非清算店頭デリバティブ取引に係る証拠金規制(修正規制案)

December 2015
非清算店頭デリバティブ取引に係る証拠金規制(修正規制案)
はじめに
金融庁は、2015 年 12 月 11 日、中央清算されない店頭デリバティブ取引に係る証拠金規制について、
2014 年 7 月 3 日に公表した規制案(以下「当初規制案」1という)を修正する新たな規制案(金融商品取引
業等に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(案)(以下「修正府令案」という。)及び同附則(案)
並びに関連する金融庁告示(案)。以下、これらを総称して「修正規制案」 2という。)を公表した。また、当
初規制案への意見に対する回答及び証拠金規制に係る各監督指針の修正案(以下「監督指針修正案」
という。)も同時に公表されている。
修正規制案及び監督指針修正案については、2016 年 1 月 12 日(火)18 時 00 分を期限として意見公
募手続に付されており、更なる変更もあり得るところではあるが、金融機関におけるデリバティブ実務への
影響が大きいものと思われることから、その要点を以下紹介する。なお、以下において下線を付した箇所
は、修正規制案における当初規制案からの主要な変更箇所及び明確化された箇所である。
1.
2.
修正規制案について
(1)
規制対象者
修正規制案の対象者は金融商品取引業者等である。但し、規制対象取引に係る適用除外規定の結
果、実質的な対象者は第一種金融商品取引業を営む金融商品取引業者及び一定の登録金融機関3(以
下、両者を合わせて「一種金商業者等」という。)に限定されている。
(2)
規制対象取引
修正規制案の対象取引は、「非清算店頭デリバティブ取引」4である。非清算店頭デリバティブ取引とは、
店頭デリバティブ取引から清算集中される取引5を除外したものをいう。
当初証拠金6については、通貨スワップ取引のうち元本部分は対象から外されている7。また、店頭商品
デリバティブ取引及び差金決済できない先物外国為替取引は、金融商品取引法上の店頭デリバティブ
取引に該当せず、修正規制案の対象取引ではない。
但し、一種金商業者等の任意で、次の規制対象外取引を、変動証拠金8及び当初証拠金の金額の算
出において非清算店頭デリバティブに含めることができる。①清算集中されない店頭商品デリバティブ取
1
http://www.fsa.go.jp/news/26/syouken/20140703-3.html
2
http://www.fsa.go.jp/news/27/syouken/20151211-1.html
3
登録金融機関である銀行、株式会社商工組合中央金庫、株式会社日本政策投資銀行、全国を地区とする信用金庫連合会、農林中央
金庫及び保険会社
4
修正府令案 123 条 1 項 21 号の 5 柱書
5
①金融商品取引清算機関(連携清算機関等を含む。)で清算される取引、②外国金融商品取引清算機関で清算される取引、③外国の
法令に準拠して設立された法人で外国において金融商品債務引受業と同種類の業務を行う者によって清算される取引のうち金融商品債
務引受業の対象取引から除かれる金融庁長官が指定する取引
6
非清算店頭デリバティブ取引について将来発生し得る費用又は損失の合理的な見積額(以下「潜在的損失等見積額」という。)に対応
して預託等をする証拠金をいう(修正府令案 123 条 1 項 21 号の 6 柱書)。
7
修正府令案 123 条 1 項 21 号の 6 柱書
8
非清算店頭デリバティブ取引の時価の変動に応じて、当該非清算店頭デリバティブ取引の相手方に貸付又は預託(以下「預託等」とい
う。)をする証拠金をいう(修正府令案 123 条 1 項 21 号の 5 柱書)。
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引、②先物外国為替取引、③非清算店頭デリバティブ取引のうち適用除外取引(下記(3)参照)、④一括
清算の約定をした基本契約書に基づき行われている取引で上記①ないし③以外の取引、⑤通貨スワッ
プ取引のうち元本部分(当初証拠金に関してのみ)9。
(3)
適用除外取引10
以下のアないしエのいずれかに該当する取引には、修正規制案は適用されない。
ア
取引当事者に着目した適用除外
① 少なくとも当事者の一方が、一種金商業者等又は外国デリバティブ業者(外国 11において店頭デリ
バティブ取引を業として行う者(外国政府等12を除く。)をいう。以下同じ。)のいずれでもない取引。
② 少なくとも当事者の一方が、一種金商業者等ではあるものの以下に該当する場合の取引。
