国 語 科 学 習 指 導 案

国 語 科 学 習 指 導 案
第1校時
指導学級 第3学年1組(教室)
指導者 教諭 岩國柚美子
1
題材名
「俳句を作って句会を開こう」
2 指導にあたって
(1) 題材について
俳句の元となった俳諧は,和歌をルーツとし,歴史を遡ること平安時代の「古今和歌集」に初め
てその言葉が登場する。その後,鎌倉時代に公家の間で連歌の流行が起こり,この発句が独立して
俳句の形に整っていくこととなる。文芸への昇格と認知,談林派による一世風靡と空中分解を経て,
江戸時代,松尾芭蕉の登場により,ついに俳句は芸術へと昇華することとなる。そしてこの芭蕉の
俳句は,正岡子規に代表される近代俳句の源流となっていく。
現代においても,俳句は,五・七・五の短い韻律,季語や切れによる,切り詰められた世界であ
りながら,人の思いや美しい自然との,瞬間の出会いを豊かに表現し,写真のように半永久的な「言
葉の器」として,人々に愛好されている。まさに不易流行,「言葉は生きている」ということを,
俳句の鑑賞によって我々は実感することができる。
本題材において,中心となる指導事項は,学習指導要領「書くこと」B(1)エ「書いた文章を互
いに読み合い,論理の展開の仕方や表現の仕方などについて評価して自分の表現に役立てるととも
に,ものの見方や考え方を深めること」である。俳句の創作を通して,切り詰められた言葉の世界
が作り上げる豊かで自由な表現力について考え,想像力を駆使して情景や心情を読み解く楽しさや,
同じ中学生からの思わぬ着眼や,深い表現を味わわせることで,語彙を豊かにし,表現の幅を広げ,
自らの言語感覚を磨くための手立ての1つとしたいと考える。
(2)生徒について(男子12名 女子13名 計25名)
学習に前向きに取り組み,分からないことを教え合いながら和やかな雰囲気で授業に臨んでいる。
小学校から継続している狭い人間関係の中でお互いを理解し合っており,自分の気持ちを言わなく
ても汲み取ってもらえてしまうため,相手に対して言葉が足りない生徒もいる。課題解決の力には
個人差が大きいが,ペアや小グループでの活動を経ることで,自分だけでは完成できなかった課題
(考えをまとめたり,わかりやすく説明する取組など)を解決する糸口をつかめる生徒も見られる。
全体の場で積極的に意見を出せない生徒も,書く課題に対して真摯に取り組んでいる。
以下に学級における国語の学習に関する生徒の実態調査の結果を挙げる。
<国語の学習に関するアンケートから>
平成25年4月23日実施(実施人数24名 欠席1名)
<問1> 国語の学習で,自分は比較的できていると思うものに○,できていないと思うものに△を
つけてください。
[読む]
①文学的文章の読み取り…………………………○
②説明的文章の読み取り…………………………○
[書く]
③学習した内容について自分の意見を書く……○
④詩や短歌の鑑賞文を書く………………………○
[話す・聞く]
⑤小グループで話し合いや意見交換をする……○
⑥小グループで他の人の意見や考えを聞く……○
⑦全体の場でスピーチや発表をする……………○
15 名
8名
△ 9名
△ 16 名
⑧ 「読む」「書く」「話す・聞く」の中で
最も意欲がある内容
(分野問わず1つだけ回答)
8名
9名
△ 16 名
△ 15 名
16 名
18 名
4名
△ 8名
△ 6名
△ 20 名
読む(6名)
書く(5名)
話す・聞く(13名)
<問2> 俳句について知っていることを書いてください。(複数回答)
・五・七・五(14名)
・季節の言葉(8名)
・短い詩のようなもの(2名)
・松尾芭蕉(4名) ・小林一茶(1名) ・短歌に似ている(3名)※混同している生徒もいた
※小学校で学習したことを挙げている生徒もいた
- 1 -
⑨学習前に教科書から第一印象だけで選んだ「心惹かれる/情景や心情が想像できる一句」
たんぽぽや 日はいつまでも 大空に(中村汀女)………8名
春風や 闘志抱きて 丘に立つ(高浜虚子)………………7名
分け入つても分け入つても青い山(種田山頭火)…………3名
赤蜻蛉 筑波に雲も なかりけり(正岡子規)……………2名
冬菊の まとふはおのが 光のみ(水原秋櫻子)…………2名
囀りを こぼさじと抱く 大樹かな(星野立子)…………1名
をりとりて はらりとおもき すすきかな(飯田蛇笏)…1名
万緑の 中や吾子の歯 生え初むる(中村草田男)………0名
・全体の意味が取りにくい句
・語彙力が必要である句
・語句の意味が難しい句
・情景や心情が想像しづらい句
