アドラー心理学について - Hi-HO

2002.8.10
中央第5回 学習会
KAZU
アドラー心理学について
1.ア ドラー(Alfred Adler; 1870∼1937)とは
・オ ースト リア の精神 科医。 フロイ トの ウィー ン精神 分析学 会から 脱会後 ,「人間 を
分割で きないも のとして扱 う」意味 での個人心 理学を構築 。後に「ア ドラー心理 学」
と呼ば れる。
・1902年 ,「夢 判断」 に批判 的記事 が出た 時に, フロイ トを擁 護する 投書。 フロイ ト
が感謝 の葉書を アドラーに 送り,フ ロイトと出 会う。1912年,フロイ トと学説上 の対
立から 離反。神 経症の根拠 として, フロイトは リビドー, アドラーは 劣等感を強 調。
・1912年,個人 心理学会設 立。児童 相談所での オープンカ ウンセリン グ。教師に 寄せ
る期待 も大。教 師は家庭で の有害な 影響を打ち 消すような 訓練を受け なければな らな
い。
・ナ チスの 収容 所に多 くのア ドレリ アン が送ら れ ,「ア ドラー 心理学 はアウ シュビ ッ
ツで一 度滅んだ 」と言われ る。戦後 のアドラー 心理学の発 展は,ルド ルフ・ドラ イカ
ースに 負う。日 本では,精 神科医の 野田俊作が 1982年にシ カゴに留学 ,アドラー 心理
学を学 ぶ。
2.ア ドラー心理 学の育児と教 育
(1)勇気づけ
・アド ラー心理 学は「勇気 づけの心 理学」とも 言える。子 育てにとっ て最も重要 な要
素が「 勇気づけ 」。子 供の中から 勇気がわき 出てくるよ うに働きかけ ること。
・子ど もの目に は,大人は 途方もな く大きく, 驚くほど有 能に見える 。その大人 の前
で,子 どもは先天 的に持ってい る「勇気」 だけに頼っ て自分を支 えている。
・ 勇気 づけ で最 も大 切な のは ,「自 分が 不完 全で ある こと を認 める 勇気 」。自 分に 完
全を求 めると ,ちょっとし た失敗も許せ ず ,失敗 する自分を 嫌いになっ てしまう 。
「失
敗した ってやり直 すチャンスは いくらでも ある」とい うことを教 えたい。
*勇気 とは?
・進 んでリスク を引き受ける 能力
・失 敗,非難, 障害などの外 部要因があ ったとして も,自尊心 と所属感を失 わな
いで いられる態 度
・協 力できる能 力の一部
*勇気 づけは,褒 めることでは ない
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・子 どもをいい 気分にしよう として,お 世辞を言っ たり,もの を与えたりす る
行動 を伴うこと がある。これ は「褒める 」ことで「 勇気づけ」 とは違う。
「褒 める」こと は賞や褒美と 同類 ,「勇気 づけ」は賞 とは無縁。
・「 す ごいね 」,「えら いね」などは よい結果の 時にしか使 えない 。「10 0点
とれ てすごいね 」とは言える が ,「50点 とれてすご いね」とは言 えない。
結 果より も努力 に関心 を向 ければ ,勇気 づけは できる 。「5 0点で 残念だ った け
ど一 生懸命努力 できたことは ,お母さん よかったと 思うよ」
*勇気 づけのヒン ト
・プ ラス面に目 を向けよう。
・結 果ばかりで なく,子ども の進歩,成 長のプロセ スに目を向 けよう。
☆勇気 をくじく例
①4歳 のペニー 。お母さん のお手伝 いをしよう と,冷蔵庫 から玉子を 取り出そう とし
た 。「ダメ よ,ペ ニー, 玉子が 壊れ ちゃう でしょ 。これ はお母 さんが やるわ 。もう 少
し大き くなったら お手伝いして ね」
②3歳 のポール 。雪あそび をするために ,一人で ジャンバー を着ようと していた 。
「こ
っちに いらっし ゃい。ママ がやって あげるわ。 あなたって 本当にのろ まなんだか ら」
*子ど もたちは 自分の力や 能力を発 見しようと 努力する。 その時,大 人は水を差 して
はいけ ない。も し,子ども が間違い を犯したり ,一定の目 標に到達で きなくても ,大
人はそ の子自身を 責めるような 言葉や動作 を決して用 いてはいけ ない 。
「 残 念だけど ,
失敗し ちゃったわ ね 」,「うまくい かなくて,残 念だったわ ね」と言う ようにした い。
行為そ のものと ,行為者 とを切り離 すこと 。失敗は単 なる能力不 足によるもの であり ,
その子 自身の価 値とは何の 関係もな いことを肝 に銘じてお く。失敗し ても自尊心 を傷
つけら れなけれ ば,その子 の中には 勇気が生ま れる。この ,不完全( 未熟)であ るこ
との勇 気は,大 人にも子ど もにも等 しく必要で ある。この 勇気がなけ れば,人は 必ず
