浄化槽の開発動向と歴史

【技術資料】
浄化槽の開発動向と歴史
一般社団法人浄化槽システム協会
技術推進部会編
================
目
次 ================
1.はじめに
2.浄化槽の黎明期
3.浄化槽に関する基準の全国一律化
4.構造基準の全面改正と浄化槽法の制定
5.浄化槽構造基準の一部改正(小型合併処理浄化槽の誕生)
6.単独処理浄化槽の廃止と高度処理浄化槽の開発促進
7.処理性能の高度化と低炭素化
8.これからの浄化槽
9.おわりに
=======================================
1.はじめに
今回、
「浄化槽の開発動向と歴史」と題し、浄化槽技術の変遷についてまとめた。現在の浄
化槽に至るまでの経緯を再認識し、これからの浄化槽についても考える。
そもそも日本の浄化槽は、西洋の水洗式トイレの普及に対応すべく、大正 9 年の『市街地
建築物法施行規則』により、地方長官が許可した汚物処理槽の処理水が、公共用水域へ放流
できるようになったことが普及の始まりとされている。高度経済成長期を迎えると住宅需要
が急速に進み、下水道普及の遅れを補うように単独処理浄化槽が大量生産され、衛生的な水
洗トイレの普及が実現されてきた。その後、生活排水による汚濁負荷がクローズアップされ
る中で、公共用水域の水質保全を目的に下水道整備が積極的に進められ下水道地域の生活排
水は処理されたが、下水道が整備されない地域の生活雑排水の垂れ流しは黙認され続けてき
た。
そこで、下水道未普及地域の生活排水対策として合併処理浄化槽の研究開発が進められた。
現在では、合併処理浄化槽は下水道と同様に水環境の保全を担うものとして認知されている。
ここに至るまでには、多くの研究者による努力と合併処理浄化槽の必要性を啓発し続けた浄
化槽関係者の熱意、そして、補助金政策などの支援を取り入れた社会的期待、そのような想
いをも振り返りながら浄化槽の歴史を記す。
本文は、浄化槽技術に関連する法令や基準、浄化槽業界の動向などについて、年号を追っ
て記述した。なお、関連する出来事をまとめて記述した部分については、年号が前後する部
分もある。そこで、全体の流れを把握できるよう、表 1-1 に概略的な年表を示し本文の参照
項を示した。また、図 1-1 に構造基準の改正履歴と浄化槽技術の変遷について年表形式でま
とめ、図 1-2 に全国の浄化槽設置基数の推移についてまとめた。
-76-
表 1-1 浄化槽の年表
和暦 西暦
事項
T9 1920 ・市街地建築物法施行規則、汚物掃除法施行規則の改正⇒浄化槽普及の原点
(地方長官が認めた汚物処理槽で処理されたものは公共用水域に放流してよい)
参照項
2.2
T10
S3
S19
S25
1921
1928
1944
1950
・水槽便所取締規則の制定(警視庁令、東京市)
・全国の汚物処理槽の設置基数が5,148基と発表(内務省衛生局)
・建築敷地内衛生施設の臨時日本標準規格:"浄化槽"の表現を初めて使用し規格制定
・建築基準法の制定(地方条例を統合し、全国共通の基準化を図る)
◎屎尿浄化槽の構造基準を新たに制定⇒基準型、特殊型
2.3
S35
S37
S40
S41
S42
S44
1960
1962
1965
1966
1967
1969
◎浄化槽の容量算定基準(JIS A 3302-1960)を規定
・最初のFRP製浄化槽が誕生(大管式浄化槽-㈱大管工業)
◎建築物の用途別による屎尿浄化槽の処理対象人員算定基準(JIS A 3302-1965)
・建設大臣認定型浄化槽の第一号(ハイバツキ-日立化成工業㈱)
・公害対策基本法の制定
◎建築基準法施行令の一部改正(101人以上は合併処理浄化槽を設置)
◎屎尿浄化槽の構造基準を告示により制定(昭和44年建設省告示第1726号)
◎屎尿浄化槽の性能評定制度(財団法人日本建築センター)
◎建築物の用途別による屎尿浄化槽の処理対象人員算定基準(JIS A 3302-1969)
2.6
2.7
2.4
2.5
2.5
2.8
3.1
3.2
3.3
3.5
S45 1970 ・プラスチック浄化槽工業会が発足
・水質汚濁防止法の制定(501人以上の浄化槽は特定施設とし規制対象)
S47
S50
S54
S55
1972
1975
1979
1980
・日本浄化槽工業会が発足
・建築基準法施行令の一部改正(501人以上をBOD20mg/L以下に)
・プラスチック屎尿浄化槽構成部品規格(JIS A 4101-1979)
◎建築基準法施行令の改正(51人以上を合併処理に)
◎屎尿浄化槽の構造基準改正(昭和55年告示第1292号)
3.6
4.1
4.1
S58 1983 ◎浄化槽法の制定
◎型式認定制度が始まる
・浄化槽工業会が設立(日本浄化槽工業会とプラスチック浄化槽工業会が解散、一本化)
4.2
4.2
S59 1984 ・水質汚濁防止法の特別措置として湖沼水質保全特別措置法(法律第61号)が制定
S62 1987 ◎国庫補助制度創設
・(社)型式浄化槽協会が設立
S63 1988 ◎屎尿浄化槽の構造基準の一部改正(5~50人の合併処理浄化槽の構造追加)
◎建築物の用途別による屎尿浄化槽の処理対象人員算定基準(JIS A 3302-1988)
5.1
5.1
H1
H3
1989 ・小規模合併処理浄化槽および窒素除去などの高度処理浄化槽の研究開発が始まる
1991 ◎屎尿浄化槽の構造基準の一部改正(告示第6の主要な処理方式を51人以上に引き下げ)
・浄化槽規格の制定((社)型式浄化槽協会)
5.2
5.1
5.3
H5
1993 ◎全浄協登録制度開始
・全浄協登録浄化槽で第1号(クボタ浄化槽HS型)
1994 ・窒素リン同時除去型で最初の型式認定(フジクリーンCRX型)
1995 ・単独処理浄化槽廃止に向けた浄化槽製造業界の動き
◎屎尿浄化槽の構造基準の一部改正(窒素除去型など高度処理浄化槽の構造を追加)
5.1
H6
H7
H8
1996 ・浄化槽製造業者3団体が合併処理浄化槽普及宣言(単独から合併への転換)
・農業集落排水設備としてFRP製JARUS-S96型の許認可を取得
・2t以下の車両を対象とした支柱レス施工を可能とした浄化槽が誕生
5.1
5.5
5.2
6.1
6.2
6.4
6.4
H10 1998 ◎建築基準法の一部を改正する法律(法律第100号)(性能規定化、建築確認検査の民間開放、型式適
合認定制度、製造者認証制度、構造基準が構造方法に)
6.3
H11 1999 ・小型合併処理浄化槽で初の膜処理(クボタKM型)
H12 2000 ◎構造方法(構造基準)の改正(単独処理浄化槽の構造を削除)
◎浄化槽法改正(浄化槽の定義から単独処理浄化槽を削除)
◎屎尿浄化槽の処理対象人員算定方法の改正(JIS A 3302-2000)
◎合併処理浄化槽の総合処理(厚生省環境整備課長通知、建設省建築指導課長通知)
・ディスポーザ対応浄化槽を開発
H13 2001 ・単独処理浄化槽の出荷がゼロになる
・省庁再編で、浄化槽行政は旧厚生省から環境省へ移管
H14 2002 ・(社)型式浄化槽協会と浄化槽工業会が統合し、(社)浄化槽システム協会に
H17 2005 ・浄化槽法の改正(水質保全の目的を明確化、水質検査時期の適正化、監督規定強化)
H18 2006 ◎構造方法の一部改正(告示第2,第3の削除、浄化槽はBOD20mg/L以下に)
◎単独処理浄化槽の撤去費用を対象とした助成制度を創設
6.2
6.1
6.1
6.5
6.5
6.4
6.1
H22
H23
H24
H25
7.3
7.5
7.4
7.4
2010
2011
2012
2013
◎低炭素社会対応型浄化槽整備推進事業の実施(助成率1/2)
・東日本大震災発生、応急仮設住宅向け浄化槽1,748基を速やかに供給
◎浄化槽のエコマーク認定の規格化
・浄化槽で初のエコマーク認証(ダイエー浄化槽FCE型、ダイキ浄化槽XE型)
・一般社団法人 浄化槽システム協会に改称(旧(社)浄化槽システム協会
※表中の◎印は、浄化槽の構造や技術に大きく影響した出来事を示す。
-77-
6.4
7.1
7.1
7.2
和暦
西暦
T9
1920
単独処理浄化槽
合併処理浄化槽
水洗化需要に個別対応
専門家により汚物処理槽が研究
考案された
腐敗槽+散水濾床 等
S15
1940
建築敷地内衛生施設の臨時日本標準規格を制定(1944)
屎尿浄化槽の構造基準が新たに制定(1950)
S35
基準型(構造基準)
多室型腐敗室+散水濾床
1960
特殊型(特定行政庁の認定)
変形二階タンク+平面酸化
等が多く、全国で200種以上
S40
1965
S45
1970
S50
1975
S55
1980
S60
1985
H2
1990
H7
1995
構造基準を告示により制定 告示第1726号(1969)【旧構造基準】
【旧構造基準】
腐敗タンク
長時間ばっ気
全ばっ気型
分離ばっ気型
高度経済成長期に
FRP製浄化槽が
爆発的に普及。
構造基準の一部改正 (1975)
501人~をBOD20以下
水濁法に対応
構造基準の改正 告示第1292号(1980)【新構造基準】
【新構造基準】
分離接触ばっ気
分離ばっ気
散水濾床
2000
H17
2005
H22
2010
生活排水による汚
濁負荷量が問題に、
合併処理が必要と
の認識が高まる。
構造基準の一部改正 (1988)
浄化槽製造業者によって、高度処理化に向け
優れた処理方式が研究開発され始めた。
【個別認定、性能評定、大臣認定】
【小型合併を追加】
高度処理化→窒素除去、リン除去、高度BOD、
5~50人
分離接触ばっ気
コンパクト化 等
【処理方式の例】
嫌気濾床接触ばっ気
嫌気好気循環、回分式、回遊式、膜処理、間欠ばっ気、
生物濾過、担体流動、自動逆洗、
全面ばっ気、流量調整、ピークカット
構造基準の一部改正 (1995)
凝集剤添加、鉄電解、
等
【窒素除去追加】
脱窒濾床接触ばっ気
構造方法の改正 (2000)
単独処理浄化槽を削除
H12
【旧構造基準】
101人~
散水濾床
高速散水濾床
散水濾床
長時間ばっ気
標準活性汚泥
循環水路ばっ気
分注ばっ気
汚泥再ばっ気
標準散水濾床
既設単独処理浄化槽を
合併処理浄化槽へ転換
することが大きな課題。
【低炭素社会対
応型】
ブロワ消費電力
【性能評価型】
建築基準法の一部を改正する法律により、
性能規定化、確認検査の民間開放、型式
適合認定制度が開始。
【浄化槽の技術開発が更に進む】
ディスポーザ対応型の開発
窒素除去型の型式が増加
単独転換向け仕様の追求
低炭素化向け仕様の強化
【処理方式の例】
前ばっ気、汚泥消化、好気ろ床、
緩担体流動、移動床濾過、
接触ろ床 等
性能評価型が出荷数
の9割を超える。
(2005)
構造方法の一部改正 (2006)
(浄化槽が全て20mg/L以下の性能に)
エコマーク基準
(2012)
H27
2015
図 1-1 構造基準の改正履歴と浄化槽技術の変遷
-78-
【新構造基準】
51人~
回転板接触
接触ばっ気
散水濾床
長時間ばっ気
標準活性汚泥
構造基準の一部
改正 (1991)
51人~BOD20以
下対応
【高度処理追
加】
第7、第8
BOD、COD、SS
第9、第10、第
11
窒素、リン
【BOD20以下に
統一】
第2、第3削除
(万基)
0
200
(S36) 1961
400
600
800
1,000
1,200
1,400
浄化槽の容量算定基準(JIS A 3302-1960)
(S37) 1962