・自分の体験を重ねにくい句
ほど選んだ生徒が少ない。
「読む」の結果から,言語機能において「主観性」「曖昧性」「虚構性」や「感覚的」な特徴を
もつ文学的文章の方が,「客観性」「論理性」「事実性」や「概念的」な特徴をもつ説明的文章より
も理解しやすいと答えており(①及び②),このことが「書く」活動への非達成感へとつながって
いると考えられる(③及び④)。「話す・聞く」活動については,「読む」「書く」と比べて,意欲
的な生徒が多く(⑧),小グループでの学習には,いずれも意欲的に取り組んでいる(⑤及び⑥)。
ただし,「自分だけで話す」ことへのモチベーションは低いことが分かる(⑦)。自分の書いたも
の,使った言葉への肯定感を与えながら,一人一人の表現のよい点や,きらめく言葉の選択を取り
上げ評価しながら指導することで,自分の中に息づく言葉の生命力や表現の多様性に気付かせたい。
(3) 指導について
この単元の1つ目の題材「言語の有限性と無限性」では,2つの具体的な言葉の対比から,筆者
の主張「曖昧にしか表せない言語の有限性によって,どんな事柄でも表すことができるという言語
の無限性が成り立っている」を捉え,論理的な文章を読み解く力を鍛えることができる。2つ目の
題材「俳句の読み方,味わい方」「俳句五句」では,小学校でも学習した俳句の仕組みや約束事を
振り返りながら,より詳しく知識を定着させ,また,秀作の鑑賞を通して,俳句の奥深さや豊かさ
に触れることができる。これらは学習指導要領「読むこと」C(1)ア「文脈の中における語句の効
果的な使い方など,表現上の工夫に注意して読むこと」に対応しており,本題材では既習事項を活
かして,俳句を創作することで,自分だけの表現を探り,言葉を切り詰めて自分の言語世界を構成
する力を身に付けさせたい。また,お互いの創作した句を鑑賞し合い,感想を交流する活動を通し
て,様々な表現の仕方について,自分の考えを交換する場をもたせたいと考える。
2学期には古典学習材「万葉・古今・新古今」「おくのほそ道」が設定されている。先人が作り
上げた五音七音による,時代を超えて我々に呼びかけてくるような生きた言葉の世界を,より深く
読み取っていく学習へとつなげたい。
3
指導目標
・言葉を吟味し,よりよい表現を模索して俳句を創作させる。
・句会を行い,互いの表現のよいところを参考にすることで,自己表現力を高めさせる。
4
指導・評価の計画(2時間扱い・・・・・本時2/2時間)
時間
学
習
活
動
指導の手立て・留意点
資料や準備物
評価規準
1/2 ・教科書 P.20「俳句を作る」を
読み,俳句創作に取り組む。
・課題の条件(有季定型である
こと)を理解させる。
・手順を2つ提示し,どちらか
で創作するよう指示する。
a…先に季語を決める
b…先に句全体の物語を考える
教科書
資料集
ワークシート
①(関)
②(関)
⑤(書)
2/2 ・教科書 P.21「 言葉の力 読み
合って評価する」を読み,評
本時
価するときのポイントを確認
する。
・グループで句会を開き,俳句
を鑑賞し,他者の表現や言葉
の生かし方を評価する。
・選句用紙にある俳句について
よいと思う表現を抽出させ,
理由を考えさせる。
・小グループごとに選句用紙に
ある俳句について鑑賞させ,
情景や心情を想像させる。
・句会で挙がった作品への意見
教科書
選句用紙
感想カード
①(関)
⑤(書)
- 2 -
・グループで優秀俳句を決定し
その理由を説明する。
を発表させる。
5 本時の指導計画
(1)題材名
「句会を開こう」
(2)本時のねらい
・互いの俳句を鑑賞し合い,よりよい自己の表現力や言語感覚を身に付けさせる。
(3)指導の着眼点
本校研究主題「自ら学ぶ生徒の育成 -「伝える力」を高める授業づくりを通して-」に向けて,国
語科では「話す」「聞く」活動に重点を置き,自分の思いや考えを的確に伝える(話す)力や,相手の表
現から,自分の思考を広げ,効果的な表現を取り入れる(聞く)力を育てる指導や授業展開を工夫する
取り組みを行っていく。本時では特に「話す」活動に重点を置き,的確に「話す」ための前時の指
導として「書く」ことにしっかりと取り組ませていきたいと考える。
研究主題に迫るための視点から,本時では「1 課題意識を高める導入の工夫」については,生
徒の興味・関心を高める選句用紙の提示や導入を工夫し,授業への意欲を高めさせたい。また,視
点「2 伝える力を高める学び合いの場の工夫」については,選句用紙から俳句を鑑賞する際に,
1人で考える時間をとり,しっかりと自分の考えをもたせた上で,感想を交流するグループの活動
