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哈密木卡姆
ウイグルの古典音楽と民謡
新疆芸術学院ハミムカーム演奏団公演
(音楽学部特別講座;アジア総合芸術センター事業)
2010.12.3.(金)18 時半~ 東京芸術大学音楽学部 第2ホール
〔演奏〕アブドシュクル・メメトイミン(ギジェク) モミンジャン・ユスフ(ラワープ)
アブドワイリ・サタル(タンブール) シャルザティ・アブドレイム(歌) グリニサ・
アフメト(ダプ)
〔団長〕艾尓肯 阿不都熱一木 アルケン・アブドレイム(新疆芸術学院院長)
〔解説・通訳〕阿不都賽米・阿不都熱合曼 アブドセミ・アブドラフマン
(日本学術振興会外国人特別研究員)
〔楽器展示〕五十嵐真央美、半田萌(音楽学部楽理科二年)
〔開講担当〕植村幸生(音楽学部楽理科准教授)
〈ウイグルムカームの
ウイグルムカームの概説〉
概説〉
ムカーム muqam は漢語では「木卡姆」の字を当てはめているが、この語は元来アラビア語
の「マカーム maqām」に由来する。ムカームは新疆ウイグル自治区各地に伝わる伝統的な音
楽組曲を指す言葉で、そのレパートリーと音楽様式は地方によって様々である。中でも「十
二木卡姆」はその代表であり、音楽、文学、舞踊、戯劇などの芸術を巧みに用い、ウイグル
の民の絢爛な生活、高尚な情緒、崇高な理想や探求を表わし、歴史におけるさまざまなウイ
グルの民と喜怒哀楽を表現している。
ほとんどの地域でだいたい十二のムカームがあることから十二(オンシキ)木卡姆と呼ば
れている。本来は口伝えで何世紀にもわたって伝えられて来た十二木卡姆は、二十世紀にな
って文明の利器の助けを得て、音として保存され、採譜され、楽譜としても残されることに
なった。多くの専門家によって整理し直され、修正され蘇った十二木卡姆は、過去をそっく
り再現したものではない。ウイグル人の跨りとする基層の文化の上に、美しい衣を着せて、
世界の人々に胸を張って披露した、新たな世紀のウイグル文化の花とも言えるものなのであ
る。
カシュガル地方の伝承にもとづいて体系化された「十二ムカーム」のほかに、トルファン・
ムカーム(十二部)、クムル・ムカーム(十二部)、ドーラン・ムカーム(九部)など、各
地域に伝承されている地域色の豊かなムカームも存在している。これ以外に、イリ・ムカー
ム、クチャ・ムカームも人気のムカームである。その中で、クムル・ムカームは、新疆ウイ
グル自治区の東部に位置するクムル(漢語で哈密[ハミ])地区に広く伝承されている。こ
れは地域色の濃い大規模な歌曲と歌舞曲であり、十二のムカームによって構成される。それ
ぞれのムカームは次の通りである。
1.チュンドゥル・ムカーム
2.ウルクドゥル・ムカーム
3.ムスタザット・ムカーム
4.チャリガー・ムカーム
5.ホップティ・ムカーム
6.チャビアット・ムカーム
7.ムシャヴラク・ムカーム
8.オザール・ムカーム
9.ドガッハ・ムカーム
10.ドーラン・ムカーム
11.イラーク・ムカーム
12.ラーク・ムカーム
今回演奏する、二番目のウルクドゥル・ムカームは「神聖なムカーム、偉大なムカーム」を
意味し、「ハイ・ハイウラン hai hai ülän」とも呼ばれている。結婚する時に、男女達は対詩に
従って、新郎新婦を賛美する。
使用される楽器はクムル・ギジャクとダプが中心になる。特に、クムル・ギジャクは中国の
「二胡」に似ており、クムル地区に伝わっている最も古い擦弦楽器である。また、ダプに
関して、他の地域ではほとんど男性がダプを担当するのに対して、クムル・ムカームでは
多くの場合、女性が担当する。これはこの地域の特徴である。
〈演奏曲目〉
演奏曲目〉
1.クムルムカーム:ウルクドゥル・ムカーム uluqdur muqam(ハイ・ハイウラン hai hai ülän)
① ムケッディメ muqqädimä
② デリウェクジャン dilwäkjan
③ ドスホジャム・アラヤイ dostghojam allayäy
④ ハイ・ハイウラン hai hai ülän
⑤ ヤルセネム yar sänäm
⑥ シャクサン・アンラ shah-sän alla
⑦ ダフ・ダフダク dagh daghudaq
⑧ ウリゲライマシュグム örgiläy mäshughum
⑨ アフウライフダイムガ ah uray hudayimgha
2.ギジャク独奏:オシャク・ムカームのムケッディメ及び第一ダスタン
ギジャクはウイグルの伝統楽器で、弓で演奏する擦弦楽器である。西洋のヴァイオリンと同
