パブリックアクセス

第2章
第1節
パブリックアクセス
パブリックアクセスとは
1 パブリックアクセスとは何か
パブリックアクセスとは一般市民が一定のルールによって自主的に放送番組を
企画・制作することを指す。
また、広くは放送に限らず「
言論・表現の公共圏(パブリック・フォーラム)」
にアクセスする行為や制度を指す。
パブリックアクセスは、政治やビジネスに専有されたメディアに多様な市民の
意見を反映させる、民主主義の基盤的なシステムであり、先進国のほとんどの国
でこうした市民放送局が活躍しているが、わが国では法整備がなされていないた
め、先進的な団体等が情報を収集し、横の連絡を密にしながら取組み始めている
のが現状である。
アメリカでは 1984 年に「ケーブル通信政策法」が制定され、PEG チャンネルが
ケーブルテレビに義務化された。PEG とは、パブリックチャンネル(1,000 チャン
ネル以上に増加)、教育チャンネル、行政チャンネルの3チャンネルのことで、国
民の知る権利を保障しようというものである。隣国の韓国でも、2000 年に放送法
を改正し、能動的視聴者が放送に参加していく権利を認め、公共放送 KBS におい
て「開かれたチャンネル」を設定し、女性団体が戸籍制度について番組を制作す
るなど、パブリックアクセスの番組を放映している。
日本では、一般市民によって制作されたメディア、いわゆる市民メディアが中
心となってパブリックアクセスを展開しているが、市民権を得ているところはま
だ少ない。しかし、市民の自ら知る権利にとどまらない、自ら参加し自ら制作し
発信することによって、民主主義の基礎が形成される。ここでは、これら民主主
義を支える情報社会のあり方について、東近江市での可能性について検討する。
2 わが国のパブリックアクセスの状況
わが国でもコミュニティFMやケーブルテレビ等のコミュニティ放送の活発化
やNPO活動の進展等により、多くは非営利による市民メディアが活躍しつつあ
る。それらの特徴的なものについて分類し、状況を述べる。
(1) 市民によるメディア組織
市民メディアが放送法を含め放送事業全体に責任をもつものである。例えば、
FMでは京都コミュニティ放送やおおすみ半島コミュニティFMネットワークが
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コミュニティ放送局として開局し、NPO法人が運営しているCS放送では障害
者放送統一機構がある。
■NPO法人京都コミュニティ放送(京都府京都市)
日本初のNPO法人によるコミュニティ放送局として、2001 年9月に設立さ
れ、2003 年3月に開局した。愛称は京都三条ラジオカフェ。特徴としては決め
られた放送利用料を支払うことで誰でも番組を制作し放送することができる。
そのため番組数は非常に多い。
■NPO法人おおすみ半島コミュニティ放送ネットワーク(鹿児島県鹿屋市)
大隅半島内でコミュニティ放送の4つのコミュニティ放送局(かのやコミュ
ニティ放送・きもつきコミュニティ放送・志布志コミュニティ放送・たるみず
まちづくり放送)が共同運営を目的とし、2005 年8月に設立したNPO法人。
地域住民がラジオ番組を制作することができるパブリックアクセスを全面的に
実施している。
■NPO法人CS障害者放送統一機構(目で聴くテレビ大阪)
全日本ろうあ連盟や全日本難聴者中途失聴者団体連合会等が中心となり、障
害者放送統一機構を設立し、1998 年からCS放送を開始した。聴覚障がい者自
身がキャスターやカメラマンとして番組制作に参加するなど、手話や字幕でさ
まざまな情報を伝えている。
(2)市民が制作する放送チャンネル
市民メディアがチャンネル編成、運営、制作に責任を持つというものである。
例えば、ケーブルテレビでは、パブリックアクセスチャンネル(鳥取県米子市・
中海テレビ)やチャンネル Daichi(愛知県刈谷市)等がある。
■パブリックアクセスチャンネル(鳥取県米子市・中海テレビ)
一般市民が番組を制作する、「パブリックアクセスチャンネル(P・A・C)」
の草分けとして 1992 年 11 月に市民チャンネルを立ち上げた。年間 100 本以上
の番組を放送するとともに、放送された番組の中から、「パブリックアクセス大
賞」等を選出し表彰している。
