鳥取の国際交流:国際交流と仕事

鳥取の国際交流:国際交流と仕事
2.留学生にインタビュー
【指導教員】
ケイツ・A・キッペン
福元
広二
【学生】
新
良太郎
安藤
宏樹
板
金口
誠
谷垣
智香
大内
彩香
門上
睦
亀井
瑠璃子
君野
歩惟
宍戸
史歩
田村
悠
西田
壮佑
野口
暁代
華子
写真左から、パキスタン・ギリシャ・韓国・中国出身カナダ
育ちと、様々な国出身の留学生をゲストスピーカーとして招
私たち国際交流グループでは、
「国際交流と仕事」というテ
ーマを取り上げ、5つのグループに分かれて、次のテーマに
ついて研究した。
き、話を聞いた。
食べ物・買い物・言語などの日常生活の問題、教育制度を
はじめとする学校の問題、習慣・宗教などの文化的な問題、
ホームシック、お金や人間関係における問題と、それぞれの
【テーマを調査するにあたっての5つの観点】
分野で質問内容を設定し、インタビューしながら、留学生の
1.留学生のアルバイト事情
日本で生活するうえでの問題点についても追求していった。
2.ワーキングホリデー
3.海外で働く日本人
4.鳥取の企業と海外の繋がり
5.外国人研修生・技能実習生
【全体での取り組み】
具体的な調査テーマが決まるまで、国際交流についての基
本的な情報、または調査テーマを決めるにあたってのヒント
を得るため、班全体の活動として以下の4つのことに取り組
んだ。
ゲストスピーカーと一緒に集合写真
1.国際交流に関する本での情報共有
国際交流について最も興味のあるテーマを選び、各自で文
献を読んだ。そして、パワーポイントでスライドを作製し、
3.(財)鳥取県国際交流財団の訪問
国際交流財団とは、鳥取県における国際交流活動の支援と
国際交流班内で自分の読んだ本に書かれていた内容を共有
国際交流推進の基盤づくりを目的に県民・民間団体・行政が
しあった。本の内容も様々であり、国際交流の入門書から外
一体となった中核的な国際交流推進のための組織として、平
国人との仕事に関する本まで、幅広いテーマで情報共有がで
成2年に設立され、地域の国際化の進展に資する様々な活動
き、国際交流についての基礎的な知識を身につけることがで
を展開している機関のことである。主に、在住外国籍県民へ
きた。
の支援、民間の国際協力・交流活動の支援、国際交流事業の
企画・実施、情報の提供、JICA(国際協力機構)デスクの
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2008 年度
地域文化調査成果報告書
設置というような活動をしている。
されている。すなわち、国際交流プラザでは、言葉よりも文
私たちはここで、鳥取県外国人登録者の推移や小・中・高
等学校における国際交流の状況、国際社会から生まれる問題
点などについて話を聞いた。
化の交流が中心とされている。
実際に施設内を案内してもらった。ここでは、在日外国人
のために生活用品や家電製品を無料で提供するという支援
ここで聞いた話をまとめると、鳥取県の外国人登録者数の
を行っている。また、掲示板には在住外国人が必要とするも
総計は年々増加し、国際交流もさかんになっている一方で、
のを掲示し寄付を集めたり、また寄付できるものを掲示した
特定活動、つまり企業実習生・研修生として来ている外国人
りと、譲り合いができるような場所としても利用されている。
は、過酷な労働環境におかれ、問題も山積みであるというこ
また、国際交流プラザでは異文化体験ができるイベントも
とである。
行っており、私たちが訪問した際も、留学生が浴衣を着て、
日本文化を体験していた。
国際交流財団の玄関での集合写真
日本文化を体験する留学生
【調査テーマを決めるにあたって】
以上のような全体での活動を通して、国際交流の現状が見
えてきた。
活動の中でも特に、国際交流財団を訪問した際に聞いた、
外国人労働者の過酷な労働環境についての話が私たちの印
象に残った。また、現代社会において企業の国際的な繋がり
は欠かせない状況になっているということや、仕事というテ
国際交流財団での聞き取り調査の様子
ーマに焦点をあてた時、鳥取と海外の企業の繋がりに興味を
持ったという以上の理由をふまえ、私たちは「国際交流と仕
4.鳥取市国際交流プラザの訪問
事」というテーマを設定し、調査を行った。
国際交流プラザとは、市民と外国人が相互に国際理解を深
テーマを調査する観点として留学生のアルバイト事情、ワ
め、国際交流を促進するための施設である。市内在住の外国
ーキングホリデービザ、海外で働く日本人、鳥取の企業と海
人の生活相談や、生活支援を行っている施設である。ここで
外の繋がり、外国人研修生・技能実習生の5つを取り上げた。
行われている事業は、主に、国際理解推進事業、在住外国人
の支援、国際交流事業の実施、情報の収集・提供である。施
【これらの活動から得たこと】
設についても、交流サロン、多目的ホール、研修室、生活支
国際交流の全体像をつかむことで、次の段階へと入る準備
援室、料理室と国際交流または国際理解ができる場所が設備
ができた。また、全員が同じ活動を行うことで情報を共有し
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鳥取の国際交流:国際交流と仕事
合うことができ、それぞれの考えや意見を取り入れながら、
多面的な考えを持ち、理解を深めていくことができた。
図1
1.留学生のアルバイト事情
班員
:
安藤宏樹
門上睦
私たちは、「仕事」というテーマから最も身近である
留
