7 December 2007 (English phonetics II/nagai) (宿題から) 「美しい

7 December 2007 (English phonetics II/nagai)
(宿題から)
z 「美しい」という言い方は検証できないが,「何人の人がそう思うか」を調べることはできる。
ヒトの知覚(音の大きさや高さ)と同じ考え方であることに注意。
‘Measure what is measurable, and make measurable what is not so.’ (Galileo)
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最も多かった解答は 275Hz。何人かは(220+330)/2=275 と説明してくれました。
周波数を足し算するとはどういうことか?(1+2)/2 ではどうなる?
ちなみに 275 は 220 に対して 5:4 となっていますね。
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かなりの人が praat で波形を観察し,「きれいな形」の周波数を求めようとしていました。
自分の「あいうえお」を録音し,その波形を観察してみよう。きれいですか?
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元の周波数と「2 倍」(1:2)の周波数はグラフもキレイで(周期性アリ),なぜだか同じ高
さに聞こえる(オクターブ)。
元の周波数と「整数比」(1:3 や 4:5 など)になっている音もキレイな山が連なり,
harmony に聞こえます。
物理で「気柱の共鳴」実験をした学生は,腹とくびれの部分を思いだそう。
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「整数比(たとえば 3 倍)」は何度「2 倍」しても 2 のベキ乗にはならないので,倍音と音階には「ずれ」が避け
られない。これは平均律の限界。
12 半音の音階を作ってドレミのミを計算すると,関数電卓の 2 → 「x^y」 → (4/12) → 「x^y」 → * → 220 で
は 277.18... となり,2Hz ずれていますね。
模範解答は 330 より高いですが,A から F の音を自分で計算して求めたところがすばらしい。
次に多かった解答は 221 とか 329 とかの「微妙にズレてる」高さでした。
220Hz と 221Hz を加えてみると,1Hz の差を「ホワンホワン」「ブーワブーワ」のような,音の大きさの変化で聞
くことができる。ヒトの聞けない 1Hz の差が聞こえるのが不思議。
これは「うなり」(beat)と呼ばれる現象で,聞こえた学生は自分の耳に自信を持とう!
例えば 440Hz の音叉があれば,これと 5 弦解放音とを同時に鳴らして「うなり」が消えるように調節すれば,
ギターの調律ができる(正確には 110Hz の 4 倍音とのうなり)。
7.4. Linking and intrusion
z 米国の広い地域では母音に後続する r を発音し,rhotic と呼ばれる。
z 英音は non-rhotic であるが,母音が後続する場合は r が発音されること多い。linking / r /と呼ぶ。
her English/German, my brother lives/always …
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綴りに存在しない r が母音間に聞こえることがある。intrusive / r /と呼ぶ。
学ぶ・教えるというより,自然にそう聞こえてしまう,その方がラクだ,と感じればよい。
media exploitation, media are, law and order, I saw it happen.(, drawing, gnawing)
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/ i /([i, ɪ])が他の母音へ移る際には,[ j ]の音が聞こえる。linking / j /と呼ぶ。
別の母音への移行時に,舌が自然に下がり[ j ]の位置を通るということ。
I agree, I am, I ought, They're, aren’t they?
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/ u /([u, ʊ])が他の母音へ移る際には,[ w ]の音が聞こえる。linking / w /と呼ぶ。
別の母音への移行時に,唇が自然に[ w ]に似るということ。
Go on, go in, Are you inside, or are you outside?, who is?, you are …
7.5. Juncture
z 発音記号では全く同じなのに,聞き分けのできるペアがある。
母音や子音の時間長,強勢やイントネーションが「微妙に」異なるから聞き分けできるのであり,それらを連
接(juncture)と呼ぶ人がいる(意味の違いを生じるので,音素の一種だとする考え方)。
聞き分け不可能だという研究もあるので,教室での一発ネタ程度と考えても。
The clock keeps ticking. / The kids keep sticking.
That's my train. / It might rain.
The great apes. / The grey tapes.
Can I have some more ice? / Can I have some more rice? (intrusive / r /で混乱する例)
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子音と母音がつながるのはごく自然なこと。
You'll need an egg, an olive, and an anchovy. は a negg, a nolive, a nanchoby と聞こえる。
Put it on. は pu ti ton に聞こえる。
It’s no joke. に it snow…, It’s tough. に It stuff…. が聞こえる。
‘Scuse me, while I kiss the sky (Jimi Hendrix) が … while I kiss this guy (空耳アワーの世界へ)
7.6. Contractions
z 連続する単語間の発音の変化を,書きことばとして固定したものを縮約(contraction)という。
z You’re not / You aren’t はどちらも可能だが,I’m not / *I amn’ t では片方のみ可能。
発音しやすく市民権を得つつある ain't に比べ,amn’t は mn の連続が発音しにくい。
7.7. Should we teach these aspects of connected speech?
z 同化や脱落などの連続音声の特徴を学べば,速くて聞き取りにくい英語を理解するヒントになる。ただし,
相手が「美しい」(速くない)英語をしゃべっている場合は,同化や脱落の知識はそれほど必要ない。
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「同化,脱落,linking/intrusion を教えるべきか」「それぞれの軽重はどうするか」
市販の教科書を調べてみると,縮約,linking/intrusion,同化,脱落,の順で,扱いが軽くなっている。
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発音時に同化や脱落をしなくても,コミュニケーション上支障ない(not have a damaging effect on the
intelligibility)のだから,学習者に教える必要はない(too demanding)との立場も根強い。
実際に見られる現象だけを伝えておけば,学習の進展に従い自ずとできるようになる,という人もいる。
この場合,母語(日本語)で同じ現象が起きていることが前提。教師はそれを見抜く力が必要。
学習者自身が同化,脱落,linking/intrusion を正しい発音ではないと信じている場合,嫌がる場合もある。
以上のような考え方は intelligibility 重視の立場。
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連続音声の特徴を,早期英語教育においては是非教えるべきだとの立場もある。
young children, who tend to be excellent mimics of new language....
何歳までなら「ネイティブスピーカー」になれるのか,についての先行研究はたくさんある。
同化,脱落,linking/intrusion をしないと不自然(sound overly formal and somewhat stilted)なのだから,大
人も学習すべきだとの立場もある。
以上のような考え方は naturalness 重視の立場。
別の考え方として,teachability 重視の立場がある。
学習者にその発音が習得できるのか(教えても無駄ではないのか)。
the likelihood of students being able to perceive the sound contrasts (highlighted and put into practice...)
would’ve, could’ve の発音で困った学習者は,次回から避けるようになってしまう。
教師の側にそれを教えるだけの力があるか(発音できるだけでなく,なぜそうなるのかを説明できる必要)。
A confused explanation can be worse than no explanation at all.
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さらに,relevance(関連性)重視の立場での判断もあり得る。
同化,脱落,linking/intrusion を使いながら発音することが,その学習者に本当に必要なのか?
現地で友達を作らねばならない小さい子供と,聞き間違えられると事故が起きかねない現場で働く大人とで
は,必要とされる(target)発音が異なるのではないか?
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あなたは教師として,どの程度まで同化,脱落,linking/intrusion を教えるべきと思うか。(きょうの課題)