挫折す る。
・大人 が行う勇 気づけの作 業。一つ は「子ども の屈辱,過 保護による 挫折を取り 除く
こと 」, もう一つは「 勇気づけの 方法を知る こと」
③5 歳のス タン 。「 ママ, ブラン コに乗 ってい い? 」,「いい わよ, 怪我を するとい け
な いか ら, 手を 添え てい てあ げる わ 」,「気 をつ けて ,ブ ランコ の前 は絶 対通 っち ゃ
いけな いのよ 」,「ママ ,自分でこ いでもいい? 」,「落っこちる かもしれな いわ」
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④10 歳のジョ ージ。家で も学校で も落ち着き がなく,い ろいろなこ とをやって は途
中で投 げ出しが ち。作りか けのブッ クエンドが もう少しで 完成しそう になってい た。
「 素 敵じゃない ,ジョージ 。上手だわ 」
ところ が ,ジョ ージはわっと 泣き出し ,「 こ
んなの 全然ダメだ よ」と言った 。
⑤4歳 のウォー リー。母親 について ,隣の家に 遊びに行っ た。そこに は1歳のパ ティ
がい て,リ ビン グで遊 んでい た 。「 ウォー リー, お利口 にして パティ をいじ めては ダ
メよ」
しばら くすると, パティが 大声で泣き ,額にはく っきりと赤 い跡がつい てい
た 。「あな たはい ったい 何をし たの ?
パ ティを ぶった わね。 どうし てそん な意地 悪
を する の? 」,「 あな たは 本当 にい じめ っ子 なん だか ら。 小さい 子を いじ める なん て
恥ずか しいことよ 。ここでじっ としていな さい」
☆勇気 づけの例
①7 歳のピ ータ ー。模 型を買 いにデ パー トまで 行きた いと思 ってい る 。「今 は忙し い
から 明日 連れ て行 って あげ るね 」,「 いい よ,マ マ, 自転 車で 行っ て来 るよ 」,「で も
ね ,と ても 車の 通り が激 しい から 危険 なの よ 」,「大 丈夫 だよ, ママ 。あ そこ まで み
んな自 転車で行っ ているから」
母は 不安を なだめ ,「わか ったわ 。一人 で買っ てらっ しゃい 」,「ほ ら,マ マ,買っ て
きたよ 」,「 よかったわ ね,一人で 行って来たの ね」
②6 歳のベ ニー 。いつ もセー ターの ボタ ンを掛 け違え ていた 。「ベニ ー,い い考え が
あるわ 。一番下か らやってみた らどう?」
(2)責任感
・「 責任」 とは, 失敗し た時の あり 方では ない。 自分を いつで も必要 とされ ている 時
に応 える勇 気の こと。 人生が 求める 課題 に対し て ,「私 はここ にいま す。自 分のす べ
きこと はします」 という,要請 への応答こ そ「責任」 である。
・誰が 引き受け る課題なの かを考え ることが大 切。子供の 課題なのか ,親の課題 なの
か, 両者に かか わる課 題なの かの三 つが 考えら れる 。「 勉強し なさい 」とい うのは ,
本当 に子供 のた めにな るのか 。「忘 れ物を 届けて あげる 」のは 本当に 子供の ために な
るの か 。「 子供の ため」 という 大義 名分の もと, 最大の 過干渉 ,甘や かしに なって い
る可 能性が ある 。いず れも誰 の課題 かと 言えば ,「子供 自身の 課題」 である 。勉強 し
ないで 試験に落 ちても,弁 当を忘れ ておなかが すいても, それは子供 に影響を与 える
ものだ から。た だし,間違 ってはい けないのは ,子供の課 題だからと いって,何 の援
助もす るなとい うことでは ない。子 供が助けて ほしいと申 し出た時に ,共通の課 題に
なる可 能性がある 。「 それじゃ, どうしたら いいかな? 」と話し合え ばよい。
・失敗 を通して ,子 どもたちは 「 責任 」( 課題 に対して ,自 分はどう応 えればよい か )
を学ぶ ことができ る。
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(3)四つの誤 った目標
・「 必要 以上の注目願 望 」,「権力に対 する反抗 」,「 復讐 」,「無能・無 力さの誇示 」
・対 応とし ては ,「 要求に 屈しない 」,「力比 べのリ ングか ら降り る 」,「子 どもの落 胆
を くみ 取り ,罰 や報 復を やめ る 」,「落 胆を 示さ ず, 子ど もが能 力を 発見 でき る体 験
をさ せる 」・四つ の目標 は,幼 児に だけ顕 著に見 られる 。他の 年齢の 子ども たちは 表
には見 えてこない 。
居場所のなくなった子どもたちの行動
お母さん,見て,見て!!