学生 に注目した。そこで私たちは留学生を対象としたアン
ケート調査及びインタビューを行った。アンケート内容は、
主にアルバイトをしている人にスポットを当てた。
*アンケート調査*
協力者の方々
図2
・鳥取大学国際交流会館
・TIME フェスティバルに参加した留学生
・中国人留学生学友会会長のバトさん
統計:30 人
アルバイトをしている人:19 人
していない人:11 人
国籍:中国・韓国⇒約 90%
エジプト
ウガンダ
ジンバブエ
パキスタン
フィリピン
アンケートで得た基本情報は、図 1 のバイトをする理由と
−アンケート質問項目−
して「生活費」という回答が多く見られた。また図 2 の職
・バイトする、しない理由
種では、
「飲食店」
「コンビニ・スーパー」がほぼ全体を占め
・職種
ていた。
・同僚の国籍
全てのアンケート結果を踏まえ、留学生のアルバイトの現
状について 2 つにまとめた。
・日本と留学生の母国のアルバイトの違い
・バイトの際のトラブル
・日本のバイトは留学生の母国のものと比べて良いか、悪い
<現状①>
まず次の図 3 を見て頂きたい。これは「日本でアルバイト
か、また仕事に対する認識は変わったか
・外国人を受け入れようとする意志を感じますか
をしてみて困ったこと」についての回答である。
・日本のバイトのイメージ
・(してない人は)今後アルバイトしたいか
以下のような質問を行った。なお、全ての質問に答えて頂
いている訳ではなく、中には複数回答もあり、回答の人数が
合わないことをお断りしておく。
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2008 年度
地域文化調査成果報告書
ていることであり、その背景には、鳥取のようないわゆる「地
方」の特性が関係しているという仮説を立ててみた。その特
性は大きく分けて 2 つある。
<特性①>
まず 1 つ目は求職者数に対して求人数が少ないことであ
る。それは鳥取県のパートタイムの有効求人倍率によく表れ
ている。平成 18 年の厚生労働省の資料によれば鳥取県のパ
ートタイムの有効求人倍率は 0.97 倍である。有効求人倍率
は求職者数に対する求人数の割合なので、それが 1 倍を割
り込むのは求職者の数に対して職場が少なく、働こうにも働
けない人がいるというわけである。そのような状態では、県
この結果から留学生は仕事をする時に次のようなカルチャ
内のお店に求人募集があった際、その採用枠を日本人と外国
ーショックに直面していることが分かる。時間の感覚、客へ
人留学生が争うことになれば、おそらく留学生の方が不利に
の態度といった仕事の常識の違い、また言葉遣い、生活習慣、
なるであろう。なぜなら、留学生は日本語にまだ不慣れな所
あいさつ、といった日常的文化の違いといった 2 つの問題
があるだろうし、仕事の面でも日本の常識を知らない可能性
が見られる。また、「日本のアルバイトは良いか悪いか」と
もあるからだ。ただでさえ受け入れ先が少ないパートの現状
いった質問では悪いと答える人はいなかった。この理由を見
で、そのような文化的なハンディーキャップがあるならば留
てみると、日本は時給が良いことやバイトの時間帯を自由に
学生が不利になるのも不思議ではない。そのような特性がま
決められることといった条件の良さから来ていると言える。
ず地方にはあるのである。
そして、仕事の認識は変わったかという質問では「はい」と
答えた人の理由として日本人の勤勉さや真面目さだとか、時
間を守る態度を学んだと回答している。この結果から分かる
<特性②>
次に、2 つ目の特性を見ていく。
ように、留学生は日本の文化を学んでいる傾向が見られ、こ
図4
の状況は徐々に慣れてくることで解決することなのかもし
れない。
<現状②>
次に、「外国人を受け入れようとする配慮は感じるか」と
いった質問では「都会はたくさん店があり仕事はあるが鳥取
にはない」という回答があった。例として、日本語が下手な
らレジをさせず代わりに洗い場など肉体労働ばかりさせら
れることが多いようだ。よって、採用条件に最も重要なのは、
日本語能力だと言える。アルバイトで求められるのは、日本
人と同じ扱いをしても問題のないほどの能力なのだ。そうい
図 4 は大正期から平成 17 年までの県内の人口と人口増加率
う訳で、日本語が不得意な留学生にとっては、働ける職場が
の推移を表している。その中でも黒丸で囲った時期の人口増
少ないと言えるのではないだろうか。
加率を見てみると、人口増加に変動が大きくないことがよく
分かる。
以上の現状を踏まえ、鳥取の留学生アルバイトの問題点を
考えた。それは、鳥取県は都会に比べ、受け入れ態勢が遅れ
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鳥取の国際交流:国際交流と仕事
い。鳥取には「タイムフェスティバル」のような国際交流イ
ベントはたくさんあるのだが、今後もそのような活動に積極
図5
的に参加し、企画立案していくことが必要であろう。また、
大学の研究発表などの場で、鳥取県の留学生のアルバイト事
情についての現状を知らせていき、お店の人を代表とする県
民、市民の方々に関心を寄せてもらうような活動も必要だ。
以上のような活動は 1 つ 1 つの効果は小さいものかもし
れないが、その積み重ねが地域の意識改革につながれば幸い
である。
なお、今回の調査は主に留学生の側からの目線で考えてき
た調査であった。日本人側の意見についても考えていくこと
が今後の研究課題である。
