pdfファイル - 日本動物学会 第 86回大会

(社)日本動物学会
平成 16 年度中部支部大会及び公開シンポジウム
プログラム・講演要旨
2004 年 7 月 23 日(金),24 日(土)
会場:静岡グランシップ
静岡大学
〒422-8529 静岡県静岡市大谷 836
大会事務局
田中滋康(大会委員長) 塩尻信義 竹内浩昭 小池 亨
http://www.soc.nii.ac.jp/zsj/sibu/chubu/annai_407.html
7 月 23 日(金)
13:00∼16:15: 一般口頭発表(15 分間:口演 12 分,質疑 3 分)
O-1
マウス自己免疫病発症に対する Bisphenol A および Genistein の影響
○茶山和敏(静岡大・農学),螺良愛郎(関西医科大・病理学第二講座)
O-2
ウズラ・アグーチ遺伝子の同定並びに羽毛芽色素パターン形成過程における発現解析
○丹羽 透 1,中村 明 2,塩尻信義 3 (1 国立がんセンター研究所・発がん,2 静岡県立大,3 静岡大・理・生地環)
O-3
ヒトデ多精卵における極体様構造(polar-body like structure, PLS)の形成
鄭 仁成,可児里美,花井邦成,○山本謙也(岐阜大学 農学部 多様性生物学講座)
O-4
カタユウレイボヤ精子の運動活性化に関与するタンパク質について
○保住暁子 1,2,戸田年総 3,稲葉一男 2(1 東北大・生命科学,2 筑波大・下田臨海,
3
都老人研・プロテオーム)
O-5
キンギョ卵におけるカゼインキナーゼ Ia の 4 種類のアイソフォームのクローニングおよび発現解
析
○堀口 涼 1,2, 徳元美佳 1,2, 長濱嘉孝 2,3, 徳元俊伸 1,2 ( 1 静岡大・理・生地環, 2 科学技術振興機構,
3
基礎生物学研究所)
0-6
新規膜結合型プロゲスチン受容体
○柴田安司,長濱嘉孝,吉国通庸(基生研・生殖)
O-7
ゼブラフィッシュ A 型精原細胞の単離法とその培養系の開発
○ 斉藤憲二1,2 , 長濱嘉孝1, 酒井則良2 ( 1基生研・生殖,2遺伝研・小型魚類開発)
O-8
ゼブラフィッシュ初期胚由来培養細胞の二次胚誘導能の解析
〇橋口 恵1,2, 酒井則良2 ( 1福井県大・海洋生物資源,2遺伝研・小型魚類開発)
O-9
メダカの器官形成を三次元画像で見る
萱野公平,原田智弘,Lee Lawlence,橋本寿史,○尾里建二郎,若松佑子
(名大・生物機能セ)
O-10 Cloning, expression and characterization of three types of 17b-hydroxysteroid
dehydrogenases from the Nile tilapia, Oreochromis niloticus
OLinyan Zhou, Deshou Wang and Yoshitaka Nagahama
(Laboratory of Reproductive Biology, National Institute for Basic Biology,
Okazaki 444-8585, Japan)
0 - 1 1 Differential Expression of Medaka DMY and DMRT1
○En-Lieng Lau, Masaru Matsuda, and Yoshitaka Nagahama
(Laboratory of Reproductive Biology、National Institute for Basic Biology, Okazaki
444-8585 and CREST) 1
O-12 遺伝的全雄コイの性分化に対する外因性女性ホルモンの影響
ビテロジェニンは環境ホルモンによる性分化障害の指標となるのか
平井俊朗,松原 創,寺本由宇,佐藤 将,原 彰彦,榊 克子,中村 將
(帝京科学大・バイオ,新潟県内水面水試,北大院・水産,琉球大・熱生研)
特別講演
16:30∼17:30 S I - 1 「ツメガエル中期胞胚遷移のチェックポイント制御」
佐方功幸(九州大・理学研究院・生物科学)
17:30∼18:30 S I - 2 「カエル卵成熟に魅せられて」
石川勝利(静岡大・理・生物) 19:00∼ 懇親会(静岡グランシップ内)
7 月 24 日(土)
9:30 - 12:00:一般および 高校生による口頭及びポスター発表
O/P-1 ベッコウトンボの産卵条件調査,シオカラトンボの光感覚調査,カニの産卵リズム調査
山本紘之,平野雅大,鈴木貴博,杉浦 修(顧問),松本幸啓(顧問)(静岡県立磐田南高校)
O/P-2 パソコン・ビデオを使った動物行動・形態変化の観察(ダイジェスト)
高原 理,榊 拓也,梅田祐樹,小林設郎(顧問)(静岡県立長泉高校・自然科学部)
P-3
トリブチルスズ(TBT)のシオダマリミジンコに対する影響 林 祐司,奥田里澄,神水彩花,小野剛志,伊藤直樹,山下宏幸,西飯信一郎
(鈴鹿高校・自然科学部・三重)
P-4
鈴鹿川水系の環境調査Ⅰ 林 祐司,奥田里澄,神水彩花,小野剛志,伊藤直樹,山下宏幸,西飯信一郎
(鈴鹿高校・自然科学部・三重)
P-5
絶滅危惧植物であるミクリの調査・研究について
笹井良太,前川裕児,稲垣聖二(顧問),山本幸憲(顧問)(静岡県立静岡高校・生物部)
P-6
メダカが空を飛ぶ可能性について
伊藤彰紀,田島一輝,赤座由華,佐分隆文(滝高校・生物部・愛知)
P-7
魚類肝臓中のシスタチオニンγ-リアーゼの性状と分布
○貝増卓見,高橋智子,田中奈津美,後藤孝信(沼津高専),原崎孝 (焼津冷蔵)
2
P-8
ウナギ肝臓中の含硫アミノ酸代謝に関係した酵素活性の分布
○田中奈津美,後藤孝信,木根悠太(沼津高専),原崎 孝 (焼津冷蔵)
P-9
魚類肝臓中のシステインジオキシゲナーゼ活性の測定方法について
○木根悠太,蓮実文彦,望月明彦,後藤孝信(沼津高専)
P-10
アルテミア(Artemia franciscana)における内分泌撹乱化学物質の暴露影響
湯山育子 1,2,○竹内浩昭 1(1 静岡大・理・生物,2 東大・海洋研・海洋生命科学)
P - 1 1 トノサマガエルの精巣卵出現とビテロジェニンの関連性
○磯田真希 1,持田弘 2,鈴木雅一 1,田中滋康 1 (1 静岡大・理・生物,2 蛋白精製工業)
P - 1 2 マウス肝再生過程における肝細胞増殖因子 (HGF) とその受容体の分布変化の解析
○前田裕代,小池 亨,塩尻信義 (静岡大・理・生地環)
P - 1 3 マウス胎仔肝芽細胞の増殖・分化における細胞外マトリックスの働き
○杉山良典,小池 亨,塩尻信義(静岡大・理・生物地球環境科学科)
P - 1 4 両生類におけるアクアポリン1の発現と局在
○久保田眞,長谷川敬展,和田智恵美,鈴木雅一,竹内浩昭,田中滋康(静岡大・理・生物)
P - 1 5 ウシガエル赤血球の甲状腺ホルモン取り込み機構と甲状腺ホルモン応答遺伝子への化学物質の影
響
○嶌田直幸,山内清志(静岡大・理工学研究科・生物地球環境科学)
P - 1 6 マウスの実験的精巣性テラトーマ形成にかかわる新規遺伝子候補群の染色体マッピング
○池田よし江1,久保生恵2,藤田菜都美2,菅沼さえり2,野口基子2(1 静岡大院・理工・
生地環,2 静岡大・理・生地環)
P - 1 7 マウスの生殖細胞欠損遺伝子 ter のファインマッピング
○ 宮口千晶2,高林秀次3,大藤利通1,花光里沙1,野口基子1
(1 静岡大・理・生地環,2 静岡大院・理工・生地環,3 浜松医大・動実)
