DJI phantom3 Professionalについての解説 第4回

DJI phantom3 Professionalについての解説 第4回 ドローン空撮前の確認 さて、前回で準備物の用意が済みましたら、飛行時の注意点の確認です。 1. 飛行可能区域のチェック 前回で準備した空撮許可(飛行許可,撮影許可)について、もう一度確認しましょう。 改正され、2015/12/10より施行されている航空法(※1)では、以下の空域での飛行,又は飛行の
内容である場合は、届け出が必要となっています。 ・人口密集区域での飛行 ・空港等の近辺での飛行 ・高度150m以上での飛行 ・日没後~日出前の飛行 ・目視圏外での飛行 ・第三者(人または物件)との距離を30m保てない飛行 ・爆発物の運搬,物の投下 ・イベント地等の上空での飛行 国土交通省HPの無人航空機の飛行ルール(​
http://www.mlit.go.jp/koku/koku_tk10_000003.html​
)
から大まかに書いてみましたが、要するに、『旅客機等に支障がない空域で』『目視で機体を確
認することができ』『人や物との距離を十分に保ち』『危険な行動はしないように』……という
事になっています。 飛行可能区域であっても、隣接する私有地には注意しましょう。 上空であっても、ドローン等が私有地を通過する場合においては、土地所有者の許可が必要で
す。 「知らず知らずのうちに私有地にドローンが入ってしまった!」「私有地にドローンが墜落して
しまった!」といったトラブルを防ぐためにも、どこからどこまでならドローンを飛ばしても良
いのか、注意しておきましょう。 2. 人,物の確認 「ドローンはそう簡単に落ちない」と言っている人がいますが、これは大変危険な考えです。 確かに、複数のローター(プロペラ)を用いて飛行するドローンの安定性は、非常に優れたもの
でございます。 初心者であろうと、誰でも簡単に飛ばせてしまう為、ここ数年で急速に普及が進んできている
言っても過言ではないでしょう。 しかし、その安定性は、コンピューターによる自動姿勢制御によって得られているものであ
り、ローター機特有の、物理的な問題はそのまま残っています。 空を飛ぶ物である以上、墜落の危険性は常に考えるべきです。 phantom3の重量はバッテリー込みで1.28kg。ペットボトル1本分程の重量物が、高所から落下
してくるわけですから、その危険性は明らかです。 くれぐれも、機体の直下に人が居るという事が無いように注意しましょう。 3. 風,天候の確認 『第2回 空撮準備その1』でも紹介しましたが、自衛隊や警察でも風が原因でドローンを見失っ
ています。 飛行条件としては、風速3m/s以下が理想です。 目安としては、『常に木の葉が風で揺れている程度の風』になります。 しかし、高度が高くなると、風が急激に強くなる等の変化もあります。 地上では無風でも、上空では突風が吹いている場合もありますので、十分に注意しましょう。 天候に関しては言わずもがな。 phantom3は非防水性ですので、雨や霧は天敵です。(天候だけに。) 漏電による故障等が考えられますので、雨天時の飛行は控え、降ってきた場合には即座に飛行
を中止しましょう。 4. 地形の確認(上昇気流にご注意) 上昇気流には大まかに分けて、『地形性上昇気流』『対流性上昇気流』『大規模運動による
上昇気流』の3種類が存在します。 この中で、遭遇しやすいものといえば『地形性上昇気流』……俗にいう『谷風』でしょう。 実は、マルチコプターであるドローンには『上昇気流,下降動作に弱い』という特徴があるの
です。 これは「人,物の確認」で述べました『ドローンの物理的な問題』に関連します。 (詳細は次の5.マルチコプターの特徴で解説します) この上昇気流の問題があるため、山間部でのドローンの使用には注意が必要です。 また、平地であっても、建築物に沿って『ビル風』が発生することがあります。 その為、オフィスビルやマンション等の撮影にドローンを用いることは、あまりお勧めできま
