光ファイバ配線試験方法規格について

LAN関連規格〈その2〉
光ファイバ配線試験方法規格について
現在、ISO/IEC14763-3 Testing of optical fiber
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cabling の JIS 化が検討されています。この規格は
ISO/IEC14763-3について
ISO/IEC11801(JIS X 5150)の光ファイバ情報配線
ISO/IEC14763-3では、試験方法としてはLSPMと
構成を試験する方法について記載しています。これ
呼ばれる光源とパワーメータを用いた方法とOTDR
までにフィールド試験について規定されたJISはなかっ
を用いた方法が記載されています。試験に必要な条
たので、今後重要とされる規格になると思われます。
件等について表1に示します。
今回は、その規格の内容の一部について紹介した
いと思います。なお、この内容は、規格の一部であり、
すべては記載してはおりませんので、ご注意ください。
【表1】ISO/IEC14763-3 規格内容一覧
試験コード
測定方法
LSPM
OTDR
特 徴
被測定配線が規格を満足するかの確認をす
る試験。被測定配線の全体の光損失測定に
適しているが損失箇所の特定はできない。
LSPM法で不合格の際に部材の確認を行う
試験。被測定配線の長さ方向の特性、損失
箇所を特定するのに適している。後方散乱
光のパワーを測定するため、後方散乱係数
の異なるファイバの接続があると正確な損
失値が得られないことがある。
測定内容
光損失測定
光損失測定
長さ測定
反射減衰量測定
測 定 法
3ジャンパ法
入射コードのみ使用した測定
入射と終端コードを使用した測定
測定方向
複雑な配線は双方向
双方向
入射コード長
1∼5m
OTDRのデッドゾーン
終端コード長
1∼5m
入射コードと異なった長さ
デッドゾーンより長いこと
測定光源
Field calibration cord
マルチモード(MM)ファイバ
波長特性
シングルモード(SM)ファイバ
励振条件
※2
CPR
マルチモード(MM)ファイバ
シングルモード(SM)ファイバ
※1
より長いこと
2mを超えないこと
コード被覆径
3mmφ
850±30nm
1300±30nm
1310±30nm
1550±30nm
直径:15mm 巻付回数:5回(マンドレル等に巻き付ける)
直径:35mm∼50mm 巻付回数:少なくとも2回(マンドレル等に巻き付ける)
MM 50/125μm波長 850nm
20.5±0.5dB
MM 50/125μm波長1300nm
16.5±0.5dB
MM 62.5/125μm
20.5±0.5dB
接続器具の端面観測倍率
マ ル チ モ ード:100倍
シングルモード:200倍
付属書Bにて目視検査基準規定がある。
(3項参照)
被測定リンク試験構成
ISO/IEC 11801(JIS X 5150)で定義
規 格 値
ISO/IEC 11801(JIS X 5150)、または同等標準で規定
※1 デッドゾーン:OTDRの分解能を評価するもので、コネクタ接続などの接続部2箇所が分離できる最小の単位。短いほど、光ファイバの接続位置や長さの確度が増す。
※2 CPR(光出力結合比)
:被測定ファイバへ光を入射するときの入射条件を決める指標の一つで、現場環境において簡易的に測定するもの。励振されたマルチ
モードファイバに結合される光パワーのうち、シングルモードファイバに結合できない部分の割合のこと。
TSUKO ニュースレター No.29
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LAN関連規格〈その2〉
光ファイバ配線試験方法規格
について
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使用する試験コード(入射コード、終端コード、
試験方法について
field calibration cord)は被測定光ファイバ種と同種
次にLSPMとOTDRについて紹介いたします。こ
のものを用い、更に以下の要件を満たすことが必要
の試験方法の分類は、LSPM試験(光源とパワーメー
となっております。
タを使用した試験)は規格を満足するかどうかを確
LSPM入射コード
認するための試験で、OTDR試験はLSPM法で試験
● 全長1m∼5mであること。
し、規格を満足しなかった場合に不合格部材の確認
● 片端に光源に接続するのに適当な1個または複数
のコネクタが取り付いていること。
を行う試験とされています。
●反対側には、既設の配線のインタフェースと互換のマ