図 5 は平成 17 年における都市部と鳥取県、島根県の GDP
の規模の比較である。鳥取県は GDP の規模が全国最下位で、
非常に経済規模が小さいということが分かる。
<お世話になった方々>
・鳥取県国際交流財団
これらからも分かるように、鳥取県は人や物の移動に活気
・TIME フェスティバルでアンケート調査を手伝ってくださ
がないのである。すなわちそれは地域(鳥取)の構成員の固
った高校生の方
定化を起こさせ、地域に住む人たちには「自分の身の回りに
・アンケート調査に協力してくださった留学生のみなさん
は馴染みのある人しか住んでいない」というのを当たり前に
・中国人留学生学友会会長
させている。それが意識として固定され、その意識に応じた
・留学生会館の管理人さん
バトさん
文化が地域に形成されるのである。そうなることで、地域の
中ではマイノリティーである外国人留学生に目が向かない
<参考資料>
という状況を作り出していると考えられる。このような一連
・
http://www.pref.tottori.lg.jp/dd.aspx?menuid=45095
の意識の流れは、受け入れ態勢の遅れを招く地方の特性なの
・
内閣府「平成 17 年度県民経済計算、世界銀行」WDI
Online(2008.4.3)
である。
・
厚生労働省「労働市場年報」
<解決に向けて>
では、解決に向けて私達はどんなことをしていけばいいの
か。先に述べたとおり、受け入れ態勢の遅れは次のような地
方の特性を問題視してきた。
2.ワーキングホリデー
班員:新良太郎
①
西田壮佑
受け入れ可能な職場の少なさと文化的ハンディーキャ
<ワーキングホリデーとは>
ップ
②
金口誠
ワーキングホリデー制度は、二国間の協定に基づき、最長
マイノリティーである留学生への目線
一年間異国の文化の中で休暇を楽しみ、その間の滞在資金を
これらの特性に立ち向かっていくことが問題解決への第一
補うため、付随的に就労することを認める制度である。
歩となる。そのためには、まず受け入れる側の日本人と受け
このビザが他のビザと大きく異なる特徴は、現地での滞在
入れられる側の外国人留学生がコミュニケーションをとる
資金を 1 ヵ所あたり約 3 ヵ月のアルバイトで補うことがで
機会を増やすことである。互いが、まずは触れ合う機会を作
きることである。しかし、ビザの発給は一生に 1 度しか認
らなければ信頼関係を築くことができず、状況は改善されな
められない。
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2008 年度
地域文化調査成果報告書
<ビザの取得要件>
カナダやオーストラリアでのアルバイトについて、日本で
ビザの取得要件は、当該国の国籍を所有していること、年
のアルバイトと大きな違いはないそうだが、現地の人に比べ
齢は 18 歳から 30 歳(一部の国では 25 歳まで)
であること、
ると時給は低いらしい。本種さんは、アルバイトを始めた当
健康であり、尚且つ渡航するのに十分な資金を所有している
初、自分の時給がオーストラリアで定められている最低賃金
こと、既婚者の場合は子を帯同しないことである。これらの
より低かったとおっしゃった。ただし、収入とは別にチップ
条件を満たしたうえで、パスポートの申請、役所での手続き
をもらうことができるのは、日本でのアルバイトとの大きな
などを経て、ビザの発給が可能となる。また、保険へ加入し
違いである。
ておくこと、できる限り現地の言語を習得しておくことも望
ましい。
彼らがワーキングホリデーを選んだ理由は、
「働きながら
でも学校に行くことができるから」、
「他のビザより制限が少
なく自由に国内を移動や旅行できるから」、また、
「海外で英
<対象国>
語を使って働きたかったから」というものだ。
日本における 2008 年現在のワーキングホリデー対象国は
ワーキングホリデーの良い点は「学生ビザや就労ビザに比
以下の 9 カ国である。オーストラリア(1980 年より) ,ニュー
べて手続きが比較的容易で気軽に利用できること」や、「実
ジーランド(1985 年) ,カナダ(1986 年) ,韓国(1999 年) ,フラ
際に現地の人々の中で働き生活を送ることで、たくさんの
ンス(1999 年) ,ドイツ(2000 年) ,イギリス(2001 年) ,アイル
人々の考えや文化に触れられること」
「留学とは違った体験
ランド(2007 年), デンマーク(2007 年)
ができること」とおっしゃった。
また、ワーキングホリデーへの要望としては、
「どれだけ
長く滞在したいと思っても最長 1 年であるということ」と、
<鳥取から海外へ>
私たちは、実際にワーキングホリデービザを利用して海外
へ渡航した方から体験談を伺った。
「一生に一回しか使うことが出来ないこと」などの意見が挙
げられた。
話を伺ったのは、オーストラリアのブリスベンに渡航した
実際にワーキングホリデーを体験した方の話を聞く中で、
本種由美さん、オーストラリアのゴールドコーストに渡航し
ワーキングホリデービザは、海外で比較的自由に自分のやり
た福山農さん、現在カナダのバンフに滞在中の高橋絵美さん
たいことを体験でき、自分の経験値を積むために有効だとい
の 3 人の方々である。
うことが分かった。他のビザに比べて自由度が高いこと、将
本種さんは日本食レストランで、福山さんは寿司屋のウェ
イターやダイビングの水中ガイドとして、また、高橋さんは
来英語を使って働くための経験となることは、ワーキングホ
