温暖、閉塞前線

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3. 前線
二つの気団が接するところに前線が形成される。温暖な気団と寒冷な気団が接するところでは、二
つの気団が交じり合うことはなく、主さの違いから、軽い暖気が上側に位置し、重い寒気が下側に位置
し、傾斜した境界面を形成する。この境界面が「前線面」と呼ばれ、境界面が地表に接する線を「前線」
と呼ぶ。
3.1. 寒冷前線
寒冷前線は、寒気が暖気へ接近する際に形成される。重たい寒気が、暖気の下に潜り込んで、暖気
を押し上げることで、対流性の積乱雲が形成される。寒冷前線は、比較的早い速度で移動し、通過の
際には、雷雨や突風が発生する。
前線面の傾きは、70~100km の距離に対して、1km の高度変化とされる。
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3.2. 温暖前線
温暖前線は、暖気が寒気へ押し寄せるところにできる。軽い暖気は、寒気の上を穏やかに上昇する。
温暖前線には、層状の乱層雲が形成される。温暖前線は、寒冷前線に比べ、移動速度が遅いため、通
過時には、広い範囲で、穏やかで長時間の降雨となる。
前線面の傾きは、200~300km の距離に対して、1km の高度変化とされる。
3.3. 閉塞前線
移動速度の速い寒冷前線が、弱い寒気の温暖前線の下に潜り込んだり、強い寒気の温暖前線の上に
上がってしまったりする。この際に、寒冷前線と温暖前線との間にあった暖気を上空へ押し上げる。
このように、寒冷前線と温暖前線が閉じる現象を閉塞と呼ばれることから、閉塞前線と言う。
寒冷前線の現象と温暖前線の現象が重なって観測される。
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課題6 アメダスデータから前線の通過時刻を推定しよう。
① 準備
教材フォルダから「20150609 前線通過」のフォルダを D:¥TEMP へダウンロードする。
千葉と館山の 2015 年 6 月 9 日の気象庁のアメダスデータの一部を用意した。これは、気象庁のアメ
ダスサイトにおいて、測点の選択、観測項目の選択、観測期間の選択により、CSV 形式でダウンロー
ド可能である。
② エクセルでの編集
ラインとカラムを次のように修正する。
3.3.1.1. 1,2行目を削除する。
3.3.1.2. B には、日付時刻シリアル値を計算するための年月日
3.3.1.3. C には、日付時刻シリアル値を計算するための時刻
3.3.1.4. G には、風向をグラフに表示するための風向(°)
3.3.1.5. M には、風向をグラフに表示するための風向(°)
③ 日付からシリアル値へ変換関数
B3
=MID(A3,1,SEARCH("日",A3))
検索対象文字列:A3
開始の文字数:1番目から
文字列の長さ:日の文字数(SEARCH(“日”))
C3
=MID(A3,SEARCH("日",A3)+1,LEN(A3)-1-SEARCH("日",A3))
検索対象文字列:A3 の文字列、
開始の文字数:日の文字の文字数(SEARCH(“日“))+1、
文字列の長さ:全体の文字数(LEN(A3)) -1 -日までの文字数(SEARCH("日”,A3)
D3
=DATEVALUE(B3)+C3/24
日付のシリアル値:DATEVALUE(B3)
時刻を 1 日単位とするため:C3/24
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④ 風向から角度への変換テーブル
新しくシートを起こし、
A 列に北から北北西までの 16 方位、
B 列に対応する角度をにゅうりょくする。
⑤ 風向から角度への変換
G の列:=VLOOKUP(F3,方位角度!A$1:B$16,2,)
M の列:=VLOOKUP(L3,方位角度!A$1:B$16,2,)
VLOOKUP 縦方向のテーブルから該当する文字列を探し、指定した列のデータを抽出する。
G の列:千葉の風向なので F 列を指定する。
M の列:館山の風向なので G 列を指定する。
検索テーブル:方位角度のシート(方位角度!)の A1 から B16(A1:B16)まで。$1 と$16 は、セルを
コピーしたときに変化しないために、絶対アドレスとする。
指定列:2列目の角度を指定する。
⑥ セルのコピー
コピーするセルを選択し、右下のオートフィルのアイコンをダブルクリックする。
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⑦ グラフ化その1(千葉の風速、風向(°)、降水量、気温)
千葉の風速、風向(°)、降水量、気温の時間変化を示すため、D 列、E 列、G 列、H 列、I 列の 1 行
目を除き選択する。
挿入からグラフの散布図を指定する。
風向の数値が他の変数に比べて大きいので、第 2 軸へ移動する。このため、風向のポイントを右クリッ
クし、
「データ系列の書式設定」を選択する。
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「軸のオプション」→「表示形式」→「カテゴリ」から時刻を選択し、その上で、「表示形式コード」
を「m/d h;@」と入力し、追加ボタンをクリックする。
グラフ要素の追加から
軸ラベル → 第 1 縦軸 → ラベルを修正する。
軸ラベル → 第 2 縦軸 → ラベルを修正する。
コピー、ペーストにより、ワードへ貼り付ける。
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⑧ グラフ化その2(千葉の風向(°)、気圧)
1 行目を除き、D 列、G 列、J 列を選択する。
挿入、グラフ、散布図を選択する。
気圧の変化が、風向に比べて小さいので、風向を第 2 軸へ移
動する。このため、風向のポイントを右クリックし、
「データ
系列の書式設定」を選択する。
マーカーの色の変更
コピー、ペーストにより、
ワードへ貼り付ける。
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⑨ グラフ化その3(館山の風速、風向(°)、降水量、気温)
館山の風速、風向(°)、降水量、気温の時間変化を示すため、D 列、K 列、M 列、N 列、O 列の 1 行
目を除き選択する。
挿入からグラフの散布図を指定する。
風向の数値が他の変数に比べて大きいので、第 2 軸
へ移動する。このため、風向のポイントを右クリッ
クし、
「データ系列の書式設定」を選択する。
コピー、ペーストにより、ワードへ貼り付ける。
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⑩ グラフ化その2(館山の風向(°)、気圧)
1 行目を除き、D 列、M 列、P 列を選択する。
挿入からグラフの散布図を指定する。
気圧の変化が、風向に比べて小さいので、風
向を第 2 軸へ移動する。このため、風向のポ
イントを右クリックし、
「データ系列の書式設
定」を選択する。
コピー、ペーストにより、ワードへ貼り付ける。
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課題6 アメダスデータから前線の通過時刻を推定しよう。
学籍番号
氏名
2015 年 6 月 8 日~10 日にかけて、千葉県上
を温帯低気圧が通過した。この温帯低気圧の南
東側には温暖前線、南西側には寒冷前線をとも
なっていた。
千葉の降水量の時間変化を見ると、6 月 9
日
時から雨が降り始め、同日
時頃まで継続
した。6 月 10 日 時頃に、寒冷前線が通過した
と考えられ、風向が南東方向から北西方向へ変
化した。同時に、風速の一時的な上昇、気温の一
時的な低下がみられた。
気圧に注目すると、
6 月 9 日 時ごろまでに、
大きく低下した。
館山の降水量に注目すると、6 月 9 日 時頃
から降り始めた雨は、6 月 9 日 時頃に降り止
み、温暖前線が通過した。その後、6 月 9 日 時
~
時に降雨が観測され、短時間の間に寒冷前
線が通過した。
温暖前線の通過により、風向きが東風から、
南の風を経て、北西の風まで変化した。また、同
時に気温の低下がみられた。
館山の気圧変化に注目すると、千葉と同様な
低下となり、寒冷前線の通過まで低い気圧が続
いた。