■2-1
LSPM法
スタコネクタが1個または複数取り付いていること。
LSPMとはLight Source Powermeterの略であり、
● 全長1m∼5mであること。
も呼ばれています。試験コードに入射コードと終端
● 片端にパワーメータに接続するのに適当な1個ま
コード、さらに校正用コードとしてfield calibration
cordを用いて、3本を接続した状態で基準値をとり、
たは複数のコネクタが取り付いていること。
● 反対側には、既設の配線のインタフェースと互
その後field calibration cordの部分を被測定用配線に
換のマスタコネクタが1個または複数取り付いて
置き換えて、光損失を測定する方法になります。こ
いること。
の試験の特徴としては、図1に示すように被測定配
線の両端のコネクタが損失には含まれなくなりま
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LSPM終端コード
LSPM法は“置き換え法”または“3ジャンパ法”と
LSPM複合入射/終端コード
このコードは2心一括型で入射コードにも終端コー
す。また、測定は両端コネクタ付ケーブルのみの場
ドにも使用できます。
合は1方向でよいのですが、配線構成が複雑な場合、
● 全長1m∼5mであること。
もしくは部材が測定方向により異なった減衰量を示
● 片端には、LSPM装置(光源パワーメータ装置)
す恐れのある場合は、双方向で測定します。この試
に接続するのに適当な1個または複数のコネクタ
験方法の測定構成を図2に示します。
が取り付いていること。
● 反対側には、既設の配線のインタフェースと互
3本の
ジャンパ使用
換のマスタコネクタが1個または複数取り付いて
光 源
パワーメータ
● 両端に既設の配線のインタフェースと互換のマ
● 単心光コードの場合
送信
受信
光 源
パワーメータ
(Power Meter)
(Light Source)
入射コード field calibration cord 終端コード
または
被測定配線
送信
定を行い、その値を基準値(P0)とします。
パワーメータ
(Power Meter)
(Light Source)
field calibration cord
あります。
● 2心光コードの場合(光源:双方向)
● 光パワーの変動
終端コード
送信
● 温度の変動
受信
光 源
(Light Source)
パワーメータ
(Power Meter)
field calibration cord
または
終端コード 被測定配線 入射コード
【図2】LSPM法の測定構成
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基準値は、必要に応じて定期的に測定を行う必要
があり、次のことがあった場合には再測定の必要が
受信
または
入射コード 被測定配線 終端コード
入射コード
測定方法
まず、field calibration cordを取り付けた状態で測
受信
光 源
スタコネクタが取り付いていること。
■2-1-1
● 2心光コードの場合(光源:単一方向)
受信
LSPM field calibration cord
● 全長2mを超えないこと。
【図1】測定に含まれる要素
送信
いること。
送信
● 測定場所の移動
● 電源切断
● field calibration cordまたはアダプタの性能低下に
よる交換
LAN関連規格〈その2〉
光ファイバ配線試験方法規格
について
基準値の再測定は、十分に時間を空けて光源が安
定してから行ってください。
材の接続では、増幅されたような結果を示す場合が
あるので双方向の測定が必要になります。
次に、入射、終端コードは接続したままで、field
試験コード(入射コード、終端コード)の基本的な要
calibration cordを外し、入射、終端コードを被測定
件はLSPM法の試験コードと同じとなっています。た
配線に接続し、測定を行います。その測定値をP1と
だし、OTDR入射コード、OTDR終端コードはそれぞ
して記録します。
れ以下の要件を満たしていなければなりません。
■2-1-2
OTDR入射コード
試験結果
測定したリンクおよびチャネルの減衰量Lは以下
の式で計算されます。
P0、P1が[dBm]表示
L = P0−P1 [dB]
● 全長がOTDRのデッドゾーンよりも長くなければ
ならない。
P0、P1が[W]表示
P1
L =−10log10 [dB]
P0
● 片端にはOTDRに接続するのに適当な1個または
複数のコネクタが取り付いていること。
●反対側には既設の配線のインタフェースと互換のマ