最初のFRP製浄化槽が誕生(大管式浄化槽-大管工業)
(S38) 1963
(S39) 1964
1984年以前:
合併は極めて少なく単独に含め集計
1985年以降:
合併(性能評価型)は2002年から集計、それ以前は合併
(新構造基準)に含め集計
(S40) 1965
(S41) 1966
(S42) 1967
旧構造基準を制定 告示第1726号
(101人以上に合併処理を規格化)
(S43) 1968
(S44) 1969
(S45) 1970
(S46) 1971
(S47) 1972
(S48) 1973
(S49) 1974
建築基準法施行令の一部改正(501人以上をBOD20以下に)
(S50) 1975
(S51) 1976
(S52) 1977
プラスチック屎尿浄化槽構成部品規格(JIS A 4101-1979)
(S53) 1978
(S54) 1979
(S55) 1980
(S56) 1981
24
416
(S57) 1982
新構造基準に改正 告示1292号
(51人以上を合併処理に)
(S58) 1983
浄化槽法を制定
(S59) 1984
浄化槽の出荷台数49万基/年超え
(S60) 1985
(S61) 1986
構造基準の一部改正(5~50人の合併処理の構造を追加)、
処理対象人算定基準(JIS A 3302-1988)
(S62) 1987
(S63) 1988
(H1) 1989
窒素除去型で初の型式認定(フジクリーンLR型)
(H2) 1990
353
(H3) 1991
15
285
全浄協登録浄化槽第1号(クボタHS型)
(H4) 1992
窒素リン同時除去型(フジクリーンCRX型)
(H5) 1993
構造基準の一部改正(窒素除去など高度処理
の構造を追加)
(H6) 1994
(H7) 1995
(H8) 1996
建築基準法の一部を改正する法律(性能
規定化、確認検査の民間開放、型式適
合認定制度)
(H9) 1997
(H10) 1998
(H11) 1999
(H12) 2000
475
259
(H13) 2001
134
(H14) 2002
構造方法の改正浄化槽法の改正
(単独廃止)
処理対象人員算定基準(JIS A 33022000)(住宅5,7人)
(H15) 2003
(H16) 2004
(H17) 2005
単独転換に助成制度創設
(H18) 2006
(H19) 2007
(H20) 2008
(H21) 2009
(H22) 2010
(H23) 2011
145
372
142
154
低炭素社会対応型浄化槽整備推進事業
の実施(助成率1/2)
(H24) 2012
浄化槽のエコマーク認定の規格化
(H25) 2013
(H26) 2014
(H27) 2015
110
単独(旧構造基準)
327
2
単独(新構造基準)
129
202
合併(旧構造基準)
合併(新構造基準)
図 1-2 浄化槽設置基数の推移と主な出来事
-79-
合併(性能評価型)
2.浄化槽の黎明期
2.1 ヨーロッパと日本のし尿処理の違い
“衣食住”は日常生活を送る上での生活の基礎とされているが、し尿の処理も“食”と
密接した重要なテーマである。し尿の処理方法は歴史的に見ると、その地域の農業の影響
を受けていると考えられる。
ヨーロッパは麦作農業が中心であったが、人間のし尿は肥料として用いず、馬などの家
畜のし尿を用いることが多かった。14 世紀のロンドンブリッジ上には、多数の有料便所が
林立し、排泄物は下の河川水中へ直行という状況であった。1347 年のペストの流行を契機
にそれらは廃止されたが、その後、ヨーロッパの都市では住宅の裏側の屋外に非常に大き
な便槽を持った共同便所を設けたり、街路に散乱した汚物を、夜間に清掃人夫が下水溝や
小川に落とし込むなど不衛生な処分が続き、悪臭や伝染病といった問題に悩まされていた。
19 世紀になると、都市人口の増加によってし尿処理に困難をきたし、下水道の整備に活
路をみいだしたが、当時は終末処理という概念は無く、河川へ押し流した結果、河川の汚
濁によるひどい悪臭に悩まされることとなった。
一方、稲作農業中心の日本ではし尿は貴重な肥料であり、鎌倉時代から本格的にし尿の
農肥としての利用が行われていた。例えば、農家の子供たちは街道の旅人の便を自分たち
の畑に持っていく習慣があったため、都市近郊が清潔に保たれていた。
1649 年(慶安二年)に発せられた「慶安御触書」は、農民の心構えについて触れていて、
「肥料を貯えよ」という項では「せっちんを広く作り、雨が降っても中に水が入らないよ
うにし、夫婦だけで馬を持っていないものは庭に三尺に二間ほどの穴を掘って、その中へ
ごみ等をはきため、また、道の芝生を刈りとって入れ、台所などの排水を流しいれて、肥
料を作りだすように」というきわめて具体的な指導がされている。
明治に入ると西洋建築の普及、文化の進化により水洗便所を設けた建築物が増えてきた。
汚水は当時の掃除法の規定によって汚水溜を設け、ここに貯えて随時汲み取り、運搬処分
していたが、その汚水量が多いためほとんど実行不可能でかえって不衛生な結果をきたし
ていた。
2.2 汚物処理槽の登場
1920(大正 9)年、
『市街地建築物法施行規則』
『汚物掃除法』施行規則が改正され、地方
長官が認めた“汚物処理槽”を設け処理されたものは公共の溝渠、下水道、河川など公共
の水域に放流してよいとされた。
これに伴い専門家によっていろいろの汚物処理槽が研究考案された。住宅用では、遡る
こと 1914(大正 3)年に西原脩三が考案・設計した、原宿の外交官、伊庭邸に設置したも
のが我が国で最初の汚物処理槽とされており、これは当時ドイツにおいてセプティックタ
ンクと砕石濾床を用いた酸化槽を組み合わせた方式にならって考案されたものである。
2.3 東京市に構造基準が初めて登場
1921(大正 10)年、警視庁衛生部局により『水槽便所取締規則』が制定された。これは
届出, 構造, 法定検査,維持管理基準を抱合した内容で、今日の構造基準に相当するもので
あった。水槽便所とは自家用の汚物処理槽をもった便所のことで、構造は腐敗槽に二次処
理装置として散水ろ床を組み合わせたものであった(図 2-1)
。
各都道府県も相次いで同様の取締規則を設け、以降、本格的な水槽便所が設置された。
-80-
図 2-1 大正 10 年ごろの代表的な水槽便所の構造図
2.4 『浄化槽』の誕生
1944(昭和 19)年、技術院において『建築敷地内衛生施設の臨時日本標準(臨時日本標
準規格 586 号類別 A)
』がつくられたが、その中で「汚物浄化槽」の標準が定められた。そ
れまでは汚物処理槽と呼ばれていたが、ここに初めて「浄化槽」という言葉が使われ、そ
の定義として、
「水を使用してし尿を浄化放流する施設」と称した。浄化槽の内容としては
以下であり、大正 10 年の警視庁令以来一歩前進した。
1)腐敗槽は沈殿分離槽と予備ろ過槽で構成し、固形物を完全に分離する構造である。
2)散水ろ床槽の構造が規格化される。
3)放流先のない場合に地下浸透処理が可能となる。
2.5 浄化槽の構造基準制定
1950(昭和 25)年、市街地建築物法に代わって建築基準法が制定公布され、屎尿浄化槽
の構造基準が新たに定められた(建築基準法施行令第 32 条)。
浄化槽には「基準型」と「特殊型」があり、
「基準型」と呼ばれるものは、多室型腐敗槽
と散水ろ床、消毒槽を組み合わせた型式であった(図 2-2)
。基準型はろ床の維持管理が難
しい、放流ポンプが必要、建設費が割高である等の欠点があった。
A:沈殿分離槽
B:予備ろ過槽
C:酸化槽
D:消毒槽
E:薬液槽
図 2-2 「基準型」浄化槽の構造例
一方、
「特殊型」と呼ばれるものは「基準型」の欠点を補う名目で考案された処理方式で、
それぞれ特定行政庁の認定を得て実施され、全国で 200 種以上に及んだ。
「特殊型」の腐敗
槽の構造は、コンクリート二次製品(PC)製で変型二階タンクとみなされる構造が最も多
く、二次処理装置はほとんど例外なく平面酸化方式を採用されていた(図 2-3)
。
これら数多い特殊型については、各特定行政庁の取扱いにかなりの差異がみられ、全国
的な行政水準が不均衡となっているような問題が生じてきた。
-81-
図 2-3 「特殊型」浄化槽の構造例
2.6 浄化槽の容量および人員算定の JIS 規格化
1960(昭和 35)年、
『浄化槽の容量算定基準(日本工業規格 JIS A 3302-1960)』が制定
された(図 2-4)
。この背景には、社会情勢の落ち着きとともに、放流水による苦情が増加
したことがあり、建設省(現国土交通省)は 1959(昭和 34)年から関係者による委員会を
設け、望ましい構造基準のあり方を諮問した。委員会の答申は最低限の基準を定める建築
基準法には取り入れられるに至らずJIS規格として規定された。
以降、浄化槽の容量を使用人数で呼称していたものを、建築物の大きさや用途などから
算定して実際の容量で表現することとなった。
処理方式は一種類(腐敗そう+酸化そう)のみであった。また、現行 JIS(JIS A 3302-2000)
が処理対象人員を規定しているのに対し、当時は処理槽の容量を規定していた。
-82-
日本工業規格 し尿浄化そうの容量算定基準 JIS A 3302-1960
1.適用範囲 この規格は、し尿浄化そうの容量算定基準について規定する。
2.し尿浄化そうの腐敗そうの容量はつぎのとおりとする。
3
(1)し尿浄化槽の腐敗そうの基準容量は、5人以下の場合は1.5m 以上、
5人をこえる場合は1人を増すごとに0.1m3以上を加える。
(2)建築物の腐敗そうの容量は建築物の用途に従ってつぎの式によって求める。
3
3
V(m )=1.5m3+(n-5)×0.1m ×α
ここに V: 腐敗そうの容量
n: 算定延人員(付表2より求める)
α : 建築用途別増減率(付表1より求める)
付表1 用途別容量増減率表
用途別増減率
建築用途
1/1
住宅
1/1
共同住宅
1/1
下宿・寄宿舎
(3)酸化そうの容量は、腐敗そうの容量の1/2以上とする。
酸化そうには、予備ろ過そうを含める。
500人を超える場合は、こえた分に対して1人を増すごとに0.075m3としてもよい。
3.し尿浄化そうの建築用途別 人員算定基準は、付表2のとおりとする。
付表2 算定床面積
単位床面積当り算定人員
建築用途
2
住宅
1m 当り 0.16人
共同住宅
1m2当り 0.16人
居室の床面積
下宿
1m2当り 0.2 人
2
寄宿舎
1m 当り 0.2 人
図 2-4 屎尿浄化槽の容量算定基準(JIS A 3302-1960 より住宅用途部分を抜粋)
2.7 FRP 製浄化槽の登場
これまでの浄化槽はコンクリート製であったが 1961(昭和 36)年、㈱大管工業より FRP
(ガラス繊維強化プラスチック)で成形された浄化槽が初めて発売された(図 2-5)。以降、
工場で品質管理を行い生産する浄化槽が主流となった。
図 2-5 腐敗タンク方式(5 人槽)の構造
-83-
2.8 大臣認定浄化槽の登場
技術の進歩によりメーカー独自の処理方式の浄化槽が開発され、建設大臣認定型浄化槽
として発売された。建設大臣認定型浄化槽の第一号は 1966(昭和 41)年、日立化成工業(株)
の日立浄化そう“ハイバツキ”
(処理方式;好気性処理全酸化方式)で、建築基準法第 38
条(詳細は3.2参照)の規定に基づき、建築基準法施行令第 32 条の規定によるものと同
