平成28年度 課題別人権教育研修講座A

平 成28 年度
課 題別人 権教育研 修講座A
1
2
日時及び会場
参
加
者
3
内
容
平成28年7月21日(木)13:00~16:00 奈良県産業会館 大ホール
小学校111名、中学校54名、県立学校23名、私立学校3名、その他9名
計 200名
13:10~14:00
説明『権教育の手びき 第57集』の活用について
人権・地域教育課 指導主事
14:10~15:50
講演「学級・集団づくりの方法 つながりと自律を願って
~キーワードは『絶対的自尊感情』~」
講師 大阪成蹊大学教授 園田 雅春
<内容(概要)>
(1) 説明 『人権教育の手びき 第57集』の活用について
・ 人権教育における部落問題学習の展開において大切にしたい視点及び活用できる資料等について説
明する。
・ 『なかまとともに中学校』より「ふるさと」を使い、人権教育における部落問題学習の展開を体験
してもらう。
(2)
講演 「学級・集団づくりの方法 つながりと自律を願って」
~キーワードは「絶対的自尊感情」~
<自尊感情が育つ学級・集団づくり>
・ 「どうせ…」「しょせん…」と下を向いている子に、どのように「被尊性」
(大切にされている実感)を育んでいくかが学級づくりの大命題である。
・ 子どもたちに「力」を付けたいのなら、まず「欲(意欲)」を持たせなけ
ればならない。「欲」を下支えするのが、自尊感情である。
「自尊感情」は、
人権感覚・学習意欲の源泉であり、生きる力の源泉である。
・ 人権教育には、反差別につながる「人権そのものについての学び」と自
尊感情を豊かに育む「人権としての学び」が必要。これらが相まった教育
を行うことが重要となる。
・ 状況的自尊感情、相対的自尊感情ではなく、「そこにいること」「存在そのもの」が大事という
「絶対的自尊感情」を育みたい。私たちは、子どもたちについつい「命は大切だ」、
「命を大切に」
と言うが、それよりも「あなたが大切だ」という言葉を聞くことで救われる子が多数いる。
・ 簡単に自尊感情を育むための特効薬はない。だから、学級・集団づくりを丁寧にしていく必要
がある。
<学級・集団づくりのあり方と方法>
・ 学級・集団のイメージとして、目指すべきは「納豆学級」。つながるためにはボンドが必要。
ボンドは、大きく分けて3つある。
「人ボンド」は先生そのものである。
「文化ボンド」は、授業、
出来事、アクティビティ、学校行事、自主的自治的活動等である。「第3のボンド」は、つらい
ことの共有である。豊かなボンドで結果的に納豆学級になるよう取組を進めることが大切である。
<参加者の感想から>
・ 「自尊感情」という言葉を聞いてから約20年。先日、「自尊感情の弊害」という記事を読み、こ
れまでの取組に不安を持っていたが、この講演でそうでないことを確かめることができた。また、今
後の教育活動に生かしていきたいと思った。
・ 具体的な事例をたくさん挙げてお話しいただき、食い入るように聞かせていただいた。「絶対的自
尊感情」が子どもたちに広く醸成されるよう頑張って取組を進めたい。
・ 学校でも自尊感情を高めるため取組をしているが、「良いところ見つけ」ばかりを意識しているよ
うに思う。子どもたちが安心して学校に通えるよう、子どもたちの「絶対的自尊感情」を高めていき
たい。
・ 子どもの話に耳を傾け、受け止め、共感し、存在そのものを認めるという話に励まされた。「~し
なければならない」ということに振り回され、園田先生が話されたこれらのことを忘れていたことが
あった。自身の子どもを見る眼を鍛えていきたい。
平 成28 年度
課 題別人権 教育研修 講座B
1
2
日時及び会場
参
加
者
3
内
容
平成28年8月3日(水)13:00~16:00 いかるがホール 小ホール
小学校69名、中学校39名、県立学校24名、私立学校4名、その他7名
計 143名
13:10~14:00
説明『人権教育の手びき 第57集』の活用について
県立同和問題関係史料センター 所員
人権・地域教育課 指導主事
14:10~15:50
講演「社会的障壁をなくし、平等な社会をつくるために学校ができること」
~障害者差別解消法を学ぶ、生かす~
講師 大阪市立大学非常勤講師 松波 めぐみ
<内容(概要)>
(1) 説明 『人権教育の手びき 第57集』の活用について
・ 人権教育における部落問題学習の展開において大切にしたい視点及び活
用できる資料等について説明する。
・ 『人権教育の手びき 第57集』より「奈良の鹿を通じて地域をさぐる」
を使い、人権教育における部落問題学習の展開を体験してもらう。
(2)
講演 「社会的障壁をなくし、平等な社会をつくるために学校ができること」
~障害者差別解消法を学ぶ、生かす~
「障害」観のシフト
・ 「社会こそが生きづらさ(バリア)をつくっている」という捉え方が必要。
新しい「障害」観は、一部の人を排除してきたマジョリティ中心の社会のあ
り方こそが問題であるとする考え方[障害の社会モデル]。社会のバリアを
なくすのは社会全体の責任である。
「障害者差別解消法」が禁止している二つの差別
・ 「不当な差別的取扱い」(例、「混んでいるので、車いすの方は2時以降に
来てください」)、「合理的配慮を提供しないこと(過度な負担がある場合を
除く)」
(例、聴覚障害の人が店で商品の説明を書いてほしいと求めたが拒む。)
・ 同じ障害種でも、一人一人必要なものは違う。そのため、個々に対話し、
「必要かつ、実現可能な変更・調整」を見つけていくことが重要である。
学校教育における「合理的配慮」とは?
