仮想空間における地形表現手法

仮想空間における地形表現手法
Terrain Representation Methods in Virtual Spaces
蒔苗
耕司(宮城大学・事業構想学部)
Koji MAKANAE (School of Project Design, Miyagi Univ.)
キーワード:仮 想 空 間 ,バーチャルリアリティ,地 形 表 現 ,DEM,GIS, CAD
Keywords:virtual reality, terrain representation, DEM, GIS, CAD
体 視 に分 類 されている.これらのうち,生 理 的 要 因 の一 つ
1.はじめに
である両 眼 視 差 による立 体 認 識 機 能 が,最 も重 要 である
空 間 情 報 の整 備 が進 み,国 土 に関 するデジタル情 報
と考 えられている.
を容 易 に入 手 ,利 用 できる環 境 が整 ってきた.地 形 の起
伏 に関 する情 報 も例 外 ではなく,国 土 数 値 情 報 の一 部 と
VR において用 いられる立 体 視 技 術 は,主 に両 眼 視 差
して整 備 され,一 般 には「数 値 地 図 (標 高 )」として利 用 さ
による立 体 視 を用 いたものである.コンピュータ上 に定 義
れている.地 形 情 報 は,国 土 数 値 情 報 の整 備 目 的 である
した仮 想 的 な空 間 の中 で,人 間 の両 眼 の位 置 を設 定 す
国 土 計 画 策 定 の基 礎 データとして利 用 される他 ,社 会 基
れば,コンピュータグラフィックス(CG)技 術 の適 用 により,
盤 施 設 や宅 地 の計 画 ・設 計 ,地 理 学 的 解 析 や地 理 教 育 ,
人 間 の眼 から見 えるであろう 2 枚 の透 視 画 像 を得 ることが
登 山 等 のレクリエーション目 的 にも利 用 されている.国 土
できる.得 られた透 視 画 像 を,現 実 の人 間 の左 右 の眼 に
数 値 情 報 における地 形 情 報 は,メッシュデータとして提 供
与 えることにより,人 間 は与 えられた画 像 を立 体 として錯
されているが,これを視 覚 的 に伝 達 する方 法 として,高 度
覚 する.VR 技 術 の発 展 の中 で,人 間 の左 右 の眼 に対 し
や傾 斜 別 に着 色 して表 示 する方 法 ,メッシュから等 高 線
て異 なる画 像 を与 えるため の装 置 が開 発 されており,代
を発 生 させ て 表 示 す る 方 法 , 陰 影 図 を自 動 生 成 し て 表
表 的 なシステムとして,液 晶 シャッタを用 いた立 体 眼 鏡 ,3
示 する方 法 ,投 影 変 換 による鳥 瞰 図 により 3 次 元 的 に表
次 元 ディスプレイ,ヘッドマウントディスプレイ(HMD),没
現 する方 法 等 が用 いられる.しかし,これらの地 形 表 現 は,
入 型 ディスプレイ等 がある.
コンピュータディスプレイの 2 次 元 平 面 上 で表 現 されるも
・液 晶 シャッタを用 いた立 体 眼 鏡
のであり,現 実 の 3 次 元 物 体 として表 現 されるものではな
液 晶 シャッタを用 いた立 体 眼 鏡 システムは,1 つの CRT
い.そのため,地 形 の起 伏 を直 感 的 に理 解 することが難
ディスプレイ上 で左 目 用 ,右 目 用 の画 像 を高 速 で交 互 に
しいという問 題 がある.このような問 題 に対 して,著 者 らは
切 替 えて表 示 させ,それを立 体 眼 鏡 の液 晶 シャッタと同
バーチャルリアリティ(VR)技 術 を適 用 し,コンピュータ上
期 させることにより,左 目 ,右 目 それぞれに画 像 を与 える
に定 義 された仮 想 地 形 面 をより直 感 的 に表 現 する手 法 と
ものである.しかし表 示 領 域 はディスプレイ上 に固 定 され
その応 用 システムに関 する研 究 開 発 を行 なってきた.
るため,実 際 に人 間 が動 き回 ることはできない.
・3 次 元 ディスプレイ
そこで本 論 文 では,VR 技 術 による視 覚 的 立 体 表 現 の
手 法 についてまとめるとともに,著 者 らがこれまで開 発 して
3 次 元 ディスプレイは,両 眼 視 差 や両 眼 輻 輳 を利 用 し
きた地 形 表 現 とその応 用 システムを紹 介 する.さらに 3 次
て,裸 眼 で立 体 視 を実 現 するものである.立 体 眼 鏡 によ
元 地 形 表 現 システムを,GIS のツールの一 つとして位 置
る手 法 と同 様 に人 間 が動 き回 ることはできないが,近 年 は
づけ, 今 後 の地 形 表 現 シス テムの発 展 性 につ い て述 べ
技 術 開 発 が進 み,安 価 な市 販 システムが提 供 されるよう
る.