P - 1 8 ドイツにおけるビオトープ保護の現状と問題点
岩澤 淳(岐阜大学・応用生物・環境生態)
3
シンポジウム:
『身近な動物の多様な生き方のふしぎ - カタツムリからウズラまで-』
SII-1
13:00
SII-2
13:30
「私が出合った奇妙な動物たち―動物の多様な形態と進化」
- 13:30
西川輝昭(名古屋大・博物館)
「鏡に映るカタツムリの進化」
- 14:00
浅見崇比呂(信州大・理・生物)
S I I - 3 「ホヤとヒトとの間にあるもの - 進化発生研究とバイオ技術のはざまで -」
14:00 - 14:30
小笠原道生(千葉大・理・生物)
S I I - 4 「ヤツメウナギから脊椎動物下垂体の進化を考える」
14:30 - 15:00
内田勝久(理研,新潟大・臨海実験所)
15:00 - 15:15 休憩
S I I - 5 「本当ですか,カエルではお腹から水を飲むというのは」
15:15 - 15:45 田中滋康(静岡大・理・生物)
S I I - 6 「生物学とウズラ」
15:45 - 16:15 中村 明(静岡県大名誉教授)
16:15 - 16:30 休憩
S I I - 7 特別講演:「メダカの性はどのようにして決まるのか - 脊椎動物における性決定の多様性 -」
16:30 - 17:30 濱口 哲(新潟大・理・自然環境)
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SI-1
ツメガエル中期胞胚遷移のチェックポイント制御
佐方 功幸
九州大学大学院 理学研究院 生物科学部門
哺乳類を除くほとんどの動物卵で、細胞周期は卵割期には非常に短いが、(中期) 胞胚
期に突然長くなる。実際、卵割期はほとんど S 期と M 期のみからなり、中期胞胚期で
初めて G1 期や G2 期が導入され、細胞周期が伸長化する。そして、一般的に、中期胞
胚期における細胞周期の伸長化は、胚性の転写開始や細胞の運動能獲得を伴う。これら
の中期胞胚期における生理的変化は一括して中期胞胚遷移 (midblastula transition;
MBT) と呼ばれている。
一方、真核生物細胞では、DNA の複製を阻害すると DNA 複製チェックポイントの
活性化により細胞周期が S/G2 期で停止する。そして、動物細胞では Chk1 が DNA 複
製チェックポイント経路のエフェクターキナーゼとして機能する。最近、Chk1 が動物
の初期胚発生における細胞周期制御や細胞生存に必須であることが示された。特にツメ
ガエルにおいて、Chk1 が MBT で一過的に活性化され、この時期の細胞周期の伸長化
に必須の役割を果すことが示された。Chk1 は通常の細胞周期でも弱い活性を持つが、
初期胚発生においては、幾何級数的に増えた DNA によって MBT で有意に活性化され
ると考えられる。
本講演では、ツメガエルの MBT における細胞周期の伸長化の分子機構について、最
近の演者らの成果を紹介したい。
・ N. Nakajo, T. Oe, K. Uto, and N. Sagata: Involvement of Chk1 kinase in
prophase I arrest of Xenopus oocytes, Dev. Biol., 207, 432-444 (1999).
・ T. Oe, N. Nakajo, Y. Katsuragi, K. Okazaki, and N. Sagata: Cytoplasmic occurrence of the Chk1/Cdc25 pathway and regulation of Chk1 in Xenopus
oocytes, Dev. Biol.,229, 250-261 (2001).
・K. Shimuta, N. Nakajo, K. Uto, Y. Hayano, K. Okazaki, and N. Sagata: Chk1 is
activated transiently and targets Cdc25A for degradation at the Xenopus
midblastula transition, EMBO J., 21, 3694-3703 (2002).
・N. Sagata: Untangling checkpoints. Science, 298, 1905-1907(2002).
・K. Uto, D. Inoue, K. Shimuta, N. Nakajo, and N. Sagata: Chk1, but not Chk2,
inhibits Cdc25 phosphatases by a novel common mechanism, EMBO J. (in press).
・佐方功幸,志牟田健,宇都克裕,井上大悟,中條信成: 初期発生における細胞周期の
チェックポイント制御. 細胞周期研究の新局面.(野島博,中山敬一,田矢洋一 編)実
験医学増刊 21,48-54.(羊土社)(2003)
・佐方功幸:初期胚発生における細胞周期・増殖の制御.(竹内隆,岸本健雄 編)発生
における細胞増殖制御. 40-50. (シュプリンガー・フェアラーク東京)(2004)
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SI-2
カエル卵成熟に魅せられて
石川 勝利
静岡大学 理学部 生物地球環境科学科 生物学教室 1960 年代生化学・分子生物学の黎明期に研究生活を始め、30 年余前にカエル卵成熟
の不思議さに出会い、以来この仕組みを分子レベルで明らかにしたいと思い続けてきま
した。卵成熟とは、停止していた卵母細胞の減数分裂がホルモンにより再開され 、 受精
に備える過程のことを言います。卵成熟の始まりは、脳下垂体から分泌される生殖腺刺
激ホルモンが卵母細胞を取り囲む濾胞細胞に働くことにあります。この刺激に応答して
そこから分泌されるステロイドホルモン(プロゲステロン)が卵母細胞に作用し卵成熟
が誘起され受精可能となります。一連の過程が多くの研究により明らかになりました。
「独創的な研究の始まりは 、 常に新しい道をつくることにある。」と言われますが、そ
の研究の起源のことは、多くの場合、忘れ去られていくようです。
「カエル卵成熟」の領域において、ヒストン・ステロイドホルモンの膜受容体・プロテ
アソ−ムといったキーワードが幅広く普及していなかった時代から研究を続けてきた演
者が、これまでの研究小史について、流れの速い今日、もう一度その基礎に立ち戻って
以下のようなお話をしたいと考えております。
① 染色体(DNA とタンパクの複合体)構成タンパクであるヒストン(H2B 分子種)の
アミノ酸配列を決定した(Nature 226:1056;1970 年)。
② プロゲステロン(卵成熟誘起ホルモン)の受容体は、細胞質(細胞核)内で はなく卵母細胞膜上にあることを確証した(Mol. Cell. Endocrinol. 9: 91;1977 年)。
③ 卵母細胞にプロテアソ−ム(新規タンパク分解酵素複合体)を発見し、その性状およ
び機能を明らかにした(Biochem. Biophys. Res. Commun. 192: 93;1993 年)。
④ 卵成熟が進行する過程に、亜鉛イオンの関与している因子を明らかにした [サイメッ
トオリゴペプチダ−ゼ(亜鉛イオン要求性金属ぺプチダ−ゼ)の発見 、 および MAPK
キナーゼの活性化に亜鉛イオンが関与している](Zool.Sci. 17:431;2000 年,Cell.