等以上の効力があるとして認定された。
図 2-6 建設大臣認定浄化槽第一号の構造
3. 浄化槽に関する基準の全国一律化
国民の生活水準の高まりと共に水洗便所に対する要求が大きくなる中、単独処理浄化槽の
市場は急速に拡大した。同時に、多くのメーカーが参入して多様な構造・容量の製品が開発
され普及した。当時は、基準型以外は特定行政庁が性能試験の結果を元に個別に認定を行う
ため、同一製品であっても特定行政庁によって異なった判断が生じる場合があった。また、
従来の構造基準では評価できない活性汚泥方式が増え、これについては建設大臣(現:国土交
通大臣)が個別に認定を行うなど、必ずしも合理的な制度とは言えない状況にあった。
3.1 建築基準法施行令の一部改正
このような背景から制度の合理化を図るため、1969 (昭和 44) 年に建築基準法施行令の
一部改正が行われた(表 3-1)。これにより、浄化槽は建設大臣(現:国土交通大臣)が指定す
る構造としなければならなくなり、同年 5 月 1 日付で、その構造を定めた『屎尿浄化槽の構造
基準(昭和 44 年建設省告示第 1726 号)』が制定された。
-84-
表 3-1 建築基準法施行令一部改正の内容(1969 年1月 23 日公布、5 月 1 日施行)
(水洗便所の屎尿浄化槽)
第 32 条 法第 31 条第 2 項に規定する屎尿浄化槽は、次の表に掲げる区域尾及び処理対象人員の区
分に応じ、建設大臣が、通常の使用状態において、同表に定める性能を有し、かつ、衛
生上支障がないと認めて指定する構造としなければならない。
し尿浄化槽を設ける区域
処理対象人員
(単位 人)
特定行政庁が衛生上特に支障があ
ると認めて規則で指定する区域
性能
生物化学的酸素要求量
の除去率
(単位 %)
し尿浄化槽からの放流水
の生物化学的酸素要求量
(単位 mg/L)
65 以上
90 以下
70 以上
85 以上
60 以下
30 以下
55 以上
120 以下
65 以上
90 以下
70 以上
85 以上
60 以下
30 以下
100 以下
101 以上
500 以下
500 以上
特定行政庁が衛生上特に支障がな
いと認めて規則で指定する区域
その他の区域
500 以下
501 以上
2,000 以下
2,001 以上
3.2 昭和 44 年建設省告示第 1726 号について
本告示では、単独処理浄化槽に加えて水環境保全の観点から、はじめて合併処理浄化槽
の構造が基準化された。概要を表 3-2 に示す。これより後、製品開発は告示第1から第3
による処理方式が主流となった。
表 3-2 昭和 44 年建設省告示第 1726 号の概要
・単独処理の浄化槽(告示第1)
腐敗タンク方式 長時間ばっ気方式 一般構造
・合併処理浄化槽 1(告示第2)
散水濾床方式 高速散水濾床方式 長時間ばっ気方式 循環水路ばっ気方式
・合併処理浄化槽 2(告示第3)
長時間ばっ気方式 標準活性汚泥方式 分柱ばっ気方式 汚泥再ばっ気方式
循環水路ばっ気方式
・沈殿放流の浄化槽(告示第4)
・地下浸透処理の浄化槽(告示第5)
・その他の浄化槽(告示第6)
なお、その他の浄化槽(告示第6)は、表 3-3 の内容で厳格な審査にて認められたもの
とされた。
表 3-3 その他の浄化槽(告示第6)
・告示の第1から第5に示された構造基準を満足するもの又は構造基準を満たしたうえ、さら
に構造の一部または全部に改良を加えたもの。
・現行の構造基準には該当しないが、それに代替する構造によって施行令に示された性能基準
を十分確実に実現することが明らかなもの。
また、1975(昭和 50)年には水質強化を図るため、処理対象人員 501 人以上の合併処理
浄化槽について、BOD20mg/L 以下の構造基準が定められた。
-85-
3.3 浄化槽の性能評定について
建築基準法施行令の一部改正、昭和 44 年建設省告示第 1726 号の施行に加え、財団法人
日本建築センター(現:一般財団法人日本建築センター)が受け皿となり実施した浄化槽
の性能評定制度により、浄化槽行政の円滑な推進が図られるようになった。
性能評定は、設計、製造、販売体制、施工体制、維持管理体制の全てを満足することが
前提であり、特に設計については「屎尿浄化槽性能評定委員会」に提出された書類に基づ
いて、浄化槽が所期の機能を果たすかを、製造、施工上の余裕(安全率)等を含めて審査
された。
また、当時 FRP 製浄化槽が急速に普及していたことから、浄化槽の槽本体材質強度につ
いて専門に審査を行う「屎尿浄化槽性能評定委員会材質部会」が設置された。
3.4 性能評定シート
性能評定で認められた浄化槽について、設計・販売・施工・維持管理の参考に資する目
的で「屎尿浄化槽性能評定シート」が(財)日本建築センター(現:一般財団法人日本建
築センター)の募集により、作成されるようになった。
性能評定シートは、建築基準法施行令第 32 条に基づく昭和 44 年建設省告示第 1726 号の
浄化槽の構造基準に該当または、同告示第 6 の規定による建設大臣の認定を受けた浄化槽
を製造・販売し、その製造・販売・施工に関して責任と能力を持ち得る者が作成するとさ
れた。
図 3-1 に示す屎尿浄化槽性能評定シート(例)には、浄化槽のポイントである「1.商品
名」、「2.製造会社」
、
「3.商品問い合わせ先」等が記載されている。
図 3-1 屎尿浄化槽性能評定シート(例)
-86-
3.5 処理対象人員の算定の見直し
昭和 44 年建設省告示第 3184 号にて、処理対象人員の算定方式は、日本工業規格「建築
物の用途別による屎尿浄化槽の処理対象人員算定基準(JIS A 3302-1969)
」に定めるとこ
ろによるものとし、合わせて算定基準の見直しが図られた。改正前後の主な内容を表 3-4
に示す。
表 3-4 JIS A 3302-1969 改正前後の比較
容量算定基準
改正前
改正後
有
無
腐敗槽
無
人員算定基準
有
有
建築用途
51
83
容量算定の対象槽
JIS 改正の主な変更点は、浄化槽の容量算定基準を廃止して人員算定のみとし、さらに建
築用途は 51 から 83 に分類された(現在の建築用途分類は 73)
。
3.6 材料の品質、強度試験方法等の規格化
1975(昭和 50)年に、浄化槽の品質確保を図るため「プラスチックし尿浄化そう構成部
品(JISA4101-1975)」が制定された。これは単独処理浄化槽における材料の品質やその強度
試験方法等に関する規定であったが、合併処理浄化槽の設計にも応用された。
4.構造基準の全面改正と浄化槽法の制定
4.1 構造基準の全面改正
1980 年に構造基準の全面改正が行われた(昭和 55 建設省告示第 1292 号)。改正理由は、
人々の生活水準の高まりと共に、単独処理浄化槽の設置が急激に進み(図 4-1)、浄化槽排
水の水域汚濁源としての比率が高まった事が要因として挙げられる。またこの頃に、真の
公共用水域の汚濁防止には単にし尿のみを処理するのではなく、雑排水も併せて処理をし
なければ実効が上がらないとの認識が高まってきた背景がある。
(万基)
参考)フジクリーン工業 HP「わたしたちの取り組み」
図 4-1 浄化槽設置基数の推移
-87-
改正の要点は以下に示す通り、合併処理浄化槽の最低人員の引き下げと、処理方式の抜
本的な見直しとなっている。改正後の構造基準一覧表を表 4-1 に示す。
●合併処理浄化槽の人員の引き下げ
衛生上特に支障のある地域で、合併処理としなければならない最低人員が、
従来の 101 人以上から 51 人以上に引き下げられた。
●処理方式の抜本的見直し
単独処理浄化槽では、実績の上がらなかった平面酸化床や活性汚泥法の一種
の全ばっ気方式が廃止され、従来からある分離ばっ気方式では容量が増やされ
た。また、新らたな処理方式として分離接触ばっ気方式が追加された。合併処
理浄化槽では、従来の活性汚泥偏重を避け、回転板接触法や接触ばっ気法、プ
ラスチック濾材を用いる散水濾床法等の新しい処理方法が追加された。
表 4-1 構造基準一覧表(1980 (昭和 55) 年改正)
性能
処 理 人 員
告示区分
BOD濃度
PPM以下
BOD除去率
(%)以上
処 理 方 式
第 1
90
65
分 離 接 触 ば っ気
(単 独)
5
50
200
500
2000
5000以上
分 離 ば っ 気
散 水 濾 床
第 2
60
70
(合 併)
回 転 板 接 触
接 触 ば っ 気
散 水 濾 床
長時間ば っ気
第 3
30
50
(合 併)
回 転 板 接 触
接 触 ば っ 気
散 水 濾 床
長時間ば っ気
標準活性汚泥
第 4
(単 独)
第 5
(単 独)
120
55
SS濃度
250PPM以下
SS除去率
55%以上
地 下 浸 透
第 6
20
90
回 転 板 接 触
(合 併)
腐
敗
槽
接 触 ば っ 気
散 水 濾 床
長時間ば っ気
標準活性汚泥
また、構造基準の改正に基づく、分離接触ばっ気方式の単独処理浄化槽の構造例を図 4-2
に、その基準容量を表 4-2 に示す。
-88-
ダイキ浄化槽 EL 型
図 4-2 単独処理浄化槽(戸建住宅用)の構造例
表 4-2 分離接触ばっ気方式の基準容量
人
槽
計画汚水量
(m3/日)
沈殿分離室
(m3)
接触ばっ気室 (m3)
沈殿室+消毒室(m3)
総容量
(m3)
5人槽
0.25
0.75
0.25
0.15
1.15
7人槽
0.35
0.93
0.3
0.18
1.41
10人槽
0.5
1.2
0.375
0.225
1.8
4.2 浄化槽法の制定
浄化槽法は、1983(昭和 58)年 5 月に成立し、翌年の 10 月から全面施行された。この法
律は、国民の生活環境の保全及び公衆衛生の向上を目的とし、浄化槽の設置、保守点検、
清掃及び製造について規制すると共に、浄化槽工事業者の登録制度、浄化槽清掃業の許可
制度、浄化槽設備士及び浄化槽管理士の資格を定める等、浄化槽関係者の責任を明確にし
た。
また、浄化槽の型式認定について、
『浄化槽を工場において製造しようとする者は、製造
しようとする浄化槽の型式について、建設(現国土交通)大臣の認定を受けなければなら
ない。』と定め、建設大臣は建築基準法及び浄化槽の構造基準に適合すると認めるときは、
認定をしなければならないとされた。
さらに、浄化槽製造業者は認定事項を変更したときは、速やかに建設大臣に届け出なけ
ればならない事や、5 年ごとの認定更新を受けなければその効力を失う事が併せて定められ
た。
これに関連して、浄化槽法施行前の 1984(昭和 59)年 4 月には、確認申請時の添付図
書の一部として従来から活用されていた(財)日本建築センター発行の「屎尿浄化槽性能
評定シート」が「工場生産浄化槽認定シート」に改められた。尚、この認定シートは、2000
(平成 12)年 6 月に同センターが国土交通大臣から指定認定機関としての指定を受け、建
築基準法に基づく型式適合認定を実施して発行する、
「型式適合認定別添仕様書及び図面」
に引き継がれるまで使用された。
-89-
4.3 構造基準改正及び浄化槽法制定当時の技術開発の状況
接触ばっ気方式は、接触材の表面に付着させた微生物により汚水を浄化するので、流量
変動に強く、厳密な汚泥管理を必要としない等の長所があり、構造基準の改正を機に中規
模の浄化槽から普及が進んだ経緯がある。また、構造基準の改正前から、一部メーカーは