になり,急 速 に普 及 しつつある.
・HMD
2.VR による視 覚 的 立 体 表 現 手 法
HMD は頭 部 に装 着 するゴーグル型 のディスプレイ装
VR は,コンピュータ上 に定 義 した仮 想 世 界 をより現 実
置 であり,左 目 ,右 目 それぞれの目 の前 に専 用 の小 型 デ
に近 い感 覚 で体 感 するための技 術 である.視 覚 的 により
ィスプレイを配 置 することにより,立 体 画 像 を提 供 する.こ
高 い現 実 感 を得 るために,人 間 の 2 つの眼 を生 かした立
のシステムでは位 置 センサとの同 期 により,人 間 の移 動 に
体 視 を活 用 したインターフェースが利 用 される.
応 じた画 像 を提 供 することができる.
人 間 が視 覚 的 に物 体 の立 体 形 状 を認 識 するメカニズム
・没 入 型 ディスプレイ
は,生 理 的 要 因 と心 理 的 要 因 に分 類 される(安 居 院 ほか,
没 入 型 デ ィ ス プ レ イ ( IPT; Immersive Projection
1985).生 理 的 要 因 は,人 間 の眼 の機 能 によるものであり,
Technology)はイリノイ大 学 が開 発 した CAVE というシステ
水 晶 体 による 焦 点 調 節 機 能 ,両 眼 の輻 輳 ,両 眼 視 差 ,
ムに代 表 される(Cruz-Neira et al., 1993).CAVE では左
単 眼 運 動 視 差 等 がある.また心 理 的 要 因 は経 験 的 に立
右 ・正 面 ・床 面 に配 置 された約 3 m のスクリーンに立 体 映
体 像 を復 元 するものであり,幾 何 学 的 立 体 視 と光 学 的 立
像 を投 影 し,人 間 はその立 体 視 空 間 の中 に没 入 する.
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CrystalEyesPC
Emitter
above 60Hz
Inf
lar
ed ligh
t
s
above120Hz
Eyewear
RS232C
Personal
Computer
Logitec Magellan
Space Mouse
OS:Microsoft W indows
図 1 システム構 成
図 3 道 路 設 計 支 援 システムインターフェース
図 2 システム利 用 風 景
HMD に比 して広 い視 野 を確 保 でき,動 きに同 期 して画
現 手 法 の確 立 が必 要 であり,VR 技 術 の適 用 はその有 効
像 を生 成 する必 要 がないために,画 像 の遅 延 の問 題 がな
な手 段 となり得 る.
こ の よ う な 背 景 の 下 , 蒔 苗 ・ 福 田 ( 1998 ) , Makanae
い等 の利 点 を有 する.
また近 年 では,仮 想 空 間 と現 実 空 間 とを重 畳 した複 合
(2002)は,空 中 写 真 の立 体 視 により地 形 面 を立 体 面 とし
現 実 感 に関 す る研 究 開 発 が行 わ れ てい る .その中 の一
て捉 え,その上 で道 路 設 計 を実 現 するシステムを構 築 し
つの技 術 として,タンジブル(tangible)インターフェースの
ている.デジタル情 報 として PC 上 に格 納 された空 中 写 真
研 究 開 発 が行 われている.例 えば MIT のメディアラボで
の 画 像 情 報 は , 立 体 視 装 置 ( StereoGraphics 社
は,Illuminated Clay という,粘 土 で作 り出 した地 形 面 上
CrystalEyes2)を通 じて,立 体 視 可 能 な情 報 としてディス
に情 報 を投 影 するシステムを構 築 している(Piper et al.,
プレイ上 に表 現 される(図 1, 図 2).またコンピュータ上 に
2002).
は,空 中 写 真 の標 定 により得 られた立 体 視 空 間 と同 一 の
3.VR を用 いた地 形 表 現 とその応 用 システムの開 発
決 めを行 う 3 次 元 マウスカーソルを設 定 する.本 システム
座 標 空 間 を定 義 する.この空 間 の中 に,3 次 元 的 な位 置
著 者 らは,VR 技 術 を地 形 表 現 及 び設 計 支 援 に応 用 し
は,この 3 次 元 仮 想 空 間 内 において道 路 設 計 を行 うシス
たシステムの構 築 を進 めており,ここでは,①航 空 写 真 の
テムであり,道 路 線 形 の定 義 にはパラメトリック曲 線
立 体 視 を用 いた道 路 設 計 支 援 システム,②HMD を用 い
(B-spline)を適 用 し,空 間 内 に制 御 点 を設 定 することに
た地 形 表 現 ・都 市 空 間 モデリングシステム,③触 覚 可 能
より,容 易 にその線 形 を定 義 できるようにしている.