運営は、地域文化団体や青年団体など 34 団体からなる番組運営協議会が行っ
ている。
■チャンネル Daichi(愛知県刈谷市)
CATVキャッチが、市民チャンネル構想を市民団体に打診し、2005 年5月
に碧海・西尾幡豆市民放送局チャンネル Daichi が発足。同6月に放送が開始し
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た。市民による市民のための放送局として、2007 年にNPO法人化。
(3)市民が制作する単位番組
市民メディアが一定時間の番組制作に責任をもつものである。例えば、ケーブ
ルテレビでは、むさしのみたか市民テレビ局(東京都三鷹市)やくびき野みんな
のテレビ局(新潟県上越市)、自治会レベルでは、ちはら台チャンネル(千葉県市
原市ちはら台地区自治会連合会)等がある。
■むさしのみたか市民テレビ局(東京都三鷹市)
武蔵野三鷹ケーブルテレビが放送枠の一部を市民に開放。市民テレビコミュ
ニティチャンネル委員会(むさしのみたか市民テレビ局の前身)が設立され、
2001 年1月にコミュニティチャンネルでの放送が開始された。市民テレビ局制
作の番組は、インターネットでも同時に動画配信されている。
■くびき野みんなのテレビ局(新潟県上越市)
「くびき野みんなのテレビ局」という番組を制作し、上越ケーブルビジョン
自主チャンネル内で放送している。2004 年7月より放送開始。毎年、市民ディ
レクター養成講座を開催し、自主発信する人材を育成している。
■ちはら台チャンネル(千葉県市原市ちはら台地区自治会連合会)
首都圏ケーブルメディアの協力のもと、自治会連合会で手作りの番組を制作
し、放送している。ちはら台在住でケーブルテレビに加入している市民であれ
ば視聴できる。
(4)市民組織によるウェブサイト(動画配信や地域SNS)
電波法・放送法上の「
放送」
ではないウェブサイト上で動画配信や地域SNS(ソ
ーシャル・ネットワーキング・サービス)を展開している。例えば、NPOシビ
ックメディア(北海道札幌市)や湘南.TV(神奈川県藤沢市)
、SNSでは、ご
ろっとやっちろ(地域SNS、熊本県八代市)等があげられる。
■NPOシビックメディア(北海道札幌市)
市民ジャーナリズムによるコミュニティに対する理解を深め、住みよい社会
を作っていこうと、2002 年7月に設立された。ウェブサイトを作りインターネ
ット市民放送局を通じて札幌の魅力を市民自身が取材し発信するというもので
あったが、2010 年3月に解散。
■湘南.TV(神奈川県藤沢市)
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2005 年、市民が作成した映像作品を募集する「湘南映像祭」
を契機に、主に湘
南地域の市民が制作した映像を発信するウェブサイトを事業化。「
湘南.TV」
としてNPO法人が運営している。
■ごろっとやっちろ(地域SNS、熊本県八代市)
市民同士が安心して情報交換できるコミュニティーサイトを目指して 2003
年4月に開設。2004 年 12 月にSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)
化して多くのユーザーに人気が拡がった。14 万人市民の1%弱が利用している。
3 パブリックアクセスの意義
パブリックアクセスを進める意義としては、情報を市民自身が制作し発信する
という「当事者の視点」を持ち、議論を徹底して物事を進めることで「
合意形成の過
程を共有」することができる。
また、東京中心の放送から脱却し、「
各地域が情報発信の源」となることができ
る。
その他にも、地域の記憶を共有するような「
ソーシャルキャピタルの構築」や、
「
過度の商業主義からの脱却」
、「
地域の非営利活動の促進」
等が可能となり、熟議
型民主主義が発展していくと考えられている。
第2節
東近江市におけるパブリックアクセスの現状と課題
1 ケーブルテレビの活動状況
東近江ケーブルネットワーク株式会社(愛称:東近江スマイルネット)は、2006
年4月に設立された。資本金は 1,710 万円となっている。
市民参加型の番組に取組み、視聴者目線での活動を広げようとしている。
■市民参加型番組(例:巨大巻き寿司を作ろう)
(1)番組の目的
イベントを通じ地産地消をPRすることを市内各コミュニティの連携強化
