東南アジアの見取り図

3
東南アジア─項目ごとに整理して考察する
ブータン
ティンプー
中華人民共和国
ユンコイ高原
バングラデシュ
琉
海
台
山
ン
ナ
ン
ア
サルウィン川
コラート台地
ー
プノンペン
スル海
島
クアラルンプール
ブルネイ・
ダルサラーム
マカ
ッサ
ル海
峡
って統合を進めている。
ここでは,工業化の進展や
地域格差など,さまざまな事
象を項目ごとに整理して考察
しよう。
モロタイ島
ハルマヘラ島
スラウェシ島
フロレス島
スンバ島
クリスマス島
(オーストラリア)
110°
120°
0°
パプア
マルク
(モルッカ)諸島
バリ島
赤 道
モルッカ海
ダ
ジャワ島
マオケ山脈
ニューギニア島
アル諸島
タニンバル諸島
ディリ
アラフラ海
東ティモール
ティモール島
ティモール海
オーストラリア
130°
10°
140°
1 東南アジアの見取り図
語や宗教をかかえる国々から
なるが,ASEAN の結成によ
ン
ジャワ海
100°
地誌の考察方法
東南アジアは,多様な言
海
ス峡
セレベス海
10°
マルキョク
パラオ
列 島
バンダ海
峡
ジャカルタインドネシア
ダ海
小 ス ン ダ 列 島
スン
1,000km
扱う。
大
脈
山
ン
サ
バリ
島
諸
イ
タワ
メン
0
ミンダナオ島
バンダルスリブガワン
マレーシア
洋
ミクロネシア
連邦
ヤップ島
パラオ諸島
パラワン島
バラバク海峡
シンガポール シンガポール
カリマンタン
(ボルネオ)島
カリ
マ
スマトラ島
タ
東南アジアの地勢図 イ ン ド
東南アジアは ASEAN に
加盟している 10 か国に東
太 平 洋
レイテ島
メコン川
半
マ
ラッ
カ
海
峡
20°
ルソン島
フィリピン
マニラ
南 シ ナ 海ミンドロ島
脈
湾
ランド
レ
プーケット島
沖ノ鳥島
ベトナム
カンボジア
マ
諸島
バル
ニコ
タイラヤ川
プ
チャオ
イラワジ川
アンダマン諸島
タ イ
インドシナ半島
バンコク
アンダマン海
ティモールを加えた地域を
北回帰線
チュ
(珠 ー川
ハノイ
江)
トンキン湾
ラオス
ルソン海峡
ハイナン(海南)島
ビエンチャン
ネーピードー
小笠原諸島
日本
湾
ホン
川
ミャンマー
1
沖縄島
峡
ダッカ
島
諸
球
モンスーン地帯と
多雨林地帯
東南アジアは大きく分けて,ユーラシア東
南端にあたる大陸の部分と,太平洋西部と
インド洋東部にあたる島々の部分からなる。大陸部では,中国の高
5
地を水源とする大河が中・下流部に沖積平野をつくっている。島嶼
部はフィリピン諸島からスマトラ島,ジャワ島にかけて火山島が連
なっている。
地形の違いを反映して,大陸部と島嶼部では気候や風土が異なっ
ている。生活・文化の面では差異とともに共通性も多い。p.72 ∼
10
73 で見たように,東南アジアは全体として熱帯に位置している。
インドネシアの大部分は南半球に属しているが,その他の東南アジ
ア諸国のほとんどは,赤道と北回帰線の間に位置している。
東南アジアは降水量の多い地域である。とくにマレー半島から,
フィリピン諸島南部,大スンダ列島に至る島嶼部は,一年中降雨の
多い熱帯雨林気候が広がり,うっそうとした多雨林が見られる。こ
248
■
第3編 第2章
■
3. 東南アジア
15
ミャンマー
の地帯を挟むよう
にして,西北に位
置する大陸の部分
と,東に位置する
5
小スンダ列島東部
は,モンスーンの
影 響 を強く受け,
がはっきりとした
10
サバナ気候となっ
。
ている
(p.74 図 1 )
キリスト教
イスラム教
ヒンドゥー教
アニミズム
など
89%
ヒンドゥー教
イスラム教
仏教
キリスト教
ラオス
60%
ブルネイ・
ダルサラーム
25