Signalling 15: 1139;2003 年)。
細く長い道でしたが、やればやるほど疑問が生じ、それを少しずづ明らかにし続けて
いるうちに、こんな時間が経ってしまいました。卵ひとつでもまだまだ多くの不思議が
詰まっています。
若い研究者達が自分の道をつくるべく多くの可能性の中から成果をあげて下さること
を願って止みません。 私の話も一つの生き方として多少ともお役に立つことが出来ま
したら幸いです。
最後に私の好きな言葉を一つ、「道はじぶんでつくる。道は自分でひらく。人のつくっ
たものはじぶんの道にはならない。」(書道家・詩人:相田みつを)。
6
SII-1
私が出合った奇妙な動物たち―動物の多様な形態と進化
西川 輝昭
名古屋大学 博物館
現在の地球上には、知られているだけでも約 150 万種の生物が生息しており、そのう
ち動物はなんと 100 万種以上を占めています。生物は形態(かたち)や生態(生活のし
かた)において実に多種多様ですが、こうした多様性は進化の結果です。
この立場から、シンポジウムの前座として、現在の地球上にどれほど色々な動物が私た
ちと共に生きているかをご紹介したいと思います。それによって、身近な動物たちが、
生物界の見取り図のどのあたりに位置しているかを理解していただければさいわいです。
あらすじは以下のとおりです。
1.進化とその証拠
2.生物とは、動物とは
3.動物多様性の見取り図―動物の系統樹と分類体系
4.私の出合った奇妙な海の動物たち―ナメクジウオ類、ホヤ類、
ギボシムシ類、フサカツギ類、ユムシ類、ホシムシ類、などなど
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SII-2
鏡に映るカタツムリの進化
浅見 崇比呂
信州大学 理学部 生物科学科
動物の門のうち、軟体動物門は、節足動物門に次いで最も多くの種をふくむ大きな分
類群(グループ)です。軟体動物には、腹足類(巻貝)のほかに、頭足類(タコ・イカ)、
二枚貝類(ハマグリ)、多板類(ヒザラガイ)などもふくまれます。巻貝には、ウミウ
シやナメクジもふくまれるので、体が巻いているとはかぎりません。この巻貝のうち、
陸にすむものがカタツムリとよばれます。海や淡水にすんでいた巻貝の、さまざまなグ
ループの祖先が、それぞれ別々に進化して陸上で生活できるようになり、そのたびに新
しい種となって分布を広げてゆきました。そのためカタツムリには、祖先が異なるいく
つものグループが部分的にふくまれます。そのうち、カタツムリの大多数の種をふくむ
グループが肺で呼吸する有肺類で、日本には約 500 種が知られています。炭酸カルシウ
ムが乏しい地上で、わざわざ殻をつくらなくても生きてゆけるようにカタツムリの祖先
が進化した結果、殻が退化したナメクジが出現しました。
巻貝には、左巻と右巻のものがいます。どちらに巻くかは一種類の遺伝子で決まって
います。他の動物と同様に巻貝も内臓が左右非対称ですが、その心臓や肝臓の配置も、
右巻と左巻では一般に、鏡に映したように反対になっています。交尾器や排泄口も、左
巻では首の左側に、右巻では右側に開きます。受精卵の最初の細胞分裂から、たがいに
左右逆に形ができてゆきます。求愛や交尾のための交配行動までが左右反対です。した
がって、巻貝の左巻と右巻は、いわば鏡の向こうとこちらで、たがいに鏡像の一生をす
ごしているのです。
右巻の種と左巻の種がいるからには、巻貝の祖先が進化して種がふえてゆく間に、体
中が左右反対の種(鏡像種)がくり返し進化したことになります。しかも、種ごとに左
巻か右巻のどちらか一方に決まっていて、両方の巻型が共存する例はまれです。それは、
両者の交尾が難しいからです。左右反転遺伝子は、突然変異でまれながら必ず生じます。
しかし、逆巻は交尾相手に恵まれず、子供(遺伝子)を残しにくいため、自然淘汰され
てしまうのです。ところが、移動力が低いため小さな集団に分かれ、わずかな個体数で
代々繁殖するカタツムリでは、たまには偶然に逆巻が多数派になることもあります。す
ると、逆巻のほうが交尾相手に恵まれ、繁殖上有利になって逆巻ばかりの集団になりま
す。逆巻だけの集団は、まわりの集団とは交配が難しいので、集団全体が逆巻になるだ
けで、鏡像の新種として進化できることが最近わかりました。
参考文献
浅見崇比呂・上島励 (2004) 鏡像遺伝子による新種の進化.細胞工学 23:338-339.
Ueshima, R. & Asami. T. (2003) Single-gene speciation by left-right reversal.
Nature, 425:679.
浅見崇 比呂 (2002) カタ ツム リ・ モノ アラ ガイ (有 肺類 )Pulmonata .細 胞工 学
21:1030-1031.
浅見崇比呂 (1997) 左巻き・右巻きのミラクル.貝のミラクル:軟体動物の最新学(奥
谷喬司編著)pp. 59-81 東海大学出版会.
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SII-3
ホヤとヒトとの間にあるもの −進化発生研究とバイオ技術のはざまで−
小笠原 道生
千葉大学 理学部 生物学科
ホヤは発生の一時期に脊索を持つことから、我々ヒトと同様に脊索動物として分類さ
れる。この脊索動物の中でもホヤは、脊索動物の共通祖先から最も早く分岐した動物群
である尾索類に属し、脊索動物の体づくりのメカニズムがどの様に進化してきたのかを
理解する上で重要な研究材料である。ホヤを用いた研究は数多く存在するが、日本では
マボヤ・カタユウレイボヤを用いた初期発生メカニズムの研究が精力的に行われており、
脊索動物が持つ基本的な生命現象ならびに脊索動物の進化を包括的にとらえるためのゲ
ノム解読プロジェクトも完了している。
今回のシンポジウムでは最先端のホヤ研究の話よりはむしろ、ホヤとヒトとの間に存
在する様々な関係を知ってもらうため、ホヤと我々一般生活との関係、動物の進化にお
けるホヤとヒトとの位置関係、研究現場でのホヤとヒトの関係などに関する話題を紹介
したい。
トピックスとしては、1)「生活におけるホヤとヒト」として、ホヤの生活史および
一般生活におけるホヤの利用法について、2)「進化におけるホヤとヒト」として、ホ
ヤとヒトの系統的位置関係について、3)「研究におけるホヤ」としてホヤの初期発生
研究を中心に、脊索・筋肉・神経索・cDNA プロジェクト・ゲノムプロジェクト・その
他のホヤ研究について、4)「咽頭器官の進化研究におけるホヤ」として、我々の研究
グループが行っている鰓裂および内柱の進化発生研究について、5)「ホヤ研究がもた
らすもの」として、ホヤ研究の一端からうまれたポストゲノム時代対応の遺伝子解析手
法に関することを紹介する。
参考文献:
・Noriyuki Satoh (1994) Developmental Biology of Ascidians, Cambridge
University Press
・佐藤矩行 編 (1998) ホヤの生物学, 東京大学出版会
・Dehal et al. (2002): The Draft Genome of Ciona intestinalis. Insights into
Chordateand Vertebrate Origins, Science, 298, 2157-2167
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SII-4
ヤツメウナギから脊椎動物下垂体の進化を考える
内田 勝久
理化学研究所・発生再生科学総合研究センター、現所属:新潟大学理学部附属臨海実験所
ヤツメウナギは、体が著しく細長く、一見ウナギに似ているが、鱗や対をなす鰭がな
く、鼻孔もひとつしかない原始的な魚である。この動物は、顎を持たないことから、無
顎類と呼ばれる仲間に属し、現在水中で繁栄している顎を持つ魚(軟骨魚類や硬骨魚類
など)とは全く別のグループに属している。今からおよそ 5 億年前、顎のある魚がまだ
いなかった時代に、地球上に現れた最初の脊椎動物も“顎がない”というきわだった特
徴を持っていることから、ヤツメウナギは脊椎動物の進化の最初期に出現した無顎類の
現存種であると考えられている(コルバートとモラレス、1994)。従って、ヤツメウ
ナギを知ることは、太古の脊椎動物のおもかげや、脊椎動物がどのように進化してきた
のかを知るうえで、大変興味深い。本講演では、演者が研究材料として用いているヤツ
メウナギや、同じ無顎類に属するメクラウナギを紹介するとともに、これらの動物にお
ける下垂体とその進化について話を進めたい。
脊椎動物に特異的な内分泌器官である下垂体は、脳の下方に垂れ下がる小さな器官で
あり、個体の代謝・成長・生殖などといった、生命活動に必要不可欠な種々のホルモン
を産生・分泌している。下垂体は、顎を持つ脊椎動物(総称して顎口類と呼ぶ)におい
ては、口腔の一部を起源とて形成され、対をなす嗅覚器官(鼻)と下垂体は独立した発
生パターンを示す。これに対し、ヤツメウナギにおいては、口よりも前方の表皮外胚葉
に鼻下垂体板と呼ばれる原基が形成され、下垂体は鼻とともに形成される(Uchida et
al. 2003)。このことは、無顎類から顎口類への進化過程で、対をなす鼻と口腔を起源
とする下垂体形成パターンが新たに獲得されたことを示している。最近、この下垂体発
生パターンの進化が、脊椎動物の顎の進化と密接な関係があることが知られている(倉
谷滋、2003)。
一方、ヤツメウナギの下垂体が、どのようなホルモンを産生し、それらのホルモンが
どのような生理作用を持っているかについては、これまで謎につつまれてきた。しかし
ながら、近年、ヤツメウナギの下垂体から、副腎皮質刺激ホルモン、成長ホルモン、生
殖腺刺激ホルモン、黒色素胞刺激ホルモンの 4 種類のホルモンが単離され、顎口類と同
様に、ヤツメウナギの下垂体がこれらのホルモンを産生していることが組織学的に明ら
かにされた (Nozaki et al. 2001; Kawauchi et al. 2002)。このことは、これら 4 つのホ
ルモンが脊椎動物の下垂体ホルモンの原型であり、代謝、成長、生殖などを調節する機
能が脊椎動物の進化過程で保存されている可能性を示唆している。現在、下垂体ホルモ
ンが未だ明らかにされていないメクラウナギから、ホルモン分子の単離・同定を試みて
いる。現存する無顎類の下垂体発生過程や、下垂体ホルモンの構造とその作用を詳細に
明らかにすることにより、近い将来、脊椎動物下垂体の起源や進化の道筋の全貌が理解
できるものと期待している。
参考図書・文献
コルバート、モラレス(1994)脊椎動物の進化(第 4 版)、田隅本生 監訳、築地書館
倉谷 滋(2003)動物進化形態学、東京大学出版会
Uchida et al. (2003). J. Exp. Zool. 300B: 32-47.