を図る。
(2)具体的な内容
市内各地で生産された食材を使って市民参加による全長 30Mの巨大巻き寿
司を製作する。
(3)市民参加型の効果や課題
イベントを通じ地産地消や地域コミュニティの結び付きの大切さやPRで
きたことを考える。
(4)市民参加型番組の今後
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今後も市民参加型番組を制作することにより、より一層の地域密着型CA
TVを目指す。
(東近江スマイルネットHPをもとに作成)
■コミュニティ放送
(1)番組の目的
市や地域の行事、学校行事、地域の話題や生活の便利情報を届ける。
(2)具体的な内容
コミュニティ放送の番組は、東近江スマイルネットで独自に制作し放送して
いる。ニュース番組「e-おうみNOW!!」は、平日の毎日、その他の番組は週 1
回更新。また、土曜日と日曜日に放送「ウィークリー」
では、その週に放送した
番組をまとめて放送している。
・行政からの提供番組:行政からの様々な情報を、担当者や関係者が出演し、
映像を通じてより分かりやすく提供
・地域情報番組:地域のイベントや行事、話題や問題など様々な地域の情報
を、CATV会社が独自に制作し放送
・各種団体からの提供番組:各種団体や事業所等が提供する地域情報番組を
放送
※ コミュニティ放送の初回放送は、例えば、
「e-おうみNOW!!」では平日
の午後6時で、月曜日から金曜日まで毎日更新している。その他平日のコ
ミュニティ放送番組では、週1回の更新で、月曜日が初回放送となり、週
8回放送している。
また防災や防犯などに対し、全市一斉放送や緊急放送が可能な音声告知
放送も行っている。
(東近江スマイルネットHPをもとに作成)
表Ⅱ−2−1 コミュニティ放送番組のタイムテーブル
午前
月曜日
6:00-6:15 8:00-8:15
東近江八景八選
午後
12:00-12:15 16:00-16:15
東近江八景八選
夜
18:00-18:15 20:00-20:15
22:00-22:15 23:00-23:15
e-おうみ NOW!!
18:15-18:30 20:15-20:30
平日(火−金)
6:00-6:15 8:00-8:15
e-おうみ NOW!!
6:15-6:30 8:15-8:30
スマイル通信
6:45-7:00
こんにちは市役所です
12:00-12:15 16:00-16:15
e-おうみ NOW!!
12:15-12:30 16:15-16:30
スマイル通信
12:45-13:00
こんにちは市役所です
18:00-18:15 20:00-20:15
22:00-22:15 23:00-23:15
e-おうみ NOW!!
18:15-1830 20:15-20:30
31
土・日曜日
6:00-7:15 9:00-10:15
ウィークリー
12:00-13:15 15:00-16:15
ウィークリー
18:00-19:15 21:00-22:15
ウィークリー
22:15-22:30 23:15-23:30
スマイル通信
18:45-19:00 22:45-23:00
こんにちは市役所です
22:15-22:30 23:15-23:30
スマイル通信
18:45-19:00 22:45-23:00
こんにちは市役所です
※出典:東近江スマイルネットHPより作成
■音声告知放送
(1)番組の目的
音声告知端末機のスピーカーから音声による放送を行う。
市のお知らせ、地域や学校でのお知らせ、防犯や防災に関する情報、緊急
時の一斉放送、まちづくり情報等を放送する。
(2)具体的な内容
全市一斉放送や緊急放送はもちろん学校からの放送や自治会からの放送
等、放送エリアを限定した放送も行える。
(東近江スマイルネットHPをもとに作成)
2 コミュニティFMの活動状況
びわ湖キャプテン株式会社・FMひがしおうみ(愛称:Radio Sweet)は、1987
年5月 14 日に創立され、2005 年8月1日開局。資本金は 4,000 万円。東近江市
を中心に近江八幡市、八日市市、竜王町、日野町、秦荘町、愛知川町、彦根市稲
枝地区の約8万世帯が対象エリアとなっている。
既に3つのまちづくり協議会や経済団体とのパブリックアクセスの番組づくり
の取組みを進めており、東近江市における先行事例となっている。
