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バイオマス由来燃料生産のための
適正技術に関する国際セミナー
インドネシア・ジョクジャカルタ
2003年10月1日∼3日
1
セミナー風景
2
序
論
●背景
現在、私たちが日常で使用している液体燃料 のエネルギー 資源について考えるとき、限られた化石
燃料への高い依存が懸念されます 。この化石燃料の燃焼に伴う
、大気へ のガスの放出の影響について
は、これまで様々な警告が発せられてきました。
これらの限りある資源は、地球温暖化を伴う
有害なガスを発生させない、「再生可能エネルギー」へと
転換していく必要であることは 明らかです。これら再生可能エネルギーの中で、バイオマスエネルギー
は、気体・液体・固体といった、様々な燃料形態に変換することができるという点 で、際立った可能性を
秘めています 。多くのアジアの国々、特にインドネシアでは、バイオマスエネルギー資源は高い潜在量
があります。特に、メタノールやエタノールといった液体燃料をこれらバイオマスから作り出すことができ
れば、自動車燃料の代替燃料として使えるばかりか、近年注目を集めている燃料電池にも使用すること
が可能です。以前行った 予備的な調査の結果からは、油ヤシのプランテーション から排出されるバイオ
マス性廃棄物を液体燃料に変換した場合、インドネシアで現在使用され ている自動車燃料の約1/3に
相当する量をまかなうことが可能であることが試算されました。現在、従来から使われてきたバイオマス
の直接燃焼やアルコール・メタン発酵のような技術に加え、バイオマスの熱化学的変換技術のような、さ
らに大きな可能性を秘めた抜本的な技術開発・転換が図られています 。したがって、より環境負荷の少
ない燃料への転換の必要性と同時に、バイオマスの大規模なエネルギー利用において、機は熟したと
言えるでしょう。
バイオマスは有機物からできています ので、気体・液体・固体の多様な形態に変換することができま
す。既存の再生可能なエネルギーの中 で、この特性がバイオマスエネルギーの最もユニークな点です。
したがって、このセミナーでは、バイオマスの材料から、環境的に実現可能で、かつクリーンな燃料を作
り出すのに使用される技術に焦点を当てて議論したいと思います。
●セミナーの目的
○バイオマスから燃料を作り出 すための技術に関する考え、経験、および情報を交換する機会を提
供する
○アジアの国々、特にインドネシアにおいて、政府機関、非政府組織、大学、および研究者が互いに
協力関係を築けるネットワークを形成し、強化する
○アジアの国々、特にインドネシアの特性に適したバイオマス利用技術を開発し、広めることを試みる
○そして、温暖化を緩和し、これらの 国々の一般市民の生活水準を上げる
●内容
本セミナーでは、お招きした各講演者から、間接的な液化、ガス化、生化学的変換および 木炭生産
など、「バイオマス由来燃料生産」に関してそれぞれが取り組んでこられた成果や経験を披露して頂きま
す。セミナーでは以下に示す4つの主要なテーマがありあす。
○アジアとインドネシアにおける、バイオマスエネルギーの現状とのその可能性
○液化技術と他の液体燃料生産技術
○ガス化技術
○木炭、練炭生産
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本セミナーの議題は、上記テーマにのみ制限されるものではなく、他のエネルギー資源に関する研
究と同様に、関連する政治的、社会的な問題も含まれます。
●セミナーの組織体制
本セミナーは、アジア地域クックストーブ計画〔Asia Regional Cookstove Program (ARECOP)〕、ディア
ン・デサ財団〔Yayasan Dian Desa (YDD)〕、アジア民間交流グループ(APEX)によって共同で開催され
ました。講演者は、アジアの各地域でバイオマス由来燃料生産に係わっておられる専門家、研究者や
企業の方々の中 からの検討・特定し、彼らのこれまでの成果や経験を本セミナーにおいて皆で共有して
もらえるよう、お願いし、招待致しました。
今回のセミナーでは、全部で15人の講演者が講演の趣旨に賛同され ていらっしゃいました。講演者
はアジア各地の様々な地域から参加されました。日本から2名 、タイから2名、インドから2名、マレーシ
アから1名、およびインドネシアから8名です。
本セミナーの開催は、事前に、セミナー小冊子 、ARECOPウェブサイト、電子メール、メーリングリスト
など様々なメディア 上で公表されました。セミナー出席者は申込書を送った人々の中から選ばれました。
出席者選考の基準は、主に申込者の経歴や属する組織・団体の適正に基づきました。
セミナーの総参加者は134人で、そのうち、120人がインドネシア、それも大半がジャワ島出身者で、他
の14人は他のアジアの国々からの関係者から成 っていました。海外からの参加者の出身国は、バングラ
デシュ、インド、ネパール、フィリピン、カンボジア、ベトナム、およびスリランカでした。
●開会セッション
組織委員会を代表して、ARECOPのマネージャーであるクリスティーナ・アリスタンティ(Ms. Christina
Aristanti)さんが、講演者と参加者各位を歓迎する挨拶を行いました。挨拶要旨は以下の通りです。
「今回のセミナーは、様々なアジアの国々からの専門家が一同に会してそれぞれの知識と経験を共
有するために集まった、絶好の機会です。国別に見ると、インドネシア、日本、タイ、インド、および マレ