本方式の長所に着目して、戸建住宅用の合併処理浄化槽の技術開発を進めた。
一方、大規模浄化槽では、長時間ばっ気方式や標準活性汚泥方式のような活性汚泥法が
主流であったが、1985(昭和 60)年の水質汚濁防止法の改正等もあり、窒素、リン規制へ
の対応技術が求められ始め、プラントメーカーを中心に活性汚泥を用いた脱窒技術の開発
が進められた。
一例を示すと、日立化成工業(株) (現(株)ハウステック)及び日立化成テクノプラント
(株)は、
「オキシデーションディッチ(OD)法」にヒントを得て、1986(昭和 61)年に、活
性汚泥混合液を水槽内で回流させながら、ばっ気、非ばっ気を繰り返す構造の窒素除去機
能を組み込んだ、
「日立回遊式間欠ばっ気浄化槽HN型(図 4-3)
」を製品化した。
図 4-3 日立回遊式間欠ばっ気浄化槽HN型の構造
-90-
5.浄化槽構造基準の一部改正(小型合併処理浄化槽の誕生)
5.1 浄化槽構造基準の一部改正とその背景 ~生活排水処理の必要性~
都市化の進展などにより、琵琶湖や霞ヶ浦な
どの湖沼、東京湾、伊勢湾、瀬戸内海水域など
の主要な閉鎖系水域では、汚濁負荷量の発生源
が産業系よりも生活系が大きくなってきた(図
5-1)。
浄化槽の普及により、下水道未整備地区にお
いてもトイレの水洗化は進んだが、ほとんどの
浄化槽は単独処理浄化槽であったため、台所や
洗濯排水等の生活雑排水が未処理のまま放流
されていた。全国各地で生活排水由来による水
域の汚濁が問題となり、浄化槽の役割として雑
排水も併せて処理する合併処理浄化槽の普及
が急務と考えられるようになった。
図 5-1 発生汚濁負荷量の発生源内訳
※環境省資料より
(1)湖沼水質保全特別措置法の制定
湖沼では、湖沼周辺で営まれる社会・経済活動の発展に伴って流入する汚濁負荷が増大
し、著しく汚濁が進行していた。例えば 1983(昭和 58)年の琵琶湖では、COD の環境基準
1mg/L 以下に対し、北部で 26mg/L、南部で 39mg/L であった。各公共用水域の有機汚濁に係
る水質環境基準の達成率をみると、海域は 79.8%、河川は 65.9%であるのに対し、湖沼で
は 40.8%と格段に低くなっており、それ以前の推移をみても改善の兆しは認め難かった。
水質汚濁防止法では、工場・事業所などからの排出水を規制していたが、これだけでは、
湖沼の水質保全に十分な効果が得られなかったため、生活系の排水についても対策が求め
られ、水質汚濁防止法の特別措置として、1984(昭和 59)年に湖沼水質保全特別措置法を
制定し、総合的かつ計画的な水質保全施策の推進を図ることとなった。
(2)小型合併処理浄化槽の登場
戸建住宅等、小規模施設への合併処理導入に対する要求の高まりから、1981(昭和 56)
年に産学共同研究が開始され、戸建住宅の負荷量や大きなピークを有する排水特性などが
次々と明らかにされていった。これを契機に小型合併処理浄化槽の開発が促進し、1984(昭
和 59)年にフジクリーン工業㈱のフジクリーンK型(図 5-2)と日本産業機械㈱のバイオ
マックスK型が、小型合併処理浄化槽として業界初の型式認定を取得し、製品化に至った。
その後も各社で製品化が行われ、現在の構造基準型の分離接触ばっ気方式と嫌気濾床接
触ばっ気方式の原型となる浄化槽が相次ぎ製品化された。
-91-
フジクリーンK型
図 5-2 小型合併浄化槽の構造例
(3)国庫補助制度と登録制度
生活環境の保全及び公衆衛生の向上を目的とした合併処理浄化槽の設置及び整備推進を
図るため、1987(昭和 62)年度に厚生省(現環境省)で国庫補助制度が創設された。国庫
補助金は設置者に交付されるのではなく、設置者に市町村が助成する場合に、その市町村
に対して補助する仕組みとされた。なお、東京都はこれに先駆けて 1986(昭和 61)年に全
国初の合併処理浄化槽設置補助制度を設けている。
1990(平成 2)年には全国合併処理浄化槽普及促進市町村連絡協議会(発足当初参加都道
府県 27・市町村 842)が設立された。同協議会等の要望により厚生省(現環境省)で国庫
補助指針(案)が策定され、これに合致する小型合併処理浄化槽を一元的に審査し登録す
る登録制度が設けられ、同協議会がこれを担った。登録制度は 1992(平成 4)年から施行
され、翌年、(株)クボタがHS型で全浄協登録第 1 号を取得した。
(4)構造基準の一部改正とその要点
小型合併処理浄化槽の市場が拡大し、生活排水処理システムとして評価が定着する中、
浄化槽の構造基準の一部が改正(昭和 63 年建設省告示第 342 号)された。
改正の要点は次の通り。
・衛生上特に支障のある地域の合併処理とすべき人員を 51 人以上から 5 人以上に引き下
げられ、小型合併処理浄化槽を位置づけた。
・小型合併処理浄化槽の処理性能は BOD20mg/L 以下、BOD 除去率 90%以上とした。
・小型合併処理浄化槽の処理方式は、先に大臣認定品として製品化されていた分離接触
ばっ気方式と嫌気濾床接触ばっ気方式とした。
また、1991(平成 3)年には処理対象人員 51 人以上 500 人以下に BOD20mg/L 以下、BOD
除去率 90%以上の構造が構造基準に追加された。これによりすべての人槽で合併処理浄化
槽の構造基準が確立された。構造基準一覧表を表 5-1 に示す。
-92-
表 5-1 構造基準一覧表(1988(昭和 63)年改正)
処理性能
告示区分
処理対象人員
BOD除去率
BOD濃度
(%)以上
PPM以下
65
90
処
理
方
式
5
50
200
500
2,000
5,000以上
分 離 接 触 ば っ気
単独
第1
分
離 ば
散
合併
90
20
水
っ 気
濾
床
分 離 接 触 ば っ気
嫌気濾床接触ばっ気
回 転 板 接 触
第2
合併
70
60
接
触 ば
散
水
っ 気
濾
床
長 時 間 ば っ 気
回 転 板 接 触
接
第3
合併
85
30
触 ば
散
水
っ 気
濾
床
長 時 間 ば っ 気
標 準 活 性 汚 泥
第4
第5
単独
単独
55
120
SS除去率
SS濃度
55%以上
250PPM以下
腐
敗
地
下
槽
浸
透
回 転 板 接 触
接
第6
合併
90
20
触 ば
散
水
っ 気
濾
床
長 時 間 ば っ 気
標 準 活 性 汚 泥
※1991(平成 3)年には、第 6 の構造が 51 人槽以上まで引き下げられた。
(5)嫌気濾床接触ばっ気方式及び接触ばっ気方式の構造例
昭和 63 年改正構造基準に基づく、嫌気濾床接触ばっ気方式の小型合併処理浄化槽の構造
例を図 5-3、基準容量を表 5-2 に示す。
表 5-2 嫌気濾床接触ばっ気方式の基準容量
人
槽
5 人槽
7 人槽
10 人槽
計画汚水量(m /日) 1.000
1.400
2.000
1.542
2.316
3.520
接触ばっ気槽(m ) 1.004
1.406
2.006
3
3
嫌気濾床槽(m )
3
3
沈殿槽(m )
0.390
0.516
0.716
消毒槽(m3)
0.015
0.015
0.021
2.951
4.253
6.263
3
総容量(m )
図 5-3 嫌気濾床接触ばっ気方式の構造例
(フジヨシ浄化槽 AWF1-5DI 型)
1991(平成 3)年の改正に基づく、接触ばっ気方式の中規模合併処理浄化槽の構造例を図
5-4 に示す。
-93-
(2)窒素・リン同時除去を可能とした高度処理浄化槽の例
1994(平成 6)年、フジクリーン工業㈱が窒素とリンを同時に除去できる小型合併処理浄
化槽CRX型を製品化した。嫌気好気循環方式による窒素除去に加え、鉄電極によるリン
除去装置を備え、BOD10mg/L 以下、T-N10 mg/L 以下、T-P1 mg/L 以下の処理性能を得た。
図 5-6 窒素・リン除去型の浄化槽の例
(3)膜処理方式による高度処理浄化槽(中・大規模)の例
中・大規模では膜分離活性汚泥法の研究開発が盛んになり、その後相次ぎ製品化された。
本法の特徴を以下に示す。
・固形分離が活性汚泥の性状に左右されない。
・孔径 0.2~0.4μm の微細な孔でろ過するため、清澄な処理水が得られる。
・汚泥滞留時間を長く取れるため、増殖速度が遅い硝化菌のような微生物の増殖・高濃
度維持が容易であり、さらに微生物を高濃度に維持できることから反応槽のコンパク
ト化が図れる。
図 5-8 FRP 製膜分離浄化槽
図 5-7 膜模式図(クボタ平膜)
(ダイキアクシス)
-95-
5.3 浄化槽規格の制定
(1)浄化槽規格制定の背景
1975(昭和 50)年に日本規格協会による『プラスチックし尿浄化そう構成部品(JIS A
4101-1975)』が制定されたが、これは単独処理浄化槽に関するものであり、合併処理浄化
槽の規格を制定したものではなかった。その後、1988(昭和 63)年には 50 人槽以下の単独
処理浄化槽の構成部品について規格化されたが、合併処理浄化槽の規格が定められること
はなかったため、1991(平成 3)年より(社)型式浄化槽協会(現(一社)浄化槽システム協会)
が自主規格として合併処理浄化槽についてとりまとめた。
(2)規格の概要
合併処理浄化槽の規格は JIS A 4101 を参考に以下についてとりまとめられた。
①工場生産型合併処理浄化槽規格
②浄化槽用マンホール蓋規格
③浄化槽用送風機規格
④浄化槽用ろ材規格
5.4 新たな成型法や素材の導入
(1)SMC(Sheet Molding Compound)による量産化
小型の FRP 製浄化槽は、主にハンドレイアップ法やスプレイアップ法などにより製造す
るのが主流であった。ハンドレイアップ法は、型に離型剤を塗り、ゲルコートを塗布した
あと、ガラス繊維織物(ガラスマット、ガラスロービングなど)を必要な強度と板厚に合
わせて樹脂液を浸みこませながら積層していき、所定枚数を積層したら、樹脂を硬化させ、
型から外し、トリミングして、FRP 素材を成形する。少ない設備で製造できるが、人的作業
であるため、製造時間、製造コスト、品質のムラに問題があった。スプレイアップ法では
積層に機械設備が導入されているが、全体の工程では人的作業の比重が高く、問題解決に
は至らなかった。
そこで、FRP 製浄化槽を量産する方法として、SMC が導入された。SMC はシートモールド
コンパウンドの略で、短く切断したガラス繊維に樹脂液を浸みこませ、両面をフィルムで
挟んだ状態で巻物にした成形材料を準備しておき(シートモールドコンパウンド)
、これを
所定の形と枚数にカットして、金型に載せ、油圧プレス装置によって、金型で加熱・加圧
を行い、短時間で成形品を得る成形方法である。この方法は量産化が図られるほか、従来
の方法に比べて仕上がりがきれいというメリットがある。既に浴槽や水回り製品で採用さ
れていた方法だが、大手浄化槽メーカーが導入し、実績を伸ばした。
(2)DCPD(Dicyclopentadiene)素材を用いた浄化槽
DCPD(ジシクロペンタジエン)はポリエチレンやポリプロピレンのように、炭素と水素
のみで構成されたプラスチック樹脂で、特徴として、
・対衝撃性、剛性等の物性に優れる。
・低温への耐性に優れる。
・耐薬品性、特に耐酸・耐アルカリ性に優れる。
・成形前は低粘度の液状であるため、大型・複雑・肉厚の成形が可能であり、成形の自
由度が高い。
-96-
・塗装性に優れ、接着が容易である。