図 3 は本 システムのインターフェースを示 している.航
な地 形 表 現 システムについて述 べる.
空 写 真 上 で定 義 した線 形 に基 づき,道 路 構 造 物 の 3 次
元 モデ ルが自 動 的 に生 成 さ れ , 平 面 図 ,縦 断 図 , 透 視
(1)航 空 写 真 の立 体 視 を用 いた道 路 設 計 支 援 システム
図 が表 示 されるようになっている.
道 路 や鉄 道 等 の土 木 構 造 物 の設 計 においては,地 形
と調 和 を図 ることが極 めて重 要 である.一 般 に地 形 情 報
本 システムの利 点 は,航 空 写 真 からの地 形 的 特 徴 (地
は,地 形 図 上 の等 高 線 として表 現 されており,読 図 者 は
す べ り等 ) の判 読 能 力 に優 れた 技 術 者 が , パラ メトリック
自 らの頭 の中 に正 確 に地 形 を再 現 する能 力 が求 められ
曲 線 を用 いた道 路 設 計 モジュールの支 援 により,直 接 ,
ている.しかしながら,このプロセスにおいては,人 間 の頭
道 路 線 形 を定 めることができることである.これは,地 形 条
脳 による 2D/3D 変 換 能 力 が必 要 とされており,その正 確
件 の悪 い山 岳 道 路 の設 計 等 に有 効 であると考 えられる.
性 は読 図 者 自 身 の経 験 や能 力 に依 存 する.このような問
また航 空 写 真 を直 接 適 用 することで,不 必 要 な図 化 の工
題 を解 決 す る ため に, 経 験 や 能 力 に依 存 しない 地 形 表
程 を省 くことが可 能 である.一 方 ,パラメトリック曲 線 を用
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図 4 VR-CAD の概 念 (巨 人 視 )
図 6 VR-CAD の表 示 画 像 の例
VPL
EyePhone90
ball-type
motion sensor
motion sensor
RS232C
graphic workstation
(IBM Intellistation)
Polhemus
electromagnetic motion
sensor system
IsoTrak II
transmitter
図 5 VR-CAD のシステム構 成
図 7 VR-CAD 利 用 風 景
VR-CAD におけるモデリングの入 力 インターフェースに
いた道 路 の線 形 が,現 行 の設 計 基 準 に必 ずしも適 用 で
きないことや,構 築 された道 路 構 造 物 と立 体 視 空 間 で仮
は,位 置 センサを用 いた 3 次 元 マウス及 びキーボードを用
想 的 に表 現 される地 形 面 との間 で演 算 処 理 ができないこ
いた.これらの操 作 により,建 物 (直 方 体 ・円 柱 ),道 路 ・
とが問 題 となる.
樹 木 等 の簡 便 な 3 次 元 モデリングを実 現 している.
本 システムの表 示 画 像 の例 とモデリング風 景 を図 6 と
図 7 に示 す.CAD の利 用 経 験 のある建 築 設 計 経 験 者 を
(2)HMD を用 いた地 形 表 現 ・VR-CAD システム
対 象 に,実 際 に本 システムを利 用 してもらった後 ,アンケ
これまでの空 間 設 計 は,図 面 をベースに行 われており,
設 計 者 自 らが図 面 を描 きながら,その 3 次 元 形 状 を自 ら
ートを行 なった.その結 果 ,カーソルの位 置 や,地 形 面 と
の頭 の中 に想 像 するという過 程 を経 ている.しかし VR 技
オブジェクトとの位 置 関 係 がわかりづらい等 の問 題 が明 ら
術 を適 用 すれば,コンピュータ上 に任 意 の仮 想 空 間 を 3
かとなっている(Makanae, 2003).
次 元 的 に定 義 することができる.蒔 苗 ・一 ノ坪 (2003)が開
発 した VR-CAD では,コンピュータ上 に構 築 された仮 想
(3)タンジブル地 形 表 現 システム
空 間 の中 に設 計 者 自 身 が入 り込 むことが可 能 であり,そ
(1)と(2)で紹 介 した地 形 表 現 ・設 計 システムの問 題 点
の仮 想 空 間 の中 における設 計 者 の存 在 スケールは任 意
として,
であり,実 スケールの人 間 として入 り込 むことや,図 4 に示
・地 形 面 とオブジェクトとの位 置 関 係 がわかりづらい
すように巨 人 として空 間 内 に存 在 することが可 能 である.
