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PIPC ひとくちMEMO
No.17.
2012. May.14.
沖縄協同病院
Psychiatry In Primary Care
心療科
小松知己
プライマリケアにおける不眠の対処 (Pointのみ)
①「眠れません」<はい、薬を出しましょう>ではダメ
あなたは「熱が出ました」という患者さんに一律カロナール400mg頓用で対処しま
すか?
発熱の原因がたくさんあり原因によって対処が違うように、不眠の原因も
たくさんあります。
『睡眠障害診断フローチャート要約版』
(別紙1)にあるような流れで対処しましょう。
②睡眠衛生に関する教育を行なう
a)良い睡眠が取れる環境・習慣がないと、いくら薬を増やしても変な効き方になるだ
けでよく眠れません。健忘やもうろう状態での異常行動などのトラブルは、おかしな
服み方・睡眠習慣と薬の作用とが重なって起こることが多いのです。
また年単位のベンゾジアゼピン系薬常用量依存から離脱するのは本当に大変です・・・。
b)初回は下記のような頓用処方と睡眠衛生指導を併用しましょう。
Rp. レンドルミン(0.25)1T
or
マイスリー(5)1T
or
ゾピクール(7.5)1T
10回分
『よい睡眠のために』(別紙2)のような説明リーフを渡して
<帰宅したらこのプリントを必ず読んで、実行して下さい。最小限の薬・短期間の使用
で済ますには、薬が効きづらい生活習慣や間違った思い込みを変えることがとても大
切です。
途中で「どうしても薬が足りない、困った」という時は連絡して早め受診をしてくだ
さい。その時は改めてご相談にのります>と方針を説明しましょう。
c)初回に必ず診察場面で指導してほしい事項は、
<寝酒は、かえって睡眠を悪くして悪循環に陥る(別紙3)。しかも処方薬よりも遥か
に依存性が高く、多量に飲めば致死性もあって危険>という事実です。
寝酒で眠る習慣がついている患者さんには、断酒+下記処方で2週後受診にします。
2回目受診時に僅かでも飲酒している状況が確認されたら、小松に電話でご相談下さ
い。
Rp. レンドルミン(0.25)1T
+デジレル(25)0.5~1~1.5T
分1
(デジレルは1.5Tを処方して、0.5T刻みで自己調節可としておく)
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③睡眠衛生が改善しており
専門医へ紹介すべき基礎疾患がないことを確認しても
不眠が続く場合は「2週間きざみ」で睡眠薬調節と睡眠衛生指導を行なう
生理的不眠(心配ごとや感情が高ぶるできごとに遭遇したための一過性不眠)は
通常3週間以上は持続しないのが普通です。
あらかじめ離脱方法(0.5錠ずつ漸減→1回量が0.5錠になったら休日前など抜く)
を患者さんに教育しておきましょう。
ここで漫然とDo 処方×30日分・42日分等とすることが間違いの始まりです !
④泥沼になる前に早めのコンサルトを心がける
通常
ベンゾジアゼピン系薬・ベンゾジアゼピン受容体作動薬(レンドルミン・マイス
リー・ゾピクール等)の1~2錠使用でコントロールできない不眠は精神科的基礎疾患
があることが多いので、早めに心療科へコンサルトしましょう(まずは電話で相談を)。
⑤肥満者は減量すると眠れるようになります
生活習慣病を罹患していて眠剤を使用している患者さんには、肥満者が多いという研
究があります。成人の睡眠時無呼吸症候群は末梢性=肥満による の比率が高く、体重
を減量するだけでCPAPを離脱できるケースもしばしば見られるそうです。
また、肥満者が眠剤を内服すると、舌根沈下等で気道がさらに狭くなりやすく、夜間の
低酸素による浅眠がさらに悪化します。肥満の患者さんに眠剤を処方する場合は注意が
必要です。
減量は、生活習慣病の根本的改善にもつながるので一石二鳥三鳥です。
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