高級賃貸マンションの賃料動向と投資戦略

リアルプラン・マーケットレポート
「新築マンション供給の構成比」と「欧米外国人増加数の構成比」を比
よってバラつきがあります。平均値は15,928円ですが、最小坪賃料は
較すると、面白い現象が顕れています。欧米6ヶ国の外国人が、新たに
9,523円で最大坪賃料は20,701円と2倍強の差が出ています。
移り住みたいと希望する区であれば、その区の新築マンション供給の
賃料が平均値より高い価格競争力のあるもの(グラフ黄色部分)と、平
構成比と外国人増加の構成比を比較したとき、外国人増加構成比の方
均値より低いいわゆる競争力の弱いもの(グラフのブルー部分)とに二
が高くなり、逆に、希望しない地域は低くなると考えられます。
極化しています。
港区、渋谷区に関しては、欧米6ヶ国の外国人登録者数が、
この7年間で
新築マンション供給比と比較して2倍になっています。これは、外人賃
貸のニーズが、やはり港区、渋谷区に根強いという事実を裏付けるも
のだと思われます。
港区では六本木地区を始めとする大規模開発が行なわれ、渋谷区では
賃貸物件の競争力は、
①立地( 利便性、環境 )
②建物・設備 のメンテナンス状況やグレード、機能性
③フロントサ ービス等 の 管理ソフト面
国道246号線沿いの景観がこの間に一変しています。このような街の
一層の整備に伴い、優良外資系企業(国内企業も含めて)が、オフィス
を移転したことが報じられましたが、
これらと軌を一にした傾向が強く
出ていることは興味深いことです。
で差が生じるものと考えます。例えば、立地やサービスソフト面、賃料
が同じようであれば、建物の状態や機能性が良い方にテナントがつき、
また逆に建物やサービス面が同じであれば、立地の良い方にテナント
それでは次に主だった都心区部での平均賃料が近年どう推移してい
がつくのは当然のことでしょう。
るかを見てみましょう。
渋谷区内の賃貸マンションの築年数別賃料分布
高級賃貸マンション、主要5区の平均賃料推移
22,000
平均賃料(円/坪)
20,000
高級賃貸マンションの賃料動向と投資戦略
100
賃貸マンション市場全体の動向
と緩慢です。地価は平成3年のピーク時から下落を続け、下記グラフ
に見るようにここ5年間で見ると商業地で約69、住宅地で約74の水
準まで下落しています。賃料は平成15年には113.7の水準に回復し
ましたが、その後また弱含みで推移しています。
下表は、東京都23区の人口が増加に転じた平成8年から平成15年まで
(平成11年の平均賃料と地価公示を100とした指数化)
を比較したものです。勿論、外国人の増加がすべてこれらマンションの
中の賃貸マンションに向かうとは限りませんが、外国人の賃貸仲介件
数がほぼ比例して増加していることから、相関関係は強いと考えます。
平均賃料
100
108.6
100
100
世田谷区
(B)
(A)
(A)の
(B)の
新築マンション 外 国 人
判定
供給(戸) 増加数(人) 構成比(%)構成比(%)
96.5
区
地価公示(住宅地)
80
地価公示(商業地)
74.3
千 代 田
港
70
69.3
60
H11/8 H12/2 H12/8 H13/2 H13/8
H14/2 H14/8 H15/2 H15/8
H16/2 H16/8
資料:住宅新報社の年2回(2月・8月)の調査結果を加工。
注1)平均賃料は2LDK∼3DKの間取りのデータ。
注2)地価公示は東京圏の住宅地と商業地の双方のデータを表示。
高額賃貸マンションの需要と市場動向
平成3年のバブル崩壊後、東京23区の人口は減少を続けていましたが、
平成8年から増加に転じています。数字で見ると平成7年に約784万人
REAL PLAN NEWS
2005 WINTER NO.79
3,227
151
3.6
2.7
12,867
1,666
14.2
29.6
中
央
10,437
204
11.6
3.6
新
宿
11,385
791
12.6
14.1
文
京
7,817
155
8.7
2.8
渋
谷
10,058
1,299
11.1
23.0
世 田 谷
17,802
771
19.7
13.7
5,991