Nozaki et al. (2001). Comp. Biochem. Physiol. B 129: 303-309.
Kawauchi et al. (2002). Endocrinology 143: 4916-4921.
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SII-5
本当ですか,カエルではお腹から水を飲むというのは
田中 滋康
静岡大学 理学部 生物学教室
両生類の成体では,口からでなく,腹側皮膚から水を吸収している。また,両生類の
膀胱では水を貯留したり,再吸収したりする働きがあり,哺乳類の腎臓と同じ働きをし
ている。このように,両生類では独特な体内の水バランス機構をもっている。さらに,
この水吸収は抗利尿ホルモン (ADH) であるアルギニンバソトシン (AVT) などの内分泌
系やノルアドレナリンなどの神経系によって調節されている。近年,哺乳類ではアクア
ポリン (AQP) と呼ばれる水の通路(水チャネル)の分子が生体の水恒常性に重要であ
ることが明らかになってきた。両生類における腹側皮膚からの水吸収や膀胱からの水の
再吸収にもこの AQP 分子の関与が想定されるが,両生類における AQP 分子の存在や
その役割はほとんど解明されていなかった。アマガエル (Hyla japonica) の腹側皮膚か
ら AQP をコードする 3 種類の遺伝子 (AQP-h1, AQP-h2, AQP-h3) をクローニングし
た。AQP-h1 遺伝子の発現は,ほとんどの組織に検出され,AQP-h2 は腹側皮膚,腎
臓および膀胱などの ADH 調節性水代謝器官を含む数種類の組織に検出された。一方,
AQP-h3 遺伝子は腹側皮膚のみに発現していた。さらに,タンパク質レベルで見ると,
AQP-h2 タンパク質は腹側皮膚および膀胱に見られ,AQP-h3 タンパク質は腹側皮膚
のみに観察されることが分かった。AQP-h2 および AQP-h3 タンパク質は腹側皮膚の
細胞に見いだされ,最表面の細胞の basolateral 側の細胞膜に,それ以下の細胞層の細
胞では細胞膜全体に局在していた。膀胱では AQP-h2 タンパク質が主に顆粒細胞の細
胞質に局在していた。AQP-h3 は腹側皮膚からの水吸収に重要であり,AQP-h2 は特
に膀胱からの水吸収に重要であると考えられる。
AVT を腹側皮膚および膀胱に作用させ,AQP の細胞内動態を顕微鏡下で調べると,
AQP-h2 および AQP-h3 の両タンパク質が AVT 刺激後,腹側皮膚の最表面層の細胞
の apical 膜で強く染色された。膀胱では,金コロイドを用いた免疫電子顕微鏡法により,
AQP-h2 が AVT の刺激で顆粒細胞 apical 側の細胞膜上に移行することが明らかになっ
た。このことは AQP-h2 および AQP-h3 が両生類における ADH 調節性 AQP である
ことを示している。また,カエルの仲間には,樹上,陸棲,半陸棲,水棲生活をしてい
るものがいるが,全てのカエルで AQP-h3 様の遺伝子が発現し,また樹上,陸棲生活
のカエルでは,AQP-h3 様の遺伝子に加え,AQP-h2 様の遺伝子も発現していること
が分かった。これは,乾燥の度合いが高いところに生息しているカエルでは,ふたつの
AQP が発現することで,水の吸収力を高め,水環境に適応していると考えられる。
Tanii, H., Hasegawa, T., Hirakawa, N., Suzuki, M. and Tanaka, S. (2002) Molecular and cellular
characterization of a water channel protein, AQP-h3, specifically expressed in the frog ventral skin.
J. Membrane Biol. 188: 43-53.
Hasegawa, T., Tanii, H., Suzuki, M., and Tanaka, S. (2003) Regulation of water absorption in the
frog skins by two vasotocin-dependent water-channel aquaporins, AQPh2 and AQP-h3.
Endocrinology. 144: 4087-4096.
11
SII-6
ウズラの生物学 中村 明
静岡県立大学 名誉教授 ○ウズラとはどのような鳥か。
・ 分類上はニワトリと同じキジ科に属する最も小さな種で、キジ科唯一の渡り鳥。
・ 日本に 生息する種は亜種を含めてアメリカ大陸以外の全世界に住むがアメリカに
は同じ生態的位置に属を異にするコリンウズラが分布する。
・日本では江戸時代から鳴き声を楽しむ鳴きウズラとして飼育されたが、ウグイス、
メジロなどと同じような飼い方で、品種のようなものは出来なかった。
・ したがって、野鳥の域を出ず、闘争性が強く、また垂直に激しく飛び上がるので、
上部が網になったヒバリ籠に一羽ずつの飼育が昭和15年頃まで行われていた。
○現在のような卵肉を利用したり、実験動物として利用されるようになったいきさつ。
・鳴きウズラとして飼うためには、環境を繁殖状態に置かなくてはならないが、その
結果メスが多産卵することを発見し、滋養食(結核などによい)として利用された。
・戦前欧米にゲームバードとして輸出されたが、国内では第二次世界大戦のため、国
内の飼育系は絶えたと考えられていた。(戦前の系統は中村により発見される。)
・海外ではハワイなどで野生化したと言うが、アメリカには同じ生態種コリンウズラ
がいるため成功しなかった。また、ゲームバードとしての利用も芳しくなかったが、
ニワトリの研究でパイロットアニマルとして脚光を浴びる事となる。
・ 戦後、畜産的にも日本を始め、ロシア、インド、フランス、ブラジルなど海外でも
飼育は盛んとなった。その理由は飼育上の改良により、多数個体の集団飼育が可能
となり、飼料の改良など産業的に採算が合うようになったためである。
・ しかし、最も重要な事は家畜としての馴化、系統化が進んだ事にある。
○ウズラにはどんな利点、特徴があるか。
・ 体が小さく、ニワトリに比べ飼育場所をとらない。
・ 産卵まで50日前後と鳥類で最も早い。
・ 卵重は体重の8%と鳥類ではキュウイについで大形である。(キュウイは25%、
ニワトリは3%)
・ 日照時間の調節で殆ど年中採卵できる。
○現在そして将来どのような事が期待されるか。
・ 実験動物そして産業動物としては、多くのミュータントを作出することが求められ