スタコネクタが1個または複数取り付いていること。
■2-2
OTDR法
OTDR終端コード
次にOTDR法について紹介します。
● 対応する入射コードとは長さが異なっていなけ
OTDRとはOptical Time Domain Reflectometerの
略であり、光ファイバの片端から光を入射し、
光ファ
ればならない。ただし、OTDRのデッドゾーンよ
りは長くなければならない。
イバ内で生じる後方散乱光や反射光により、光ファ
● 片端には既設のインタフェースと互換のマスタ
イバの損失などを測定する計測器です。OTDR法で
コネクタが1個または複数取り付いていること
は、終端コードを用いた場合と用いない場合の測定
(反対側の成端は必ずしも必要としない)。
方法が記載されています。終端コードを用いない場
合は、被測定配線の連続性が確認できない等のこと
また、OTDRについては以下の項目を適切に設定
からチャネル、およびパーマネントリンクの減衰量、
します。
挿入損失測定はできなく、主に端末加工がされてい
● 距離レンジ
ないケーブルの測定で利用するとなっています。理
● パルス幅
由については、図3で示します。
● IOR
(実効群屈折率)
終端コードを用いた場合は、終端コードまでの波
● 平均化時間
形が得られるため被測定配線の終端部までの連続性
がわかります。しかし、終端コードを用いない場合
測定、試験結果
は、接続部がないので、端末部付近で断線していた
OTDR法で試験した波形を読み取って、減衰量を
りした場合、その様子は端末部の反射に隠れてしま
求めます。双方向で測定した場合は、双方向の平均
いわかりません。また、後方散乱係数が異なった部
を結果とします。
(a)終端コード有
(b)終端コード無
連続性の
確認が出来る
OTDR
切れていても
確認が出来ない
OTDR
入射コード
被測定配線
終端コード
入射コード
被測定配線
【図3】OTDR法の測定構成とその波形
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LAN関連規格〈その2〉
光ファイバ配線試験方法規格
について
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コネクタの端面検査の基準について
ISO/IEC14763-3規格には、コネクタの端面にお
【表3】引っかき傷の許容範囲
傷内容
ける基準が記載されています。その内容について紹
介いたします。
■3-1
引っかき傷
端面領域の定義
光ファイバの端面をコア領域、クラッド領域に更
にクラッド領域を内部クラッド領域と外部クラッド
領域に分けています。この内部クラッド領域につい
ては、十分な稼動寿命を持った製品の提供を証明す
る基本的な工業規格を反映したものとされています。
コア領域
SMファイバ
(×200)
の許容個数(個)
10
2
(2∼5μm以内)
(3μm以下)
0
0
(5μmより長い傷)
(5μmより長い傷)
【表4】くぼみ傷の許容範囲
傷内容
くぼみ
・
欠け傷
クラッド領域
MMファイバ
(×100)
の許容個数(個)
MMファイバ
(×100)
の許容個数(個)
SMファイバ
(×200)
の許容個数(個)
10
2
(2∼5μm以内)
(3μm以下)
0
0
(5μmより大きい傷) (5μmより大きい傷)
(内部クラッド領域)
クラッド領域
(外部クラッド領域)
■3-3
端面の判定基準(場所)について
次に傷の場所についての規定について紹介しま
10
す。傷は、図5に示すようにコア領域、または内部
【図4】光ファイバ端面
クラッド領域にはあってはならないとされていま
【表2】コネクタ端面の領域
ファイバ種類
SM
50/125μm
す。外部クラッド領域に関してはクラッド外周の
コア径
(μm)
内部
クラッド
領域
外部
クラッド
領域
(μm)
(μm)
8または10
58
125
50
88
125
MM
25%を超えるような欠陥があってはならないとさ
れています。
コア領域
クラッド領域
(内部クラッド領域)
62.5/125μm
62.5
94
125
クラッド領域
(外部クラッド領域)
■3-2
端面の判定基準(個数と大きさ)
について
コネクタ端面の検査は、端面を正面から照明で照
らした状態で確認するとされています。その状態で確
認した端面に引っかき傷、くぼみ等の傷の数、大きさ
コア領域、および内部クラッド領域内には、
傷があってはならない
は表3および表4の範囲でなければならないとされて
います。
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【図5】端面の判定基準