338
6.6
6.0
目
黒
品
川
10,713
254
11.9
4.5
合
計
90,297
5,629
100.0
100.0
◎
賃 16,000
料
︵
円
/
坪 14,000
︶
平均値
12,000
価格競争力の
ない物件
10,000
10,000
2000年 2001年 2002年 2003年 2004年
8,000
35 30 25 20 15 10 5
0
築年数
※上記のグラフはKen Data Press Vol.17/2004
およびインターネットデータを参考に分析・加工したものです。
注1)2004年は第3四半期のデータ。
注2)上表の数値は最高値を100とし、2004年を指数化したもの。
注3)調査対象は月額賃料30万円、面積30坪以上。
資料:インターネット上で募集中の物件を無作為に40件抽出。抽出対象は月額
賃料(管理費等含まず)40万円以上。
資産組み換えの発想
平成8年∼平成15年までのマンション供給と外国人の増加数
90
3
12,000
94
89
品川区
91
と、欧米6ヶ国の外国人登録者数が、
これらの区でどれだけ増加したか
110
100
は、
25,059人 から 31,696人へ の増加です。
の7年間に、新築マンションが区ごとにどれだけ供給されたかのデータ
113.7
86
新宿区
14,000
年には約30万人と大幅に増加しています。欧米先進6ヶ国のアメリ
カ・イギリス・フランス・ドイツ・イタリア・カナダの登録者数において
90
16,000
する外国人登録者数は、平成7年には約22万人であったのが、平成16
東京圏、賃貸マンション平均賃料と地価公示の推移
120
渋谷区
100
高額賃貸マンションの需要を大きく支えると思われる23区内に居住
賃料は地価動向にも左右されますが、その変化は地価動向に比べる
18,000
100
だった人口は平成16年には約814万人へと増加しました。
価格競争力の
ある物 件
港区
18,000
日本のGDP(国内総生産)成長率は低迷を続けています。賃貸市場は一般経済動向に大きく左右されますが、地価同様、賃貸
市場も二極化、個別化の様相を呈しています。今号では高額賃貸マンションを中心に市場の動向を探ってみることにします。
20,000
2003年の大型物件の新規供給ならびに高額タイプの供給の影響で、
高額賃貸マーケットは全体的には、弱含みで推移しています。ドル安
の懸念等、マーケットに関しては、もうしばらく調整が続くと考えられ
ますが、新規供給の影響が一巡し、外国人登録者数の堅調な推移等、
一部で改善の兆しも見せていると思われます。
渋谷区を例とし、明と暗を分けた物件では逆算すると運用利回りは
2%前後あるいはそれ以上の差となっていると推測されます。年間
2%の差でも、これからの10年間の運用を考えると20%以上もの差
となるわけです。20%もの差が出るならば運用利回りの良い物件
に買換える価値は十分あります。
○
売るべきものは売り、より価格競争力のある物件に買換えることで
勝ち組と負け組
◎
資料:新築マンション供給は不動産経済研究所発表データによる。外国人増加数は東京都の調査による。
注)判定欄で○は(A)の構成比よりも(B)の構成比が大きい場合、◎は2倍以上大きい場合。
収益性等を改善できます。上図からも分かるように買換えの目玉は
新築物件をはじめとする築浅物件だけとは限りません。上図の黄色
一様に不動産が値上がりする時代は終わりました。賃貸マーケットにお
いても同様で、
高い賃料水準を保てる物件は選別された一部なのです。
次表は、渋谷区内で賃貸募集中の物件を抽出して、築年ごとに募集賃料
の範囲にある中古物件も検討する価値があるでしょう。価格や坪単
価が同じであれば競争力のある地域・今後発展性のある地域の物件
を吟味して資産の組み換えを検討してみてはいかがでしょうか。
がどうなっているかを分析したものです。グラフからは、築年数と賃料
は大まかに比例していますが、そのカーブは緩やかです。しかし物件に
(株)エステートプラン 佐藤 哲
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