るが(研究、物事の認識には多様な二者の異同を識別する事から始まり、産業動物
としては、より有用性のある形質が求められる)いま、一つの新たな形質の誕生は
野生種にとっては、そのゲノムの不調和を起こす事が多く、体質などが弱くなる可
能性がある。ゲノムの中の不調和が調整される調和要因ができるのには、長い年月
が必要で、そのため家畜には歴史の古いものが多い。(故河原先生はこれを無意識
的淘汰と言っていた)ウズラでその実例を述べてみたい。
・ 多様性、選抜、遺伝、進化そして適応は正にダーウインの述べた進化であり、家畜
そして、研究用動物の品種、系統も一つの進化現象の結果である。
・ 現在ミュータントの開発は進み、産業的利用、研究への活用は著しく、元国際家禽
学会会長は、ウズラは将来ニワトリに匹敵するほど重要になるとも言われた。
・ 最後に我々が行っているウズラの Bh 遺伝子を使っての研究結果を紹介したい。
[参考資料] ・FISH(fluorescence in hybridization):クローン化された DNA 断片(遺伝子)の染色体上で
の位置を知る方法。DNA 断片を蛍光物質で標識し、スライドグラス上 の染色体 DNA と会合
(hybridization)後、顕微鏡により蛍光を検出する。
・http://www.fujisawa.co.jp/reagent/market-0306/cepxy-01.html
・メンデルとその前後:篠遠喜人 内田老鶴圃 1935
・種の起原 上巻 下巻:C.ダーウイン 堀伸夫訳 槙書店
12
SII-7
メダカの性はどのようにして決まるのか
−脊椎動物における性決定機構の多様性−
濱口 哲
新潟大学 理学部 自然環境科学科
脊椎動物の性決定機構の研究は、1990 年のヒトとマウスの性決定遺伝子 SRY の同定
で、新段階に入りました。それ以降、SRY がほ乳類共通の性決定遺伝子であることが判
明し、また、かなりの数の性決定 (分化) 関連遺伝子が同定されました。SRY は転写因
子をコードしており、他の遺伝子の発現を調節する遺伝子ですが、SRY が調節する対象
がどんな遺伝子かは未だ判明しておらず、SRY に始まる性決定過程の詳細は未解明です。
また、ほ乳類以外の脊椎動物には SRY は存在しないことから、SRY が脊椎動物に共通
の性決定遺伝子ではないことも確認されています。
ほ乳類以外の脊椎動物、とりわけ魚類は、雌雄同体をはじめ多様な性現象が知られて
おり、それらを駆使した性決定機構研究は極めて肥沃な研究分野と考えられてきました。
しかし、ごく近年まで遺伝子レベルの知見は乏しく、未開拓のままに留まっていました。
メダカはこの分野の研究に新しい可能性を提供しつつあります。
メダカの性決定機構の研究は、1921 年に会田が体色決定遺伝子の遺伝様式を調べて、
メダカが XX-XY 型の性決定様式を持つことを明らかにしたことに始まります。その後、
1950 年代の名古屋大学の山本による性ホルモンによる性転換実験や、東京大学の江上
による"精巣卵" 誘導や生殖巣性分化過程の研究などから、メダカの性は遺伝的に決まる
が、生殖細胞、体細胞共に性的両能性を持ち、いろいろな条件により性転換が可能であ
ることが明らかにされました。
我々は 1992 年頃よりメダカの性染色体の研究に着手し、1997 年複数の性連鎖 DNA
マーカーを得て、1998 年メダカ性染色体を初めて顕微鏡下で捉えました。さらに、組
み換え体を使ってメダカ Y 染色体の詳細な遺伝子地図を作製し、2002 年、メダカの性
決定遺伝子 DMY の同定に成功しました。DMY が無脊椎動物を含め多くの動物の性分
化に関与している遺伝子グループの一員であったことは興味深いことでしたが、さらに
面白いことは、メダカの DMY は極めて起源の新しい遺伝子であったということです。
メダカ近縁種のうちで DMY を性決定遺伝子としているのはハイナンメダカだけで、他
の種は全く異なる遺伝子を性決定遺伝子としているらしいのです。つまり、メダカ属魚
類の性決定遺伝子は極めて多様だということになります。しかし、それらの魚種の性分
化過程は共通していることから考えると、性決定のしくみが抜本的に異なるとは考えら
れません。私たちは、これらの近縁種の生殖巣性分化の“マスター遺伝子”は共通で、
その制御遺伝子が異なっているというスキームを夢想しながら研究しています。そして、
その実体に近づくことができた時、そこにほ乳類を含めた脊椎動物共通の性決定機構が
見えてくることを期待しています。
【参考文献】 Matsuda et al. (1998) Cytogenet. Cell Genet 82:257-262
Matsuda et al. (2002) Nature, 417:559-563
Shinomiya et al. (2002) Int. J. Dev. Biol., 46:711-717
四宮愛、濱口哲、酒泉満 (2003) 細胞工学, 22:1090-1096
Shinomiya et al. (2004) Zool. Sci., 21:613-619
13
O-1
マウス自己免疫病発症に対する Bisphenol A および Genistein の影響
茶山和敏1、螺良愛郎2 (1静岡大学農学部、2関西医科大学病理学第二講座)
自己免疫病は女性の発症率が顕著に高く、その原因のひとつとして、エストロゲンが
関与していることが明らかになっている。そこで、エストロゲン作用を有する内分泌か
く乱化学物質である Bisphenol A および Genistein の自己免疫病発症に対する影響を、
自己免疫病モデルマウスを用いて検討した。その結果、両物質の皮下投与は自己免疫病
の発症開始には影響しないものの、悪性進展を促進して生存率を低下させることが示唆
された。
O-2
ウズラ・アグーチ遺伝子の同定並びに羽毛芽色素パターン形成過程における発現
解析
○丹羽透 1,中村明 2,塩尻信義 3 (1 国立がんセンター研究所・発がん,2 静岡県立大,3 静岡大・理・生地環)
ウズラ胚の背部羽毛芽列には,色素細胞によって作られる黒色と黄色の縦縞模様があ
る.その形成機構は,ウズラ-ニワトリキメラを用いて解析されてきたが,その具体的
機能分子は不明である.一方、哺乳類においてはアグーチ・タンパク質(AP )という
分子が毛色制御に重要な役割を担っていることが明らかになっており、我々は羽毛芽色
素パターン形成においてもその関与を考えた.本講演では、ウズラ AP ホモローグの同
定、並びに、その発現を羽毛芽色素パターン形成過程において解析した結果を報告する.