■地域密着番組
(1)番組の目的
市民活動の広報支援。公共放送=地域資源と考え、電波利用の活性化を図
る。市民の声を生かしたい。
(2)具体的な内容
一定時間の番組制作。まちづくり協議会、商工会、青年会議所、ジャズフ
ェスティバル実行委員会等を対象に、各団体と協議し、地域の話題を中心に
放送している。営利目的は禁止しているが、特に規定は設けていない。
・番組企画責任:FMひがしおうみ(番組当初に各参加団体と企画協議)
・番組制作責任:各参加団体
・番組進行:各参加団体(慣れるまでFMDJがつくことも)
(3)市民参加型の効果や課題
どのように利用してよいか検討がつかないとの声が多く、人材の育成が必
須課題である。
(4)市民参加型番組の今後
希薄になったコミュニケーションの活性化。井戸端会議の延長線上に番組
があればというイメージで提案している。
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(5)USTREAM を活用したインターネット放送
facebook 機能で共有したり、twitter でつぶやくこともできる。
・鳥居ちゃんの聞いてみよう!行ってみよう!等
(FMひがしおうみHPをもとに作成)
表Ⅱ−2−2 パブリックアクセス番組のタイムテーブル
午前
平日(月−木)
9:30-10:00(再放送)
(月 )ラジオ瓦版 能登川地
区密着番組
(火)Happy Gamo 蒲生地
区密着番組
(木)愛の HOT 田園チャン
ネル 愛東地区密着番組
午後
−
夜
−
金曜日
9:30-10:00(再放送)
第2 J-TIME 東近江青年会
議所制作
第3 YY ステーション 八日市
商工会議所青年部制作
第4 鳥居ちゃんに聞いてみ
よう!行ってみよう! 八日市
大凧会館 鳥居学芸員出演
土曜日
9:00-9:30 ラ ジオ瓦 版 ( 生 放
送)
能登川地区まちづくり協議会さ
んと能登川地区住民の皆さん
9:00-9:30 Happy Gamo (生
放送)
蒲生地区 まちづ くり協議 会 の
皆 さんと蒲生地区住民の皆 さ
ん
10:00-11:00
SATUDAY
AMUSIC ISLANDS(録音放
送)
第 2週目:東近江青年会議所
presents『J-タイム』
第 2週目:八日市商工会議所
青年部 presents 『YY ステー
ション』
第 4週 目 :八 日 市 大 凧会 館
presents 『鳥 居ちゃん の聞 い
てみよう!行ってみよう!』
11:00-11:30 HOT 愛 ま ち チ ャ ン
ネル!
愛東地区 まちづ くり協議 会 の
皆 さんと愛東地区住民の皆 さ
ん(生放送)
−
17:00-17:30 第2 週 目 :東 近
江青年会議所 presents『J-タ
イム』
20:00-21:00(生放送)JAM'z −
BAR び わ 湖 ジ ャ ズ フ ェ ス テ ィバ
ル実行委員会
(FMひがしおうみHPをもとに作成)
3 東近江市での可能性と課題
東近江市には、市民メディアはない。しかし、その前提条件となる地域メディ
ア(ケーブルテレビやコミュニティFMなど)が近年設立され、情報基盤として
整備され、市民参加が模索されている。ケーブルテレビでは、まだパブリックア
クセスチャンネルに踏み出していないが、コミュニティFMでは、市民参加の番
組づくりを進め地域に愛される番組を目指す観点から、結果としてパブリックア
33
クセスが進みつつある。しかし、参加している市民側にパブリックアクセスを推
進しているという意識はほとんどないと思われる。
ただ、東近江市では、環境保全や医療福祉など、多くの市民活動団体やNPO
が活動しており、市民が情報の受発信に参加・参画することで、市民社会が前進
し、市民活動がより活発になることが可能となると考えられる。
第3節
パブリックアクセスの実現化に向けた提案
パブリックアクセスを実現するため、さらなる市民参加・市民参画を進めてい
くことが重要である。そのためには、行政と協働しながら、パブリックアクセス
を進めるための環境整備を進める必要がある。それに必要なものとして、体制づ
くりと番組制作の担い手の育成について提案する。
1 体制の整備
東近江市でパブリックアクセスを実現するために、
(仮称)東近江パブリックア
クセスプロジェクト実行委員会を設置し、行政と協働しながら、パブリックアク