・特 殊 な立 体 視 装 置 を必 要 とする
また,設 計 者 の 2D/3D 変 換 能 力 に依 存 せずに,直 接 的
・視 野 が限 定 される
に 3 次 元 設 計 を実 現 するシステムである.
・グループワークができない
本 システムのハードウェア構 成 は,ヘッドマウントディス
等 が挙 げられる.著 者 らは,このような問 題 点 を解 決 する
プレイ(HMD)と 3 次 元 位 置 センサにより構 成 される(図 5).
ためには,タンジブルインターフェースの導 入 が有 効 であ
HMD と位 置 センサを組 み合 わせることにより,頭 部 の位
ると考 え,それを用 いた地 形 表 現 システムの構 築 を行 な
置 や向 いている方 向 を計 測 し,それに応 じた画 像 を表 示
っている(中 原 ・蒔 苗 ,2005).
する.したがって,上 下 左 右 360 度 の視 野 を自 由 に見 渡
タンジブル地 形 表 現 システムの構 成 を図 8 に示 す.地
すことができる.
形 面 を表 現 する伸 縮 性 スクリーンの形 状 を,8×8 の 64 本
本 システムは道 路 等 の大 規 模 な構 造 物 の構 築 を想 定
のアクチュエータにより制 御 し,スクリーン上 に空 中 写 真 を
しており,その基 盤 としての地 形 情 報 が必 要 不 可 欠 であ
投 影 することにより地 形 面 を表 現 している.実 際 にシステ
る.そこで,基 盤 となる 3 次 元 地 形 モデルとして,国 土 数
ムを用 いて表 現 した地 形 表 現 の例 を図 9 に示 す.航 空 写
値 情 報 の標 高 データ(50 m メッシュ)を適 用 し,仮 想 空 間
真 を投 影 し た 地 形 モデ ルは , 手 で触 れ る ことが でき る 地
での地 形 表 現 を実 現 している.
形 模 型 として表 現 される.今 後 は,この地 形 表 現 システム
9
プロジェクタ
PC
ステッピングモータの
制御回路
A
B
C
D
E
F
G
H
SELECTED
ON-LINE
ディジタル出力ボード
128点×2
図 8 タンジブル地 形 表 現 システムの構 成
図 9 地 形 表 現 の例
の有 効 性 に関 する評 価 を行 うとともに,本 システムを応 用
として構 築 した 3 次 元 データに基 づき,樹 脂 等 を材 料 とし
した道 路 等 の設 計 支 援 システムの構 築 を進 めていく予 定
た実 体 のある 3 次 元 モデルをリアルタイムで作 成 するラピ
である.
ッドプロトタイピングの技 術 が急 速 に進 んできており,最 近
で は地 形 模 型 の 作 成 に も 適 用 さ れ て い る . 当 該 技 術 の
普 及 は,より容 易 に地 形 モデルを作 り出 すことを可 能 とす
4.GIS のツールとしての地 形 表 現 システム
国 土 数 値 情 報 の整 備 と公 開 に伴 い,地 形 のデジタル情
る.問 題 となるのは,一 度 作 り出 した地 形 模 型 から電 子 情
報 を容 易 に入 手 ・利 用 できる環 境 が整 いつつある.しかし,
報 へのフィードバックが難 しいことと,上 記 (A)と同 様 にポ
入 手 した地 形 情 報 を視 覚 的 に表 現 しようとする場 合 ,そ
インティングデバイスの開 発 が必 要 なことである.
の表 示 領 域 は平 面 であるディスプレイに限 定 され,十 分
(C)3 次 元 ディスプレイを用 いた地 形 表 現 システム
な立 体 感 や スケー ル感 を得 るのが難 しい. 著 者 は, この
3 次 元 ディスプレイは特 殊 な機 器 を使 用 することなく,立
問 題 を解 決 するためにシステムの開 発 を行 なってきた.そ
体 認 識 を可 能 とするものである.著 者 の研 究 室 において
れらの開 発 で得 た知 見 を踏 まえて,地 形 表 現 システムに
も 3 次 元 ディスプレイを用 いた地 形 表 現 システムを実 際 に
必 要 な要 件 を以 下 に示 す.
開 発 ・利 用 しているが,個 人 差 はあるものの高 い立 体 感
①地 形 面 の立 体 認 識 が容 易 である.