リデーにおける魅力である。
土産物屋でレジや品出し、販売などの仕事をしていた。
<鳥取への渡航者>
さらに、私たちは、現在ワーキングホリデーを利用して鳥
取に滞在している Alyssa Vanderburgh さんと梶川 Jeremy
さんのお二人に鳥取におけるワーキングホリデーの体験に
ついて伺った。
カナダ人のアリッサさんは英語の講師として、ニュージー
ランド人のジェレミーさんはインターネットプログラマー
として鳥取で働いている。
日本食レストランでのレジ業務
本種さん
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鳥取の国際交流:国際交流と仕事
証明書がなければ銀行口座を開くことができない。鳥取、ま
た日本における外国人を受け入れる制度はまだ十分に整っ
ていないようである。
<ファームステイという提案>
最後に、これまでのインタビューで伺ったワーキングホリ
デーの魅力、またはそれに対する要望などの意見をふまえ、
私たちはオーストラリアで実施されているファームステイ
という制度を参考に、鳥取の地域、自然を生かしたワーキン
グホリデーについて考える。
Alyssa Vanderburgh さん
ファームステイとは、オーストラリアの過疎地域の農場で、
3 か月以上、季節労働者として働いた人に、2 回目のビザの
申請を認める制度である。オーストラリアではこうしてワー
キングホリデーを利用して滞在する若者が貴重な労働力と
して人手不足を補う。また、利用者は自然の中で都市部とは
また違う生活を体験できる。また、ニュージーランドにおい
ては、農場で 3 か月以上、季節労働者として働いた人に、3
か月の滞在期間延長を認めている。
そこで、私たちは鳥取でこの制度を実施することを提案す
る。この制度によって、若者が鳥取の自然、または地域に興
味を持ち、若者の人手が不足している農業に携わることは、
梶川 Jeremy さん
鳥取を活性化させることに貢献できるのではないだろうか。
彼らにとって、ワーキングホリデーの魅力は、
「鳥取から
海外へ」でも挙げたものに加え、大学への留学とは違い、学
<参考資料>
・
生でない彼らが利用できることでもあった。
地球の歩き方編集室
『地球の歩き方
成功する留学
ワーキング・ホリデー完ペキガイド』ダイヤモンド・ビ
彼らは日本での生活はとても快適で、安全であると感じて
いる一方、日本語を十分に話すことができず、苦労すること
ッグ社
・
2007 年
日本ワーキングホリデー協会『ワーキング・ホリデー
もあったようだ。アリッサさんは、鳥取の自然や気候、街並
オフィシャル・ガイドブック 2004-2005』嶋中書店
みはカナダの Sarnia, Ontario の町と似ているので過ごしや
2004 年
すいとおっしゃり、また、ジェレミーさんは鳥取砂丘などの
自然や、冬でも温暖な気候のニュージーランドでは見慣れな
・日本ワーキング・ホリデー協会ホームページ
(http://www.jawhm.or.jp/)
い、鳥取の雪を楽しんでおられるようだった。
しかし、鳥取ではワーキングホリデーはあまり認知されて
おらず、仕事の紹介やワーキングホリデー利用者のコミュニ
・海外職業訓練協会ホームページ
(http://www.ovta.or.jp/index.html)
ティなどがない。そのため、彼らは仕事先を自分で探すこと
になるが、その条件には日本語ができることが前提であると
<協力してくださった方々>
ころが多く、なかなか仕事先が見つからない。なお、彼らは
・社団法人日本ワーキング・ホリデー協会 東京本部
大学などとの関わりも少なく、他の外国人と触れる機会をあ
・高橋絵美さん
まり持っていない。また、日本では、国際学生証などの身分
・本種由美さん
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2008 年度
地域文化調査成果報告書
・福山農さん
【青年海外協力隊員】
・Alyssa Vanderburgh さん
[人数]
・梶川 Jeremy さん
(全国)
2661 名
≪累積人数≫
(鳥取)
3.海外で働く日本人
22 名
≪累積人数≫
∼青年海外協力隊の視点から∼
班員:板華子
32136 名
202 名
※2008/10/31 現在のデータ
田村悠
2008 年に海外に派遣された人は 2661 人で、累積人数は
私たちは海外で働く日本人という枠の中で JICA(国際協
32136 人である。鳥取では 22 人、累積人数は 202 人となっ
力機構)が派遣している青年海外協力隊に焦点を当てて調査
ている。JICA には様々な派遣の形態があり、このデータは
を進めてきた。
「青年海外協力隊」の枠の中で派遣された人数であることを
付け加えておく。JICA には他にも短期の派遣やシニア協力
<調査動機>
①
隊などの枠がある。
文化的・宗教的差異が海外で働く日本人に対してどのよ
次に実際にインタビューをした内容を紹介する。すべての
うに影響するのかを理解する。
②
他国の労働条件と日本を比較・検討することで自国を客
インタビュー内容をのせることはスペースの都合上不可能
観視し、見えない問題点を発見する。
なので一部を抜粋して紹介する。
調査方法としてはインタビューを中心に行い、そこから共通
渡辺
由美さん
(JICA 国際協力推進員)
の問題点を見い出しまとめた。
まずは JICA についての説明と青年海外協力隊について
Q1 なぜ海外で働こうと思ったのですか?
