問一 「火がしばしば文明の象徴

第1回 国語 入試問題解説
一
問一
鷲田清一『悲鳴をあげる身体』
「火がしばしば文明の象徴とされる」理由について述べる問題です。傍線部(1)
の続きを読むと「おそらくそういう理由からであろう」とあるので、指示語の内容を探し
ます。1頁上段3~4行目に「獲物や採集物を、調理もせずに食べるのはまれ」であるこ
と、
「調理は、人間生活におけるもっとも基礎的な行動」であることが述べられていますか
ら、この2点をまとめます。「獲物や採集物を調理することは、人間生活におけるもっとも
基本的な行動であり、そのためには火が必要だから。」といった解答が考えられます。
問二 筆者の問題意識を説明する問題です。傍線部(2)「想像以上に大きい」は文の述部
ですので、主部を探します。傍線部の直前に「調理を家の外にだすということ、そのこと
の意味は」とありますので、ひとが調理を自らの手で行わなくなった結果、どのような問
題が生じたと筆者が考えているかを説明します。1頁下段37~41行目に、調理の過程
を通じてひとがどのようなことを学んでいたかが述べられています。
「ひとは、じぶんもま
た生きるためには他のいのちを破壊せざるを得ない生き物の一つでしかないということを、
身をもって学ぶ機会をほとんど失いつつあるということ。」といった解答が考えられます。
問三
前後の文脈から空欄を補充する問題です。1頁下段32行目の「誕生や病や死」か
ら、人間の命には限りがあるということが読み取れますので、ウの「有限」を選びます。
問四
解答らんの形式に合うように傍線部を説明する問題です。傍線部(4)に「その単
純な事実」とありますが、これは直前の「いのちの深いやりとり、深い交感」を指してい
ます。また、
「生きていけないことを味わわせようとしている。」にうまくつながるように、
祭りの意図について説明しなければならないので、手掛かりを探します。1頁下段43行
目に「いのちを潰さないことには、わたしたちが生きていけないということ、このことを
しっかり思いださせてくれる行事がある。」という記述があります。これが解答の結論部分
となります。あとは「何を通じて」味わわせようとしているのか、祭りの内容から探しま
す。この祭りはつつじの花を毟りとって、籠いっぱいにため、空中にふりまく行事ですか
ら、その旨を記します。
「せっかく育てた花を引きちぎり、あたり一面にぶちまけることを
通じて、ひとがいのちを潰さないことには(生きていけないことを味わわせようとしてい
る。
)
」といった解答が考えられます。
問五 接続語を選ぶ問題です。
A 「ちょうど~と同じことである。
」という呼応の関係を読み取ります。正解はイの
「ちょうど」です。
B
「もはや~(打消)
」という呼応の関係を読み取ります。正解はエの「もはや」で
C
1頁下段48~49行目に「それを子どもたちが手にもち、大空を仰いで空中に
す。
花をふりまく、 C
、たがいにかけあって戯れる。
」とあります。子どもたちが「ふりま」
くか「戯れ」るかするわけですから、正解はアの「あるいは」です。
D
2頁上段3行目「肉や魚を切り身にし、透明ラップをかけて売ったり」するだけ
では飽き足らず、
「じぶんたちの誕生や死も、病院というひとの眼に触れない場所で処理す
るようになった。
」わけですから、次の事柄を強調する接続語を入れます。正解はウ「それ
どころか」です。
問六
脱文補充問題です。脱文に「宇宙的といってもいいこの単純な事実」とありますの
で、指示語の内容を探します。2頁上段2~3行目の「ひとつのいのちが別のいのちの火
に変わる。
」を指していると考えられますので、この文の直後に補充します。直後の五字は
「肉や魚を切」です。
問七 漢字の書き取り問題です。
問八
内容一致問題です。アはひとが調理を行うようになったせいで、力強さを失ったと
いう内容が不適当です。イは、ひとがみずから調理した食べ物を食べなくなったせいで、
じぶんの身体をコントロールできなくなったという内容が不適当です。ウは下水道が完備
されたために、人々が命の有限性に気づいたという内容が不適当です。エは1頁下段32
行目から始まる段落の内容と合致します。よって正解はエです。
二
ひろのみずえ『いつまでもここでキミを待つ』
問一 傍線部(1)
「な、なんでもない! なんでもないからわすれてっ!」とありますの
