
図 液ガス熱交換器サイクル
② 熱交換器・圧縮機の見直し(機器設計)
プレート式熱交換器の容量設計
表 計算プログラムによるプレート枚数の違いによる評価
熱交換器
冷却能力
(kW)
COP
COP比
熱交換器
コスト比
多重管熱交換器(従来機)
35.6/41.2
4.65/4.28
100%
100%
プレート式40枚(従来機相当伝熱面積)
35.2/40.6
4.53/4.15
97%
53%
プレート式60枚
37.6/44.0
5.30/5.00
114/117%
77%
プレート式80枚(開発機)
38.6/45.6
5.70/5.48
123/128%
104%
(50/60Hz)
設計条件
冷水12→7℃,温水25→30℃
液ガス熱交換器,新型圧縮機使用
プレートの大きさ:縦528mm×横246mm
熱交換器枚数が多ければ多いほど能力・COPが
高いが、熱交換器のコストは枚数に比例するため多
すぎるとイニシャルコストが上がるので、試作機に使
用するものを目標COPを達成する80枚と決定した。
図 多重管熱交換器
図 プレート式熱交換器
② 熱交換器・圧縮機の見直し(機器設計)
新型圧縮機の効果を計算
表 計算プログラムによる圧縮機の違いによる評価
0.8
0.7
断熱効率η
0.6
圧縮機
冷却能力
(kW)
COP
COP比
A
38.4/45.3
5.08/4.89
100%
B
40.3/47.8
5.51/5.26
108%
C
38.6/45.6
5.70/5.48
112%
0.5
0.4
0.3
設計条件
(50/60Hz)
冷水12→7℃,温水25→30℃
液ガス熱交換器
プレート式熱交換器:縦528mm×横246mm×80枚
圧縮機A
圧縮機B
圧縮機C
0.2
0.1
0
0
2
4
圧縮比(Pc/Pe)
6
8
図 代表3社の大型スクロール圧縮機のデー
タより得た断熱効率の2次近似式
→使用する圧縮比は2∼4なので
圧縮機Cが最も有利
圧縮機の金額もほぼ同等
図 圧縮機A
(従来機採用)
図 圧縮機B
図 圧縮機C
(開発機採用)
③試作機の製作
サイクル設計・機器設計完了後、試作機の製作
•
•
•
•
サイクル設計・機器設計は完了
理論計算(Excel)完了
理論上は目標値の冷却COP5.5を達成
コンパクト化設計による筐体の設計が完了
従来機 幅800×奥行1700×高さ2200
開発機 幅650×奥行1000×高さ1800
(設置面積48%容積率39%)
能力線図(モデル計算による)
温水出口温度[℃]
消費電力
16
50
14
45
40
10
35
8
30
10
6
25
9
4
8
2
7
0
6
-10
-5
0
5
10
15
冷水出口温度[℃]
20
入出口温度差:5℃
加熱COP
消費電力[kW]
12
90
35
40
45
50
5
4
2
80
1
30
40
50
70
加熱能力[kW]
30
3
温水出口温度[℃]
加熱能力線図
0
60
-10
-5
0
50
5
冷水出口温度[℃]
10
15
20
入出口温度差:5℃
40
30
20
温水出口温度[℃]
冷却COP線図
10
10
9
0
-5
0
5
冷水出口温度[℃]
10
15
20
入出口温度差:5℃
温水出口温度[℃]
冷却能力線図
80
70
30
40
50
60
50
30
8
35
7
冷却COP
-10
冷却能力[kW]
温水出口温度[℃]
加熱COP線図
6
40
5
45
50
4
3
2
1
40
0
30
-10
20
-5
0
5
冷水出口温度[℃]
10
15
20
入出口温度差:5℃
10
0
-10
-5
0
5
冷水出口温度[℃]
10
15
20
入出口温度差:5℃
60Hz
蒸発器内水と冷媒の温度
対向流蒸発器内温度
液ガス時対向流蒸発器内温度
12
10
10
8
8
温度[℃]
12
温度[℃]
14
14
6
4
水側温度
冷媒側温度
4
水側温度
冷媒側温度
2
6
2
0
0
0%
20%
40%
60%
80%
0%
100%
20%
40%
液ガス時並行流蒸発器内温度
80%
100%
並行流蒸発器内温度
14
14
12
水側温度
冷媒側温度
12
10
10
8
水側温度
冷媒側温度
温度[℃]
温度[℃]
60%
位置
位置
6
8
6
4
4
2
2
0
0
0%
20%
40%
60%
位置
80%
100%
0%
20%
40%
60%
位置
80%
100%
定格性能(モデル計算による)
60Hz
冷水
入口
温度
冷水