O-3
ヒトデ多精卵における極体様構造(polar-body like structure, PLS)の形成
鄭 仁成、可児里美、花井邦成、○山本謙也(岐阜大学 農学部 多様性生物学講座)
ヒトデ未成熟卵を媒精すると多数の精子が侵入する。この多精卵を成熟誘起すると、
∼50%の卵で、第一極体放出後に極体とは別の極体様の構造(PLS)が形成されること
がわかった。この現象を詳細に調べたところ、侵入精子数が多いほど PLS 形成率が高
い、PLS にはクロマチンが含まれている、PLS 形成前の多精卵には多極の紡錘体様構
造が見られる、ことなどが明らかになった。減数分裂の紡錘体と精子中心体の相互作用
により PLS 形成が起こるものと考えられる。
14
O-4
カタユウレイボヤ精子の運動活性化に関与するタンパク質について
○保住暁子 1,2、戸田年総 3、稲葉一男 2(1 東北大・生命科学、2 筑波大・下田臨海、3 都
老人研・プロテオーム)
カタユウレイボヤでは、卵から放出される硫酸ステロイド SAAF によって精子の運動
が活性化され、卵への走化性を示す。活性化前後に変化する精子タンパク質を二次元電
気泳動法で比較解析し、質量分析法と自作の検索システムを用いてタンパク質の同定を
行った。このうち数種のタンパク質に対する抗体を作製し、間接蛍光抗体法で精子にお
ける局在を明らかにしたので報告する。
O-5
キンギョ卵におけるカゼインキナーゼ Ia の 4 種類のアイソフォームのクローニ
ングおよび発現解析
○堀口 涼 1,2,徳元美佳 1,2,長濱嘉孝 2,3,徳元俊伸 1,2 (1 静岡大・理・生地環, 2 科学技
術振興機構, 3 基礎生物学研究所)
我々はプロテアソームのリン酸化酵素の一つとしてカゼインキナーゼ Ia (CKIa) を同
定した。そこで、キンギョ卵巣から cDNA クローニングを行い、4 種類のアイソフォー
ムの cDNA を単離した。また、ウエスタンブロットにより未成熟卵と成熟卵に存在す
るアイソフォームの同定を行った。その結果、どちらも CKIa と CKIaS が発現してい
た。我々が精製した CKIa もこれらの2 種からなり、CKIa と CKIaS の 2 種のアイソフォー
ムが卵細胞内の主要な分子種であることが明らかになった。
O-6
新規膜結合型プロゲスチン受容体
○柴田安司・長濱嘉孝・吉国通庸(基生研・生殖)
第一減数分裂前期で停止していた卵母細胞は、濾胞細胞で産生された卵成熟誘起ステ
ロイド(MIH)によって減数分裂を再開し、成熟へと至る。これまで MIH の受容体は
卵細胞膜上に G タンパク質と共役して存在することが示唆されていたが、その分子構造
は長い間不明であった。我々は、メダカ卵に存在する G タンパク質結合型膜プロゲスチ
ン受容体とそのサブタイプをクローニングすることに成功し、現在その発現と機能を解
析している。本発表では、これら新規膜ステロイド受容体の構造と発現について述べる。
15
O-7
ゼブラフィッシュ A 型精原細胞の単離法とその培養系の開発
○ 斉藤 憲二1,2 ,長濱 嘉孝1,酒井 則良2 (1基生研・生殖,2遺伝研・小型魚類開発)
魚類の A 型精原細胞の増殖と分化は、セルトリ細胞がつくるシスト内の局所的環境に
より調節されると考えられているが、その分子的実体は不明である。本研究では、ゼブ
ラフィッシュのセルトリ細胞株を用いて A 型精原細胞の培養を試みた。薬剤処理により
A 型精原細胞が増殖している精巣を酵素で解離し、ZtA6-6 株と共培養することにより、
14 日間にわたり A 型精原細胞が増殖することが確認できたので、その結果を報告する。
O-8
ゼブラフィッシュ初期胚由来培養細胞の二次胚誘導能の解析
〇橋口恵1,2,酒井則良2
(1福井県大・海洋生物資源,2遺伝研・小型魚類開発)
脊椎動物の背側領域は頭部と尾部では異なるオーガナイザーから誘導を受けることが
知られており、それぞれ頭部オーガナイザー、尾部オーガナイザーと呼ばれる。本研究
では、様々な発生段階のゼブラフィッシュ初期胚から培養細胞を樹立し胞胚へ移植した
ところ、培養細胞が二次胚誘導能を持ち、発生段階の早い胚からの細胞は頭部を誘導す
る傾向が強く、遅い胚からのものは尾部を誘導する傾向が認められたので、その結果を
報告する。
O-9
メダカの器官形成を三次元画像で見る
萱野公平、原田智弘、Lee Lawlence、橋本寿史 、○尾里建二郎、若松佑子(名大・生
物機能セ)
メダカの胚期に形成された器官では孵化後の幼生期になるとその位置や形態などに大
きな変化が見られる。この過程はとても複雑で、切片などの二次元画像だけで捉えるこ
とは難しい。そこで切片の画像をコンピューター上で重ねあわせて、それを三次元画像
として再構成することを試みた。その結果、消化管、肝臓、腎臓などの器官形成の過程
を三次元画像として追跡することができた。この方法は数十 mm から数 mm の試料に
は有効に利用できることがわかった。
16
O-10
Cloning, expression and characterization of three types of
17b-hydroxysteroid
dehydrogenases
from
the
Nile
tilapia,
Oreochromis niloticus
○Linyan Zhou, Deshou Wang and Yoshitaka Nagahama
(Laboratory of Reproductive Biology, National Institute for Basic Biology,
Okazaki 444-8585, Japan)
In order to elucidate the roles of 17b-HSDs in the fish gonadal steroidogenesis, three types
of 17b-HSDs (17b-HSD1, 17b-HSD8 and 17b-HSD12) were cloned and characterized from the
Nile tilapia, Oreochromis niloticus. The cloned cDNAs of 17b-HSD type1, type8, type12 were
1054, 1006 and 1930bp, encoding proteins of 289, 256 and 314aa, respectively. Tissue
distribution pattern analyzed by RT-PCR and Northern blot showed that 17b-HSD1 was
dominantly expressed in the ovary of tilapia, while 17b-HSD12, one of the two duplicates found
in fish, is a male specific enzyme and expressed exclusively in testis. On the other hand,
17b-HSD8 was expressed in the brain, gill, heart, liver, intestine, gonad, kidney and muscle of
both males and females. Enzymatic assays of the three types of 17b-HSDs were performed using
recombinant proteins expressed in E. coli or HEK 293 cells. Tilapia 17b-HSD1 expressed in E.
coli had the preference for NADP(H) as cofactor and it could catalyze the inter-conversion
between estrone and estradiol efficiently as well as the inter-conversion between androstenedione
and testosterone, but less efficiently. Tilapia 17b-HSD8 recombinant proteins expressed in HEK
293 cells could catalyze the conversion from testosterone to androstenedione, as well as the
inter-conversion between estrone and estradiol. However, 17b-HSD12 expressed neither in E.coli
nor in HEK 293 cells, showed any conversion to all the four substrates tested in this study.
Based on enzyme characterization and tissue distribution, it is plausible to attribute crucial roles
to 17b-HSDs in the gonadal steroidogenesis of teleosts.
O-11
Differential Expression of Medaka DMY and DMRT1
○En-Lieng Lau, Masaru Matsuda, and Yoshitaka Nagahama
(Laboratory of Reproductive Biology 、National Institute for Basic Biology,
Okazaki 444-8585 and CREST) DM domain genes (a DNA-binding motif shared between doublesex in Drosophila
melanogaster and mab-3 in Caenorhabditis elegans) have been identified in flies, worms, fishes,
and mammals. These genes were also found closely involved in sexual differentiation in both
vertebrates and invertebrates. In medaka, DMY (DM-domain gene on the Y chromosome) is
required for male development and its homolog DMRT1 (DM-related transcription factor 1) is
also associated with testicular differentiation. DMY and DMRT1 have a high similarity of coding
sequences and both genes are mainly expressed in the somatic cells surrounding the germ cells in
XY embryos. However, expression of DMY and DMRT1 surged at different stages during sexual
differentiation. Therefore, monitoring the expression of DMY and DMRT1 might provide more
insight to illuminate the role of these correlates in sex determination and differentiation. Here, we
overview the temporal and spatial expression of medaka DMY and DMRT1. Furthermore, recent
progresses in the upstream study using transgenic techniques will be discussed.