・成形サイクルが短く、製造ラインの自動化が可能。高い生産性を持つ。また生産時の
エネルギー消費量も少なく、環境に配慮される。
・ガラス繊維を含まないため、リサイクル性に優れる。焼却が容易で、有毒ガスを発し
ない。
が挙げられる。医療機器の筐体や、トラックやバス、自動車のバンパー、バスタブ等サ
ニタリー製品、建設機械のボディパネルなど幅広い用途がある。浄化槽躯体の材質として
DCPD 導入が平成になって研究され始めた(製品化は 1996(平成 8)年)
。
図 5-8
DCPD 製浄化槽(ダイキアクシス製)
5.5 合併処理化に対応した処理対象人員算定基準の改正と放流同意への対応
(1)1988(昭和 63)年の処理対象人員算定基準の改正(JIS A 3302-1988)
1988(昭和 63)年の JIS 改正は、建築用途の多様化や水の使用形態の変化に対応する目
的の他、合併処理浄化槽の普及促進に対応するものであった。
JIS 改正の要点は、設置例からの実績を集計・整理し直したことで、水量は原則として延
べ面積、計画人員または便器個数から原単位として求められ、これに固有の BOD 濃度値を
組み合わせて、対象とする建築物の 1 日当りの排出水量または BOD 負荷量(BOD 濃度×水量)
を求めることができるようにした点である。また、建築用途と算定式の組合せが細分化さ
れ、より使用実態に近い算定が行えるようになっている。この JIS は、現在に至るまで大
幅な改正はされずに運用されている。
-97-
表 5-2 JIS A 3302
類
似
用途別
番
号
1
2
施集
設会
関会
係場
住
関宅
係施
設
イ
ロ
1969 版と 1988 版の比較(抜粋)
建築用途
1969年版
1988年版
公会堂・集会場・
劇場・映画館・演芸場
競輪場・競馬場・
競艇場
定員の1/2
定員の3/4
0.08×延べ面積
ハ
観覧場・体育館
イ
住宅
16×総便器数
便器数による算出方法
0.065×延べ面積
面積による算出式
100m2以下は5人
220m2<は10人
面積による算出式
1戸3.5人以下は3.5人
又は2人(ワンルーム)
1戸6人以上は6人
ロ
共同住宅
ハ
下宿・寄宿舎
ニ
学校寄宿舎・自衛隊キャン
プ宿舎・老人ホーム・養護
施設
面積による算出式
係数は 0.07
定員
変更なし
居室数による算出
1戸3.5人とし、居室数
が2を超える場合は、
2人/居室加算。
1ルームは2人でも可。
面積による算出式
係数は 0.2
定員
(2)設置届出の際の放流同意について
1988(昭和 63)年(及びその後 1997(平成 9)年)に各都道府県・政令指定都市浄化槽
行政担当部(局)長宛に、いわゆる「放流同意問題」について、放流同意書の添付を浄化
槽の設置等の届出の際に義務づけることのないよう徹底するとともに、管下保健所に対し
てもその旨周知徹底するように通知された。
放流同意とは浄化槽の設置等の届出を受理に際し、浄化槽放流水の放流先の農業用水管
理者、水利権者、地域住民等からの放流同意書(同意料負担)を添付させることを指し、
単独処理浄化槽の設置によるトラブルなどから求められるようになったとされている。放
流同意問題の解決には、地域住民の浄化槽に対する正しい理解と知識の普及を図ることが
重要とされた。
6.単独処理浄化槽の廃止と高度処理浄化槽の開発促進
6.1 単独処理浄化槽の廃止に向けた動き
(1)単独処理浄化槽廃止の背景
単独処理浄化槽は、汚濁負荷の大きい生活雑排水を未処理で放流するため、し尿と雑排
水を合わせて処理する合併処理浄化槽と比較して環境への排出負荷が高い(図 6-1)
。早急
に単独処理浄化槽を廃止し、合併処理浄化槽の整備促進を図ることが水環境保全上で喫緊
の課題と考えられたため、厚生省水道環境部長の委託による「単独処理浄化槽に関する検
討会」(座長:北尾高嶺)で審議され、1995 年(平成7年)8 月に報告書が提出された。
-98-
図 6-1 公共用水域に排出される汚濁負荷量比較
(2)
「単独処理浄化槽に関する検討会」報告書
単独処理浄化槽に関する検討会報告書では、便所の水洗化など単独処理浄化槽の役割が
終わりつつあり、今後は生活雑排水も処理できる合併処理浄化槽などの恒久的な処理施設
により代替され、その設置、使用が廃止されるべき時期にきており、単独処理浄化槽の廃
止に向けて国、地方公共団体、関係業界などが一体となって具体的な取り組みを推進すべ
きであるとされた。また、その目標として「おおむね三年後には単独処理浄化槽の新設を
廃止し、さらに二十一世紀初頭には既設の単独処理浄化槽もすべて合併処理浄化槽等に転
換すること」とされた。
厚生省(現環境省)は、1995(平成7)年 9 月に当時の浄化槽対策室長から各都道府県・
各政令市浄化槽行政主管部(局)長あてに単独処理浄化槽廃止の推進について通知し、さら
に 1996(平成 8)年 5 月には浄化槽メーカーに対し、単独処理浄化槽の製造の廃止と合併
処理浄化槽の供給体制の整備を行う旨の要請を行った。
(3)単独処理浄化槽廃止自主活動推進プログラム
単独処理浄化槽の廃止について検討を開始していた浄化槽工業会は単独処理浄化槽の製
造中止に向けての取り組みを 1997(平成 9)年に本格的に開始した。これを「単独処理浄
化槽廃止自主活動推進プログラム」という。会員 22 社のうち 20 社(単独処理浄化槽をも
ともと製造していないメーカー4 社を含む)が単独処理浄化槽の製造を 1999 年(平成 11
年)4 月から自主的に廃止することを決定し、残る 2 社もその後、2000 年(平成 12 年)始
めには製造廃止に至った。
-99-
(4)構造基準及び浄化槽法の一部改正
浄化槽の構造基準(昭和 55 年建設省告示第 1292 号)が 2000(平成 12)年 5 月 31 日に
改正され、単独処理浄化槽に関する告示第1の一~三の規定が削除された。本改正は同年 6
月 1 日から施行され、6 ヶ月の猶予期間が設けられた。したがって、その後は新たに単独処
理浄化槽を設置することはできないこととなった。
また、合わせて浄化槽法の一部が改正(平成 12 年法律第 106 号)され、2001(平成 13)
年 4 月 1 日より施行された。この改正において、法律としても浄化槽の定義から単独処理
浄化槽が削除され、合併処理浄化槽のみが浄化槽と定義される事となった。ただし、既に
設置された単独処理浄化槽は「浄化槽とみなす」ものとされ、使用者は雑排水を処理する
ために、合併処理浄化槽等の設置に努めなければならないと規定された。
(5)浄化槽のコンパクト化開発
改正浄化槽法において、単独処理浄化槽の廃止のほか、併せて既設の単独処理浄化槽の
合併処理浄化槽への転換義務も示されたが、当時の単独処理浄化槽と合併処理浄化槽を比
較すると、その大きさの違いから合併処理浄化槽への転換には設置スペースの確保と費用
が課題となった。
合併処理浄化槽の投影面
合併処理浄化槽
積は単独処理浄化槽の 1.8
倍前後であり、コンパクト
浄化槽は単独処理浄化槽
コンパクト浄化槽
の 1.5 倍前後であった。
単独処理浄化槽
図 6-2 単独処理浄化槽と合併処理浄化槽、コンパクト浄化槽の比較イメージ
単独処理浄化槽の製造廃止が進み、これまで狭い場所でも設置できていた利便性を確保
するため、また、単独処理浄化槽から合併処理浄化槽への転換を視野に、これまでの構造
基準型ではなく、メーカー独自の処理方式を用いたコンパクト浄化槽の開発が進むことと
なった。第一期と考えられるこの当時のコンパクト浄化槽はそれまでの合併処理浄化槽に
比べ約 70%の容積であった。
(図 6-3、図 6-4)
図 6-3 ハイバッキーKGF2 型(1998 年) 図 6-4 フジクリーンCS型(1999 年)
-100-
6.2 高度処理浄化槽の開発促進
(1)高度処理浄化槽の構造基準追加
1995(平成7)年に構造基準が一部改正(建設省告示 2094 号)され、翌年 4 月に施行さ
れた。主な変更点は処理対象人員 5~50 人で窒素除去型(告示 1-6)が追加され、51 人以
上では BOD、COD、窒素、リンなどの高度処理浄化槽の構造基準(告示 7~11)が追加され
た。
表 6-1 構造基準一覧表(改正による追加項目)
処理性能
第1-6
第7-1
第7-2
第8-1
第8-2
第9-1
第9-2
第10-1
第10-2
第11-1
第11-2
処理対象人員
BOD除去率 BOD濃度
COD濃度
T-N濃度
T-P濃度
(%)以上
PPM以下
PPM以下
PPM以下
PPM以下
合併
90
20
-
20
-
合併
-
10
-
-
-
合併
-
10
10
-
-
合併
-
10
-
20
1
合併
-
10
-
15
1
合併
-
10
-
10
1
告示区分
処
理
方
式
5
50
100
200
500
2,000
5,000以上
脱窒濾床接触ばっ気
第 6+接 触 ば っ 気 + ろ 過
第 6+ 凝 集 沈 殿
第7-1+活性炭吸着
第7-2+活性炭吸着
硝化液循環活性 汚泥
第6+ 三 次 処 理 脱 窒 ・ 脱 リ ン
硝化液循環活性 汚泥
第6+ 三 次 処 理 脱 窒 ・ 脱 リ ン
硝化液循環活性 汚泥
第6+ 三 次 処 理 脱 窒 ・ 脱 リ ン
(2)高度処理浄化槽に対する国庫補助
生活排水を適正に処理し、富栄養化が進行する閉鎖性水域や水道水源地域における汚濁
負荷を削減するため、1994(平成 6)年に個人設置型国庫補助事業に加え、市町村設置型の
特定地域生活排水処理事業(現浄化槽市町村整備推進事業)が実施され、窒素含有量又は
燐含有量についての排水基準に係る湖沼や海域の指定を受けた生活排水対策重点地域や上
乗せ排水基準が定められている地域には、高度処理浄化槽を設置することが明記された。
(3)高度処理浄化槽の開発
平成7年改正の構造基準では高度処理浄化槽が追加されたが、各メーカーからは構造基
準に準拠しない、独自の処理方式での浄化槽開発が進んでいった。特に窒素除去型の家庭
用浄化槽では硝化機能を高めるため、今まで主流であった板状接触材から、比表面積の大
きい担体を用いた処理方式が多く開発された。その他には大型槽で回分式や膜処理方式が
開発され、窒素だけでなくリン除去もできる浄化槽が発売された。1999 年(平成 11 年)に
は家庭用で初めて膜処理方式を採用したクボタKM型が発売された。
○流量調整・嫌気ろ床および生物ろ過
を組み合わせた方式
放流水質
BOD:10mg/L
T-N:20mg/L
図 6-5 日立化成ハイバッキーKBF型(1995 年)
-101-
〇膜分離活性汚泥方式
放流水質
BOD:5mg/L
SS :5mg/L
T-N:10mg/L
平膜
図 6-6 クボタKM型(1999 年)
○回分式活性汚泥法に付着ろ過法を組合わせた方式
放流水質
BOD:10mg/L
SS :10mg/L
T-N:15mg/L
T–P: 1mg/L
図 6-7 フジクリーンプラントPKVX型(1995 年)
6.3 浄化槽の性能規定化と性能評価方法の概要
性能規定化の流れから 1998(平成 10)年 6 月 12 日に建築基準法改正が改正され、浄化槽
関連では建築確認検査の民間開放や、型式適合認定制度、製造者認証制度等の新制度が発足
した。法第 31 条も改正され、浄化槽は政令で定める技術的基準に適合するもので、
「①建設
大臣(現国土交通大臣)が定めた構造方法を用いるもの」