を得 ており,①②④の要 件 を満 たしている.問 題 となるの
②立 体 眼 鏡 や HMD 等 の特 殊 な装 置 を装 着 しない.
は,③の仮 想 地 形 面 とデジタル地 形 情 報 との整 合 であり,
③表 現 された地 形 面 をデジタル情 報 と整 合 できる.
地 表 面 上 の 1 点 を正 確 に 指 示 す る こと が 難 し い とい う 問
④様 々な情 報 の重 畳 表 示 が可 能 である.
題 を有 している.
このうち①については,地 形 表 現 システムの前 提 条 件
5.おわりに
の 1 つであり,より高 度 な立 体 認 識 を可 能 とすることが望
ましい.②は,特 殊 な装 置 の利 用 が疲 れや酔 いを引 き起
本 論 文 では,これまで著 者 らが開 発 してきたデジタル地
こし,長 時 間 の利 用 を難 しくするためである.③は応 用 シ
形 情 報 からの地 形 表 現 システムと,その応 用 について紹
ステムの開 発 において,仮 想 地 形 の地 表 面 上 の 1 点 を確
介 した.また,GIS のツールとしての地 形 表 現 システムに
実 に数 値 化 し て抽 出 することが必 要 なた めである.④ は
求 められる要 件 を示 すとともに,今 後 ,有 用 であると考 え
表 現 され た 地 形 面 上 に, 航 空 写 真 のみ な ら ず , 土 地 利
られる地 形 表 現 システムについて述 べた.
デジタル地 形 情 報 の表 現 は,現 状 では 2 次 元 のディス
用 や都 市 計 画 のデータ等 を重 畳 することにより,システム
プレイに制 約 されているが,VR やロボティクスの発 展 に伴
を有 効 に活 用 しうるためである.
う表 現 ・制 御 技 術 の進 歩 により,今 後 はより容 易 に,現 実
これらの条 件 を考 慮 し,今 後 有 用 であると考 えられるシ
ステムを以 下 に示 す.
に近 い 3 次 元 情 報 としての地 形 表 現 が可 能 になると考 え
(A)タンジブル地 形 表 現 システム
られる.当 該 技 術 の発 展 は,地 理 学 ・地 質 学 ・土 木 工 学
著 者 らが現 在 ,開 発 を進 めているタンジブル地 形 表 現
等 の研 究 分 野 のみならず,建 設 分 野 における CAD インタ
システムは,①∼④の条 件 を全 て満 たし得 るシステムであ
ーフェースや,地 理 教 育 等 の幅 広 い分 野 での応 用 に寄
る.しかし,現 在 はまだ開 発 段 階 にあり,今 後 ,地 形 表 現
与 し得 ると考 えられる.
の解 像 度 を向 上 させる必 要 があるとともに,一 般 にも容 易
に利 用 できる ような機 器 開 発 が必 要 である.また仮 想 地
形 上 でのポインティングデバイスの開 発 も必 要 である.
(B)ラピッドプロトタイピングを用 いた地 形 表 現 システム
近 年 は CAD/CAM システムの発 達 に伴 い,CAD データ
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参考文献
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Surroud-Screen Projection-Based Virtual Reality:
The Design and Implementation of the CAVE.
Proceedings of SIGGRAPH’93, 135-142.
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次元路線計画システム. 土木学会論文集,
No.590/IV-39, 23-30.
Makanae, K. (2002): Stereoscopic Systems for 3-D
Highway Route Planning on Aerial Photo-graphs,
International
Journal
of
Design
Sciences
&
Technology, Vol.9-1, 15-22. Europia Productions,
2002.
蒔 苗 耕 司 ・一 ノ坪 平 (2003): HMD を用 いた 3 次 元 都 市
空 間 モデリングシステム. 3 次 元 画 像 コンファレンス
2003 講 演 論 文 集 , pp.221-224.
Makanae, K. (2003): Development of the VR-CAD
System
for
Landscape
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Proceedings of the CONVR2003, Virginia Tech,
114-121.
中 原 守 勇 ・蒔 苗 耕 司 (2005):触 覚 可 能 な地 形 表 現 システ
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文 ・デモコンテンツ集 , C311.pdf.
Piper, B., Ratti, C., Ishii, H. (2002): Illuminating Clay:
A 3-D tangible interface for landscape analysis. In
Proceedings of the Conference on Human Factors in
Computing
Systems
(CHI’02)
20–25
April,
Minneapolis.
安 居 院 猛 ・中 嶋 正 之 ・羽 倉 弘 之 (1985): ステレオグラ
フィックス&ホログラフィ. 秋 葉 出 版 .
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