ーシアから15人の講演者が参加されました。さらに、日本から講演者のアシスタントとして、プレゼンテー
ションやデモンストレーションを補助するために2人が出席されました。お忙しいスケジュールにも係わら
ず、それぞれの知識、経験、および専門的技術を共有するためにお越し下さった全ての講演者 に対し、
心から感謝の意を表します。今回のセミナーへの総参加者は134名にも達しました。その内訳は、多くは
インドネシアからでしたが、その他、インドネシア、バングラデシュ、インド、ネパール、フィリピン、カンボ
ジア、スリランカ、およびベトナムからいらっしゃってくださいました。今回のセミナーを可能にすることが
できたのは、まずは、環境事業団(JEC)、APEX、および ARECOPからの資金的なサポートがあったため
で、これに感謝の意を表します。また、組織運営のサポートおよび講演者への連絡等に尽力したAPEX
とYDDにも感謝致します。」
●歓迎の辞
アジア民間交流グループ(APEX)の代表である田中博士氏から、講演者、参加者に対する歓迎の挨
拶が以下のようにありました(要旨)。
「今回のセミナー参加者各位 を歓迎いたします。バイオマス燃料には、既に開発されて利用されてい
るものから、まだ開発段階にあるものまで様々なものがあります が、バイオマスエネルギーは世界の今後
のエネルギー 需要の多くを満たすことが可能です。本セミナーは、バイオマス技術に関連する情報を共
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有して議論する好機であります。全ての講演者が貴重な時間を割いて、このセミナーでそれぞれの知識
と経験を共有して頂くためにお越しくださったことに感謝致します。最後に、本セミナーは日本の環境事
業団(JEC)の国際環境基金からの資金援助によって開催することができました。この支援に厚く感謝致
します。また、セミナーの継続的なサポートと組織運営に尽力されたYDDとARECOPにも感謝致しま
す。」
●基調スピーチ
ディアン・デサ財団(YDD)の代表であるアントン・スジャルウォ(Mr. Anton Sudjarwo)さんから、セミナ
ーの各セッションに移る前に基調講演がありました。以下はその要旨です。
「本セミナー開催に漕ぎ付けることができたのは、様々なサポートを提供してくださったAPEX、YDD、
ARECOP、および 環境事業団のお蔭であり、感謝いたします。インドネシアでの化石燃料に関するデー
タによりますと、石油の埋蔵量はほんの9∼15年間分ぐらいしかないことが示され ました。今回のセミナー
のテーマが「バイオマス由来燃料生産」である大きな理由の一つに、このような化石燃料の枯渇がありま
す。私たちは、このような数字にばかりとらわれるべきではないのですが、化石燃料はいつまでももたな
いことを自覚し、将来の燃料危機を回避するためにも、今からバイオマス由来エネルギーのような、「未
来の燃料」を開発し始めなければなりません。バイオマスはアジア地域およびインドネシア全域に渡って
広く分布している「再生可能なエネルギー」です。では、私たちはどんな再生可能エネルギーを考慮に
入れるべきでしょうか?ある人は、原子力が化石燃料の代替燃料になるとみなしますが、私達はそのよう
なエネルギー を欲しているのでしょうか?再生可能エネルギーには今までになかった評価基準がありま
す。それは、「持続可能」であるということです。そして、それには、地球温暖化の危機を緩和することに
おけるかなりの役割があるべきだと思います。そして、その上で経済と環境の間にバランスが保たれるべ
きでしょう。インドネシアや他の発展途上国では、これまで、水力、太陽光、風力、波力、バイオマスなど
についての議論がありました。それぞれのエネルギー には、利点と欠点があります。その中で、私たちは、
バイオマスエネルギーの潜在量が、すべての再生可能エネルギー の約55%にも相当するエネルギーで
あるということに注視する必要があるでしょう。私たちが議論したいバイオマスエネルギーのタイプとして
は、主に木質、わらやソーダスト(木の鋸粕)のような農業廃棄物、あるいは、可能であれば水生の雑草
などが挙げられます。バイオマスエネルギーは、近代的でなく、原始的な燃料であると考えられ ていたり、
この分野で実用的な開発が不足していたりするなどの諸々の理由から、十分利用されているとは言えま
せん。バイオマスは、議論したり、係わることにためらうような特別な問題ではなく、非常に身近な問題な
のです。最後に、お越し頂き、貴重な知識や経験を共有してくださる、すべての講演者に感謝したいと
思います。」
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講演の要旨
第1部
セミナーの第1部は、現在のバイオマスエネルギー事情、および、アジアの地域、特にインドネシアに
おけるその開発利用の可能性について理解するための情報を、関係者 に提供することを意図して構成
されました。
アジアにおけるバイオマスエネルギーの可能性
Auke Koopmans
元FAO地域木質エネルギー開発プログラム技術顧問部長
(Former Chief Technical Advisor
FAO-Regional Wood Energy Development Program)
バイオマスには、木や木炭のような製品、それから、もみ殻、とうもろこし、トウモロコシの穂軸などの農