出口
温度
温水
入口
温度
温水
出口
温度
冷却
能力
加熱
能力
消費
電力
冷却
COP
加熱
COP
冷却
12
7
25
30
45.6
53.9
8.3
5.5
6.5
氷蓄熱
-5
-2
25
30
31.9
39.8
8.1
4.0
4.9
加熱/
熱回収
12
7
40
45
40.0
51.8
11.9
3.4
4.3
0
-5
20
25
32.1
39.1
7.1
4.5
5.5
12
7
15
50
41.6
52.4
10.9
3.8
4.8
融雪
給湯/
熱回収
100
100
1000
10000
圧力[kPa]
200
3'
4' 4
3
300
0℃ 20℃ 40℃ at 60℃
比エンタルピー[kJ/kg]
P-H線図(R407C)
400
5
1.6
B 1
A
2
1.8
500
2.0kJ/Kkg
600
P-H線図(モデル計算による)
試作機一号機
計測結果(グラフ)
高効率水冷式ヒートポンプ 試作一号機 冷却運転
60
50
冷水流量/10[L/min]
消費電力[kW]
冷水入温[℃]
冷水出温[℃]
冷却能力[kW]
冷却COP*10
温水入温[℃]
温水出温[℃]
40
30
20
10
0
0:00
0:05
0:10
0:15
0:20
0:25
0:30
時間
高効率水冷式ヒートポンプ 試作一号機 冷却運転
高効率水冷式ヒートポンプ 試作一号機 冷却運転
70
1.4
60
冷媒温度[℃]
50
40
30
20
10
0
-10
0:00
0:05
0:10
0:15
時間
0:20
0:25
0:30
吐出[MPa]
吸入[MPa]
凝縮器液[MPa]
凝縮器ガス[MPa]
蒸発器液[MPa]
蒸発器ガス[MPa]
液ガス液㊤[MPa]
液ガス液㊦[MPa]
液ガスガス㊤[MPa]
液ガスガス㊦[MPa]
1.2
冷媒圧力[MPaG]
吐出[℃]
吸入[℃]
凝縮器液[℃]
凝縮器ガス[℃]
蒸発器液[℃]
蒸発器ガス[℃]
液ガス液㊤[℃]
液ガス液㊦[℃]
液ガスガス㊤[℃]
液ガスガス㊦[℃]
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
0:00
0:05
0:10
0:15
時間
0:20
0:25
0:30
計測結果(冷却・60Hz)
設計値
測定値
温度[℃]
設計値
圧力[MPaA]
温水流量[L/min]
154.5
155.1
測定値
設計値
測定値
冷水流量[L/min]
130.9
130.5
吐出[℃]
70.2
61.0
1.36
1.347
消費電力[kW]
8.3
8.8
凝縮器ガス[℃]
70.2
58.6
1.36
1.330
冷水入温[℃]
12
11.7
凝縮器液[℃]
27.5
24.7
1.31
1.322
冷水出温[℃]
7
6.8
液ガス液㊦[℃]
27.5
24.4
1.31
1.334
温水入温[℃]
25
24.6
液ガス液㊤[℃]
17.5
15.8
1.31
1.326
温水出温[℃]
30
29.3
蒸発器液[℃]
3.6
-0.7
0.62
0.555
冷却能力[kW]
45.6
44.1
蒸発器ガス[℃]
6.4
4.7
0.57
0.537
加熱能力[kW]
53.9
50.0
液ガスガス㊦[℃]
6.4
5.0
0.57
0.535
冷却COP
5.48
5.02
液ガスガス㊤[℃]
16.5
10.3
0.57
0.517
加熱COP
6.47
5.69
吸入[℃]
16.5
11.0
0.57
0.499
100
100
1000
10000
圧力[kPa]
200
300
0℃ 20℃ 40℃ at 60℃
比エンタルピー[kJ/kg]
P-H線図(R407C)
400
1.6
1.8
500
2.0kJ/Kkg
600
計測結果(P-H線図)
課題
• 設計冷却COP:5.5に対して測定COP:5.0
• 過熱度調整により0.2程度改善可能
• 圧力損失の低減(オイルセパレータ・アキュームレー
タの撤去)・・・0.1程度改善可能
• 消費電力が若干高い→圧縮機モーター効率の改善
要請・・・予定通りの場合0.3向上
• 蒸発器の対向流化により0.2程度改善可能
• 蒸発温度が低い→熱交換器の熱通過率が低い→
水側の境膜伝熱係数改善→熱交換器の再設計が
必要→COPは大きく改善(熱通過率500kcal/h・m2・℃
向上で約0.5向上)
→熱交換器の評価を詳細に行う必要がある
改善によってはCOP:6.0以上も可能と考えられる。