ボスはオレだ!!
思い知らせてやる!!
どうせ,オレなんか
(4)罪や罰に 替わる「自 然結末と論理 的結末」
①自然 結末;物事 が自然の成り 行きで動く
・何 度もお 弁当 を忘れ るアル フレッ ド。 母親は 次のよ うに宣 言すれ ばよい 。「もう あ
なた のお弁 当に は責任 を持ち ません よ 」。 たとえ ,今後 お弁当 を忘れ ても, 知らん 顔
をして いればよ い。彼が空 腹になろ うとなるま いと母親の 知ったこと ではない。 アル
フレ ッドが 怒っ たら, 次のよ うに言 えば よい 。「 あら, お弁当 を忘れ たのね 」
続い
て ,「これ で懲り たでし ょ」と 余計 なこと を言う と,せ っかく の結末 が罰に 替わる の
で注意 。何より も重要なの は,自分 の問題は自 分で処理し ,大人の決 断に委ねる 必要
はない ことを子ど もに伝えるこ と。
・あま り食事をし ない4歳のア リス 。「 ほらほら ,アリ ス ,き ちんと食べ なさい 」,「 よ
ーし, いい子だ 」など,ひ っきりな しに両親の おだてがな いと気が済 まない。ア リス
は両親 の関心を 常に自分に 引き寄せ たい。親は 子供の食事 に口を出す べきではな い。
食事の 仕方を教 える最も簡 単な方法 は,全てを 彼女の「意 志にまかせ る」こと。 食べ
ないな ら,親は 穏やかな態 度を崩さ ず,注意も やめ,食事 の時間がす んだらさっ さと
片づけ ればよい 。あとは 間食を与え ず ,次 の食事の時 にまた食べ 物を準備すれ ばよい 。
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次の時 も,食べ なくても, 余計な言 葉はかけず ,常に食卓 は明るい雰 囲気を心が けれ
ばよ い 。「 食べた いなら ここに 食事 があり ますよ 。食べ たくな いなら ,おな かがす い
ていな いのね」 ということ が無言の うちに伝わ る。罰やデ ザートをち らつかせて はい
けない 。空腹に よる辛さは ,大人か ら与えられ た苦痛では なく,自ら 食事をしな かっ
たこと による結末 なのである。
②論理 的結末;物 事の結果が必 然的な方向 に流れてい く
・子 どもが 朝起 きずに ,ぐず ぐずす る場 合。母 親は次 のよう に宣言 すれば よい 。「 朝
起き て学校 に行 くのは あなた 自身の 責任 よ」と 目覚ま し時計 を渡せ ばよい 。「私が 起
こさな かったら どうなるか しら?」 と自問する 必要はない 。遅刻をす れば,注意 を受
けると いう結末が 待っている。
・3歳 のキャシ ーはすぐに 表の通り に飛び出し てしまう。 道路で遊ぶ と車にひか れる
のは論 理的結末 だが,この 場合,も ちろん,黙 ってみてい るわけには いかない。 そこ
で, 結末を 演出 する。 飛び出 したら ,断 固とし た態度 で家の 中に連 れて入 る 。「お 庭
で遊び たくない なら,おう ちに入り ましょう。 遊びたくな ったら,ま たお庭に出 よう
ね」
キャシーに 自分の意志を 選択する権 利があるこ とを示して いる。
☆ アド ラー心理学 の育児と教育 に関するキ ー概念の紹 介
・育 児の 行動 面の 目標 は ,「 自立 する こと 」,「 社会 と調 和し て暮ら せる こと 」,心 理
面の目 標は ,「私は能 力がある 」,「人 々は私の仲 間である」
・行動 は信念か ら出てくる ,と考え るので,適 切な行動が 出てくるに は,それを 支え
る適切 な信念が育 っていないと いけない。
・信念 とは ,自己や世 界について の意味づけで あり ,「 ライフス タイル 」と呼ば れる 。
これ は10 歳前 後に形 成され る。ラ イフ スタイ ルを体 験の中 で身に つける 。「性格 」
は変わ りにくい ニュアンス を持つが ,ライフス タイルとし て,それを 一掃したい とい
うねら い。
・ライ フスタイ ルは自分が 決める。 適切な働き かけがあれ ば適切なラ イフスタイ ルを
形成し やすい。
・「 私には 能力が ある」 という 信念 は,自 分の人 生の問 題を自 分の力 で解決 できる と
いう意 味。
・最初 の「仲間 」は母親。 そして, 仲間を拡げ ていく。母 との関係が 仮に致命的 であ