セスを進めるための環境整備を進める必要がある。その構成メンバーとしては、
以下のような機関が想定される。具体的な番組制作に取り組むテーマは様々であ
り、テーマごとにチームに別れ、各分野からの番組の制作を目指す。実行委員会
では、資金調達の方法や番組制作・発信に当たっての役割分担等を検討する。
① 実行委員会構成メンバー(各組織にパブリックアクセス担当設置)
・市民活動団体・NPO・まちづくり協議会
・経済団体・その他各種団体
・東近江スマイルネット(CATV)
・FMひがしおうみ(FM)
・その他メディア(新聞、WEB等)
・行政等
② 取り組むテーマ
環境、医療福祉、市民活動、子育て、文化、歴史、住民自治
2 番組制作の担い手育成
市民参加による番組を発信することで、市民へのパブリックアクセス番組への理
解と賛同を広めながら、番組制作に参加する市民としての担い手を増やしていく。
具体的には、(仮称)東近江パブリックアクセスプロジェクト実行委員会による
担い手の育成支援を行い、市民ディレクター等を育成し、人材の拡充を図る。ま
34
た市民のパブリックアクセスへの意識を高めていくため、同時にパブリックアク
セスの基本的な知識や必要性を伝え、共感を広げるために次のことに取り組む。
① 市民ディレクター、レポーター、カメラマン等の技術的学習機会の創設
既存地域メディアの協力と支援による技術指導
② 参加仲間等による連携ネットワークの強化
各まちづくり協議会、商工会、青年会議所、ジャズフェスティバル実行委
員会の横の連携と拡大
第4節
実現方策
具体的なモデルテーマとして、ここでは医療福祉と市民活動をとりあげ、その
実現化について目標を設定してみたい。
1 「三方よし研究会」の取組みからのモデル化
市民にとって身近な医療福祉をテーマとし、パブリックアクセスの進展を図る。
具体的には、東近江市内で保健医療福祉の情報ネットワークを形成している「
三方
よし研究会」
(補節参照)の医療福祉コンテンツの充実をベースに、医療福祉の充
実と連動させたパブリックアクセスをめざす(図Ⅱ−2−1)
。そのためには、多
様なメディアの協働、参加の機会創出、教育、参加の体制強化、参画の仕組み、
市民組織の充実強化等が必要となる。
番組の制作では、例えばケーブルテレビでは、「こんにちは市役所です」の番組
枠を使い、医療福祉をテーマに
番組制作(市民が参加)を行う。コミュニティ
FMでも、医療福祉をテーマに番組制作や番組枠の拡大を進める。
図Ⅱ−2−1 パブリックアクセスの実現プロセス(三方よし研究会)
CATV・FM・
広報誌・HP
ステージ1:市民参加による番組作り・番組への市民参加
・市民と三方よし研究会参加による体制づくり
・市民参加ネットワーク
・市民による番組制作への意識啓発
・医療福祉コンテンツの情報化
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市民参加:パブリックアクセ
スを目指した医療福祉の情
報発信
ステージ2:放送枠の提供と市民参加の番組制作 /番組制作の担い手育成
・番組づくりのノウハウ支援
基盤整備:パブリックアクセ
ス の 条 件 整 備、 市 民 制 作
・パブリックアクセスチャンネル の設定
による発信開始
(コミュニティFMやCATVに放送枠、紙面枠・
・医療福祉情報の自主的発信
ページ枠)
・市民ディレクター、レポーター、カメラマン等の教育
ステージ3:コンテンツ・番組制作する市民メディア育成
へ
■番組のコンテンツイメージ
【医療介護機関関連】
・医療機関・サービスの紹介
・コンビニ医療ここが問題
・看護士の仕事術
【地域連携パス関連】
・クリティカルパスって何
・三大疾病の予防、なった時
・脳梗塞の見分け方
・私はこうして病気を治した
【医療福祉知識関連】
・健康相談、教室
・薬の扱い方
【終の住み処・死生観】
・ホスピスケアって何
・家で終末を迎えるには
・市民目線で見た終の住み処とは
【認知症や住宅改善】
・認知症予防法
・福祉用具の選び方
・住宅改善のコツ
・介護のイロハ
2 コミュニティFMの活動からのモデル化
市民にとって身近な市民活動をテーマとし、パブリックアクセスの進展を図る。
具体的には、図Ⅱ−2−2に示すとおり、FMひがしおうみが展開してきた「
地域