人口:
75% 39万人
フエ
2
53%
一人当たりGNI:
3万7048ドル
1
インドネシア
9
88%
6
5
人口:
9035万人
一人当たりGNI:
2063ドル
タイ
人口:
6739万人
一人当たりGNI:
4046ドル
その他
人口:
462万人 1
一人当たりGNI:
3万8347ドル 3
2
人口,GNIは2008年
アンコールワッ
ト
人口:
8710万人
一人当たりGNI:
1019ドル
シンガポール
イスラム教
仏教
ナコンパトム
ベトナム
フィリピン
おもな宗教遺跡
その他 ヒンドゥー教
キリスト
教
その他の宗教
人口:
40
621万人
一人当たりGNI:
790ドル
6
5
人口:
2億2735万人
一人当たりGNI:
2150ドル
マレーシア
46% 人口:
23
93%
78
2701万人
一人当たりGNI:
7921ドル
カンボジア
94%
95%
不明
雨季と乾季の区別
人口:
4956万人
一人当たりGNI:
578ドル
ボロブドール
41%
イスラム教
ヒンドゥー教
仏教
東ティモール
90%
12 12
人口:
1456万人
一人当たりGNI:
660ドル
人口:
110万人
一人当たりGNI:
2243ドル
(The Statesman’s Yearbook
東南アジアの宗教分布および人口,一人当たり国民総所得
(GNI)
2010 ほか) 国民総所得(GNI)とは,一国の国民が一年間で生産した商品やサービスなどの付加価値の総
額を,所得の面からとらえたも
大陸部のタイは,南部のマレー半島部を除く主要地域は典型的なサ
のである。
(11 月∼4月)に
バナ気候であり,一年は雨季
(5月∼ 10 月)と乾季
明瞭に分けられる。
15
東南アジアは,島嶼部東端の乾燥地帯を除き,森林景観が多く見
られる。
気候の違いに応じて,
タイやミャンマーの山地ではモンスー
ン林,マレー半島を含む島嶼部では多雨林という植生上の区別が生
じている。
20
言語,宗教の
差異と共通性
東南アジア諸国では,少数民族の言語を含
めると,
実に多様な言語が話されているが,
島嶼部にある国家
(フィリピン,ブルネイ,マレーシア,インドネ
シア,シンガポール)では,国語あるいは公用語としてマレー語,
あるいはそれと系統関係が近いオーストロネシア系言語が用いられ
ている。大陸部の国々では,タイ語とラオス語がきわめて近い関係
25
にあるほかは,それぞれが独自の系統の言語を国語としている。ベ
トナム語は古い基層がカンボジア国語のクメール語と親縁関係にあ
ることが明らかになった。
宗教を見ると,大陸部の国々では上座部仏教が主流であり,島嶼
部ではイスラム教とキリスト教が優勢である。インドネシアは国民
30
の約 90%がイスラム教を信仰しているが,国教となっているわけ
ではない。ただし,公認の宗教は法令によって定められている。
KEY
WORD
3 たくはつをするタイの
僧侶
(2006 年)
モンスーン 雨季 乾季 上座部仏教 イスラム教
東南アジアの
イスラム教とキリスト教
インドネシアの公認宗
教 は, イ ス ラ ム 教, キ リ
ス ト 教 2 派, 仏 教, ヒ ン
ドゥー教,儒教の六つで
ある。マレーシアはイス
ラム教を国教としている。
フィリピンではカトリッ
クを主流とするキリスト
教徒が 90 %以上だが,ミ
ンダナオ島など南部には
イスラム教徒が多く,分
離運動の源となっている。
東 南 ア ジ ア の 各 国 と も,
山地の少数民族の間では
せい れい
みん ぞく
精 霊 信仰に基づく民 俗 宗
教が根強い。
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