業残渣、さらに、糞、水生雑草など、様々な燃料源があります。南アジアおよび東南アジアの国々は、主
要なバイオマスエネルギー消費者と言えるでしょう。ラオスやカンボジアのような国では、バイオマスエネ
ルギーの消費率が80∼90%にも達していることからも、バイオマスエネルギーの重要性がわかると思い
ます。バイオマスエネルギー使用に関する正確なデータを得ることは 難しいのですが、実際は、バイオ
マスエネルギーが重要なエネルギー 源であることを示 す例は多く、その消費量はさらに増加しつつあり
ます。いくつかの国 では、バイオマスエネルギーの持続的な供給の問題に直面していて、地域によって
状況がいろいろと異なっているようです。例えばスリランカでは、おがくずは川にそのまま投棄されるか、
あるいは、単にそれを除去するために燃してしまっています。
統計によりますと、2000年における世界で使われた一次エネルギーの中のおよそ11%をバイオマス
(あるいは燃焼可能な廃棄物)由来のエネルギーが占めていて、それは30∼40億トンに相当するそうで
す。バイオマスエネルギーの重要性を議論する上で、この数値は、いかに世界、そしてアジア地域にお
いてバイオマスエネルギーが重要であるかを示しています。これらの消費によって、バイオマスは石油
(37.2%)、石炭(23.5%)、天然ガス(21.1%)に次ぐ、4番目に大きな燃料源に位置しています。アジア
では、1999年におけるすべての一次エネルギー消費のうち、およそ26%をバイオマスエネルギーが占
めていて、それは17∼18億トンに相当します。アジアでは、バイオマスは石炭(
>40%)に次ぐ2番目に重
要なエネルギー源で、石油(>24%)と天然ガス(>6%)がそれに次いでいます。あいにく、どのようなとこ
ろでどれだけバイオマスが消費されているかの内訳については、十分な情報がありません。これを調べ
た大まかな調査によりますと、一般に、家庭内での消費がおよそ 70∼80%を占め、残りの20∼30%を工
業部門が消費しているそうです。
バイオマスは、適切に変換、あるいは燃焼させて利用し、植物が成長した分だけが利用されるのであ
れば持続可能な方法であり、二酸化炭素を増加しない、いわゆる「カーボン・ニュートラル」
なエネルギ
ーです。言い換えれば、地域の利益になり、かつ地球環境にも「やさしい」のです。
しかしながら、実際には、現在バイオマスの大半が昔からの変換方法や 燃焼装置が利用されていて、
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これらの方法は最適化されているとは言えないものが多く、結果的に様々な有害物質を放出したり、効
率が悪かったりします。したがって、燃焼装置を改良するか、またはそれらをより効率的でクリーンな燃
焼装置に取り替えるための行動を起こす必要があると言えます。そして、この状況を改善するのに役立
つ、ガス化やその他様々な技術があります。
インドネシアにおけるバイオマスエネルギー開発
Ms. Maritje Hutapea
インドネシア共和国政府エネルギー開発局次長
新・再生可能エネルギー開発局長
(
Head of Sub Directorate of Energy Development, Directorate General
of Electricity and New and Renewable Energy of the Public of Indonesia)
インドネシアでは、エネルギー消費が急速に伸びています。バイオマスエネルギーは、通常農村地
域で使用されていて、国全体のエネルギー使用量の35%を占めていると推定されています。一般に、
インドネシアにおけるバイオマスエネルギー利用は、家庭の調理用か、中小企業で使用されます が、発
電のための使用はまだ非常に少なく、およそ全体の1%ぐらいです。インドネシアにおける一般の一次
エネルギーの利用はまだ石油が支配的ですが、実際にはインドネシアの石油埋蔵量は急速に減少し
つつあります。
1990年に国内の11の州で行われた調査では、農村地域でのバイオマスエネルギーの使用状況は以
下の通りでした。
・木質燃料: 430kg/年
・木炭: 9kg/年
・農業残渣: 175kg/年
インドネシアのバイオマスエネルギー源としては、ゴム木、ソーダスト、伐木、合板・ベニヤ板生産の残
渣、砂糖黍残渣、稲藁残渣、ココナッツの残渣、油ヤシ残渣など、様々なものがあります。しかしながら、
あいにく、まだバイオマスの可能性に関する包括的なデータは得られていません。
インドネシアでのバイオマスエネルギー開発にあたって障害となるその他の要素としては、次 の点が
挙げられます。
・バイオマス変 換技術の費用がまだ高い
・バイオマスエネルギーからのエネルギー 単価はまだ比較的高価で、特に民間部門からの投資の制
限要因になっている
・バイオマス変換技術の大部分はまだ輸入に頼っていて高価である
・バイオマスエネルギー技術はまだ一般の人には手が届かない内容である
一方、インドネシアのバイオマスエネルギーに関する政策面では、これまで成長が見られ 、さらなる開
発への前向きな 政策展開が進んでいます 。インドネシアのバイオマスエネルギー開発は以下の政策に
基づいています。
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・国家エネルギー方針〔1988 Public Sector Energy Sector (KUBE)〕
・グリーン・エネルギー主導方針
