Electronic Design 2009 Forecast Issue

コース ノート
フライバック電源に音鳴りがある場合の対処
はじめに
このコース ノートは、PI University のビデオ コース「フライバッ
ク電源に音鳴りがある場合の対処」に関するものです。このコー
スでは、スイッチング電源における音鳴りのさまざまな原因と、
音鳴りの問題に対処するための手順について学習します。
スイッチング電源ではある程度の音鳴りが発生するのが普通で
あり、密閉型の筐体で使用する場合には問題にならない可能性
があることに留意してください。音鳴りが許容できないレベルか
密閉型の筐体の電源では、音鳴りは問題
にならない可能性がある
どうかを判断する前に、完成した筐体または製品での試験を必
ず行ってください。音鳴りは、発振出力電圧など、設計上のほか
の要因により発生する場合もあります。そのため、許容できない
レベルの音鳴りを引き起こす設計上の欠陥がないことを、最初
に確認しておく必要があります。
必要な装置
このコースを学習するには、次の装置が必要です。
1.
プログラム可能な AC 電源またはスライダック
2.
電子負荷
発振出力により音鳴りが発
生する場合がある
音鳴りがある部品
音鳴りは通常、セラミック コンデンサまたはフェライト トランス コ
アのいずれかで発生します。セラミック コンデンサの音鳴りは、
逆圧電効果によって起こるのが一般的です。誘電体構造に一
定の電圧を印加すると、物理的応力または歪みが誘発され、そ
の結果として物質が変形します。この物質の変形により、周囲
の空気が押しのけられて、音鳴りが発生します。
逆圧電効果がセラミック コンデンサの音鳴
トランス コアの音鳴りは、磁気歪みと呼ばれる同種の効果によ
りを発生させる
って起こります。多くの強磁性物質は、磁場にさらされると変形
します。トランス コアの磁場は変化するので、その結果、コ
アが物理的に振動します。この振動がトランスの物理的な
共振周波数に達すると、振動が増幅され、音鳴りが大きくな
ることがあります。
磁気歪みがトランス コアの音鳴りを発生させる
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フライバック電源に音鳴りがある場合の対処
2 ページ
音鳴りがあるコンデンサの対処方法
セラミック コンデンサは、スイッチング電源の音
鳴りの、最も一般的な発生源です。この音鳴り
は電圧振幅によって起こる逆圧電効果が原因
であるため、ここでの調査対象は、dv/dt 振幅
の高いセラミック コンデンサのみに絞ることが
できます。これには、スナバ コンデンサやクラ
ンプ コンデンサ、セラミック出力コンデンサなど
dv/dt 振幅の高いセラミック コンデンサで音鳴りが発生する
が含まれます。
セラミック コンデンサから音鳴りが発生しているかどうかを識別する一般的な方法は、このコンデンサ
を、同じ値と適切な電圧定格を持つメタル フィルム型に交換することです。音鳴りのレベルが下がった
場合は、これで回路の音鳴りの発生源がわかったことになります。
クランプ コンデンサから音鳴りが発生している場合は、メタル フィルム型と交換するか、別の誘電体を
使ったセラミック コンデンサを試してみるか、またはクランプ型を変更する (例: ツェナー クランプ回路
に交換する) ことを検討します。
スナバ コンデンサから音鳴りが発生している場合は、メタル フィルム型と交換することを検討するか、
直列抵抗の値を大きくしてコンデンサの dv/dt を下げます。または、別の誘電体を使ったセラミック コン
デンサと交換して、音鳴りのレベルが下がるかどうかを確認します。
音鳴りがあるクランプ コンデンサの対処方法
音鳴りがある出力コンデンサの対処方法
セラミック出力コンデンサが音鳴りの発生源の場合、電解型と交換するか、別の誘電体を使ったコンデ
ンサに変更することを検討します。また、並列に配置した複数のセラミック コンデンサと交換することも
検討します。各コンデンサのサイズを小さくすると、表面積が減少し、コンデンサの物理的な共振が変
化します。
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音鳴りがあるトランスの対処方法
トランスは、電源の音鳴りの、もう 1 つの一般的な発生
源です。トランスの問題を修正するには、不適切な設計
によってトランスに応力が加わっていないことをまず確