17
O-12
遺伝的全雄コイの性分化に対する外因性女性ホルモンの影響
ビテロジェニンは環境ホルモンによる性分化障害の指標となるのか
平井俊朗、松原 創、寺本由宇、佐藤 将、原 彰彦、榊 克子、中村 將
帝京科学大・バイオ、新潟県内水面水試、北大院・水産、琉球大・熱生研
我々は、内分泌攪乱化学物質によると考えられる生殖異常の調査では生殖異常の指標
として雄成魚血清中における卵黄前駆蛋白質、ビテロジェニン (VTG) が汎用されてき
た。この蛋白質は本来、女性ホルモン依存的に肝臓で合成され、卵巣に蓄積される。従っ
て雄血中における出現は環境中での女性ホルモン様物質曝露を示唆するわけであるが、
この分子の精子形成不全への直接的関与は証明されていない。そこで我々はコイの遺伝
的全雄群を用いて個体レベルでの影響評価を行い、汎用バイオマーカーである VTG と
配偶子形成異常との相関性について検証した。
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O/P-1
ベッコウトンボの産卵条件調査,シカラトンボの光感覚調査,カニの産卵リズム
調査
山本紘之 平野雅大 鈴木貴博,(静岡県立磐田南高等学校 生物部)
磐田南高校生物部が行っている、ベッコウトンボの産卵条件調査、シオカラトンボの
光感覚調査、カニの産卵リズム調査の三本の研究を発表させていただきます。
ベッコウトンボの研究では、桶ヶ谷沼に設置してある保護用コンテナへの産卵状況の
偏りから、産卵に適した環境条件を探りました。
シオカラトンボの研究では、トンボ釣りという遊びを使って、シオカラトンボにはエ
サがどのように見えているかということを調べました。
アカテガニの研究では、産卵活動の周期を調べ、カニが潮汐リズムと24時間の明暗
サイクルの両面を読み取って産卵活動を行っているかどうか調べた。
磐田南高校 生物部顧問 杉浦 修,松本幸啓
0/P-2
パソコン・ビデオを使った動物行動・形態変化の観察(ダイジェスト)
高原 理,榊 拓也(OB: 玉川大 3 年),梅田祐樹(OB: 東海大 3 年)(静岡県立長
泉高等学校 自然科学部・3 年理系生物選択講座)顧問 小林設郎
長泉高校では、毎年自然科学部や 3 年理系生物選択講座で探究活動を行い、その成果
を文化祭や対外的な研究発表会で発表している。そこで今までに行なわれてきた研究の
中で“動物に関した研究”について幾つか発表する。
研究の多くは、動物の行動や形態的変化などをビデオの動画やデジタルカメラ・PC カ
メラの静止画として記録し、その画像を利用して分析を深めるという方法を主な手法と
している。
今回の発表では、今までに行なわれた様々な研究の成果を、動画・連続的な静止画で
ビジュアルに紹介する。その内容には、多くの方に興味を持っていただけるような画像
を多く盛り込んだ。
主な内容は、『様々な種類のカニの塩分嗜好性の研究』・『ウメボシイソギンチャク
の触手開閉活動の研究』・『ハムスターの活動の分析』・『魚の定位行動の研究』・
『アルテミアの光走性の研究』『オタマジャクシの変態の観察』・『ウニやヒトデの移
動行動の研究』・『海産生物の飼育と観察』などである。
上記の研究には、本県の鈴木梅太郎賞・山崎賞を受賞したものや現在進行中の研究も含
む。また、これらの研究活動は山崎自然科学教育振興財団による多額の研究助成をもと
に行われていることを付け加えたい。
19
P-3
トリブチルスズ(TBT)のシオダマリミジンコに対する影響 ○林祐司,奥田里澄,神水彩花,小野剛志,伊藤直樹,山下宏幸,西飯信一郎
(鈴鹿高等学校 自然科学部)
シオダマリミジンコを用いて毒性試験を行い、他の動物と比較した。まず、高濃度の
TBT 溶液に成体を暴露して、一定期間の生残曲線をつくった(急性毒性試験)。その結
果、96-LC50 は1∼10 μg TBT/ℓで、他の海産甲殻類とほぼ同じであった。次に、
比較的低濃度に設定した溶液中に長時間暴露した際に、生体に生じる影響について調べ
たところ(慢性毒性試験)、生残率、携卵率および子孫個体への影響(性比と増殖率)
が見られた。
P-4
鈴鹿川水系の環境調査Ⅰ ○林祐司,奥田里澄,神水彩花,小野剛志,伊藤直樹,山下宏幸,西飯信一郎
(鈴鹿高等学校自然科学部)
鈴鹿高校の裏を流れる一級河川、鈴鹿川の状況を地域に発信することを目標に、化学的
および生物学的視点から3種類の調査を行なった。【調査Ⅰ】鈴鹿川水系 23 地点の水
質調査(年4回)。試験項目は DO、気温・水温、時間、pH、COD、NH4+、NO2-、
PO43-そして陰イオン界面活性剤。【調査Ⅱ】鈴鹿川本川 13 地点の水生生物調査(年1
回)。【調査Ⅲ】鈴鹿高校周辺4地点での水質調査(週1回)。試験項目は COD、
PO43-、NO2-、DO、気温、水温、水位。
P-5
絶滅危惧植物であるミクリの調査・研究について
笹井良太,前川裕児(静岡県立静岡高校,生物部)
私達静岡高校生物部は,主に絶滅危惧植物であるミクリの調査・研究をしています。
調査内容は静岡市内の河川でのミクリの成長の様子,個体数の変化で,毎年夏に行って
おります。また,学校に植裁園を作り,そこでミクリの成長を観察しています。これま
での調査の結果から,ミクリは川床が 40∼60cm 程の比較的深い所が成長し易く,意外
にも水質の悪い川でも問題なく成長できる事がわかりました。
静岡高校生物部顧問 稲垣聖二,山本幸憲
20
P-6
メダカが空を飛ぶ可能性について
伊藤彰紀,田島一輝,赤座由華,佐分隆文(滝高校,生物部,愛知)
メダカは,小学校で必ず飼ってみる魚であるが,自然の河川では,絶滅が心配される
程,減少してしまった。我々は,生息地調査で得た個体と,その分布を調査するうち,
鳥の足に卵がついて移動する可能性はないか,との疑問から今回の実験をした。産卵床
に産みつけられた卵を風乾すると,6時間までの風乾では,発生が遅れるものの,ふ化
率が7割を超えた。このことから,充分に空中を移動する可能性があると思われる。
P-7
魚類肝臓中のシスタチオニンγ-リアーゼの性状と分布
○貝増卓見,高橋智子,田中奈津美,後藤孝信(沼津高専),原崎孝 (焼津冷蔵)
魚類肝臓中のシスタチオニンγ-リアーゼ活性を測定して,魚類のシステイン生合成
能力について調べた.実験に用いた全ての魚種で酵素活性は確認されたが,アユの活性
が最も高かった.酵素活性は,反応混液中に基質として添加したホモセリン濃度の増加
に伴い増加し,反応混液の pH が 9 付近で最大となった.また,魚類の酵素活性は,反
応混液中への L-システイン,あるいは DL-プロパルジルグリシンの添加により阻害され
た.
P-8
ウナギ肝臓中の含硫アミノ酸代謝に関係した酵素活性の分布
○田中奈津美,後藤孝信,木根悠太 (沼津高専),原崎孝 (焼津冷蔵)
ウナギ肝臓中の含硫アミノ酸代謝に関係した酵素活性を測定して,ウナギのタウリン
生合成能力について調べた.システインの合成酵素はマウスの 25%程度の活性を示し
たが,システインより生成されるシステインスルフィン酸やシステアミンなどのタウリ
ン前駆体をタウリンへ変換する酵素の活性は殆ど確認できなかった.更に,システイン
スルフィン酸をピルビン酸に分解する酵素活性はマウスの約 2 倍の高い値を示した.
21
P-9
魚類肝臓中のシステインジオキシゲナーゼ活性の測定方法について
○木根悠太・蓮実文彦・望月明彦・後藤孝信(沼津高専)
酵素活性の分布からみると,魚類のタウリン生合成を含めた含硫アミノ酸の主な代謝
経路は,その種属により特異的な経路の存在も示唆されるが,哺乳類のそれとほぼ同じ
であると考えられる.しかし,タウリンの主要な前駆体であるシステインスルフィン酸
を生成するシステインジオキシゲナーゼ活性の分布や性状については,魚類に関する報
告は殆ど無い.本研究では,HPLC を用いて,この酵素活性を測定する条件を検討した.