・電気のためのバイオマスエネルギー利用は、「電力利用情勢」(verse 4, No.20, 2002)に基づく
国家エネルギー方針とグリーン・エネルギー主導方針は、将来、インドネシアにおけるバイオマスエネ
ルギー開発促進に寄与することと思います。
マレーシアにおけるバイオマス資源の
エネルギー利用に関する調査
Dr. Hoi Why Kong
マレーシア森林研究所〔Forest Research Institute Malaysia (FRIM)〕
マレーシアの天然林は国土全体の61%(20,100,000ha)を占め、農用地は14.9%(4.89ha)を占めてい
ます。利用可能で生産力がある林業地域からは、4つのタイプの林業残渣が排出されます : 伐採残渣
(5,100,000m3 )、基礎生産部門からの残渣(2,200,000m3 )、合板製材残渣(910,000m3 )、および2次的
残渣(900,000m3 )です。一方、農業残渣の方は合計 23,420,000m3 に達し、それの内訳は、ゴムの木残
渣が11,320,000m3 、油ヤシ残渣が8,690,000m3 、籾殻残渣が3,410,000m3 から成っています。
現在マレーシアで使われている木質燃料は、特にレンガや木炭製造、練炭製造、タバコの葉っぱの
乾燥、固形燃料燃焼装置、もみ 殻発電用などの回転式燃焼装置、そして木材・木炭ガス化装置などに
用いられています。
現在のマレー半島における発電システムは、主に非再生可能資源、すなわち、天然ガス、石炭、重
油、およびディーゼルから成っています。この状況は、代替燃料、特に再生可能エネルギーへの転換
が奨励されていることから、変わっていくことが予想され ています。
再生可能エネルギー を発電に利用することを奨励するために、2002年度予算では、例えば、非課税
措置、課税控除、輸入関税の税額控除、輸入機械・設備への消費税などの適用が開始されました。こ
れらの措置は、マレーシアにおける再生可能エネルギー小規模発電〔Small-scale Renewable Power
Producer (SREP)〕を増やすきっかけとなることが期待されています。
再生可能エネルギーの発電利用や開発の推進が加速していることから、これらの再生可能エネルギ
ー発電プラントの数は近い将来に増加することが予想されます。第 8回マレーシア・プラン(8th Malaysia
Plan)では、再生可能エネルギーからの発電が、2005年までに総エネルギーの5%(600MW相当の発
電規模)に達することが目標に掲げられています。もしこれが可能になったと仮定しますと、600MW相当
量の電力が従来型の化石燃料を利用した電力と置き換わる、あるいは排除されることを意味していま
す。
したがって、マレー半島でこれらを実現するためには、再生可能エネルギー資源の発電利用をどう開
発・利用していくかの分析・評価が重要になり、それには、例えば以下のような方針が考えられます。
・再生可能エネルギー由来の電気の価格設定
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・再生可能エネルギー発電者への投資補助金の設定
第2部
セミナーの第2部は、バイオマス液体燃料の生産に関する内容で、3つの事例が紹介されました。
ディーゼルエンジンのためのパーム
油蒸留液からのエステル系バイオ燃料
Dr. Ir. Supranto M. Sc.
ガジャマダ大学エネルギー研究センター
(Energy Study Center - Gajah Mada University, Yogyakarta, Indonesia)
非再生可能な天然ガスや石油の供給は徐々に減少しつつあります 。この状況は、我々人類がやむを
得ず代替エネルギー資源を求めるきっかけとなりました。その上、硫黄含量が高い低級鉱物油の燃焼
による大気汚染の悪化は減らさなければなりません。新しいエネルギー源は、再生可能であるべきであ
り、環境にあまり負荷をかけず、特にCOx、NOx、So xなどの有害排気ガス成分が少ないべきです。その
代替手段として考えられる一つとして、輸送用や電力供給用エンジンのための、油ヤシから得られる再
生可能なバイオディーゼル燃料が挙げられます。
数十年前の1970年代には、石油と天然ガスはインドネシアの主要な輸出財源でした。しかし、1990年
代に入って、石油と天然ガスへの依存は持続できないことが分かってきました。21世紀にはインドネシア
は石油の純輸入国に転じるのではないかという危惧があります。従って、インドネシアがバイオ燃料とし
て油ヤシなどの農業製品を開発する潮時であると言えます。仮にインドネシアがこのような パーム油の
生産・加工拠点になったとしても、「世界の緑地帯」としての役割を担い続けることができるでしょう。パー
ム油は、主 に 消 費 用 に 精 製 ・処理されていますが、その精製過程でパ ー ム油 蒸 留 物 (Palm Oil
Distillate)というかなり大量の副産物 が産出されます。このパーム油蒸留物はいくつかの遊離脂肪酸を
含んでいて、バイオディーゼルに加工するのに適しています。
パーム油蒸留物をバイオディーゼルに変換するためのテスト試験はすでに完了しています 。エステル
化の過程を最適化するための実験が、試薬の量や触媒の種類、反応温度などを変えて、特別に設計さ
れたバイオリアクターの中 で試験されました。結果から、0.4%硫酸で処理した触媒を使って 70℃の条件
下でシステムの効率が最も高いことが示されました。そして、得られたバイオディーゼルの物理的な特性