の基本的なデータを以下に示す。
A1 日本で 5 年間保育士をしていました。働いている中で
何か問題が生じても日本の豊かさゆえに何となくその
問題は解決していきました。そのことがとてもつまら
なく感じてしまい何か新しいことにチャレンジしたい
と思って海外に目を向けました。
Q2 派遣された国と活動内容を教えてください。
A2
【JICA】
私は保育士を養成するためスリランカの農村部に行き
ました。具体的には託児所を訪問指導したり、月に 1
独立行政法人国際協力機構(こくさいきょうりょくきこう、
英語表記:Japan International Cooperation Agency、略称
回ワークショップをしたり、保護者と面談をします。
JICA(ジャイカ))は 2003 年(平成 15 年)10 月 1 日に設
基本的に現地に行って問題を発見し、そこから解決へ
立された外務省所管の独立行政法人である。政府開発援助
向けて動きだします。
(ODA)の実施機関の一つであり、開発途上地域等の経済
及び社会の発展に寄与し、国際協力の促進に資することを目
Q3 一番苦労したことはなんですか?
的としている。具体的には有償資金協力、無償資金協力、技
A3
術者派遣などを行っている。
幼児教育の大切さを説くこと。私が派遣された農村部
には託児所はありますが場所だけ提供されている状態
で、そこで働く保育士も専門的な知識はほとんどなく、
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鳥取の国際交流:国際交流と仕事
中には保育士免許を持っていない人もいます。保護者
教育と体育の授業をされていた方である。現在は鳥取市明治
も特に託児所に対して何かしてほしいという思いもな
小学校で教師をされている。谷田さんはニジェールで知り合
い。保育士、保護者両方に話をして出来ることから始
いでもない人の葬式や誕生会などにたびたび呼ばれたそう
めようと働きかけました。
だ。ニジェールでは外国人という肩書を取っ払って受け入れ
てくれた。その経験から国際交流するときは慣れていないと
Q4 海外で働いたことで自分の価値観は変わりましたか?
お互いに不安だが、外国人として来ている側のほうが不安で
A4
大きく変わりました。改めて日本の豊かさを感じまし
こちら側のほうが余裕があるはずなので、こちらから交流し
た。日本とスリランカでは「当たり前」のレベルがま
て積極的に受け入れようとすることが大切だと気付き、交流
ったく違います。電気・ガス・水道が整備されている
の仕方を変えていったそうだ。
ことがどんなに恵まれているか、朝・昼・晩と違うも
通常、国際交流というと年1回位で全校集会などに外国人
のを食べられることがどれだけ幸せか。しかしながら
を呼んで会っただけで終わり、外国人という壁が残る。明治
このことは日本にいただけでは分からないことです。
小学校では通年同じ外国人の方を呼んで、2週間に1回程度
豊かになる、発展していくということは同時に何かを
集会などではなく授業に参加してもらっているそうだ。何回
失うことだと感じました。
か共に授業を受けるうちに子供は外国人の存在を感じて、認
めるようになり、壁がなくなっていくのではないかとおっし
ゃっていた。
インタビューをさせていただく中でいくつかの共通点を
発見した。それは私たちが感じたことは海外に行けば必ず異
文化と触れ合うことになる。その時に初めて日本人としての
アイデンティティを強く意識する。その上で現地での人間関
係を円滑に進めるためには相手の文化を理解しなければな
らない。文化には歴史的、地理的、宗教的な背景がありこの
今回の調査を通じて今後海外で働く際に現地の文化にでき
文化は何に起因するものであるかを理解しようと努めるこ
るだけ早くなじむために国内で私たちがするべき具体的活
とが大切であると感じた。渡辺さんのインタビューの中にも
動を示す。
あった「当たり前」の違いをいかに自分の中で解釈するか。
「良い文化」「悪い文化」は存在しない。あるのはそれぞれ
<具体的活動例>
の「違い」だけなのである。
Ⅰ定期的な外国人の招聘
→国際交流=単発のイベントではなくもっと私たちの生
私たちは海外での経験を帰国後に日本に伝えることは非
活の中の一部として外国人を招く。
常に重要であると考えた。次に、帰国後に具体的な活動を行
っている方を紹介する。JICA 青年海外協力隊 OV 会の会長
をしていらっしゃる谷田孝之さんはアフリカのニジェール
共和国で 2000∼2002 年に小学校教員として派遣され、衛生
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Ⅱ英語以外の第二外国語に触れる機会を増やす。
→外国語=英語という概念を払拭し、英語圏以外の国、地
域への興味・関心をもたせる。
2008 年度
地域文化調査成果報告書
最後に今回の調査でお世話になった方々です。改めて深く
御礼申し上げます。
図6
鳥取とつながりのある国
(平成 19 年度
渡辺
由美さん (国際交流財団 JICA デスク)
谷田
孝之さん (青年海外協力隊 OV 会会長)
加藤
和広さん (デザイナー)