で、奏が何を忘れて欲しがっているのか考えます。3頁下段30~31行目に「絵がなく
なったら、私のとりえがなくなっちゃうじゃないっ!!」とあります。また、3頁下段3
9~40行目に「はずかしい。自分のとりえが「絵」とか言っちゃって……。それだって、
たいしたとりえじゃないくせにっ!」とあります。以上の二点をまとめると「たいしたと
りえではないにも関わらず、絵が自分のとりえだと一馬に言ってしまったことを恥ずかし
く思い、言わなければよかったと後かいしたから。
」といった答えが考えられます。
問二
傍線部(2)
「一馬の言葉が胸をさした。」とあるのは1行前の「あ~、いるいる。
クラスに一人はそ~ゆ~ヤツ!」という言葉を指しており、彼の発言に傷ついたのだとい
うことが分かります。4頁上段60行目にあるように「まあ……『少しはほかよりマシか
な?』って程度なんだけど……」と謙遜しつつも、64~66行目にあるように、美術の
成績がよく、クラスの文集の表紙を任されていたことを誇りにしていた奏にとって、一馬
の発言は辛い内容でした。
「自分ではとりえだと思っていた絵も、クラスに一人はいる程度
のものだと思い知らされて悲しくなったということ。」といった形にまとめます。
問三
美術スクールの佐藤先生から、絵を描くのが好きか聞かれたときの、奏の心情につ
いて答える問題です。傍線部(3)
「そっちの方が重かった」からは、不満の感情は読み取
れないので、アは不適当です。イの「水におぼれそう」は一馬の様子を描写した表現なの
で不適当です。ウの内容は4頁上段90行目「答えられなかった。」、91~93行目「先
生に、見捨てられたような気がした。まわりにいる生徒たちからは~、あざ笑われている
ような、そんな気がした。
」といった記述と矛盾しません。よって正解はウです。4頁下段
94行目に「何を問いかけられたかなんて、考えられなかった」とあるように、奏が即答
しなかったのは、佐藤先生の言葉の意味が理解できなかったからではなく、何を問いかけ
られたか考える余裕がなくなったからなので、エは「言葉の意味が理解できず」の部分が
不適当です。
問四 傍線部(4)
「ぬるいんだよ」という発言で、一馬は奏は甘えていると指摘していま
す。また、4頁下段106~111行目の発言から、一馬は「奏の親は奏が絵を描くのが
好きだと思っていること」
「奏の親は奏に好きなことをやらせてくれているのだから優しい
こと」「優しい親なのだから奏がやめたいと言えばやめさせてくれる」とも言っています。
反論する奏に一馬はさらに4頁下段121行目に「とか、なんとか言って、自分に言う勇
気がね~だけだろ?」とありますので、以上をまとめると「奏が絵を好きだと思い、絵を
習わせてくれるような優しい親に、習うのをやめたいと言えないのは、単に勇気がないだ
けだということ。
」といった解答が考えられます。
問五 傍線部(5)
「かんたんじゃない」とありますが、何が「かんたんじゃない」のか考
えます。4頁下段125~131行目にあるように、一馬は「絵が好きならさっさと帰っ
て、絵を描けばいいし、嫌いなら『やめる』と言えばいい」とアドバイスしています。5
頁上段129~130行目にあるように、奏は本当に絵が好きなのか自分でもよくわかっ
ていません。好きか嫌いかわかれば取るべき行動は簡単に決まりますが、わからないから
こそ奏は困っているわけです。
「絵を描くことが本当に好きなのかわからない以上、どう行
動すればいいか簡単には決められないということ。
」といった答えが考えられます。
問六
A
顔が赤くなるのに合うのはエ「カアッと」です。
B
以前質問されて答
えに困った質問を一馬にもう一度聞かれて動揺しているわけですから、ア「ビクっと」で
す。 C 「見て」につながるのはイ「じっと」です。 D 「動かす」に合うのはウ「ち
まちまと」です。
問七 ことわざに関する問題です。
問八
アは奏の母が「自分と同じように奏にも絵の才能がある」と考えている部分が不適
当です。奏の母の絵の才能については述べられていません。イは佐藤先生が「奏には、美
術系の高校は無理だと考えている。
」部分が不適当です。高校進学に関する佐藤先生の見解
は述べられていません。ウは一馬が奏のことを「めざわり」だと考えている部分が不適当
です。エは4頁上段75行目の奏の発言と一致します。よって正解はエです。