は既存の石油系ディーゼル燃焼と同等でした。
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植物油からのバイオディーゼル:
技術、環境、経済への影響
Prof. Dr. Tatang Hernas Soerawidjaja
Pusat Penelitian dan Pengembangan Sumber Daya Laut dan Teresterial
Institute Teknologi, Bandung
バイオディーゼルは、メタノールとエタノールでエステル交換した中性脂肪油から成るメチル/エチ
ル・エステル酸の植物油です。メチル/エチル・エステル系植物油(ココナツ油、パーム油、ナッツ系油)
の粘性は高く、2.7∼4.8であるのに対し、ディーゼルオイルの粘性は1.6∼5.8と低いです。バイオディー
ゼルは、そのまま油として使用するか、または既存のディーゼルオイルと混合して使用することができま
す。インドネシアでバイオディーゼル油を使用するメリットは、環境の改良、代替液体燃料の生産、ディ
ーゼルオイルの輸入量の抑制、ディーゼル燃料の安定供給体制の構築、雇用創出ができることであり、
それによって、収入格差を是正することができ、潜在的な新しい輸出商品となる可能性があるのです。
インドネシアにおけるバイオディーゼル開発の問題点は、主に既存のディーゼルオイルよりなお価格
が高いことにあります。バイオディーゼルの利用はまだ非常に限られていて、バイオディーゼルを生産
するための実地技術はまだ 確立されていません。さらに、その開発のための政策上のサポートもなく、再
生可能エネルギーの重要性に対する理解不足があります。したがって、インドネシアでのバイオディー
ゼルの普及へ の道筋としては、バイオディーゼルの規格化の適用、市場の開拓、燃料の多様化も含め
たバイオディーゼル生産産業の創出、を提案したいです。
バイオマスからの高カロリーガス化、
および気体燃料、液体燃料、発電への変換
酒井正康 教授
長崎総合科学大学
京都でのCOP3会議以来、地球温暖化に関して二酸化炭素排出の制限への様々な施策が真剣に議
論されるようになりましたが、根本的な解決策はまだ見出されていません。それにもかかわらず、世界中
の化石燃料の埋蔵量 を考えた場合、再生可能エネルギーの拡大は急務であり、その対策への動きなど
の中から、二酸化炭素量排出量の制限に関する解決策が自動的に見出すことになるかもしれません。
再生可能エネルギーの開発において主要な役割を演じているヨーロッパ連合(EU)と米国では、バイ
オマスエネルギーが最も重要視されていて、2010年までには、EUでバイオマスエネルギーは総エネル
ギーの11%を占めると見積もられています。この分野でやや遅れ気味の日本でさえ、2002年12月には
政府がバイオマスに関する包括的な戦略を採択しました。そして、新 たなエネルギー源としてバイオマス
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エネルギー開発への新しい 道が開かれるようになりました。
日本の場合では、首尾よくバイオマスエネルギーを導入するための新しいエネルギー変換技術が必要
です。EUでは、バイオマスは大規模に採集され 、主に熱源として使用され ています。このような場合に
用いられる直接燃焼はEUの場合適切な方法だと言えます 。一方、日本や東南アジアでは、それが小規
模であっても、必要とされているのは気体燃料や液体燃料、発電などのためのエネルギーであり、一般
に熱源は必要ではありません。ここでは、この必要条件を満たす手段として、高カロリーガス化技術を中
心に、その利用技術について紹介いたします。
第3部
第3部では、様々なガス化技術に焦点を当てて、バイオマスからのクリー ンな燃料生産について議論
が行われました。ここでは、インドネシア、インド、日本、およびタイからの6名 の講演がありました。また、
講演に加えて、日本の専門家による、流動層ガス化技術に関する実演がありました。
セルロース系材料からの生物燃料:
ガス化と熱分解液化技術
Prof. Dr. Robert Manurung
バンドン工科大学化学工学部(Department of Chemical Engineering
-Bandung Institute of Technology, Indonesia)
バイオマスは、伝統的な国内の調理用途に加えて、他にも役に立つエネルギー 形態に変換すること
が可能なエネルギー源として認識することができます。1970年代の半ば以降、バイオマスエネルギー・
システムにおいて様々な開発努力が展開されてきました。バイオマス技術の利用は、実験室レベルでの
技術開発から、実社会での適用と普及に至るまで、様々な大学機関、エネルギー関連省庁、研究機関
などによって行われてきました。
バイオマスエネルギーに関する研究はこれまで多く行われてきましたが、その中で実際に注目された
のは概して二つの技術に集約されます。すなわち、生物学的変換(嫌気的消化)と非生物学的変換(燃
焼、ガス化熱分解)です。ここで紹介する研究は、非生物的変換に適している、比較的乾いたセルロー
ス系物質の変換について扱っています。ガス化と熱分解的な工程は、燃焼(焼却)より多くの利点を持っ
ていて、廃棄物を考える場合には、「処分」よりもむしろ「利用」の観点で捉えることになります。これは、
