31 1 介護の知識

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ラップによる褥瘡ケア
わたしたちのやりたいケア 介護の知識 50
ラップによる褥瘡ケア
介護の知識
褥瘡のケアは、医師の指示のもと、看護師、理学療法士や作業療法
士などのセラピストと連携しながら行ないます。
《ラップ療法(開放性ウエットドレッシング療法)
》
ラップ療法とは、傷を完全に密閉せず、開放し(反閉鎖状態)、湿
潤に保ち、浸出液を排出させる方法です。開放性ウエットドレッシ
ング療法と呼ばれています。
ドレッシング材として、穴あきポリ袋にフラット型オムツをいれ
たもの(以下『パット』という)等を使用します。
一度貼ったらそのまま密閉するドレッシング材使用の治療法と異
なり、パットを毎日交換するため、清潔を保つことができ、傷口の
状態観察も細かくすることができます。
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1.特徴
①
パットが薄いため瘡(傷)を圧迫しない
ドレッシング材の中には、浸出液を吸収するために厚手になって
いるものがありますが、瘡を圧迫してしまう場合があります。パ
ットにフラットタイプの紙オムツを使うため、厚さはほとんど気
になりません。
②
瘡とラップの間に浸出液の薄膜が形成され、摩擦力を打ち消す
瘡と『パット』の間にある浸出液が潤滑剤のような役割をもち、
摩擦を起こしにくくなります。
③
壊死組織は自己融解する
死んでしまった皮膚組織は、湿潤により軟らかくなり、溶けて消
えていきます。
④
瘡を閉鎖しないため、感染瘡も治療ができる
傷口を密閉させないため、感染している傷であっても、浸出液と
ともに膿などもオムツに吸収されていきます。また、毎日交換す
るため、清潔を保つことができます。
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⑤
ラップによる褥瘡ケア
大きな褥瘡でも治療できる
『パット』のサイズを傷に合わせて大きくすることで、大きな傷
でも治療ができます。
⑥
フィルムを皮膚に固定しないため、蒸れやテープによる皮膚の
損傷が少ない
傷に対して『パット』を大きめに当てることで、『パット』が多
少ずれても、傷に当たっている状態となるため、パット自体を固
定する必要がありません。
⑦
簡単で熟練を要しない
後述のように、手順がシンプルです。
⑧
経済性に優れる
医療用のドレッシング材は高価な物が多いですが、ラップ療法で
使用する物品は、身の回りにある物でできるため、経済性にも優
れています。
2.ラップ療法の手順
用意するのは、フラットタイプのオムツ、穴あきポリ袋、白色ワセ
リンです。
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①
傷と周囲を温水で洗浄する
霧吹きなどを使い、傷の周囲と傷を洗浄します。(感染症予防の
ため、本人専用の物を用意します。
)
②
オムツを台所の水切り袋で包む
事前にストックを作っておくとよいでしょう。
褥瘡の部位が踵や肘などの場合は、母乳パッドが使いやすいで
す。パットの端は肌に当たらない面に折り返し、セロハンテープ
などでとめます。
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③
ラップによる褥瘡ケア
傷にあてる面にワセリンを塗る
白色ワセリンをビニールの表面に薄く塗ります。
④
傷口に当てる
傷口に対し、大きめに当てます。
⑤
ストッキングで固定する(困難な場所はビニールテープで固定
する)
仙骨の褥瘡であれば、普段使用している下着、またはオムツでの
固定で十分です。
(大きめに当てるので、多少のズレは OK)
⑥
毎日交換する
毎日新しい『パット』に取り替えます。
毎日交換することで、清潔を保ち、感染症や悪化などにいち早く
気づくことができます。
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傷の感染など、状態によっては抗生剤の点滴や内服などを使用しま
すが、外用薬(消毒薬や抗菌剤)は使用しません。
褥瘡はつくらないのが基本です。
もしできてしまったときには、除圧を徹底し、清潔に保つことが大
切です。
また、褥瘡の状態によっては、手術など医療的処置が必要になりま
す。医療機関と連携をとり、傷の状態の報告・確認をしていくことが
必要です。
褥瘡ケアにおいて、介護職が大切にしなくてはいけないことは、テ
キスト 27 にも記載しましたとおり『早期発見と予防』です。
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