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創 造 説 話 に 対 す る 説 明 -2
2011 年 11 月 16 日
神学教室
金
大烈 神父
4 . カ イ ン と ア ベ ル の 物 語 ( 4,1-5,32)
暗示
カインとアベルの物語は、創造の物語と同じように、人間の根本的な問題につい
て話している。長い間、芸術作品の素材として広く使われたので、よく知られてい
るこの物語は、本来の創造の物語とは別の伝承であり、その分量ももっと長かった
と推定される。
なぜなら叙述の部分より相対的に長い会話の部分や、内容的に明らかにしていな
い点がよく見られるからである。例えば、ヤハウェがカインの供え物をなぜ受け入
れなかったについての理由、カインとアベルの供え物の中でカインの物が受け入れ
られたかの結果について、ふたりが分かった過程、始祖アダムの息子であるカイン
が復讐を恐れていた場合は、別の人間がいたという点、同じ脈絡で、カインはどの
ように妻を得たのか等の疑問を考えてみるとカインとアベルの物語は、元の複雑な
内容を持っているカインに関する独立した物語であったと考えられる。
そして、この物語の背景には古代の農耕文化と遊牧文化の葛藤や、当時、パレス
チナの南海岸地方の草原を渡り歩いて通りながらヤハウェを崇拝していたケン族
の起源の物語を反映していると考えられる。
しかし、ヤフィスト著者達はこの物語を圧縮して、楽園の物語の後に置くことに
よって、特殊な文化や種族の単純な背景の暦史を人間の根源的で普遍的な問題を
含んでいる話に、その性格を変化させた。
ヤフィストは、人間の最初の犯罪の後に様々にあらわれる、また違う人間の罪悪
の真相を、“兄弟殺し”という極端な例を通して鮮明に示している。
カインのように平凡な仕事をして宗教生活をする普通の人も殺人ができるという
事実は、犯罪の普遍性を示している。
このような観点から見ると、カインは楽園の物語のアダムとエバのように、人間
が持つ普遍性の一つの側面を象徴しているといえる。
一方、文章の流れを見ると、園の物語とカインとアベルの物語は、非常に有機的
であり、補完的な関係に置かれている。
園の物語では、男女による最も基本的な家庭という共同体が祝福の中に造られた
姿と、罪を犯す限界性を同時に見せている。
それに対して、カインとアベルの物語では、もう一つの基本的な共同体である
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兄弟や同僚との関係で様々な仕事が分けられる肯定的な姿と共に必然的に生じる
競 争 関 係 な ど 、否 定 的 な 側 面 を 描 写 す る こ と に よ っ て 、人 間 の 両 面 性 を 見 せ て い る 。
カインとアベルの物語の基本的な流れは、エデンの園の物語と同様に、“犯罪と
処 罰 "で 構 成 さ れ て い る 。
カインの犯罪を記述しながら、ヤフィスト著者達は、カインとアベルの兄弟関係
を反復的に強調することで、一つの犯罪が、単に神に逆らう罪に終わらず、社会的
な連帯性にも大きい傷を与えるのを話している。同時に、ヤフィストは、弟を殺害
したカインを処罰しながらも保護してくださる神様を記述することで、罪人までも
かばってやる神様の慈悲を表している。
カインを殺さないようにしたのは、復讐の悪循環による罪が広がるのを防ごうと
する根本的な意図から出てきたと考えられる。
5 . 洪 水 物 語 ( 6,5-8,22)
大洪水に関する物語りは、古代の東方地域をはじめて、どこでも見つけられる。
本来の洪水の物語は、大きな川のほとりに住んでいた人類の元の体験が残した跡で
あるか、または、人類の起源を説明する為に構成されたと考えられる。事実、ユー
フラテス川、チグリス川の一帯に巨大な洪水があったという証拠は考古学的な発掘
で証明されている。
創世記に記述されたノアの洪水の説話もその全体的な形は、他の洪水の物語と大
きい違いはない。
特に、バビロニアのギルガメッシュ叙事詩に記されている洪水の説話とその展開
の流れが非常に似ている。それらをまとめてみると次のようになる。
・ 神 (達 )が 洪 水 を 起 こ す の を 決 定 す る 。
・一人とその家族だけが救われる。
・特定人だけに神的啓示によって、洪水の暗示が与えられる。
・神の指示に従って、避難所を作る。
・神の命令に応じて、動物たちを箱舟に乗せる。
・洪水が終わったことを鳥によって知ることになる。
・箱舟が山頂にとどまる。
・感謝祭祀で物語を仕上げる。
しかし、外形上、これらの類似点にもかかわらず、創世記の洪水の物語は基礎を
なす思想と伝える意味において、他の洪水の伝説との明確な違いを見せている。
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創世記の洪水物語が伝えようとしたのはノアを中心とした独立した物語よりは、
元の歴史の一部分として全体的に繋がっている流れである。したがって、この物語
の 核 心 は 、 “ ノ ア の 救 い "で は な く “ 神 様 が 人 類 を 滅 ぼ す 事 と 救 う 事 を 決 め ら れ た "
という内容である。
創世記の洪水の物語をよく見ると、所々に内容が重なるところがあれば、異なる
ところもある。文献の仮説によれば、これらの理由は、二つの文献、つまり、ヤフ
ィストの文献と祭官系の文献が混ざって物語を構成したからである。
ところが、祭官系が最終的な編集をしているので祭官系の文献がヤフィストの文
献よりも分量も多いばかりか、物語の主な骨格を成すようになったと考えられる。
次は、洪水の物語で両方の文献の内容が互いに重なったり異なったりする箇所を
まとめたものである.