密着番組」をベースに、市民活動の充実と連動させたパブリックアクセスを目指す。
そのためには、行政やFM以外のメディア、市民団体等が連携し、コミュニテ
ィFMの取組を支援するとともに、メディアミックスによるパブリックアクセス
を拡大させ、市民活動が多くの市民に届き、活動の輪を広げていくことが必要と
なる。
図Ⅱ−2−2 パブリックアクセスの実現プロセス(FM)
CATV・FM・
広報誌・HP
ステージ1:コミュニティFMの地域密着番組の制作支援
・体制作りの強化
・取組み成果の PR
・パブリックアクセスの継続的発展の仕組み
36
市民参加の拡大:パブリッ
クアクセスの発展を目指し
た情報発信
ステージ2:地域密着番組のメディアミックス化
・CATV等の協力による映像化支援
・市民活動情報のメディアミックス
他メディアへの波及:メディ
アミックスによる情報発信
・マイノリティ(多言語・多文化)への対応
・市民ディレクター、レポーター、カメラマン等の教育
ステージ3:コンテンツ・番組制作する市民メディア育成
補節
へ
三方よし研究会(東近江地域医療連携ネットワーク研究会)の取組み
1 概要∼医療福祉の充実∼
患者本位の視点に立った医療・保健・福祉・介護の切れ目のないサービスの提供
体制を構築するため、関係機関の機能分担と連携のあり方が検討され、「患者よ
し・機関よし・地域よし」
の三方よしを目指して、平成 19 年度から、毎月1回、
圏域内の病院・診療所・介護施設・公共機関などの関係者が一堂に集まり「
顔の見
える関係づくり」を行っている。圏域内の脳卒中の連携事例や連携パスの共通様式
の検討、その時々に応じた医療、介護に関することをテーマにしている。毎回、
100 名近い方々が参加。
2 地域連携完結型医療(クリティカルパス)
参加メンバーは、医療関係機関、保健関係機関、介護関係機関、行政関係等で、
急性期、回復期、維持期の各医療機関とかかりつけ医とが連携し、カルテをクリ
ティカルパスすることにより、医療の地域連携を強化する(図Ⅱ−2−3)。
図Ⅱ−2−3 クリティカルパス
(カ ル テ の ク リ テ ィ カ ル パ ス )
(ク リ テ ィカル パ ス)
37
3 三方よし研究会の特徴
(1)連携機関によるカルテの共有と追跡
図Ⅱ−2−4のような連携パスの共通様式を研究会で検討し、バージョンアップ
を図っている。図Ⅱ−2−4は脳梗塞時の連携パス例。
図Ⅱ−2−4
地域連携パスの例
(2)三方よし手帳の配布
連携パスの対象となった患者に、全員、三方よし研究会が発行する「三方よし手
帳」(図Ⅱ−2−5)を配布。急性期、回復期、維持期の各医療機関とかかりつけ
医とが連携して医療を行う旨を説明することで、患者とその家族との安心・信頼関
係を築く。
図Ⅱ−2−5 三方よし手帳
38
図Ⅱ−2−6 手引書
※出典:小鳥輝男「
東近江圏域の地域医療連携の取組み∼三方よし研究会∼」H21.12.3
全国保健所長会HPより
(3)地域連携パス手引書の作成と随時改定
三方よし研究会で、ガン、脳梗塞、脳卒中別のパスの手引書(図Ⅱ−2−6)を
作成し、各医療機関等に配布するとともに、随時改定を図る。
(4)通信の発行
三方よし研究会では、研究・会議経過を通信(図Ⅱ−2−7)にとりまとめ、連
携機関に配布し、情報の共有化を図っている。
図Ⅱ−2−7 三方よし通信 ※出典:三方よし研究会ホームページより
(5)情報化可能なコンテンツ
三方よし研究会が、情報発信可能なコンテンツを整理すると、地域連携パスに関
する情報、成果実績、医療機関・介護機関施設・サービス情報、終の住処としての
死生観や生き方に関する情報、認知症や介護の備えや住宅改善等の情報、医療福祉
健康に関する知識等の情報が想定される。これまでの研究会での検討経過や各機関
が有する人的・情報的資源を鑑みると、多様多彩な図Ⅱ−2−8に示すようなコン
テンツが内包されていると考えられる。
39
図Ⅱ−2−8 三方よし研究会のコンテンツ
地域連携パスに関す
る情報、成果実績
医療機関・介護機関
施設・サービス情報
医 療 福 祉 健 康 に関
する知識等の情報
三方よし研究会
終の住処 としての死
生観や生き方に関す
る情報
認 知 症 や 介 護 の備
え や 住 宅 改 善 等の
情報
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