公害防止に要する費用や燃料の価値を考慮に入れると、経済的にも成り立つ話で、大きな意味を持っ
ています。一般的にガス化と熱分解は、廃棄物を利用する場合に利用可能な種類を増やすことができ、
非常に効率的な手段と考えることができます。この場合、廃棄物はより容易に使用可能なもので、環境
的にもより許容できるようなものになります。
ここでは、インドネシアのバンドン工科大学、およびオランダのトゥウェンテ大学(University of Twente)
で開発されたガス化と熱分解技術についてより詳細に述 べます。主に過去10年間に積み重ねられてき
た研究成果について述べますが、将来のバイオマスエネルギーの指針についても簡単に触れたいと思
います。また、1980年代のガス化技術の普及に関する問題についても簡単に概観します。これらの技術
は、小規模あるいは中規模のガス化や熱分解プラントで利用するのに適していると言えます 。
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バイオマスガス化技術;これまでの経験、
開発製作、および適用に関する概要
Ir. Chayun Budiono M.Sc
PT Gerbang Multindo Nusantara Jakarta, Indonesia
特に産業プランテーションや林営地域では、バイオマス残渣はエネルギー源としてふんだんにあり、
かつ持続的に供給が可能です。
そのようなバイオマス残渣は場所によって様々な利用のされ方がなされています 。しかし、多くの場合、
このような残渣は適切に利用されてはおらず、ある地域では景観を汚して環境を悪化させるなどの環境
問題を招いています。技術的な観点からすると、このような残渣は、動力や電力に変換して利用できる
可能性があります。
ガス化技術を用いれば、上記のような廃棄物は可燃性ガスに変換することができ、動力用のエンジン
で直接燃焼して利用したり、小規模発電装置(例えば、ガスとディーゼルを混焼できるエンジン)で使用
したりすることができます。
経験的には、製材残渣のソーダストを燃料とする小規模なガス化発電装置は、一般のディーゼル発
電装置より安価に電力を生産することができると結論づけることができます。これは、僻地にある産業拠
点ではなおさらその利点が発揮されます。
したがって、事業所 は木質廃棄物の問題を解決することができ、さらに操業コストを低減できるという
点でも利益を得ることができるわけです。全国的に広くこのタイプの廃棄物利用を実現することができた
ら、化石燃料供給および 環境に対して、より負荷を少なくすることができるでしょう。
ガス化装置の普及において障害となっているのは、設備投資と、販売後のアフターサービスです。設
備投資における問題は、恐らく低利融資計画によって克服することができるかもしれません。
装置のアフターサービス・ネットワークの構築は、農村経済の開発と自立のための施策と平行して行
われるべきです。
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クリーンなバイオマスエネルギー技術
Prof. H. S. Mukunda
航空宇宙工学・燃焼・ガス化推進研究室,インド科学研究所
(
Dept. of Aerospace Engineering, Combustion, Gasification & Propulsion Lab.
Indian Institute of Science, Bangalore, India)
このプレゼンテーションでは、以下の5つの技術を紹介いたします。
・農業廃棄物あるいはプランテーション残渣(都市の固形廃棄物 や非生物分解性物質を含む)の変換
から、より高度な産業的熱・電力エネルギーを生み出すディーゼル・レシプロエンジンやガスエンジン、
ガスタービンエンジンについて
・ヤシ殻や堅木からの活性炭製造、および電力・熱の製造
・木からの木炭と電力製造
・もみ殻灰からの 凝集珪石粉の生産、もみ殻からの 発電と珪石凝集
・レシプロエンジンおよびガスタービン用の、硫化水素を洗浄したクリーンなバイオガスの生産
ここで紹介する論文は、深く掘り下げられた技術資料であるとともに、上記の技術において技術・経済
的活動に関する様々な洞察を与えるものです。
バイオマスガス化∼農村地帯への電力供給用
ディーゼルエンジン・コンバインドサイクル
(BIONER)∼
Ir. Safriadi, Ir. Bambang Suwondo Rahardjo, Ir. I Putu Sutrisna
P3TPSE-TPSA-BPPT, Jakarta, Indonesia
インドネシアの政府方針によると、農村地帯における電力供給は、地域の経済開発を促進するために、
地域で得られるエネルギー資源を利用することができる、適切な技術を使用して供給され るべきである
と謳われています 。農村地帯では、このような地域エネルギー資源;例えばバイオマス廃棄物やもみ 殻
などが豊富にあります。一般に、農村地帯の電力需要は、照明、テレビ、ラジオぐらいの用途に使われ
るだけで概して少なく、150∼1000ワット/時です。農村地帯における100∼150世帯地域のピーク定格
出力は、18:00∼22:00の4時間の2∼30KWです。もし精米装置がそこに導入されるとなると、電力需要
は10∼15KWと上昇し、ピーク時間帯も8:00∼17:00の9時間になると推定されます。
ディーゼルエンジン・コンバインド・サイクル(BIONER)は電気を発生させるバイオマスガス化装置で、