「②建設大臣(現国土交通大臣)の
認定を受けたもの」とする事とされた(施行は 2000(平成 12 年)6 月)
。
この「②建設大臣(現国土交通大臣)の認定を受けたもの」については、国土交通大臣又
は指定性能評価機関(第三者機関)が行う性能評価に基づき認定されることとなった。性能
評価試験方法は、当時から現在まで唯一の性能評価機関である(一財)日本建築センターにて、
客観的で公正な評価を目的として、学識経験者等による検討を経て作成された。以下に性能
評価試験方法の概要を示す。
浄化槽の性能評価試験方法の概要(下記 3 種類の試験方法の何れかによる評価)
(1)恒温短期評価試験方法(最短馴養期間+8 週)
①流入させる汚水の温度、量、水質等を管理できる試験場において実施する試験。
②恒温通常負荷試験(20℃、設計水量)+低温負荷試験(13℃、設計水量)+恒温短期負荷試験(20℃
にて設計水量 0.5 倍負荷及び 1.5 倍負荷)
(2)現場評価試験1(48 週)
①流入させる汚水の温度、量、水質等を管理できる下水試験場等において実施する試験。
②温度条件が成り行きとなる点を除けば恒温短期評価試験と同様
(3)現場評価試験 2(48 週)(現場で適正な負荷条件、評価条件の確保を前提とする)
①排水の条件等に操作を加えない適正な負荷条件(設計負荷、低負荷、更に低負荷)の実際の住宅
等に浄化槽(3 基以上)を設置し、48 週間実施。
-102-
図 6-8 浄化槽の性能評価(恒温短期評価試験の概念図)
「浄化槽の構造基準・同解説」より
性能評価型浄化槽は、メーカー独自の汚水処理技術を盛り込んだもので、次第に国が定め
た構造方法による浄化槽(構造方法型)より性能評価型浄化槽の出荷比率が高くなり、2014
(平成 26)年度では出荷割合のうち 99%が性能評価型となっている(図 6-9)。
また、開発の方向性としては、①水環境保全に資するための高度処理化
槽から合併処理浄化槽への転換を考慮したコンパクト化が主流となった。
図 6-9 性能評価型浄化槽の出荷割合の推移
-103-
②単独処理浄化
6.4 JARUS型や支柱レス対応など
(1)JARUS型
(社)日本農業集落排水協会(現 (一社)地域環境資源センター)で排水処理の標準化に
よる品質の向上や施工の簡便化を図るとともに、経済面から FRP 製躯体の浄化槽について
検討が行われ、
(社)日本農業集落排水協会と浄化槽メーカー5 社(アムズ(株)、(株)ダイ
キアクシス、(株)ハウステック、藤吉工業(株)、フジクリーン工業(株))共同で農業集落
排水設備として FRP 製でJARUS-S96 型の型式認定を取得した。
図 6-10 JARUS-S96 型
(2)支柱レス対応浄化槽
小型合併処理浄化槽が家屋の駐車スペースに設置可能であれば、敷地を有効に活用でき
るが、車両による加重を考慮すると特殊な施工(支柱など)が必要となる。DCPD 素材によ
る浄化槽は耐衝撃性に優れ施工時の破損の恐れが少ない特徴があり、そうした材料特性を
生かし、1998(平成 10)年に駐車場(2t 以下)において、上部荷重を受けるための支柱を
不要とした FRP 評定(強度に関する評価)を初めて取得した。その後、FRP 製の浄化槽でも
本体を増強することで、支柱レスによる FRP 評定を取得した浄化槽が増え、現在では戸建
住宅向けでは支柱レス対応の浄化槽が主流となっている。
図 6-11 支柱レス対応浄化槽(ダイキMCH-N型)
-104-
(3)ディスポーザ対応浄化槽
1994(平成 6)年頃よりディスポーザ活用研究が行われ、処理システムが実用化された。
浄化槽でも性能評価試験方法にディスポーザ(生ごみ粉砕器)により破砕された生ごみと
生活排水を併せて処理するディスポーザ対応浄化槽に関する試験方法が規定され、2000(平
成 12)年にディスポーザ対応浄化槽が製品化された。
図 6-12 ディスポーザ対応合併処理浄化槽システムフロー
6.5 生活排水処理施設整備計画策定マニュアル、総合処理など
(1)生活排水処理施設整備計画策定マニュアル
汚水処理施設の整備は、三事業(浄化槽、農業集落排水、下水道)を中心として実施さ
れている。その基本的な考え方は、地方公共団体自ら、各汚水処理施設の特性、経済性等
を勘案して、地域の実情に応じた適切な整備手法を選択することである。その際、三事業
がより一層効率的かつ適正に整備が進められるよう、三省(厚生省、農林水産省、建設省)
及び地方公共団体は、相互に連絡を密にし、調整・協力を促進することが必要であるとし
て1995(平成7)年12 月、三省による「汚水処理施設の整備に関する構想策定の基本方針
について」が示され、都道府県には基本方針に基づき汚水処理施設の整備に関する総合的
な「都道府県構想」を策定し、円滑なる事業の推進を図るように通知された。
2000(平成 12)年には「汚水処理施設の効率的な整備の推進について」が三省から通知
され、下水道、農業集落排水および浄化槽において統一的な経済比較を行なえるよう、建
設費等の統一した費用が決められた。この通知を活用し、厚生省では集合処理と個別処理
をどのようにエリア分けし、生活排水処理施設の整備を進めていくべきか、経済性効率性
の観点からマニュアル化した「生活排水処理施設整備計画策定マニュアル」を作成し、「都
道府県構想」や「生活排水処理基本計画」の見直しの際参考とするよう通知した。 その
中では個別処理と集合処理の経済分岐点を1世帯あたりの管渠距離で計算する「家屋間限
界距離」といった考え方を用い、これにより個別処理と集合処理のエリア分けを検討する
ことが提示され、さらに浄化槽施設の使用実績(躯体:30 年以上、機器設備類:7~15 年
程度)も示された。
(2)浄化槽人員算定基準の改正(JIS A 3302-2000)
2000(平成 12)年、主に実使用人員と人槽の不均衡を是正するために人員算定基準の見
直しが図られた。
-105-
改正内容は以下の通り。
①住宅の処理対象人員算定式の改正
延べ面積に応じて 6 区分あった人員区分が 5 人と 7 人の 2 区分となった。
また、当該地域における住宅の一戸あたりの平均的な居住人員に応じて、算定式を適用す
る際に基準となる延べ面積の値を増減できることとなった。
さらに、この面積区分で地域差が考えられることから、ただし書きにおいて当該地域の住
宅の延べ面積と世帯人員に応じて増減できることとなった。
表 6-2 住宅の処理対象人員算定式
改正前
延べ面積
100 m2
130 m2
160 m2
190 m2
220 m2
220 m2 超
改正後
処理対象人員(人)
延べ面積
5
6
130 m2 以下
7
130 m2 超
8
(浴室と台所が 2 以
9
上:2 世帯住宅)
10
処理対象人員(人)
5
7
(10)
②その他の建築用途の処理対象人員の算定式の改正
駐車場関係(サービスエリア)及び学校施設関係について算定式が改正された。
③既設の類似用途建築物による水量・水質の推定方法について
建築物の使用状況により類似施設の使用水量その他の資料から、実状に沿わないと考えら
れる場合は、当該資料を元に人員を増減できることが具体的に示された。
(3)浄化槽の総合処理(衛浄第 20 号/厚生省環境整備課長通知、住指発第 191 号/建設省
建築指導課長通知)
2000(平成 12)年 3 月に、浄化槽で処理可能な雑排水として扱っても特段支障のない業
務排水で、1日当りの排水量が 50m3 未満の施設からの排水については、雑排水としてし尿
と合わせて処理(いわゆる総合処理)できる旨の通知が行われた。
対象となるのは表 6-3 に示す業種で、主に生物分解性が容易な食品系の排水であり、浄
化槽技術による対応が可能なものが盛り込まれた。
ただし、実際の運用にあたっては、人員算定方法が示されていないことや、特に製造業
においては増産や生産品の変更がある事も予想されるため、現在に至るまで実績は少ない。
-106-
表 6-3 合併処理浄化槽への事業場排水の受け入れ可能な業種
産業分類
123
業
種
野菜缶詰・果物缶詰・農産保存食料品製造業
1231
野菜缶詰・果物缶詰・農産保存食料品製造業
1232
野菜漬物製造業
127
パン・菓子製造業
1271
パン製造業
1272
生菓子製造業
1273
ビスケット類・干菓子製造業
1274
米菓製造業
129
その他の食料品製造業
1293
麺類製造業
1295
豆腐・油揚製造業
1296
あん類製造業
1298
惣菜製造業
産業分類:1998 年(平成 10 年)2 月発行、日本標準産業分類
7.処理性能の高度化と低炭素化
7.1 浄化槽の役割の明確化と放流水の水質の技術上の基準
2005(平成 17)年 5 月 20 日に浄化槽法が改正され、放流水の水質技術上の基準が定めら
れた。改正の主な内容は以下となっている。
①浄化槽の役割の明確化
②放流水に係る水質基準の創設
③設置後の水質検査時期の適正化
④適正な維持管理を確保するために都道府県の監督規定の強化
⑤報告徴収及び立入検査に係る規定の整備
①では第 1 条に「共用水域等の水質の保全等の観点から」を加え、
「し尿等」を「し尿及び
雑排水」と改正した。
②では第 4 条第 1 項に「環境大臣は、浄化槽から公共用水域等に放流される水の水質につ
いて、環境省令で、技術上の基準を定めなければならない」と加え、その技術上の基準とし
て浄化槽法施行規則第 1 条の 2 で放流 BOD20mg/L 以下、除去率 90%以上と定めた。
なお、同年 7 月 21 日に建築基準法施行令が改正され浄化槽法と同等の基準を規定し、浄化
槽法と同日に施行された。これを受け浄化槽の構造方法を定める告示も改正された。
7.2 単独処理浄化槽から合併処浄化槽への転換を狙いとした製品開発と施策
(1)単独処理浄化槽の転換を狙いとした製品開発
2010 年(平成 22 年)には、公共用水域の汚濁負荷源となっている未処理の生活雑排水の
問題を解決するため、単独処理浄化槽から合併処理浄化槽の転換を主な狙いとしたKTG
型(㈱ハウステック)
、CF型(フジクリーン工業㈱)が両社共同で製品化された。単独処
理浄化槽から合併処理浄化槽への入れ替えには設置スペースがハードルとなるため、極力
-107-
コンパクト化を図り、合併処理浄化槽への転換を容易とした。あわせて窒素除去性能を備
えており、閉鎖性水域等の水質改善にも貢献することが期待された。
本製品は 2011(平成 23)年度第 38 回環境賞(優良賞)を受賞した。
図 7-1 KTG型(㈱ハウステック) 図 7-2 KTG型とKR型(単独処理浄化槽)面積比較
また、トイレ以外の配管を集合させ流入管底が深くなった場合でも、放流管側の勾配を
確保しやすいよう、浄化槽の流入管と放流管の差を小さくする開発が進められた。多くの
場合は、浄化槽内のエアリフトポンプにより槽内水を高い位置に汲み上げる方式としてい
る。放流ポンプ槽が必要になる場合も本体と一体型となったコンパクトな放流ポンプ槽が
流入管底
330mm
放流管底
330mm
水位変動幅 100
300
30
多くのメーカーで採用されている。
エアリフトポンプ
図 8-3 CXN2 型(アムズ(株))
図 7-4 KZ-5(D)型((株)クボタ)
-108-
消毒槽
(2)単独処理浄化槽から合併処理浄化槽への転換補助事業
環境省では生活排水の対策を推進し良好な水環境や健全な水循環を確保することを目的