認します。供給する入力電圧と出力負荷が、PI
Expert の仕様に入力した値と一致していることを確認
します。指定した最小入力電圧以下、または指定した
トランスが原因だと考える前に外部条件を
確認する
出力負荷以上で電源が稼動している場合、入力 AC サ
イクルの一部でレギュレーションを外れることがあります。その結果、コアの磁束レベルが高くなり、音
鳴りが発生します。
負荷と入力電圧がともに適切である場合は、入力整流コンデンサの値が PI Expert に指定した値のと
おりに適切であることを確認します。入力コンデンサが小さすぎると、DC バス電圧がリフレッシュ サイ
クル間で低くなりすぎるため、これも入力 AC サイクルの一部でレギュレーションを外れる原因になりま
す。
トランス コアを浸漬ワニス処理すると、コアが振動して
ボビンに接触するのを防ぐことができ、音鳴りが減少
します。ベンダーにワニス処理方法を指定するときに
は、必ず浸漬処理を使用し、真空含浸処理は使用し
ないでください。真空含浸処理では、巻線容量が大幅
に増加し、効率が低下して EMI が増加します。
使用しているトランス コアが長いタイプの場合、標準
浸漬ワニス処理を使用して音鳴りを減少させる
の長さのコアを使用した設計に変更してみてください。
EEL や EERL などの長いタイプのコアは、同等の EE
や EER に比べて物理的な共振周波数が非常に低くなっています。共振周波数が低いほど、音鳴りが
大きくなる傾向があります。短いタイプのコアに交換する際は、十分な巻線領域を得るために、より大き
なサイズのコアを使用しなければならないことがあるので注意してください。
パルス群現象の診断
音鳴りのもう 1 つの原因に、パルス群現象として知られている現象があります。パルス群現象とは、一
部の設計において、電流パルスがまとまって流れ、その後、通常より多い数のパルスがスキップされる
傾向のことです。パルスのまとまりができると、スイッチング周波数パターンに特定の成分が発生しま
す。多くの場合、この成分は可聴領域にあります。この現象は、TinySwitch や PeakSwitch を使用
した設計など、オン/オフ制御を使用する電源で最も頻繁に見られる傾向があります。
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パルス群現象が発生しているかどうかを識別するには、
MOSFET ドレイン線を切断してカレント ループを挿入し、
ドレイン電流のスイッチング パターンを監視します。ドレ
イン スイッチング電流を測定するための装置と手順は、
PI University のコース ノート「ドレイン電圧と電流の測
定方法」に記載されています。電流プローブとオシロスコ
ープを使い、標準負荷で稼動している電源で、時間スケ
カレント ループを挿入してパルス群現象を調査する
ールを広く取って一連のドレイン スイッチング パルスを
記録します。多数のパルスが連続した後に 2 つ以上のパルスがスキップされた場合は、電源でパルス
群現象が発生していると考えられます。
下の図では、左側のスイッチング波形に大きなパルス群現象が示されています。右側のスイッチング
波形には、より標準的なパターンが示されています。導通サイクルとスキップされたサイクルがおおよ
そ均等に配分されています。
パルス群現象の発生している回路の波形 (左) と標準的なスイッチング パターン (右) の比較
パルス群現象が発生する設計では、フィードバック回路が
低速すぎるために、コントローラの応答が遅延していること
が考えられます。この問題を修正するには、フィードバック
回路のすべての部品の値が PI Expert で指定した値と一
致していることをまず確認します。また、設計に D タイプの
フォトカプラを使用してみます。これは標準のフォトカプラ
よりも大幅に高いゲインを持っています。あるいは、フィー
フィードバック ループ アクセラレータ回路を追加
して応答時間を改善する
ドバック ループ アクセラレータ回路を追加して、応答時間
を改善することもできます。この回路によって、フォトカプラ トランジスタが常にアクティブ領域で動作す
るようになり、飽和せず、応答が高速化されます。
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詳細情報
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