っても 大丈夫。そ れに変わる人 がいればい い。
・アド ラー心理 学の目的論 。問題行 動をやめな いのは,注 目を浴びた いからであ ると
考える 。叱った り,罰した りするこ とは注目し ていること になる。だ から,子ど もは
問題の 行動をやめ るはずがない 。
・行動 の目的は四 つ 。「 注目を引く 」,
「 権 力争い 」,「 復讐 」,
「 無能 力の誇示 」で ある 。
・具体 的な行動 処方として どんなこ とが考えら れるか。愛 情を十分に 受けてこな かっ
た,育 児の仕方 がまちがっ た,とい っても過去 には戻れな いが,未来 なら変える こと
ができ る。罰し ない,説教 しないこ とである。 罰すると子 どもは自分 の能力を疑 うこ
とにな り,居場 所をなくす 。そして ,人は皆, 敵であると 感じるよう になる。自 分の
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居場所 を感じる ことが何よ りも人が 基本的に求 めることで ある。問題 行動に注目 しな
いこと も大切で ある。ただ し,それ だけでは無 視されたと 感じ,かえ って問題行 動は
悪化す る。そこ で,適切な 行動に注 目すること が大切にな る。しかし ,誉めるの では
ない。 誉めるの は,上から 下へと相 手を判断し ,評価する 言葉。勇気 づけの原則 は,
評価で はなく喜 びを共有す ること, 自分の気持 ちを伝える こと。当た り前のこと に,
「あり がとう 」,「うれ しい 」,「たすか った」と伝 えることであ る。
・特 別なこ とを したと きだけ ,「あ りがと う」で はそれ もまた 評価に つなが る。何 か
をした からではな く,ただ ,「存 在」してい ることが喜 びということ を伝えたい 。
・言葉 かけだけで なく ,子ども自 身が自分の 力で人生の 課題に立ち向 かう援助が 必要 。
課 題の 分離 とい う考 え方 が大 切 。「 これ はい った い誰 の課 題な のか 」,こ れに つい て
は ,選択の 結末を最終 的に誰が引 き受けるのか を考えれば わかる 。ただし ,「私 は私 ,
あなた はあなた 」ではない 。そこで ,共同課題 が生まれる 。話し合い が必要にな るこ
ともあ る。共同課 題は,どうし ても自分一 人では解決 できないこ とについてだ け。
・結 末の体 験 。「自 然結末 」,「社 会結末 」を利 用する 。しか し,結 末を罰 に感じる と
いうお それがある 場合は,留意 しなければ ならない。
・論理 的結末( 必然的結末 )は権力 争いの中で は,罰にと られる。注 意を引く行 動に
対して は効果的 。例えば, 靴をいつ までも左右 間違える子 どもの場合 。その時に は,
黙って いればい い。不都合 を感じる のは自分。 自然結末は 親の特別な 働きかけを 受け
ずに生 じた現実 の苦悩であ り,効果 は100% 。忘れ物を して,学校 で注意され る,
お弁当 を忘れ,お なかがすく, 鍵を忘れ, 玄関に入れ ないなど。
・「 共同体 感覚」 とは, 人間共 同体 への積 極的な 所属と 参加の 感覚の こと。 健全な 人
は,自 分の利害 だけではな く,いつ でも相手の 利害をも考 慮して行動 する。相手 を変
える ことよ りも ,自分 が変わ ること を考 えて行 動する 。「我々 のため に私が できる こ
とは何 か」と考え られる人を「 共同体感覚 がある」人 である。
・実存 主義と現 象学。人生 の責任は 全て個人に ある。人は 現実を,そ の人が解釈 して
いるよ うに見てい るだけである 。現実だと 信じている ものに過ぎ ない。
・何故 ?ではなく ,どうすれば ?に焦点を 当てた対応 を
・お互 いが勝つた めには,Give & Takeが必要。
・論 理的結 末を 越えて 。「論理 的結 末」は 多くの 場合, 罰に誤 用して しまう 。ベル の
音が聞 こえずに 遅れた二人 の生徒に 対して,ブ レーンスト ーミングで ,話し合わ せて
みると 次のような 意見が出た。
<論理 的結末>黒 板に自分の名 前を書かせ る ,遅 れた分居残 り ,休み時間を取 り上げ ,
生徒を 怒鳴りつけ る