に、循環型社会形成推進交付金(浄化槽分)の対象事業として単独処理浄化槽の撤去費用
に対する助成制度を設けた。2006(平成 18)年度から 2011(平成 23)年度にかけて徐々に
助成対象を拡大し現在まで制度を継続している。
助成対象は市町村が実施する浄化槽の整備に関する事業(浄化槽設置整備事業及び浄化
槽市町村整備推進事業)において、実施に要する費用の一部を国庫助成するもので、助成
額は 9 万円を上限とし、その 1/3 としている。
国庫助成対象(4 割)
個人負担(6 割)
国庫
地方負担
助成
2/3
単独撤去分 9 万円まで
+
地方負担
2/3
1/3
国庫
助成
1/3
浄化槽設置整備事業(個人設置型)
国庫助成対象(10 割)
単独撤去分 9 万円まで
個人負担
地方負担
国庫助成
(1 割)
17/30
1/3
+
地方負担
2/3
国庫
助成
1/3
浄化槽市町村整備推進事業(市町村設置型)
図 7-5 設置費用の財政措置
表 7-1 助成対象変遷の概要
年 度
助 成 対 象
・対象浄化槽は使用開始後 10 年以内
2006 年度
・湖沼水質保全特別措置法の指定地域
(平成 18 年度) ・水質汚濁防止法の水質総量規制の指定地域
・水質汚濁防止法の生活排水対策重点地域
2007 年度
(平成 19 年度)
2009 年度
(平成 21 年度)
2010 年度
(平成 22 年度)
2011 年度
(平成 23 年度)
・対象浄化槽を使用開始後 20 年以内に改める
・対象地域に有明海及び八代海を再生するための特別措置に関する
法律で指定する地域を追加
・対象浄化槽を使用開始後 30 年以内に改める
・旧構造基準の単独浄化槽については使用年数の制限を撤廃
・対象地域を浄化槽整備区域に拡大
・対象浄化槽の使用年数制限を撤廃する。
・単独処理浄化槽に合併処理浄化槽の機能を持たせるための膜処理装
置などを設置できないことに限っている要件を撤廃する。
・施工上の制約により単独処理浄化槽の撤去跡地に合併処理浄化槽が
設置できない場合であって同一敷地内に浄化槽が設置されている
場合についても撤去費用の助成対象とする。
-109-
7.3 浄化槽の低炭素化
(1)低炭素社会対応型浄化槽
2010(平成 22)年以降、単独処理浄化槽の転換を推進する製品の開発による小容量化が
進み、製造原料、施工時の掘削量、汚泥処分量、ブロワの消費電力等が削減された。した
がって、製造、施工、維持管理、使用に関する浄化槽のライフサイクル全般にわたって省
エネルギー化が図られたが、特に小型浄化槽用ブロワの消費電力削減がめざましい。これ
は、モデル事業として 2009(平成 21)年度より実施され、現在も継続している環境省の低
炭素社会対応型浄化槽推進事業による影響が大きい。図 7-6 に浄化槽の温室効果ガス排出
量の推移を示すが、2009 年度以降の削減量が大きくなっている。
温室効果ガス排出量[kg-CO2/(人・年)]
160
150
140
130
120
110
100
5~10人
90
全人槽
80
1990
1995
2000
2005
2010
2015
2020
年度
図 7-6 温室効果ガス排出量推移(出荷製品の統計データ)
近々の開発製品例を紹介すると、2015(平成 27)年に間欠ばっ気を標準仕様とした CEN eco
(フジクリーン工業㈱)がある。本製品は間欠ばっ気を組み込むことで大きな省エネ効果
が得られ、5 人槽では単独処理浄化槽より消費電力が小さくなっている。
図 7-7 CENeco 型(フジクリーン工業(株))
表 7-2 CENeco 型と単独処理浄化槽のブロワ消費電力比較
接触ろ床方式(W)※1
※2
単独処理浄化槽(W)
5 人槽
7 人槽
10 人槽
24.0
35.0
49.0
29.1
29.0
33.9
※1 ブロワ表記上は 33W(5 人)、49W(7 人)、69W(10 人)、間欠ばっ気による消費電力。
※2 単独処理浄化槽の消費電力値は、
「平成 21 年度浄化槽の低炭素化に向けた調査検討業務報告書」より抜粋し
たメーカー平均値。
-110-
(2)低炭素社会対応型浄化槽整備推進事業
浄化槽分野における地球温暖化対策の促進を図るとともに、単独処理浄化槽から合併処
理浄化槽への転換の推進を目的として、低炭素社会対応型浄化槽(省エネルギータイプ)
の設置を対象とした助成制度である。
2009(平成 21)年度より浄化槽整備区域促進特別モデル事業の 1 つとして始まり、2010
(平成 22)年度には単一の事業となり当初は 2 年間の予定であったが日本における温室効
果ガスの削減目標達成のための浄化槽分野における CO2 削減対策の促進を図るため現在ま
で制度は継続されている。
助成対象は市町村が実施する浄化槽の整備に関する事業(浄化槽設置整備事業及び浄化
槽市町村整備推進事業)で、実施に要する費用のうち一定度を国庫助成する。助成率は 1/2
としている。
表 7-3 低炭素社会対応型浄化槽基準(消費電力[定格出力])
人槽[人]
5
7
10
n(11 人以上)
基準値[W]
52
74
101
n×9.6+4
国庫助成対象(4 割)
個人負担(6 割)
地方負担
1/2
国庫助成
1/2
浄化槽設置整備事業(個人設置型)
国庫助成対象(10 割)
個人負担
地方負担
国庫助成
(1 割)
12/30
1/2
浄化槽市町村整備推進事業(市町村設置型)
図 7-8 設置費用の財政措置
7.4 エコマーク認定の策定と対応浄化槽
2012(平成 24)年に消費者への浄化槽の普及啓発を促進し、単独処理浄化槽から合併処理
浄化槽への転換を図り、汚水処理整備を推進することを目的に、(公財)日本環境協会で浄化
槽(処理対象人員 10 人まで)のエコマーク認定基準が策定された。
図 7-9 エコマーク認定基準
-111-
2013(平成 25)年に FCE 型(大栄産業(株))が第一号のエコマーク認定を取得した。本
製品は、容量がコンパクトであることに加え、それまで躯体の材質は FRP や DCPD が主であ
り完全にリサイクルできない材料であったが(DCPD は燃料助剤としての再利用は可能)、こ
の製品は再生可能な材料である PP(ポリプロピレン)を使用しており(5・7 人槽のみ)環境
に配慮した製品となっている。なお、FCE 型は大栄産業(株)と(株)ダイキアクシスの共同開
発である((株)ダイキアクシス型式名 XE 型)。
また、FCE 型と XE 型は、エコマークアワード 2013 において浄化槽で初のプロダクト・オ
ブ・ザ・イヤーを受賞した。
図 7-10 FCE 型、XE 型(大栄産業(株)、(株)ダイキアクシス)
-112-
7.5 東日本大震災における浄化槽の対応
2011(平成 23)年 3 月 11 日に発生した東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島の 3 県
において内陸部で震度 6 弱以上の地域、および津波被害を受けた地域の 1,099 施設を対象に
浄化槽被害調査が実施された。その結果から、全損と判断された施設は全体の 3.8%であり、
浄化槽は地震に強いことが再認識された。
全損を免れた浄化槽で管渠に不具合があった現場でも、復旧工事までの間、ポンプを流入
枡や最終処理槽に設置することで、水洗トイレが使えたことから「浄化槽で良かった」との
声があった、と報告されている。
また、震災直後から応急仮設住宅向けの生活排水処理施設として、浄化槽が 2012(平成 24)
年 3 月末までの 1 年間に 1,748 基設置され、浄化槽による汚水処理率は推計で 50.4%に達し
被災住民の公衆衛生向上に大きな役割を果たした。
しかもその大部分は、発生から約半年間で応急仮設住宅の建設に合わせ速やかに供給され
ている。供給された浄化槽は多くが工場生産型で、50 人槽以下が 8 割以上を占めた。これら
は受注生産品ではなく定型品であるため比較的短期間で製造でき、在庫管理もし易い。また、
応急仮設住宅の規模に合わせて複数組み合わせて対応することが可能で、このような浄化槽
の利点が緊急性を求められる応急仮設住宅への迅速な供給を可能とした。
【岩手県陸前高田市立第一中学校】
【岩手県宮古市千鶏地区民有地】
45 人槽(工事中)
50 人槽(半地下)
【福島県相馬市中核工業団地】
【岩手県大船渡市赤崎町】
50 人槽(半地下)
40 人槽(地上・ウレタンフォーム)
【福島県南相馬市前川原グランド】
【宮城県女川町立運動公園】 【宮城県志津川自然の家】
320 人槽(地上)
45 人槽(地上)
図 7-11 応急仮設住宅の浄化槽設置例
-113-
200 人槽(地上)
8.これからの浄化槽
8.1 今後の浄化槽開発の方向性
現在、年間 10 万台以上製造・設置されている小型合併処理浄化槽は、BOD と窒素の除去能
力を有する高度処理型が主流で、同時にコンパクト化と省エネ性が追求されてきた。中・大
型浄化槽は BOD を処理するタイプが主流で、窒素やリンを除去可能な高度処理型も品揃えさ
れている。
国内の浄化槽市場は、住宅着工件数の減少(平成 7 年度 155 万戸、平成 26 年度 88 万戸)
、
下水道・浄化槽の普及率向上(平成 12 年末 62%・7.2%、平成 25 年末 77%・8.9%)などの
変化により縮小(平成 15 年 22 万基、平成 26 年 14 万基)の一途を辿っている。
しかし、汚水処理人口普及率を見ると、人口 100 万人以上の市町村はほぼ 100%を達成し
ているが、5 万人未満では 76%に過ぎず地域間格差を改善することが必要とされている。ま
た、既設の単独処理浄化槽が全国に 400 万基以上設置されている状況(図 8-1)を改善する
ことが、水環境保全を図る上で重要な課題となっている。
図 8-1 2014(平成 26)年 3 月末の国内における浄化槽設置状況(環境省資料より)
したがって、表 8-1 に示すような、処理水質の高度化やコンパクト化を図ると共に、低炭
素化等の環境に配慮し、単独処理から合併処理への転換を進め、国内の汚水処理について、
10 年概成を目指すことは重要と考えられる。また、小規模事業場の排水処理への活用、さら
に海外への普及を進めることも水環境保全や衛生確保の観点から重要で、国内外の生活排水
や産業排水の分野で引き続き産官学が浄化槽の様々な課題解決に協力し、合わせて浄化槽市
場の拡大に取り組む意義は大きい。
-114-
表 8.1 今後の浄化槽開発に必要なキーワード
処理水質の高度化
コンパクト化
●BOD、窒素、りん
●汚泥減量・減容化
●中水再利用、地下水涵養
●処理効率化
環境配慮
プラスα効果
●低炭素化
●リサイクル(処理水、製品)
●臭気対策
●バイオマス(汚泥、りん)
●エコマーク、ライフサイクルコスト
●自動化(監視測定、消毒)
、ICT 利用
国内展開
海外展開
●単独合併転換、10 年概成
●現地仕様設計、性能評価・法令制度移管
●国土強靭化対応
●支援制度
●小規模事業場対応
●JCM(二国間クレジット制度)
8.2 浄化槽利用の拡大
東日本大震災では、下水道などの集合処理施設は広範囲にわたって甚大な被害を受けた施
設もあり、本格復旧までに数年はかかるといわれている。浄化槽は全損と判断されたものは
全体の 3.8%に過ぎず、多くの浄化槽はそのままで使用可能か、もしくは修理により使用可能