石塚
智信さん (鳥取大学大学院生)
境港貿易額より)
<参考文献>
筒井
光昭『青年海外協力隊
三修社
オールガイダンス』
1986 年
JICA 青年海外協力隊
http://www.jica.go.jp/activities/jocv/index.html
らふぃあ?ニジェール
http://www012.upp.sonet.ne.jp/niger/nigertop.html
4.鳥取の企業と海外の繋がり
班員:亀井瑠璃子
君野歩惟
宍戸史歩
谷垣智香
現在、企業における国際的な結び付きは増加しており、国
際社会に影響を与えていると考えられる。私たちは、そこか
ら国際交流について改めて考えるヒントを得ることができ
るのではないかと思い、このテーマを選んだ。
まず、鳥取の企業と海外の繋がりの実態について報告する。
はじめに、企業の数から海外との繋がりからみていく。鳥取
県には約6,800社の企業がある。その中で海外との繋が
りを持つ企業は1,000社ほどあるようだ。県内の企業の
約7社に1社が海外との何らかの繋がりを持っていること
から、海外との繋がりを必要とする企業が多いことが伺える。
次に繋がりの形態についてである。鳥取県の企業における
海外とのつながりには、輸出、輸入、子会社など様々な種類
その中でも、特に割合の多い中国と韓国は、日本とつながり
が強い国といえる。
では、何故企業は海外との繋がりを持つのだろうか。その
理由として、やはり企業側にメリットが大きいことがある。
がある。
次に鳥取県と繋がりのある国についてみていく。次の図6
は、H19年度の境港の貿易状況のデータである。アジアの
メリットの例としては、原材料を安く仕入れることができる、
高い値段で製品を売ることができるといったことである。
地域は赤で囲んで示している。輸出では約70パーセントを
しかし、デメリットもあった。その例は、海外に輸出した
アジアの国が占めており、また輸入でも約40パーセントを
製品を模倣され販売されるケースがあることや、為替のリス
アジアの国が占めていることがわかる。
クだ。これらは企業にとって、利益の減少につながる。
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鳥取の国際交流:国際交流と仕事
海外とのつながりにはこのようなデメリットの可能性も
あるが、やはりメリットの見込み方が大きいため、企業は
様々な形で海外との繋がりを持ち続けているとわかった。
<JA全農とっとり>
2009年1月7日にJA全農とっとりを訪問して、主に
梨の輸出についてのお話を伺った。
JA全農とっとりの海外との繋がりの形態は梨の輸出で
次に海外との繋がりを持っている鳥取の企業の例を報告
する。
あり、繋がりを持っているのは、台湾、香港、アメリカなど
11の国と地域である。
三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社と、JA
メリットは時代によって異なる。昭和60年∼平成初頭は
全農とっとりを訪問してお話を伺った結果を、以下の4つの
国内に流通する梨の数を制限し、価格が下がりすぎないよう
項目についてまとめる。
にする機能、つまり価格調整機能があることだった。しかし、
・繋がりの形態
ここ7∼8年では国外にブランド販売することでの利益の
・繋がりを持っている国
拡大にメリットが変化した。デメリットは為替変動による利
・海外と繋がりを持つことのメリット、デメリット
益の減少である。
・トラブル
次に梨の輸出をする上でのトラブルについてである。トラ
ブルとして2つのことが挙がった。
<三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社>
2008年9月30日に鳥取市にある三洋電機コンシュ
1つめは、相手国の貿易に対する考え方の違いだ。例えば
日本では貿易をする際、仕入れた商品が全部売れても売れな
ーマエレクトロニクス株式会社に伺いお話を聞かせていた
くても、
「仕入れた商品の代金は全額払わなければならない」
だいた。
と考えられているが、中国では「売れた分の代金だけ払えば
海外との繋がりの形態は、主に中国、マレーシアに商品製
造の子会社を置いていることだ。
よい」など、貿易に対する考え方が日本と違う場合がみられ
る。
海外に子会社を置く企業側のメリットとして、日本と比べ
2つめは、天災である。例えば台風で港に船が数日間入れ
て人件費、材料費などが安いため低コストですむという点、
ず、商品の劣化が進んでしまった場合、誰がその責任を取る
そして現地で生産するため国ごとで差はあるものの、関税が
のかという点でトラブルが起こる場合がある。
かからない、又は安くなるという点がある。
トラブルが起こる原因だが、ビジネスに関する考え方の違
デメリットは輸送に時間やコストがかかるという点があ
る。
いからも見られる国民性の違いと、天災のような、誰にも責
任を追及出来ない場合の問題処理をどうするかという点が
また日本人との文化や生活習慣の違いによる意見の不一
致から、トラブルが生じることがあるそうだが、現地採用し
挙げられる。