せん。 上昇気流の発生しやすい地形や、背の高い建築物には十分に注意しましょう。 5. マルチコプターの特徴 上記の注意項目に関連した、補足説明になります。 マルチコプター型のドローンの特徴には、以下のものがあります。 1. 安定性が高い 複数のローター(プロペラ)を用いて飛行するため、安定して飛ぶことができます。 また、1つのモーターが停止しても、ヘキサコプター(6枚羽機)であれば浮かぶことがで
き、オクトコプター(8枚羽機)に至っては、コントロールを失わずにそのまま飛行するこ
とが可能です。 モータートラブルに強い機体であると言えるでしょう。 2. コンピューターとの相性が良い 複数のローターによる飛行の姿勢制御は、コンピューターとの相性が非常に良いとい
う特徴があります。 ドローンの姿勢制御には、ジャイロセンサーで機体の傾きや回転を検知すれば、各
ローターの回転数を調整・補正し、パワーを上げたり反作用で打ち消す、といった方法
が用いられます。 すべての姿勢制御を、共通して、モーターの出力調整で担う事ができるのです。 共通した計算作業はコンピューターの得意とする分野ですので、非常に相性が良く、
自律飛行等への応用がやりやすくなるというメリットがありました。 3. 簡単に操作できる 細かい姿勢制御をコンピューターで行えるようになった為、従来のラジコンヘリ等と
比べて、操縦は非常に簡単なものとなりました。 もちろん、機体に応じてそれなりに練習する必要はありますが、自動制御によるアシ
ストがある為、難易度は格段に違います。 結果として、経験の浅い初心者でも安定した飛行ができるようになりました。 ただし、これに関しましては、深い知識が無くとも飛ばせてしまう為、操縦者自身の
質やモラルの低下といった問題点も混在しております。 2015/4月の首相官邸への無人機墜落事件や、2015/5月頃より問題となった『ドローン
少年』(※2)の一連の騒動等によって、航空法が改正される動きが進んだとも言えるで
しょう。 コンピューターに飛行禁止区域を設定を設ける等の対策もございますが、ドローン自
体、まだまだ発展途上の段階の技術であり、過信は禁物です。 4. 構造が単純なので、価格が安い 例外はありますが、モーターの回転数で揚力を制御する為に、基本的にドローンの
ローターは、プロペラのピッチ(傾き)が固定式となっています。 モーターも直着けであることがほとんどで、構造は非常に単純になっています。 コンピューターや小型モーターが廉価になった事もあり、安い物であれば数千円で購
入することができます。 5. 上昇気流,下降動作に弱い ヘリコプター等のローター機共通の問題として、『ボルテックス・リング・ステート
(もしくはセットリング・ウィズ・パワー)』という現象があります。 詳しい発生原理は​
リンク先(ウィキペディア:ボルテックス・リング・ステート)​
を読ん
でいただきたいのですが、端的に言ってしまえば、『気流の渦によってローターが揚力
を失ってしまう』という現象になります。 かのオスプレイの墜落要因の一つでもあるのですが、ドローンの場合、ローターのプ
ロペラピッチが固定式である為、気流の渦が大きくなりやすく、他のローター機以上に
この現象に陥りやすくなっているのです。 この現象は下方から上方へと流れる風によって生じる為、上昇気流だけでなく、急激
な下降動作によっても発生します。 『バッテリー残量が少なくなってきたので機体を回収しようと、慌てて高度を下げた
ら、下降の勢いそのままに地面に墜落した』といった事態は、十分に考えられます。 予防法としては『螺旋降ろし』が一般的です。 下方から上方への風を乱せば良いので、円を描いて旋回しつつ、高度を下げること
で、現象を防ぎながら機体を回収することができます。 6. クワッドコプター(4枚羽機)の特徴 DJI phantom3 Professionalは、クワッドコプター(4枚羽機)タイプのドローンです。 このタイプのドローンには、ローターが4つしかない為、『モーターが1つでも止まってしまう
