モル濃度の考え方:混合溶液の調製を例に

2009 年度化学
(野島 高彦)
モル濃度の考え方:混合溶液の調製を例に
モル濃度の計算方法がわかれば,いろいろな水溶液を自由自在に調製できるように
なる.そこで今回は,「濃い濃度の保存液を適量取って混ぜて希釈して目的水溶液を
調製する」という場面を想定した計算問題を,段階的にマスターすることにしよう.
まず次の問題を解いてみよう.
(1) p285 練習問題 11-1-2
ある学生が,反応のために KOH 0.250 mol を必要としている.利用できるのは
0.400 mol/L の KOH 保存液のみである.この保存液を何 mL 使用すればよいか.
保存液のビンから KOH 水溶液を体積 x だけとってくる作業である.この x という体
積の液体中には,必要量の 0.250 mol が入っている.従って以下のような計算をする
ことになる.
(0.400 mol/L)(x)=0.250 mol.
x=0.625 L=625 mL
これは簡単な計算である.
しかし,現実には「何 mol 必要」という場面よりも「何 mM の溶液が何 mL 必要」
というような場面の方が圧倒的に多い.たとえば次のようなケースである.
(2) p285 練習問題 11-1-2 の改題
その学生が,こんどは 20.0 mmol/L の KOH 水溶液を 100 mL 必要としている.さっ
き使った 0.400 mol/L の KOH 保存液を用いて目的水溶液を調製する方法を述べよ.
まずモルで考える→必要な KOH の量をモルで考える.モルだよ,モル!
(20.0 10-3 mol/L)(0.100 L)=20.0
10-4 mol
これを保存液から取ってくる.その体積を x とする.
(0.400 mol/L)(x)= 20.0
10-4 mol
x=(20.0 10-4 mol)/(0.400 mol/L)=50.0 10-4 L=5.00 mL
こたえ→ 5.00 mL の KOH 保存液を水で希釈して 100 mL にする.
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ここまでマスターしたら,前回やった演習問題に取り組んでみよう.
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前回の演習問題
150 mM の NaCl と 15 mM のクエン酸ナトリウムの両者を含む水溶液を 500 mL 調
製する必要がある.試薬棚には 5 mol/L NaCl 水溶液と,0.3 mol/L のクエン酸ナト
リウム水溶液がある.それぞれを用いて目的の水溶液を調製する方法を述べよ.
混合溶液を調製するときには,各成分にわけて考える.
まず NaCl について考える.
調製作業がおわった後の溶液をイメージしてみよう.
容器の中には 500 mL (=0.500 L)の水溶液が入っている.
ここには NaCl が溶けている.その濃度は 150 mM だ.
さて,
「150 mM の NaCl が 0.500 L ある」とき,そこに存在している NaCl は何 mol
なのだろうか?
←モルを考える
それは
(150
10-3 mol/L)(0.5 L)=75
10-3 mol
これと同じの量(mol)の NaCl を,試薬棚の水溶液から取ってくればいいわけだ.
試薬棚の NaCl は濃度 5 mol/L なので,ここからピペットなり何なりで体積 x だけ吸
い取ると考えると,吸い取ってきた液の中に存在している NaCl の量(mol)はいくら
か?
←ふたたびモルを考える
(5 mol/L)(x)= 75
10-3 mol
ここから
x=15 10-3 L=15 mL
という具合に,NaCl については必要量が 15 mL と求まった.
同じ考え方で,クエン酸ナトリウムの体積を求める.
(15
(300
10-3 mol/L)(0.5 L)=7.5 10-3 mol ← 最終 500 mL 中の mol
10-3 mol/L)(y)= 7.5
10-3 mol ← 棚から持ってくる mol
y=25 10-3 L=25 mL
というわけで,15 mL の NaCl 水溶液と 25 mL のクエン酸ナトリウム水溶液を水で
薄めて 500 mL にすれば OK.
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この考え方をマスターすれば,成分が 3 種類であろうが 4 種類であろうが(体積オー
バーしないかぎり),今後の人生においてどのような組成の水溶液でも,棚や冷蔵庫
内の濃縮保存液をブレンドして自分で調製できるようになる(混ぜると沈殿するとか
反応するとかいう場合は除く).