では、これに対してどのように対処しているのだろうか。
た社員に製造スタッフの管理を任せるなどして対処してい
ビジネスに対する考え方の違いには、両者を仲介してくれる
る。
人を置くことが挙げられる。例えば中国系の企業と取引をす
る際には、日本と考え方が似ている台湾系の企業を両者の間
に置いて、仲介役になってもらうそうだ。
また、損害の責任を追及出来ない場合は、痛みを分け合う
というような意味で損害の半額程度の見舞金を支払ってい
るそうだ。
つまり、トラブルを解決するためには相手の立場に歩み寄
る必要があるということが分かる。
- 29 -
2008 年度
地域文化調査成果報告書
5.外国人研修生・実習生について
班員:大内彩香
野口暁代
私たちは、外国人研修生・実習生について調査を行った。
調査動機としては、授業で鳥取県国際交流財団を訪問した際
に職員の方から過酷な条件で日本に働きにきている外国人
労働者についてのお話を聞いたことがきっかけである。この
問題は、非常に深刻な状況にもかかわらず、実態はほとんど
<まとめ>
公にされていない。よって、多くの方々に現状を知ってもら
今までの内容を踏まえて、より円滑な海外との繋がりを持
つためにはどうすればよいかを私たちなりに考えて、提言し
ようと思う。
うことが問題解決に繋がるのではないかと考え、調査するこ
とにした。
現在、外国人労働者は「外国人研修・実習制度」という制
まず、信頼できる取引先を見つけることである。
度を利用して日本に働きに来ている。この制度は、海外から
次に、共通の文化をきっかけにし、またそれを活かしてい
研修生・実習生を受入れ、日本の技術の修得を支援するとと
くことである。たとえば、日本の文化は中国や韓国から入っ
もに、各国の人材育成に協力することで国際貢献を果たすと
てきたものもあり、その例が日本のお中元やお歳暮の文化だ。
いうことを目的に創設された。しかし、現実にはこれは建前
中国や韓国にも同じように、贈り物を送る文化がある。JA
であって、本音としては、日本側は安い労働力確保のため、
全農とっとりではこの文化の共通点を活かして、中国や韓国
外国人側はお金を稼ぐため、いわゆる出稼ぎのために来ると
での梨の販売につなげている。
いうのが暗黙上にはあるようだ。お互いの利害が混在した制
そして最後に相互理解である。相手の文化に歩み寄り、相
手の文化を知ることも重要だが、円滑な海外との繋がりを持
つためには、こちらの文化を知ってもらうことも必要だと言
える。
度自体に問題があると考えられる。
次に外国人研修生・実習生の入国から帰国までの流れにつ
いて述べる(【図7】左半分参照)。
まず、研修生・実習生の出身国には、送り出し機関があり、
ここで人材の募集や事前研修などを行う。研修を経てから実
<お世話になった方々>
際に日本に研修生として入国する。期間は1年で、研修生は
小林
労働基準法の対象外で最低賃金制度も適用されない。研修終
一義
様
(鳥取県商工労働部)
了後、国の技能検定に合格するなどの要件を満たせば、同一
企業において技能実習に移行することができる。期間は2年
関野
元
様
で、技能実習に移ると、労働基準法が適用され、通常の日本
(三洋電機コンシューマエレクトロニクス
人労働者と同じ水準になる。そして、入国から3年後、母国
株式会社 車載機器事業部)
に帰国する。以上がおおまかな流れとなっている。
次に、現在、日本でおもに行われている「団体管理型」と
長谷
順子
様
いう受入れ方法に焦点を当て、関係団体について説明する
(三洋電機コンシューマエレクトロニクス
株式会社 経営企画室
(【図7】右半分参照)。
人事部)
まず、制度の総合的な支援を行っているのが財団法人国際
研修協力機構(JITCO)である。制度を円滑に推進するた
丸山
武
様
(JA全農とっとり
め、適正実施の助言・指導などを行っている。在留手続きや
園芸部)
管理など媒介的役割をするのが協同組合や商工会議所など
の第一次受入れ機関である。実際に研修生・実習生が働くの
- 30 -
鳥取の国際交流:国際交流と仕事
は、第一次受入れ機関の組合である第二次受入れ機関である。
次に、制度の歴史的背景についてみていく。日本における
研修生の受入れは、多くの日本企業が海外進出を始めた
<研修生にインタビュー>
鳥取県岩美町にある鳥取県東部商工振興共同組合とフジ
電機を訪れ、中国人研修生6名にインタビューを行った。
1960 年代後半から始まった。その後、1981 年に入管法が改
正され、在留資格が留学の一形態として作られ、1989 年に
は研修として作られた。そのころの日本は、労働力不足が深
刻で、制度の拡大を求める声が背景にあり、その結果外国人
受入れ枠の大幅な規制緩和がなされた。日本政府は 1990 年
に従来の研修制度を具体的に改正し、中小企業等が研修生を
受入れる団体管理型受入れを認めた。さらに、研修制度の拡
充を目指し、日本政府は、1993 年に技能実習制度を創設し
た。
このように受け入れ枠の規制緩和が進んだことで、日本に
鳥取県東部商工振興共同組合にて
(入管国
やってくる外国人研修生もどんどん増加してきた
HP より)。
Q.日本に来たきっかけは?