* 重なる箇所
内容
ヤフィストの文献
祭官系の文献
人間の罪悪
6,5
6,11-22
神様が世を懲らしめようと決心
6,7
6,13
洪水の予告
7,4
6,17
神様がノアに箱舟に入るように命じられる
7,1
6,18
定めた動物を集める
7,2
6,19-20
動物達の生命の保存
7,3
6,19
家族と動物が箱舟に入る
7,7-9
7,13-16
洪水の始まり
7,10
7,11
水が増え満たし船が動き出し
7,17
7,18
全ての生物が死ぬ
7,22-23
7,20-21
洪水が終わる
8,2b
8,2a
水が減る
8,3a
8,3b-5
箱舟から出る
8,6-12
8,15-17
これからは洪水が無いという約束
8,20-22
9,8-17
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* 違いがある箇所
内容
洪水の理由
ヤフィストの文献
祭官系の文献
人の悪行
地 の 堕 落 (6,11)
清い獣と鳥が七つずつ
全ての動物は二つずつ
清 く な い 獣 一 つ が い ず つ (7,2)
(6,19)
雨 (7,4.12;
地の下の水の流れと雨
箱舟に入った動物
水
8,2b)
40 日 雨 が 降 っ て か ら (7,4.12)
150 日 間 水 が 溜 ま り (7,24)
61 日 間 続 く (7,10;8,6-12)
1年間かかる
水が引く時
ま だ 水 が 溜 ま っ て い る (8,9)
山 の 頂 が 現 れ る (8,5)
乾いた地を確認
鳩 を 3 回 送 る (8,8-12)
カ ラ ス を 1 回 送 る (8,7)
洪水の期間
両方の文献はいずれも洪水が起きるようになった理由を人間の罪悪の真相に置い
ている。
ヤ フ ィ ス ト は 6,5-8 で 、 ア ダ ム と エ バ の 罪 か ら 始 め 、 様 々 な 人 間 の 罪 が だ ん だ ん
広がり、深まり、遂に人間の存在そのものを脅かすほどに世が罪に満ちていると
説明する。ヤフィストは、これが洪水の原因であることを、神様の言葉を借りて
説 明 す る 。 (6,7)
祭官系は、洪水の原因を説明しながら、人間の罪によって、世の中がどのように
変わったのかを示している。天地創造の時、神様の目には極めて良かった世の中
( 1 , 3 1 ) 、 今 は あ ま り に も 腐 っ て い た 。( 6 , 1 1 - 1 2 ) す べ て の 美 し さ は 、 悪 の も の に
変わった。
祭 官 系 は 、な ぜ こ の よ う に な っ た の か に つ い て 、そ の 理 由 を 明 ら か に せ ず 、た だ 、
それは神様が成し遂げられた創造の秩序と祝福を破壊する人間の罪であるのを
指摘している。創造の秩序の破壊と逆行は、その代価として、創造前の混沌状態を
も た ら す 。 祭 官 系 は 、 特 に “ 不 法 (hamas)"と い う 用 語 を 使 っ て 世 界 の 堕 落 を 説 明 す
る。不法という用語は、預言者たちが審判について説教するときに使用した言葉で
あ る 。 彼 ら は イ ス ラ エ ル の 滅 亡 を も た ら し た す べ て の 原 因 を 一 つ に ま と め て "不 法 "
と規定した。大小の不法が公然と起きている社会はまさに滅亡を目前にした社会で
あ る 。 祭 官 系 は 、 洪 水 の 原 因 を 一 言 で "不 法 "と 言 い な が ら 、 神 様 が 不 法 に 満 ち 腐 っ
ているこの世をどのように滅ぼすかについて、またどのように不法を防ぎ、新たな
世界を成し遂げられるのかについて、この洪水の説話を通して話している。
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