基準時(非清算店頭デリバティブ取引を行った時。以下同じ。)の属する年の前々年の 4 月から前年
の 3 月まで(基準時が 12 月に属するときは、その前年の 4 月からその年の 3 月まで)の各月末日に
おける店頭デリバティブ取引(清算集中等取引情報又は取引情報の対象となっているものに限り、
信託勘定に属するものとして経理されるものを除く。)に係る想定元本額の合計額の平均額が 3000
億円未満である者(金額につき下記(6)の経過措置あり)。
③ 少なくとも当事者の一方が、外国デリバティブ業者ではあるものの以下に該当する場合の取引。
取引の状況その他の事情から合理的に判断して、基準時の属する年の前々年の 4 月から前年の 3
月まで(基準時が 12 月に属するときは、その前年の 4 月からその年の 3 月まで)の各月末日におけ
る店頭デリバティブ取引に係る想定元本額の合計額が 3000 億円以上であると見込まれる者ではな
い者(金額につき下記(6)の経過措置あり)。
④ (当初証拠金についてのみの適用除外)少なくとも当事者の一方が、一種金商業者等ではあるもの
の以下に該当する場合の取引。
基準時の属する年の前年の 3 月から 5 月まで(基準時が 9 月から 12 月までに属するときは、その年
の 3 月から 5 月まで)の各月末日における非清算店頭デリバティブ取引、非清算店頭商品デリバティ
ブ取引、及び先物外国為替取引に係る想定元本額の企業グループベースの合計額の平均額が 1
兆 1000 億円以下である者(金額につき下記(6)の経過措置あり)。
⑤ (当初証拠金についてのみの適用除外)少なくとも当事者の一方が、外国デリバティブ業者ではある
ものの以下に該当する場合の取引。
取引の状況その他の事情から合理的に判断して、基準時の属する年の前年の 3 月から 5 月まで(基
準時が 9 月から 12 月までに属するときは、その年の 3 月から 5 月まで)の各月末日における清算集
中されない店頭デリバティブ取引、清算集中されない店頭商品デリバティブ取引、及び先物外国為
替取引に係る想定元本額の企業グループベースの合計額の平均額が 1 兆 1000 億円を超えると見
込まれる者ではない者(金額につき下記(6)の経過措置あり)。
9
修正府令案 123 条 7 項
10
変動証拠金につき修正府令案 123 条 10 項、当初証拠金につき同条 11 項
11
一括清算の約定又はこれに類する約定が有効であることが適切に確認されている国に限る。
12
外国政府、外国の中央銀行、国際開発金融機関及び国際決済銀行
2
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イ
信託勘定取引に関する適用除外
信託勘定に属するものとして経理される取引のうち次に該当する取引。
(ア)
変動証拠金に関して
基準時の属する年の前々年の 4 月から前年の 3 月まで(基準時が 12 月に属するときは、その前年の 4
月からその年の 3 月まで)の各月末日における店頭デリバティブ取引(清算集中等取引情報又は取引情
報の対象となっているものに限る。)に係る想定元本額の合計額の平均額が 3000 億円未満である信託財
産に係る取引(金額につき下記(6)の経過措置あり)。
(イ)
当初証拠金に関して
上記(ア)の変動証拠金の適用除外を満たし、かつ、基準時の属する年の前年の 3 月から 5 月まで(基
準時が 9 月から 12 月に属するときは、その年の 3 月から 5 月まで)の各月末日における非清算店頭デリ
バティブ取引、非清算店頭商品デリバティブ取引及び先物外国為替取引に係る想定元本額の合計額の
平均額が 1 兆 1000 億円以下である信託財産に係る取引(金額につき下記(6)の経過措置あり)。
ウ
同一グループ内取引に関する適用除外
自らの親会社等、子会社等又は親会社等の子会社等が相手方となる場合又は外国の法令上これらに
相当する者が当該取引の相手方となる場合の取引。
エ
外国の証拠金規制による代替コンプライアンスによる適用除外
(日本の)変動証拠金及び当初証拠金に関する措置と同等であると認められる外国法令に準拠する場
合等、(日本における)当該措置を講じなくても公益に反し又は投資者の保護に支障を生ずるおそれがな
いとして金融庁長官が指定する場合の取引。
この規定は、クロスボーダー取引について、他の法域における規制との重複適用を避けることを意図し
たものである。
(4)
義務の内容
一種金商業者等は次の措置を講じる義務を負う。
ア
変動証拠金について13
(ア)
時価の算出
非清算店頭デリバティブ取引の相手方ごとに、①非清算店頭デリバティブ取引の時価の合計額、及び