P-10
アルテミア(Artemia franciscana)における内分泌撹乱化学物質の暴露影響
湯山育子 1,2,○竹内浩昭 1
1
静岡大・理・生物,2 東大・海洋研・海洋生命科学
アルテミアにトリブチルスズ (TBT)、ビスフェノール A (BPA)、オクチルフェノール
(OP)、ジエチルスチルベストロール (DES) を短期あるいは長期暴露して影響を調べた。
24h-LC50 は、TBT 0.0016mg/l、BPA 51mg/l、OP 6.0mg/l、DES 7.6mg/l であった。複眼形
成は、OP と DES で早まり、TBT では遅れる傾向が見られた。しかし、BPA では高濃度
で複眼形成が早まり、低濃度で遅れる二相性効果が見られた。脱皮周期は、BPA と OP
で有意に短くなり、TBT では長くなる傾向が見られた。
P-11
トノサマガエルの精巣卵出現とビテロジェニンの関連性
磯田真希 1,持田弘 2,鈴木雅一 1,田中滋康 1 (1 静岡大・理・生物,2 蛋白精製工業)
トノサマガエル (一部トウキョウダルマガエル) では精巣卵が高頻度に見られる。この
精巣卵の出現と環境ホルモンとの関連性を 明らかにするために,ビテロジェニン
(VTG) の酵 素免 疫測定 法 (ELISA) を確 立した 。本 ELISA は, 感度 7.81 ng/ml ,
7.81-1000 ng/ml 間で測定可能であった。200-800 ng/ml 間の VTG 回収率は 101.53
±5.91%(平均+標準偏差) であり、測定内変動は 2.86%,測定間変動は 6.61%であっ
た。全国5地域から採集したカエルの血中 VTG 濃度は,高頻度に精巣卵の出現が認め
られた地域が高い傾向を示した。
22
P-12
マウス肝再生過程における肝細胞増殖因子 (HGF) とその受容体の分布変化の解
析
○ 前田 裕代,小池 亨,塩尻 信義(静岡大・理・生地環)
肝臓は栄養物の代謝と貯蔵を行うと同時に、再生能力に富む臓器である。部分肝切除
を受けると肝臓は速やかに再生し、元の肝重量に約 10 日で回復する。肝再生因子の本
体として発見された肝細胞増殖因子 (HGF) はその受容体 c-Met と結合して、細胞増殖、
形態形成、代謝促進などの生物学的活性を引き起こす。また当研究室の以前の報告で、
肝臓は血漿 HGF のクリアランス臓器であると示唆された。本研究では HGF の増殖作
用とクリアランスに注目し、マウス肝再生過程における HGF とその受容体の分布変化
を解析した。
P-13
マウス胎仔肝芽細胞の増殖・分化における細胞外マトリックスの働き
○杉山良典,小池亨,塩尻信義(静岡大学理学部生物地球環境科学科)
肝芽細胞の分化・成熟化にはその周囲に存在する非実質細胞との相互作用が重要であ
ると言われている。そのうちで細胞外マトリックス (ECM) に注目し、マウス胎仔肝芽細
胞の分化・成熟化に対して、どのように影響を与えているのかを研究している。今回は、
肝発生における ECM 成分の分布と、培養系における ECM による肝芽細胞の形態・成熟
度の変化について発表する。
P-14
両生類におけるアクアポリン1の発現と局在
○久保田眞,長谷川敬展,和田智恵美,鈴木雅一,竹内浩昭,田中滋康(静岡大・理・
生物)
アマガエル(Hyla japonica)の aquaporin (AQP)-h1 は,哺乳類における AQP1 に
相当すると考えられている。今回,AQP-h1 に対する抗ペプチド抗体を作製し,免疫組
織化学法でその局在を調べた。AQP-h1 は全身の様々な器官で発現し,主に奬膜や血管
内皮などの結合組織に局在することが明らかになった。また,生涯水中生活をする有尾
両生類のアホロー トル (Ambystoma mexicanum) のエラか らも AQP1 に相当す る
AQP の cDNA をクローニングした。AQP1 は,個体全体の基本的な水代謝に重要であ
ると考えられる。
23
P-15
ウシガエル赤血球の甲状腺ホルモン取り込み機構と甲状腺ホルモン応答遺伝子へ
の化学物質の影響
○嶌田直幸、山内清志(静岡大学・理工学研究科・生物地球環境科学専攻)
細胞への甲状腺ホルモンの取り込みにはいくつかの特異的な機構が知られている。我々
はウシガエル赤血球を用い、甲状腺ホルモンの取り込みがどのような機構により行われ
ているかを検討し、影響のあった化学物質が甲状腺ホルモン応答遺伝子である甲状腺ホ
ルモン受容体αの遺伝子発現にどのように影響を与えるか検討した。赤血球は T 型アミ
ノ酸トランスポーターが主な取り込み機構だと示唆され、遺伝子発現の結果などから受
容体以外をターゲットに化学物質が影響している可能性が示唆された。
P-16
マウスの実験的精巣性テラトーマ形成にかかわる新規遺伝子候補群の染色体マッ
ピング
○池田 よし江1,久保 生恵2,藤田 菜都美2,菅沼 さえり2,野口 基子2
(1 静岡大院・理工・生地環,2 静岡大・理・生地環)
マウス胎仔精巣の始原生殖細胞には正常な精子形成過程を外れて、分化多能性精巣性
奇形腫 (テラトーマ) へ分化するものがある。 129/Sv-+/ter(+/+) は自発性精巣性奇形
腫 (STT) を発症する (1%) 系統であるが、この胎仔精巣を成体精巣内に移植するとその
移植体に実験的精巣性奇形腫(ETT)を高率に形成する (80-90%)。一方 LTXBJ 系で
は STT も ETT も形成されない。この両系 F2 胎仔の ETT 形成と DNA マップマーカー
の系統多型 (SSLP) との間で連鎖解析を行った結果,ETT と STT の原因遺伝子候補群
で異なるものを見いだした。
P-17
マウスの生殖細胞欠損遺伝子 ter のファインマッピング
○ 宮口千晶2,高林秀次3,大藤利通1, 花光里沙1,野口基子1
(1 静岡大・理・生地環、2 静岡大院・理工・生地環、3 浜松医大・動実)
マウス胚の始原生殖細胞 (PGC) は出現後、増殖しながら移動して生殖隆起へ定着し
た後、精巣では精子形成へ、卵巣では卵形成へ進む。野口らは、この間、体細胞におい
て発現し PGC 及び生殖細胞特異的にアポトーシスを引き起こす生殖細胞欠損遺伝子
teratoma(ter) を 18 番染色体へマッピングし、更にクローニングを目指している。今
回、ter コンジェニック系マウスの ter/ter 型(生殖細胞欠損)と+/+型(正常生殖巣)
のゲノム解析の進行状況等を報告する。
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P-18
ドイツにおけるビオトープ保護の現状と問題点
岩澤 淳(岐阜大学・応用生物・環境生態)
ビオトープ(Biotop)は Haeckel(1834-1919)による造語で、文字通り「生物の
生息空間」という意味である。我が国では学校ビオトープやトンボ池の再生などの形で
近年知られるようになったが、発祥の地ドイツでは地域の景観にも配慮したビオトープ
の保全や創出を、都市計画や農村計画に組み込んだ形での総合的な自然保護政策がとら
れている。本学会の内容にはややそぐわないが、大学等における自然環境関係のカリキュ
ラムの参考になればと考え、実例や問題点を紹介したい。
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協賛企業一覧
(社)日本動物学会平成16年度中部支部大会及び公開シンポジウム開催にあたり,下
記の企業からご援助を頂きました。ここに厚くお礼を申し上げます。(順不同・敬称略)
(社)日本動物学会平成16年度中部支部大会事務局
〒421-0421 静岡県榛原郡榛原町細江 520 の 5
セイケン資材株式会社
〒379-2203 群馬県佐波郡赤堀町曲沢 152 番地 1
有限会社 蛋白精製工業
〒420-0034 静岡市常盤町 2-13-1 住友生命静岡常盤町ビル 5F
富士ゼロックス株式会社 官公庁支社中部営業部 静岡 G
〒422-8567 静岡市西脇 1294 番地
遠藤科学株式会社 静岡営業所
〒377-0007 群馬県渋川市石原 1062 番地 1
株式会社 シバヤギ
〒420-0812 静岡市古庄四丁目 16 番 1 号
理仁薬品株式会社
〒420-0886 静岡市大岩 2 丁目 14 番 20 号
東海理機株式会社
〒422-8008 静岡市栗原 6 番 25 号
株式会社 日製サイエンス 静岡支店
〒422-8076 静岡市八幡 2-8-1
株式会社 三啓
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