農村地帯の電力需要を満たすと同時に、ディーゼルオイル消費を抑えることができます。BIONERを使
用したもみ殻のガス化では、ディーゼルオイル消費の67∼87%を代替でき、それは定格電力量に置き
換えると13.1KW に相当します。一方、ピート(泥炭)のガス化では、ディーゼルオイル消費の64∼77.5%
を代替できると試算されます。
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ピ ー トともみ殻の 発 電 時 の 平 均 消 費量は、ピートで 20kg/h (2.38kg/KWh )、もみ 殻 で25kg/h (1.5
kg/kWh)でした。ディーゼルオイル/生成ガス・コンバインドサイクル(ガス発生源はもみ殻を使用)では、
毎時1.4リットルのディーゼルオイルを消費したのに対して、ディーゼルオイルのみを使用した場合は毎
時3.2リットルが消費されました。これは、およそ毎時2.1リットルのディーゼルオイルを節約したことを意味
しています。ピートともみ殻を発電用に使用した場合の電力変換効率は、それぞれ8%と15%でした。
流動層バイオマスガス化技術の見通し
堀尾正靭(教授)・野田玲治(助手)
東京農工大学大学院生物システム応用科学研究科(BASE)
バイオマスエネルギーの潜在的な可能性と、その利用を促進するための適正な将来シナリオについ
て前半の第1部で発表いたします。具体的には;1)国家のエネルギー生産におけるバイオマス、特に木
質系バイオマスの潜在量について、2)スケールの視点からの経済について、3)資源収集および資源
の分散の観点からの物流機構について、4)地域社会との親和性について、述べることに致します。バイ
オマスの利用は、地域の特徴にもよりますが、地域経済の活性化に貢献すると同時に、地域の内発的
発展への道を切り開くことができます。流動層技術は、そのような方向性に対して、最も適切で、かつフ
レキシブルな技術の一つと言えるでしょう。
ここで紹介する、構造が簡単で効率的、かつ環境にやさしいバイオマスエネルギー転換システムは、
粘土触媒を用いた中温域の流動層ガス化技術で、このシステムでは、粘土触媒へのアルカリ成分の蓄
積による失活は循環再生によって防がれ、触媒は最後に土壌に灰分と一緒に還元されます。このシス
テムの検証のため、実験室 規模のバイオマスガス化 装置を用いた実験が行われ、後半の第2部ではそ
の成果について報告します。内径43mm、全長500mmの流動層反応装置において、セルロースとウッ
ド・チップをスチームと15%窒素ガスを用いて、スチーム触媒ガス化を行いました。粘土触媒は、ベント
ナイト粉 を水に戻してから10%塩酸で3時間処理して 373Kで乾燥させて作りました。実験は、その他に
商業用活性白土、珪砂、および未処理ベントナイトで比較を行いました。珪砂の代わりに 粘土触媒を用
いると、タールの生成が減少しました。商業用活性白土と粘土触媒を用いた場合、珪砂および未処理
ベントナイトと比べて、生成ガス中の水素ガス生成量の増加と、タールの顕著な減少が認められました。
このことから、この粘土触媒は、バイオマスガス化において環境負荷が少なく、高い可能性を示しまし
た。
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デモンストレーションセッション
このセッションは、関係者に上記の流動層技術のコールドモデルを実際に見学してもらえるよう企画し
たものです。コールドモデルでは、実際に粘土触媒粒子を入れて、ガスでリアクター(反応塔)とリジェネ
レーター(再生塔)との間を循環させ、サイクロンも装置内に組み込んで運転が行われました。
デモンストレーション風景
公共および産業用ドラフト式ガス化
ストーブのデザインと性能
S.C. Bhattacharya, S.Kumar, M. Aug. Leon, Aung Mit Khaing
Energy Field Study, Asian Institute of Technology, Thailand
産業用直交流形ドラフト式 ガス化ストーブ(CGS-3)はアジア工学院で開発され 、レストランなどの商業
施設、小規模産業施設での利用、公共施設での共同体式調理器具など、商業施設で使われるために
開発されました。ガス化ストーブの効率と消費エネルギーは水の煮沸試験で求め、様々な種類の燃料
や容器サイズ、容器周辺機器の組み合わせ比較試験を行いました。最も効率が高かったのは容器を3
つ配置した方式で木を燃料に用いた場合で、およそ31.8%でした。排気ガス試験では、ストーブ使用時
における有害ガスの排出は非常に低いことが分かりました。
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第4部
セミナーの最後の部 では、木炭製造や細かい農業残渣からの練炭製造など、性能を向上させたバイ
オマス固形燃料について発表と議論が行われました。ここでは、小規模ガス化技術についても紹介が
行われました。
代替燃料としての木炭
Donatus Rantan & Rudyanta Utama
Yayasan Dian Tama, Pontianak, West Kalimantan
木炭は何千年間も前から世界中で知られています。あらゆる地域の民族集団は、木炭の生産と使用
に関して、燃料や熱エネルギーとして の知識と経験があります。これまで、炭の生産は主に家庭用の小
規模生産で行われてきましたが、産業用に中・大規模でも行われてきました。