と、バランスが取れず、すぐに墜落してしまう』という特徴があります(※3)。 一見デメリットにしか思えない特徴ですが、裏を返せば、『モータートラブルによる暴走の心
配が少ない』というメリットでもあります。 墜落の挙動も、ほぼ風に流されず、自由落下に近い軌道を描きます。 墜落地点の予測も着けやすく、飛行時は機体の直下30m以内に人が居ない事を気を付ければ、
死亡事故等の重大事故を起こす確率は低いかと思います。 phantom3であれば、ボタン一つでカメラを真下に向けることができるので、通常飛行時の確
認も容易です。 もちろん、機体の損壊は避けられないということになりますが…… 専門家であれば、懸念事項が減ることで、空撮に集中することができます。 初心者であっても、経験不足からなる判断ミスや、ドローンが意図しない場所に墜落し、予測
できない被害を生むリスク(※4)を考えれば、ある種のセーフティーネットとなり得るのではな
いでしょうか。 繰り返しますが、クワッドコプター(4枚羽機)の場合、何かあった際には、即墜落する事は確
定事項となっています。 その為、直下に人を配置しない事は鉄則と言っても良いでしょう。 重量級のクワッドコプター(※5)であれば、墜落時の危険性については言うまでもないでしょ
う。 7. 電波の確認 最後の項目となってしまいましたが、電波状況の確認も忘れずにやっておきましょう。 DJI phantom3 Professionalに限らず、現在日本で使用されているラジコンの通信には、
2.4GHz帯の電波が用いられております。 この2.4GHz帯の電波は、微電力ならば無線の資格を持っていなくても使用できる電波帯なの
ですが、それだけに使用している媒体も多く、Wifi等の無線LANや、Bluetooth、コードレス電話
機から、調理器具である電子レンジにも利用されています。 必然的に電波干渉も起こりやすく、phantom3も例外ではありません。 高周波測定器等の電波計測機器を用いるのが確実なのですが、DJI phantom3 Professionalのコ
ントローラーとなるタブレット(スマホ)アプリの『DJI go』には、機体とプロポとの通信状況を
確認することができる機能が備わっています。 事前のロケハンや、離陸前の直前チェック、また飛行中でも、細かくチェックするようにしま
しょう。 補足 ※1 2016/01/05現在 ※2 各地域の伝統行事等でドローン飛行を行う等した為、迷惑条例違反等の容疑で警察に補導,
逮捕された。ネットにて動画放送していた内容やドローンの機種等から、長野県善光寺での墜落
は操縦者自身の操縦ミスである可能性が高い。 ※3 マルチコプターの中には、トライコプター(​
Tricopter​
,​
3枚羽機)も存在しますが、こちらは飛
行制御にサーボモーターを用いて、一部のローター角をコントロールし、余分な反作用を打ち消
すことで飛行しています。どちらかと言えば従来のラジコンヘリに近い機構をしている為、
phantom3を含む一般的なクワッドコプターは、モータートラブル時にはトライコプターとして
の運用はできません。 ※4 コストと安定性のバランスに優れるヘキサコプター(6枚羽機)では、モータートラブル時の
高度の維持ができる為、再浮上や軟着陸が可能というメリットがあります。しかし反面、暴走状
態に近い挙動を取り、予期せぬ方向へ流れて行ってしまうというデメリットも存在します。 ※5 実用化されている重量級クアッドコプターには、農薬散布用(自立制御含む)等がございま
すが、これは人的被害を起こす可能性が低い農地での利用であり、日常的に危険な大型機械に触
れている等、危険性について理解のある方々による運用であるからこそ、コスト削減の選択とし
てあり得るのではないかと考えています。(勿論、人の直上を横切る等の動作は厳禁です) 2016/01/08(金) (株)情報開発研究所 HP:​
http://jouhou­kaihatsu.jp/