②相手方から預託等がされている変動証拠金の時価の合計額又は当該相手方に預託等をしている変動
証拠金の時価の合計額を毎日算出すること。
(イ)
変動証拠金の預託等又は返還を求めること
14
次の方法により算出した額が、当事者間で合意した最低引渡額 を上回る場合には、直ちにその額15
に相当する変動証拠金の預託等を相手方に求め、又は預託している変動証拠金の返還を求めること。
① 非清算店頭デリバティブ取引の時価の合計額がゼロを上回り、かつ、相手方に変動証拠金を預託
13
修正府令案 123 条 1 項 21 号の 5
14
当初証拠金との合計で 7000 万円を超えることはできない。
15
算出額と最低引渡額の差額ではなく、算出額に相当する変動証拠金額の預託等を求める必要がある。
3
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していない場合
(非清算店頭デリバティブ取引の時価の合計額) - (相手方から預託等を受けている変動証拠
金の時価の合計額)
② 非清算店頭デリバティブ取引の時価の合計額がゼロを上回り、かつ、相手方に変動証拠金を預託
している場合
(非清算店頭デリバティブ取引の時価の合計額) + (相手方に預託等をしている変動証拠金の
時価の合計額)
③ 非清算店頭デリバティブ取引の時価の合計額がゼロ以下の場合
(相手方に預託等をしている変動証拠金の時価の合計額) - (非清算店頭デリバティブ取引の
時価の合計額の絶対値)
(ウ)
変動証拠金の預託等又は返還を受けること
(ア)で変動証拠金の預託等又は返還を求めた後、遅滞なく、変動証拠金の預託又は返還を受けるこ
と。なお、両当事者が算出した金額が一致しない場合には、両当事者が予め約した方法により算出した
額を変動証拠金額とする。
(エ)
変動証拠金の預託等又は返還の求めに応じること
相手方から上記の方法等により変動証拠金の預託等又は返還を求められた場合にこれに応じること。
(オ)
信託勘定に属するものとして経理される取引についての取り扱い
適用対象となる信託勘定取引については、信託財産ごとに、上記(ア)ないし(エ)を行うこと。
イ
当初証拠金16
(ア)
潜在的損失等見積額及び当初証拠金の時価の算出
非清算店頭デリバティブ取引の相手方との間で、以下の事由が生じた場合に、①当該相手方との非清
算店頭デリバティブ取引の潜在的損失等見積額、②相手方から預託等がされている当初証拠金の時価
の合計額又は当該相手方に預託等をしている当初証拠金の時価の合計額を算出すること。
A) 非清算店頭デリバティブ取引を行ったとき、非清算店頭デリバティブ取引が終了したとき、その他非
清算店頭デリバティブ取引に係る権利関係に変更があった場合
B) 最後に潜在的損失等見積額を算出した日から 1 月が経過した場合
C) A)、B)のほかに相場の変動その他の理由により当該相手方に対して当初証拠金の預託等を求める
ことが必要と認められる場合
(イ)
算出方法
潜在的損失等見積額の算出方法として定量的計算モデルを用いる方法と標準表を用いる方法がある。
前者を用いる場合にはあらかじめ金融庁長官に届出る必要がある。
定量的計算モデルを用いる方法により、潜在的損失等見積額を算出することができない非清算店頭
デリバティブ取引がある場合には、当該非清算店頭デリバティブ取引について、標準表を用いる方法に
より潜在的損失等見積額を算出する。
定量的計算モデルを用いる方法による場合には、当該非清算店頭デリバティブ取引の相手方との間
16
修正府令案 123 条 1 項 21 号の 6
4
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で締結している一括清算17の約定をした基本契約書ごと(定量的計算モデルを用いる方法及び標準表を
用いる方法の双方により算出する場合には定量的計算モデルを用いる方法により潜在的損失等見積額
を算出する非清算店頭デリバティブ取引について、一括清算の約定をした基本契約書ごと)に算出する
ことができる。
定量的計算モデル
定量的計算モデルを用いる場合には、当該モデルが一定の基準を満たすこと18、モデル管理部署に
ついての体制が一定の基準を満たすこと19、及び金融庁長官に届出書を提出することが必要ある。
i.
標準表
一括清算の約定をした基本契約書ごとに、次の算式に基づいて計算する。
IM(潜在的損失等見積額)=0.4×グロスの IM+0.6×NGR20×グロスの IM
グロスの IM は時価の主要な変動の要因によって定まる取引の区分ごとに定められた証拠金率21を想
定元本額に乗じて算出される。
ii.