じく調弦し、楽器を立てて演奏する。ギジャクと称する楽器は、西アジアから中央アジアに
かけて多く見られる。
「オシャク・ムカームより第一ダスタンと間奏曲」は十二ムカームの八番目の「オシャク・
ムカーム」から編曲したもので、ギジャクの演奏が一番優雅に奏されており、まさにギジャ
クの為の曲と言っても過言でない。
3.ラワープ独奏:シャディヤネ
カシュガル・ラワープは、桑材あるいはアンズの木を一木彫りで半球状にくりぬいて共鳴胴
とし、その半球に切った部分の表面に皮を張っている。独奏や合奏、踊りの伴奏、そして語
り物の伴奏音楽として用いられる。
「シャディヤネ」はウイグル族の伝統的な民俗音楽。祭りや祝いごとのある日に必ず演奏さ
れる喜ばしい曲で、人々にこの上なく愛されている。
4.ウイグル十二ムカーム第五部:パンジガー・ムカーム(Pänjigah muqami)
歌われるムカームの歌詞が、当時伝えられていた古典詩や民衆の間に流布していた物語か
らとられていたのは当然のことであるが、当時の流れとともに、ムカーム奏者の意志やムカ
ームを楽しむ民衆の嗜好あるいは聴衆の要求を受け、歌詞は変化していった。歌詞の内容、
韻律、構成は、曲の調子、リズム、構成と見事に一致している。
今回の演奏ではパンジガー・ムカームに属する次の部分がこの順で演奏される。
①ムケッディメ
②テエッゼ
③テエッゼマルグリ
④ジュラ
⑤セネム
⑥チョン・セリケ
⑦テキド
⑧第一ダスタン
⑨第一メシュレプ
5.タンブール独奏:アイジャム
タンブールは、新疆各地で見られるが、特に北新疆のイリ地区に最も広く普及している伝統
的な撥弦楽器である。
アイジャムは「ペルシア人」の意味。ウイグル十二ムカームの七番目の「アイジャム・ムカ
ーム」より編曲したものである。
6.女声独唱:グリメラム
カシュガル民謡「グリメラム」は私の花を意味し、歌詞の内容はウイグルの恋人同士の愛を
語ったものである。
7.ダプ独奏:収穫の喜び
「ダプ」とはウイグルの伝統民族楽器の一つで、西洋のタンバリンに似た楽器である。通常、
直径20~30センチメートル程あり、皮は羊のものが一般的であるが、高級なものになる
とニシキ蛇の皮を張ったものもある。
この曲はダプのリズムの様々な変化によって、収穫が終わったウイグル農民の喜びを表現し
ている曲である。
8.皆のメシュレプ:アトシュ(アトシュ民謡)
メシュレプとはタクラマカン砂漠周縁のオアシス各地域にある民俗歌舞である。民俗音楽そ
して舞踊が組み合わされた一種の活動形式である。メシュレプの意味は、村の人々が一堂に
集まって、踊り、歌うという意味である。
解説:アブドセミ・アブドラフマン
〈出演者プロフイール
出演者プロフイール〉
プロフイール〉
アブドシュクル・メメトイミン 阿不都徐克·买买提明(ギジャク)
新疆ウイグル自治区ホータンに生まれ、2000 年新疆芸術学院音楽学部に
入学、ギジャクを専攻。2008 年、同学院音楽学部講師。ギジャクの独特
な演奏技術を持つ。2005 年 7 月、全国大学生芸術祭で受賞。同年 10 月、
第二回全国民族楽器フェスティバルに出演、受賞。
モミンジャン・ユスフ 募明江·于苏甫(ラワープ)
新疆ウイグル自治区カシュガルに生まれ、父の影響で音楽を学び、2002
年新疆芸術学院音楽学部に入学、ラワープを専攻。2009 年 7 月、ウイ
グル自治区民族楽器大会で受賞。2010 年、同学院音楽学部講師。
アブドワイリ・サタル 阿不都外力·沙它尔(タンブール)
新疆ウイグル自治区ウルムチに生まれ、小学一年生から父の影響でタン
ブールを学び、2005 年新疆芸術学院音楽学部に入学、タンブールを専攻。
2008 年国家大劇院「国際音楽博覧会」で受賞。2009 年2月、全国大学
生芸術祭で一位、2009 年 7 月ウイグル自治区民族楽器大会で受賞。2010
年、同学院音楽学部講師。
シャルザティ・アブドレイム 夏热扎提·阿不都热衣木(歌)
新疆ウイグル自治区クムル市に生まれ、両親の影響で音楽を学び、2006
年新疆芸術学院音楽学部に入学、ムカームを専攻。2010 年 3 月、自治
区第八回青年歌手演唱技法三位受賞。2010 年 7 月、第一回国際合唱祭
で受賞。2010 年同学院音楽学部講師。
グリニサ・アフメト 古丽尼沙·艾合买提(ダプ)
新疆ウイグル自治区トルファンに生まれ、父の影響でダプを学び、2008
年新疆芸術学院音楽学部に入学、ダプを専攻。2010 年7月、貴州省で行
なわれた全国少数民族曲芸フェスティバルに出演、二位受賞。他多くの
演奏活動に出演。