外国人研修生推移のデータによると、平成 11 年には、4
・日本に興味があった
万 7985 人、平成 18 年には、9 万 2846 人になり、ほぼ倍近
・日本が好き
くの研修生が日本にやってきている。また受入れ機関も積
・日本の会社が自国でも身近な存在だった
極的に制度の導入を始め、特に人件費削減を図る中小・零細
Q.実際働いてみてどうでしたか?
企業が目立つようになり、同時に労働環境も悪化していくと
・満足している
いう結果を招いた。
・文化の違いが面白い
・みんな親切
【図7】制度の流れ
・日本語が分からない
・地理が分からない
送り出し機関
国際研修協力機構
Q.日本のイメージは?
(JITCO)
会費
研修生
・技術が進んでいる
助言
・礼儀正しい
第一次受入れ機関
研修手当
技能実習移行
Q.将来は?
組合費
管理
・日本語の教師になりたい
労働
実習生
・きれい
・通訳になりたい
第二次受入れ機関
賃金
会社と研修生の間に強い信頼関係が感じられ、制度の理想
帰国
的な形だと感じた。異国に来た不安感や言葉の壁などはある
ようだが、楽しく働いているという印象をもった。
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2008 年度
地域文化調査成果報告書
研修生たちが手にしていた給料はこの半分の時給600円
分。残りの半分はどうなったのか・・・。実は会社Bが無断
で自分たちのものにしていたのである。会社Aは名前だけの
会社であって、実際は何もせずに収入を得ていたことになる。
このように鳥取にも不正行為をしている企業が実際にあ
るのだということが分かった。
<まとめ>
制度自体が本来のあり方とかけ離れているという実情が
フジ電機にて
明らかになった。政府が制度の適正化を進めてはいるものの、
問題は一部の例外にすぎないだけに公に議論されていない。
<制度の問題点と実態>
国際人口移動が進む近年、さらなる制度の拡大、外国人受け
ここでは参考文献と、実際に国際交流財団でうかがった話
の中から、人権問題や不当な労働管理などの問題点を取り上
げる。
①
入れ規制緩和が広がっており、ますます問題は深刻化してい
くと考えられる。
最後に、調査を進めてきて最も大切だと感じたことは、企
パスポートの取り上げ
業側も研修生たちも互いの文化について理解を深めなけれ
逃亡を防ぐために行われているが、取り上げたままになって
ばいけないということである。
いる企業や組合がある。
②
非実務研修の未実施
<協力機関>
非実務研修というのは、日本で生活する上で必要な語学や生
・鳥取県国際交流財団
活習慣などを習得させる研修のことで、受け入れ機関に義務
・鳥取県東部商工振興共同組合
付けられているものである。しかし、実施していない機関が
・フジ電機
あり問題となっている。
③
研修手当の未払い
<参考文献>
報酬ではなく生活実費として支払われるもの。低い水準に留
・石井昭男『外国人研修生
書店
まっているのが問題となっている。
時給300円の労働者』 明石
2006年
・成澤壽信『外国人労働者と人権』日本評論社
この他にも多くの問題点が指摘されている。入国管理局に
よると、不正行為に認定した機関の数は平成15年には92
1988年
・吉田良生『地域産業・社会と外国人労働者』
成文堂
1997年
機関だったのが、平成18年には229機関までに増加した。
また、研修生・技能実習生の失踪者数は平成11年に513
・入国管理局HP
人だったのが平成18年には2201人にまで跳ね上がっ
・国際研修協力機構JITCO 『2007年度
たそうだ。これらの問題から制度の実態は「研修生」という
肩書きだけで、実際は人手不足を埋める「労働者」となって
しまっているのではないかと考えられる。
<鳥取でおきた事例>
会社Aに働きに来た研修生は会社Aでは働かせられず、な
ぜか派遣社員として会社Bに送られた。会社Bは時給120
0円で研修生たちを派遣社員として働かせていたが、実際に
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生賃金実態調査報告』
技能実習