(ウ)
当初証拠金の預託等を求めること
次の方法により算出した額に相当する当初証拠金の預託金を求めること。
(潜在的損失等見積額)-(相手方から預託等されている証拠金の時価の合計額)-(潜在的損失
等見積額から控除することをあらかじめ定めた額(以下「閾値」という。))
閾値はグループベースで 70 億円を超えることはできない。また、変動証拠金との合計で 7000 万円を上
限とする最低引渡金額を設定することができる。
(エ)
当初証拠金の預託等を受けること
当初証拠金の預託等を求めた後、遅滞なく、当該証拠金の預託等を受けること22。また、当初証拠金に
17
18






19






20
一括清算法に規定する一括清算
主な基準は、以下の通り。
片側 99%の信頼区間を使用する。
非清算デリバティブ取引の(仮定)保有期間を原則 10 日以上とする。
①原債務者の信用状態の変化、②商品価格の変動、③株式の価格の変動、④外国為替相場又は金利の変動、⑤上記以外のもの
の変動、を時価の主要な変動要因をとする取引に区分して、区分ごとに潜在的損失見積額を算定し合算する。
リスクの相殺、分散及びヘッジ効果の勘案は上記取引区分内で行い、その範囲を超えて行うことはできない。
使用するヒストリカルデータの要件は、以下の通り。①1 年以上 5 年を超えない期間を対象とすること、②ストレス期間を含むこと、③
直近の市場データを含むこと、④各数値に掛目を乗じて得た数値でないこと、⑤少なくとも毎年一回更新されること。
補足すべきリスクとしては、非線形リスク、ベーシス・リスク、及び対象取引に係るエクスポージャーの額に重要な影響を及ぼすリスク
がある。
主な基準は、以下の通り。モデル管理部署が、
取引を行う部署から独立していること
定量的計算モデルの運営方針、管理、手続を記載した書面を作成して、これらが遵守されるための手段を講じていること
バック・テスティングの実施手続とその結果を記載する書面を作成していること
当該モデルの正確性の検証と適切な見直しのための手続きを定めていること
主な相手方との取引において同モデルを適切に運営できることを確認していること
同モデルによる潜在的損失等見積額の算出過程について原則年一度以上の内部監査を実施すること
NGR =ネット再構築コスト/グロス再構築コスト(グロス再構築コストが零である場合には NGR は 1。)
ネット再構築コスト:非清算店頭デリバティブ取引の時価の合計額(当該合計額が零を下回る場合にはゼロ。)
グロス再構築コスト:非清算店頭デリバティブ取引の時価(当該時価が零を下回る場合にはゼロ)の合計額
21
証拠金率については別紙①参照
22
自らの当初証拠金の算出額と相手方の算出した額に差異がある場合、当事者があらかじめ約した方法により算出した額について遅滞
なく預託等を受けるとともに、当該差異を解消するための措置に係る行為を行うこと
5
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ついては、ネットではなく双方当事者がそれぞれグロスで預託等を受ける。
(オ)
当初証拠金の管理
預託等を受けた当初証拠金を以下の目的が達せられるように信託の設定又はこれに類する方法により
管理すること。
① 相手方から預託等を受けた当初証拠金を相手方の債務不履行時に遅滞なく利用できること。
② 当該証拠金の預託等を受けた一種金商業者等に一括清算事由等が生じた場合に、当該証拠金
が相手方に返還されること。
(カ)
再担保の禁止
当初証拠金については、それを再担保に供すること又は貸し付けることが禁止されている(変動証拠金
についてはこのような定めはない)。但し、当初証拠金が金銭である場合には、その管理に付随して安全
な方法により行われる場合を除く。
(キ)
当初証拠金の預託等又は返還の求めに応じること
相手方から上記の方法等により当初証拠金の預託等を求められた場合にこれに応じること。
(ク)
信託勘定に属するものとして経理される取引についての取り扱い
修正規制案の適用対象となった信託勘定取引については、信託財産ごとに、上記の措置を講じる必
要がある。
(5)
適格担保
変動証拠金及び当初証拠金には、別紙②記載の資産をヘアカット率記載の割合で控除したうえで、充
てることができる23。また、証拠金に充てられる資産の通貨の種類と当事者が一又は複数の非清算店頭
デリバティブ取引ごとにあらかじめ定めた通貨の種類が異なる場合には、8%のヘアカットが加えられる。
但し、変動証拠金が金銭をもって充てられる場合には、通貨に係るヘアカットは適用されない。
(6)
施行時期、適用時期及び経過措置
施行時期は 2016 年 9 月 1 日であり、同日以降に行われる取引が対象となる。ただし、施行日前に行わ
れた取引を、一種金商業者等の任意で、変動証拠金及び当初証拠金の算定の基礎に含めることができ
る。また、基準時の属する年の前年の 3 月から 5 月まで(基準時が 9 月から 12 月に属するときは、その年
の 3 月から 5 月まで)の各月末日における非清算店頭デリバティブ取引、非清算店頭商品デリバティブ取
引及び先物外国為替取引に係る想定元本額の合計額の平均額に応じて、変動証拠金又は当初証拠金
の規制の適用の時期は以下の通りとする経過措置が設けられている。
23
適用開始日
変動証拠金
当初証拠金
2016 年 9 月 1 日
420 兆円超
420 兆円超
2017 年 3 月 1 日
限定なし
2017 年 9 月 1 日
限定なし
315 兆円超
2018 年 9 月 1 日
限定なし
210 兆円超
2019 年 9 月 1 日
限定なし
105 兆円超
2020 年 9 月 1 日
限定なし
1 兆 1000 億円超
修正府令案 123 条 8 項
6
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3.