・ 障害の特性等に応じた教材や学習環境を得ることにより、学習に参加でき、あたりまえの学校生活
を送れるようにするのが「合理的配慮」。例えば、点字教科書、拡大文字の教科書やプリント、感覚
過敏への配慮、タブレットの活用、雑音が入らない教室環境づくり等。個々のケースに対応というだ
けでなく、学校全体としてすべきこともある。校内環境のバリアフリー化、災害時の非難についての
準備もその一つ。「合理的配慮」は、障害のある子どものためだけのものではなく、すべての子ども
のために、「人権が守られる平等な教育環境」を具体化するものである。
これからの人権教育の課題
・ 「障害の社会モデル」的な障害認識が必要。障害のある人の人間性にふれるだけでなく、(発達段
階に応じて)「社会モデル」的な視点を育てることも人権教育の重要な目的ではないか。今、同じ社
会を生きている障害のある人がどのような体験をしているのかを具体的に学ぶこと、障害のある人が
その地域で行ってきた運動の歴史や障害者権利条約そのものについても学ぶ必要もある。
<参加者の感想から>
・ 共に暮らすためにバリアを取り除く努力、工夫をしようとする子どもたちを育てることが大切だと
思う。「合理的配慮は特別扱いではなく必要扱い」という共生社会を実現したい。
・ 合理的配慮については主体である障害者の立場に立って考える必要があると思う。学校では、多様
なニーズに対応するため、コーディネーターとともに1学期から話し合いを積み重ねているが、講演
内容を参考に子どもたちの学校生活がさらによりよいものとなるよう取組を進めていきたい。
平 成28 年度
課 題別人 権教育研 修講座C
1
2
日時及び会場
参
加
者
3
内
容
平成28年8月5日(金)13:00~16:00 桜井市立図書館 研修室1
小学校57名、中学校28名、県立学校14名、私立学校3名、その他7名
計
13:10~14:00
説明『人権教育の手びき 第57集』の活用について
県立同和問題関係史料センター 所員
人権・地域教育課人権教育係 指導主事
14:10~15:50
講演「性的マイノリティについての理解を深めるために」
講師 宝塚大学看護学部教授 日高 庸晴
109名
<内容(概要)>
(1) 説明 『人権教育の手びき 第57集』の活用について
・ 人権教育における部落問題学習の展開において大切にしたい視点及
び活用できる資料等について説 明する。
・ 『人権教育の手びき 第57集』より「『部落史の見直し』に関する
Working」(教職員向け研修資料)を使い、人権教育における部落問題
学習の展開を体験してもらう。
(2) 講演 「 性的マイノリティについての理解を深めるために」
・ 国や地方公共団体がガイドラインや指針等、取組を進めないと性的マ
イノリティの生きづらさは変わらない。東京都渋谷区の条例制定や文部
科学省が昨年度から「性的マイノリティ」という言葉を使い始めたこと
は、大きな変化である。
・ 現在、約3~5%が性的マイノリティだと思われる。学校であれば、
学級に1人か2人が在籍しているという割合となる。
・ マスメディアでの性的マイノリティの取り上げ方は、ドキュメンタリー番組とバラエティ番組で大
きなギャップがある。視聴者にとっては、二重のメッセージを受け取っている状況であり、このよう
な中、当事者の子どもたちは自尊感情を育むことができるか心配である。
・ 文部科学省が今年4月に「性同一性障害や性的指向・性自認に係る、児童生徒に対するきめ細かな
対応等の実施について(教職員向け)」を公表した。この中で重要なのは、画一的な対応をするので
はなく、個別の事例における学校や家庭の状況等に応じて取組を進める必要があることを明記してい
ることである。当事者がどこまで望んでいるのか、本人の思いをしっかりと聞いた上で学校現場で考
えることが重要である。
・ 子どもの頃の性自認は揺れ動くものであり、拙速な判断はしてはいけない。先生方の中にはとりあ
えず診断書がほしいと思う人もいるが簡単には判断がつかないものである。また、当事者自身が言い
たいという場合は別だが、カミングアウトを勧めることや保護者に連絡することもしてはいけない。
・ 性的マイノリティが抱える社会的ストレスは少数者ゆえのストレスであり、自傷行為、自殺未遂の
リスクが非常に高いという調査結果がある。学校が、性的マイノリティの数が少ないと考え、喫緊の
課題と捉えず、その結果、取組が進まないのは危険である。
・ 子どもたちにとっては、どの先生が本当の理解者となってくれるか分からない。もし、相談された
としたらそれは信頼に足ると判断されたから。「大事なことを話してくれてありがとう。」と受け止め
てほしい。話しやすい雰囲気や環境を作ること等、学校での取組や先生方の一言が子どもたちの人生
を変えることになる。
<参加者の感想から>
・ バラエティ番組で性的マイノリティを揶揄する言葉を耳にすることがある。番組を見た子どもたち
とその話題で一緒に笑っていたこともあった。改めて「正しい知識」「正しい理解」を持たないとい
けないと感じた。
・ 子どもたちに悩みを相談したいと思ってもらえる先生でありたいと思っていた。自分自身もっと学
び直し、「受け止める」というメッセージを発信していきたい。
・ 人権啓発ビデオ「あなたが あなたらしく生きるために 性的マイノリティと人権」(法務省)を
見てこの研修会に参加したいと思った。この課題について教職員間で研修を行い、性的マイノリティ
の子どもたちが前を向いて学校生活を送ることができるよう支援をしていきたい。