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p284 練習問題 11-1-1(a)
Na2CO3=106. モルで考える.必要量は(0.200 mol/L)(0.250 L)=0.0500 mol
これの質量は(0.0500 mol)(106 g/mol)=5.30 g
5.30 g の Na2CO3 を水に溶かして 250 mL にすればよい.
p284 練習問題 11-1-1(b)
H3PO4=98. モルで考える.必要量は(0.75 mol/L)(1.5 L)=1.125 mol
これの質量は(1.125 mol)(98 g/mol)=110 g
110 g の H3PO4 を水に溶かして 1.5 L にすればよい.
p284 練習問題 11-1-1(c)
KMnO4=158. モルで考える.必要量は(0.600 mol/L)(0.150 L)=0.0900 mol
これの質量は(0.0900 mol)(158 g/mol)=14.2 g
14.2 g の KMnO4 を水に溶かして 150 mL にすればよい.
p285 練習問題 11-1-3
標準的な単位になおして考える.1 dL 中に 320 mg → 0.1 L 中に 0.32 g
モルで考える. 0.32 g/(23 g/mol)=13.9
濃度を求める.13.9
10-3 mol/0.1 L=139
10-3 mol
10-3 mol/L=139 mmol:正常
p303 復習問題 3
H2SO4=98.
4.9 g/(98 g/mol)=0.050 mol. 0.050 mol/0.250 L=0.20 mol/L
p303 復習問題 7(a)
NaOH=40.
(0.20 mol/l)(0.050 L)=0.01 mol. (0.01 mol)(40)=0.40 g
0.40 g の NaOH を水に溶かして 50 mL にする.
p303 復習問題 7(b)
Na2SO4=142.
(0.11 mol/L)(0.250 L)=0.0275 mol. (0.0275 mol)(142 g/mol)=3.9 g
3.9 g の Na2SO4 を水に溶かして 250 mL にする.
p303 復習問題 7 (d)
NH4Cl=53.5. (0.50 mol/L)(0.10 L)=0.050 mol. (0.050 mol)(53.5 g/mol)=2.675 g
2.7 g の NH4Cl を水に溶かして 100 mL にする.
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p303 復習問題 7 (g)
HCl=36.5.
(6.0 mol/L)(0.055 mL)=0.33 mol. (0.33 mol)(36.5 g/mol)=12.045 g
12 g の HCl を水に溶かして 55 mL にすればよい.
[注] これでも計算問題としては OK だが,12 g の HCl(塩化水素ガス)をはかりとって
水に溶かすという操作が行われることは珍しい(ガスの重さをきっちりと量る操作は
難しい←やるとしたら,天秤の上に適当な量の水が入ったフラスコなりビーカーなり
を乗せて,ここに塩化水素ガスボンベからチューブをひっぱってきてブクブクさせて,
天秤の読み値を眺めながら,水の重さが 12 g だけ増えるのを待つ.塩化水素は水に
よく溶けるのでこういう操作ができる).現実には濃塩酸(12 mol/L)を水で薄めて 6
mol/L にすることが一般的である.市販の濃塩酸は 12 mol/L である(これは知ってい
れば便利だが,化学を専攻するのでなければ別に知らなくてもよい).
別の答え→濃塩酸(12 mol/L )27.5 mL を水で薄めて 55 mL にする.
p303 復習問題 7 (h)
K2HPO4=174.
(0.20 mol/L)(0.010 L)=0.002 mol.
(0.002 mol)(174 g/mol)=0.348 g
0.35 g の K2HPO4 を水に溶かして 10 mL にする.
p303 復習問題 7 (i)
(NH4)2SO4=132.
(0.010 mol/L)(0.25 L)=0.0025 mol
(0.0025 mol)(132 g/mol)=0.33 g
0.33 g の(NH4)2SO4 を水に溶かして 0.25 L にする.
[注] (NH4)2SO4 は硫酸アンモニウム,略して「硫安」と呼ばれる物質で,窒素肥料の
ひとつである.蛋白質の水溶液に硫安を加えて行くと,蛋白質が沈殿する.この方法
を用いて蛋白質サンプルを精製する方法は「硫安沈殿」と呼ばれ,生化学の研究室で
日常的に行われている操作の一つである.ここで硫安を加える量を間違えると蛋白質
サンプルを失ったり,精製できなかったりする.濃度の正しい理解は研究でも検査で
も重要なのだ.
p304 復習問題 15(b)
ほしい NaOH のモルを求める
(0.030 mol/L)(0.150 L)=0.0045 mol
これと同じ量を 0.10 mol/L の溶液からとってくると考え,その体積を x とすると,
(0.10 mol/L)(x)= 0.0045 mol
x=0.045 L=45 mL
これを水で希釈して 150 mL にすればよい.
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