監督指針修正案について
修正規制案と平仄をとる形で併せて各金融機関等向けの監督指針の修正案が示されている。金融商
品取引業者等向けの監督指針修正案においては、店頭デリバティブ取引残高が
3000 億円未満である
場合であっても、金融機関等を相手方とする非清算店頭デリバティブ取引については、以下の点に留意
して、適切な管理体制を整備することが求められる。
①
②
③
④
⑤
⑥
取引相手方との変動証拠金に係る適切な契約書(例えば、
ISDA マスター契約及びCSA 契約)
の締結
変動証拠金を主要通貨以外で受領した場合であって、取引当事者がそれぞれあらかじめ定めた
通貨と異なる場合における一定の為替リスクの考慮
取引の規模、リスク特性等を勘案した十分な頻度での定期的な変動証拠金の授受及びアドホッ
クコール(証拠金の随時請求)に対応した変動証拠金の授受
証拠金に用いられる資産について、例えば、流動性の低い有価証券は一定未満とするなどの適
切な分散
証拠金に係る紛争について、紛争が発生した場合の
対応策の事前の策定、適切な対応の実施
並びに紛争内容の記録及び保存
一括清算の約定の法的有効性が確認されていない外国の金融機関等を取引相手とした、証拠
金の授受等の措置を講ずることが求められていない非清算店頭デリバティブ取引に係る適切なリ
スク管理
①及び③の結果、本規制案の対象とならない場合にも、非清算店頭デリバティブ取引を行うに当たって
は、CSA 契約等の締結、一定頻度での変動証拠金の授受等が必要となる。
また、修正規制案では担保集中を制限する規定は置かれていないが、④のとおり、流動性の低い有価
証券は一定未満とするなど、担保の適切な分散が求められている。
以上
* * * * *
本ニュースレターで示されている内容は、改正法案の概要であり、詳細については必ず改正法案
の原文をご参照ください。
本ニュースレターの内容は、一般的な情報提供であり、具体的な法的アドバイスではありません。
お問い合わせ等ございましたら、下記執筆担当者までご連絡下さいますようお願いいたします。
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別 紙
①標準表を用いる場合の証拠金率
取引の区分
残存期間
2 年以下
2%
2 年超 5 年以下
5%
5 年超
10%
1
クレジットデリバティブ
2
証拠金率
3
4
商品デリバティブ
-
15%
5
株式デリバティブ
-
15%
6
為替デリバティブ
-
6%
2 年以下
1%
2 年超 5 年以下
2%
5 年超
4%
-
15%
7
金利デリバティブ
8
9
その他デリバティブ
10
②適格担保
資産の区分
信用リスク区分
残存期間
ヘアカット率
現金
‐
‐
‐
主要株式指数構成銘柄の株式等
‐
‐
15%
中央政府、中央銀行、国際決済銀行、国
1-1 は銀行自己資本
1 年以下
0.5%
際通貨基金、欧州中央銀行、欧州共同
告示 89 条 3 号に該当
1 年超 5 年以下
2%
体、国際開発銀行、又は日本の地方公共
する場合
5 年超
4%
1 年以下
1%
1 年超 5 年以下
3%
5 年超
6%
‐
15%
1 年以下
1%
1 年超 5 年以下
4%
5 年超
8%
2-2、4-2、4-3、5-2 又
1 年以下
2%
は 5-3
1 年超 5 年以下
6%
5 年超
12%
‐
投資対象に適用される
団体、地方公共団体金融機構若しくは政
府関係機関の発行する債券
1-2 又は 1-3
1-4
2-1、4-1 又は 5-1
社債等
投資信託等
‐
上記 の割 合の うち 最も
高いもの
8
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