に移行させたい。「話す」ための「書く」活動を定着させていく中で,言語感覚を磨き,「相手に
伝える」ための発表を通して,研究主題に迫りたい。
(4)準備物
生徒 …
教師 …
教科書,資料集,ノート
教科書,資料集,選句用紙,拡大した清記用紙(模造紙),花,感想カード
(5)本時の指導過程
評価欄:観=観察
段
学
指
導
内
動
活動形態
1 本 時 の 学 習 内 容 <言 葉
の生かし方や効果的な
表現を学び合おう>を理
解させる。
' 05
2
展
活
選=選句用紙
感=感想カード
◎指導上の留意点
容
階
導
入
習
発=発表
作った俳句を鑑賞し
合うことで,同じ中学
生がもっている様々な
表現に触れさせる。
1
クラスメイトが創作し
た俳句作品に使われてい
る言葉の生かし方や効果
的な表現を捉え,評価し
合う学習であることを理
解する。 一斉
2 作った俳句を鑑賞し,
自分が良いと思う作品を
二句選句する。
個別
✽俳句は半分ずつA・Bに分け(ランダム),
どちらか片方を鑑賞・評価することとする。
✽4人×6グル ープに分け,3グループがAを,
3グループがBを鑑賞・評価することとする。
- 3 -
○支援・援助・準備物
評 価
観 方
点 法
○授業開始前に清記用紙は
黒板に掲示しておく。
◎教師の指示・説明をしっ
かりと聞き取らせる。
○選句用紙を配布する。
◎自分の意見をまとめさせ
る時間を5分程度とる。
○なかなか書けない生徒に
は,机間指導によって支
援を行う。
①
観
3
選句用紙を基に,選 3 選句した二句について
んだ二句を発表させる。
1人ずつ発表し,選んだ
なぜ選んだか,理由や
理由や鑑賞した感想,句
感想も簡単に述べさせ
に対する印象などを交換
る。
する。
グループ
◎1人1人がしっかりと自
分の意見を述べるよう声
掛けを行う。
③
観
発
4
グループで得票が多
かった二句について紹
介する準備をさせる。
4 グループ内で話し合い, ○まとまらないグループに
自分たちの「天晴句」を
は,机間指導によって支
決定し,その理由をまと
援を行う。
める。
グループ
○二句目が決まらない場合
一句のみで良しとする。
③
⑤
観
選
5
全体の場で,グルー
プの考えを代表に伝え
させる。
5 全体の場で,グループ
の考えを代表が伝える。
一斉
①
選
⑤
感
開
' 35
終
結
' 10
✽グループの二人がそれぞれ一句ずつ紹介する。
✽他の二人は選んだ俳句の清記用紙に花をつける。
◎聞く側の態度にも注意さ
せる。
○グループの全員に役割が
振られるよう配慮する。
人数が足りない場合は花
付けを1人で行うなど,
偏らないように臨機応変
に取り組ませる。
6
最も得票が多かった
句を「秀逸句」とし,
全体に紹介する。
6 「 秀 逸 句 」 に 選 ば れ た ◎コメントは短くてもよい
生徒は,名乗りを挙げる。
ので,堂々と発表させる。
作意を発表する。
7
本時の学習について
振り返らせる。
7 自己評価・感想を書く。 ◎選句用紙を回収する。
◎各自の俳句を掲示するこ
とを伝える。
(6)本時の評価規準
評 価 規 準
おおむね満足できる(B)
十分満足できる(A)
努力を要する生徒(C)への
具体的な手立て
評価方法
関心・意欲・態度(①)
・他者の俳句作品に関心
をもち,積極的に句会
に参加する姿勢が見ら
れる。
・俳句の構成や言葉遣いに関
心をもち,詠まれている作
者の心情や情景を考えるこ
とができている。
・分からない言葉や難しい表
現を解説・支援する。
・情景や心情の例示を行い,
どんな風に感じるかを考え
させる。
机間指導
観察
選句用紙
への書き
込み
書くこと(⑤)
・作った俳句を互いに読
み合い,情景や心情の
表現,作品の良さを評
価している。
・言葉の生かし方や効果的な
表現を捉え,作品を的確に
評価し,良さを指摘してい
る。
・良いと思った句について,
思い浮かんだ情景を書いて
みるよう促す。
選句用紙
感想カー
ド
机間指導
観察
- 4 -
(7)板書計画
句会を開こう~天晴、この一句~
「言葉の生かし方や
効果的な表現を学び合おう」
×
人数分
拡大した清記用紙
(例)
- 5 -
菜の花や月は東に日は西に
※各グループ「天晴」
には花をつける
※「秀逸」一句には
大きな花をつける
etc
(8)座席表(省略)
夏嵐机上の白紙飛び尽くす
グループタイム
~(時間板書)
湯湿りの髪をどさりと夏 畳
・
・
・
海に出て木枯らし帰るところなし
シンキングタイム
~(時間板書)