であったことから浄化槽は災害に強いことが示された。したがって、浄化槽地域を拡大する
ことが国土強靱化への対応となるが、さらには、地域にこだわらず、例えば震災等大規模災
害時に避難所と想定される公共施設に対して「被災者救援用生活排水処理システム」として
設置することも考えられる(図 8-2)
。
図 8-2 被災者救援用生活排水処理システム例
また、浄化槽は汚水発生源で浄化処理して周辺の水路、中小河川に戻されるので、地域の
河川浄化や水量維持に有効であり、渇水地域では中水再利用している例もある。さらに、浄
化槽技術は、生活排水だけではなく、食品工場など有機性排水の小規模事業場での実績も数
多くあるなど、国内外を問わず水処理およびリサイクルシステムとして活用が期待される。
-115-
最近、クラウド型遠隔監視サービスとして、インターネットを利用して遠隔監視情報を一
元管理するサービスが増えている。維持管理業者向けの記録表作成、スケジュール管理、集
金管理を効率化するクラウドサービスの実績があるほか、環境省が行政向けに浄化槽 GIS を
利用した台帳システムの整備導入マニュアルを作成し、効率化を支援している。このような
ICT(Information and Communication Technology)技術を導入し、さらには、浄化槽の運転状
況や処理水質の状態を自動計測するなど、情報伝達システムを確立することは、保守点検、
清掃及び法定検査の効率化、高精度化の両立を可能とするものであり、また、使用状況や使
用電力の見える化で、使用者の浄化槽への関心を高めることも期待できる。その他、長期間
浄化槽に流入がない使用者の安否確認など、福祉に関する地域ネットワークツールとして活
用を図ることも考えられる。
8.3 浄化槽の海外進出
現在、浄化槽製造会社数社が、欧米やオーストラリアなど先進国と東南アジアなど開発途
上国に浄化槽を輸出あるいは現地生産して販売し、また、現地での調査、実証試験を通じて
新規参入を図っている。
先進国では日本と同様、公共下水道や戸建住宅向け小型浄化槽、中・大型浄化槽を活用し
て排水分野のインフラを整備している。しかし、開発途上国は経済力が弱いなどで公共下水
道等の整備が遅れている。商業施設等で浄化槽を採用する国は増え始めているが、戸建住宅
では性能に劣るセプティックタンクが多用されているので河川の水質が悪化している国が多
い。また、各国とも排水水質基準は制定されているが、定期的に維持管理する習慣がないこ
とや水質検査、規制が十分機能していないなど体制面の整備が十分とは言えない。
海外で浄化槽に求められる技術レベルは日本とは異なり、加えて日本の設計条件である水
温 13℃に比べて東南アジア等では水温が高いので、微生物が活性して分解反応が速く、小型
化、簡素化が可能と考えられ、海外向け仕様として設計できる。
欧米やオーストラリア以外では、製品認証制度がない(東南アジアではマレーシアのみ)。
一昨年より国立環境研究所が中心となり、日本の認証制度や浄化槽法を導入することを提案
している。なお、海外では、アメリカ合衆国でフジクリーン工業が 2014(平成 26)年に CE
型で NSF 認証を取得している例がある。
表 8-2 に示すように環境省、経産省などによる海外進出のための政府支援制度があり、温
室効果ガス削減(CH4、N2O、CO2 など)
、低炭素化(CO2)、二国間クレジット制度(JCM)を切
り口として浄化槽への適用が検討されている。なお、国内における温室効果ガス排出量の削
減実績として、製造段階、設置工事段階、使用段階の各段階を計算し、小型浄化槽では、1990
(平成 2)年 155.5kg-CO2/(人・年)から 2013(平成 25)年 121.3 kg-CO2/(人・年)
へと 22%削減されている。
-116-
表 8-2 各支援制度の支援規模と実施機関
支援制度
支援規模(1 件)
1.アジアの低炭素社会実現のための JCM 案件形成可能性調査
2.二国間オフセット・クレジット制度の構築に係る実現可能性等調査
2-1 JCM 案件組成調査
2-2 JCM 実現可能性調査
3.地球温暖化対策技術普及等推進事業
3-1 JCM プロジェクト実現可能性調査
3-2 JCM 協力案件の発掘・組成に向けた調査
3-3 JCM 実証事業
3-4 MRV 適用調査
実施機関
1500 万円
環境省
5000 万円
2000 万円
地球環境センター(GEC)
3 億円程度
3 億円程度
5000 万円~15 億円
2 億円程度
4.アジア水環境改善モデル事業」に係る実現可能性調査(FS)
5.協力準備調査
5-1 PPP インフラ事業
5-2 BOP ビジネス連携促進
1000 万円以下
6. 中小企業連携促進基礎調査
7 中小企業海外展開支援事業
7-1 案件化調査
7-2 普及・実証事業
上限 1000 万円
8.開発途上国の社会・経済開発のための民間技術普及促進事業
上限 2000 万円
9.平成 24 年度 募集 草の根技術協力事業(地域提案型)
10.平成 26 年度補正予算に伴う募集 草の根技術協力事業
(地域活性化特別枠)
11.平成26年度 中小機構・JETRO連携事業
「海外展示会出展サポート」
3000 万円
12.中小企業・小規模事業者海外展開戦略支援事業
13.小規模事業者等JAPANブランド育成・地域産業資源活用支援補助金
①戦略策定支援事業
②ブランド確立支援事業
120 万円以下
新エネルギー・産業技術総
合開発機構(NEDO)
環境省
上限 1 億 5000 万円
上限 5000 万円
国際協力機構
(JICA)
3000 又は 5000 万円
上限 1 億円
国際協力機構
国内事業部
市民参加推進課
6000 万円
出展経費(一部)
中小企業基盤整備機構
200 万円以内
2000 万円以内
各経済産業局
8.4 海外の浄化槽設置基数(輸出)
世界市場を見ると、日本と同規模(数万から十数万基)の浄化槽市場が、アメリカ、
欧州、オーストラリアにあるといわれ、日本製ブロワが多く輸出されている。図 8-3 に
海外に輸出した浄化槽の設置基数(2,000 基)を、表 8-3 にこれまでの取組みを示す。
ロシア
小型2基
ギリシャ
小型10基
ルーマニア
イタリア
ベトナム
小型209基
小型591基,中大型367基
韓国 中大型1基
米国
ミャンマー 小型25基,中大型17基
タイ
小型11基
小型38基
メキシコ
中大型1基
小型6基
コスダリカ 小型2基
中国 小型102基,中大型10基
リビア
中大型3基
台湾 小型1基,中大型1基
マリ
小型1基
ホンジュラス
小型1基
グレナダ
小型1基
フィリビン 中大型1基
ナイジェリア 小型16基
南アフリカ 小型17基
モザンビ-ク
小型1基
ケニア
小型53基
スリランカ
小型3基
パレスチナ
小型1基
マレーシア
小型1基
シンガポール 中大型2基
シリア
中大型1基
インドネシア
イラク
中大型1基
オーストラリア 小型485基,中大型2基
エジプト
小型1基
小型11基,中大型4基
注: 小型浄化槽(50人槽以下) : 1,589基
中大型浄化槽(51人槽以上): 411基
計 2,000基
図 8-3 海外の浄化槽設置基数(2015(平成 27)年 2 月現在、浄化槽システム協会調べ)
-117-
表 8-3 浄化槽関連で海外において実施された主な事業
活動期間
1990~2001
1991~1993
1993~1999
1994~1996
1997~1999
1999~2000
2000
2000~2002
2001~2005
2002
2002~2006
2003~2005
2003~2004
2011~2013
2014
支援機関
JICA
国交省
JICA
環境省
環境省
JICA
環境省
環境省
JICA
外務省
JICA
環境省
環境省
環境省
環境省
事業名
研修事業
途上国建築衛生設備技術開発事業
水質改善システム開発
し尿の衛生的管理技術移転調査
浄化槽管理技術移転振興調査
中東和平支援
水環境協力事業
浄化槽整備手法技術移転調査
太湖水質改善技術協力
チレボン市浄化槽建設計画
研修事業
浄化槽普及可能性調査
浄化槽システム技術移転調査
アジア水環境改善モデル事業
アジア水環境改善モデル事業
活動国
*
インドネシア(ボゴール)
韓国
インドネシア(チレボン)
インドネシア
パレスチナ
中国貴州省
インドネシア
中国
インドネシア(チレボン)
*
**
インドネシア、ベトナム、モロッコ
インドネシア
マレーシア
内容
廃棄物処理コース
試験浄化槽の設計・設置、技術調査
技術指導、本邦研修
試験浄化槽の設計・設置、研修セミナー
調査、本邦研修
試験浄化槽の設計・設置、本邦研修
試験浄化槽の設置
試験浄化槽の設計・設置、調査
試験浄化槽の設計・設置、ガイソライン策定
浄化槽設置資金援助
淡水環境修復コース
現地調査、セミナー
現地調査、セミナー
FS 調査、試験浄化槽の設計・設置
FS 調査
*韓国、中国、フィリピン、マレーシア、インドネシア、ベトナム **ベナン共和国、ルーマニア、サモア、ベトナム
9.おわりに
小型合併処理浄化槽が誕生して約 30 年、現在は、コンパクト型、窒素除去型が主流となっ
ている。施工性、処理性能、品質が向上し、電力消費量も小さい。これほど優れた個別分散
型の生活排水処理システムは、世界的にも例がない。また、下水道と同様、水環境の保全を
担う恒久的なインフラ設備として認知されており、建築物と同時に整備できるため過剰な設
備とならず、柔軟な汚水処理整備計画が可能となることや、地震などの災害に強い利点があ
る。
国の施策として、2013(平成 25)年に策定した『廃棄物処理施設整備計画』では、2017(平
成 29)年迄に浄化槽の普及率を 12%にすることを目標としている。2014(平成 26)年には
汚水処理を所轄する 3 省(国土交通省、農林水産省、環境省)が連携し策定した『持続的な
汚水処理システムの構築に向けた都道府県構想策定マニュアル』が改訂され、時間軸の観点
を盛り込み、汚水処理施設の未整備区域について、
“10 年程度を目途に汚水処理施設の概成”
を目指している。
汚水処理施設の 10 年概成を図るためには、単独処理浄化槽の転換が不可欠となる。歴史的
に見ても、単独処理浄化槽は、トイレの水洗化を目的に下水道が整備されるまで補完的に設
置する設備であり、今後は、水環境保全の観点から合併処理浄化槽に転換することが大きな
課題となる。しかしながら、トイレの水洗化を果たした使用者にとって、水環境保全のため
合併処理浄化槽へ転換する動機は働き難く、強力な政策や助成制度の拡充が求められる。
汚水処理施設整備計画を策定する市町村では、将来的な人口減少と都市部への人口集中が
予測される中で、健全な財政を維持するためにも、人口密度の少ない地域には積極的に浄化
槽を整備する方向に見直しを進めることが望まれる。また、経済比較のほか、水環境の保全、
地域のニーズ、地域間格差、災害対策など地域ごとの特性を総合的に勘案し計画する必要が
ある。
発展途上国では、水道の普及と経済発展に伴いトイレの水洗化が進む一方で、し尿処理は
十分に行われておらず健康被害や環境汚染の原因となっている。衛生、環境の両面から浄化
槽の活用が望まれる。
これからの浄化槽は、水環境保全に貢献することは当然ながら、様々な角度から市場のニ
ーズに対応できる浄化槽へとさらに進化し、国内外を問わず普及することを期待する。
-118-