<解決 策>みん なでベルだ と叫ぶ, ベルの近く で遊ぶ,ベ ルの音を大 きくする, 教室
にはい るとき,他 の生徒にも注 意を向ける
つま り,代償を 追わせるのか ,援助する のか,とい うように視 点が違う。
・「 解 決の4 R」と は ,;related,respectful,reasonable,revealed,関係 がある, 尊
敬の念 を持ってい る,理にかな う,事前に 知らせると いうこと。
・ク ラス会 議 。「こ のこと はあな たにと ってど のよう に問題 なので すか 」,「このこ と
はあな たにとって まだ問題です か」
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・勇気 づけとは ,子どもた ちに「今 のままでい いんだよ」 というメッ セージを伝 える
ような 愛情表現の 一つ。
・恥 をかか せない ために 。「それ はどの ように この人 の役に 立つの か 」,「 その提案 が
自 分に 対す るも のだ った らど んな 感じ がす るか 」,「 それ は恥を かか せる もの か, 尊
敬 の念 に満 ちた もの か 」,「そ れは 過去 の行 動を 罰す るも のか, それ とも 未来 の行 動
のため に変わる ことを勇気 づけるも のか」
と もに考えて ,不適切な らリストか ら外
す。
3.ア ドラー心理 学を支える思 想
・「 楽観主 義」∼ 現実を ありの まま に見て ,そこ から出 発する 。どん なこと が起こ っ
ても何 とかしよ うと思いた い。何と かなるかど うかはわか らないけど ,何ともな らな
いと考 えること はない,と にかく, できること をやろうと 思ってでき ることをす ると
いう考 え方。似 た言葉に「 楽天主義 」がある。 これは,何 が起こって も大丈夫, 何が
起こっ ても悪い ことは起こ らない, 失敗するは ずがない, という考え 方。何とか なる
と 思う から 結局 何も しな い。 例:「 二匹 の蛙 の話 」。 二匹 の蛙が ミル クの 入っ た壺 の
縁で跳 ねて遊ん でいた。突 然,二匹 はミルク壺 に落ちてし まった。一 匹は,ああ もう
ダメだ ,と叫ん で諦めて死 んでしま った。もう 一匹は,何 とかしよう と思っても がい
て一生 懸命泳いだ 。すると 足の下が固 まりはじめ ,ミルク がチーズに なった 。そして ,
ピョン とその上に 乗って外に飛 び出せた。 私たちがで きるのはそ ういうこと。
・「 共同体 感覚」 ∼自分 のこと だけ でなく ,他者 のこと も考え られる ,他者 は私を 支
え,私 も他者と のつながり の中で他 者に貢献で きていると 感じられる こと。健康 なパ
ーソ ナリテ ィの 重要な 条件と して, この 「共同 体感覚 」があ る。例 ;「 赤信 号で止 ま
らな いとい けな いのは なぜ? 」
ア メリ カ人の 70% は「警 官に捕 まるか ら 」,2 5
%は 「自分 が怪 我をす るから 」,5 %は「 自分も 怪我を するだ ろうが ,他人 の人に も
被害を 及ぼすか もしれない から」と 答えたとい う。他の人 のことを考 えられるの が,
健全な パーソナリ ティである。
・「 人は客 観的な 世界に 住んで いる のでは なく, 自分で 意味づ けした 世界に 住んで い
る。人 生の意味は 自分で決める 。」
・「 私は他 の人の 期待を 満たす ため に生き ている のでは ない。 他の人 もまた ,私の 期
待を満 たすために 生きているの ではない」
<参考 ・引用文献 >
・アド ラー心理学 入門,岸見一 郎,KKベス トセラーズ ,1999
・クラ ス会議で 子どもが変 わる,ジ ェーン・ネ ルセン,リ ン・ロット ,ステファ ン・
グレン ,コスモラ イブラリー, 2000
・クラ スはよみが える,野田俊 作・萩昌子 ,創元社, 1989
・勇気 づけて躾る ,ルドルフ・ ドライカー ス,ビッキ ・ソルツ, 一光社,1993
・学級 再生のコツ ,諸富祥彦, 学研,2000
・困っ た大人にし ない子育て2 0の知恵, 星一郎,金 子書房,2001
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