慎重な注意を必要とする高品質の木炭を生産するための一 つの要素はその生産技 術です。木炭は
非常に簡単な方法から、はるかに高度な技術を要する方法まで多岐に渡ります。木炭の非常に簡単な
作り方は、空地でバイオマス(木など)を燃え盛るまで燃やして から、水をかけて消す方法です。炭を作り
出すためのより高度な方法には、土製か鉄製の窯を使用することです。この方法では、木炭となる原料
は直接燃焼しませんが、窯の内部は絶えず 高温で加熱され ています。この場合、バイオマスは 徐々に
炭化してやがて木炭となります 。
木炭を作るのは、難し過ぎる仕事ではありません。他方では、それぞれの用途に適した高品質の木炭
を作り出すのは、もはや燃料を燃やすような簡単なことではないことも確かです。良質の木炭を作り出す
ためには様々な方法があります。ある原料を燃焼炭化させる方法は、別の原料を炭化させる方法として
必ずしも適しているとは言えないのです。 このことは、木炭を炭化させるための窯の操作方法は いつも
同じでないことを意味しています。また、それぞれの窯は、固定品質の炭を作り出すように設計され てい
ます。
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青い炎革命
Dr. A. D. Karve
農村地帯適正技術研究所
(Appropriate Rural Technology Institute, Pune, India)
主に木を燃す伝統的カマド(ストーブ)によって引き起こされる屋内での空気汚染は、インドの農村地
帯で毎年およそ50万人もの女性・子供を殺しています。灯油やLPGはよりきれいに燃焼します が、これら
は高価で、再生可能ではありません。その点、バイオガスは、再生可能で、安価で、空気も汚染せず、
かつカーボン・ニュートラルです。一方、現在の牛の糞を利用したガス収集技術は、少なくとも6∼8頭の
牛を飼育している家庭は別として、利用や導入がしやすい技術とは言えません。このための2000リットル
の発酵槽はかさばって高価です(250米ドル)。発酵槽の中に毎日100リットルの糞のスラリー を投入して、
100リットルの廃液を処分するのは、骨が折れて厄介な作業です。そこで私は、30米ドルしかかからない、
400リットルの革新的な家庭用発酵槽を開発しました。この装置では、毎日たった1kg の澱粉質あるいは
糖質の原料供給(例えば、不良な種子、痛んだ塊茎、非食用の油料種子の油粕、食物の残渣、木の実、
傷んだ果実など)を必要とするだけです。そして、ここからは1∼5
リットルの廃液しか出ません。この技術
は、どんな農村地帯あるいは都市の家庭においても使用することができます。また、家庭内 のバイオガ
ス発酵槽で、どこでも入手可能な澱粉質の廃棄物 から供給原料を生産することによって農村地帯で新
しい事業を創出することができます。インドの農村地帯でこの発酵槽が普及させれば、木の伐採を減ら
し、屋内の空気汚染を減少させ ることができ、農村地帯の主婦や子供達の健康を改善することができる
でしょう。
<軽農業廃棄物からの木炭生産>
あらゆるバイオマスを炭にするためのオーブン乾留装置を用いた方法について説明します。炭にする
原料は、窯の中に収納されて加熱され た金属製の乾留装置に入れます。乾留装置の中に入れたバイ
オマスは熱によって熱分解し、バイオマスのおよそ 70%を熱分解ガスという揮発性物質に変換します。
このガスも一部窯の中で燃焼し、システムのさらなる熱供給に寄与します。バイオマスは乾留装置内で
空気と触れずにいるため、実質的に燃焼せずに完全に炭化することができます。この炭化させた軽バイ
オマスは、それの上で重いパイプを回転させることによって、容易に粉化することができます。この粉は
適当な結合剤と混ぜられることによって、あらゆる大きさや 形状の練炭に成形することができます。この
練炭は煤や煙を出さずにきれいに燃焼します。この原理に基づいて、ARTIはサトウキビの葉っぱを炭
化するための携帯用システムを開発しました。このオーブン2基を、年間200日程度稼動させた場合の
家族を想定しますと、Rs. 75,000(1500米ドル)の純収入を得ることができます。また、ARTIは、5人家族
で、練炭わずか100g を使って、米、豆、野菜(あるいは肉)を調理できる「サリ・クッカー」(Sarai Cooker)と
いうストーブ調理器を開発しました。
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地域密着型木炭・練炭産業用技術の開発
Ir. Bambang Suchayo, M. Eng.
Badan Pengkajian dan Penerapan Teknologi (BPPT), Jakarta, Indonesia
リァウと西カリマンタンの泥炭研究所(Peat Research Center)において、小規模な泥炭・練炭生産プラ
ントが研究されました。新型のVKC3V2 炭化装置に徐々に原料を供給すると、泥炭とバイオマス(5∼
10のどろどろの状態)は適切な空気供給状態下で自動的に炭化することができ、低級炭燃料を作ること
ができます。部分燃焼(熱分解)によって炭化させる粉化泥炭は、部分燃焼反応を促進するのに必要な
熱を固定層の中で泥炭燃料の一部を燃やすことによって発生させて作りました。
共同体に基づいた事業として、木、ココナツの殻、マングローブ木、泥炭などの生原料を用いた炭化
技術は、これまで長い間限られた生産能力の単純な方法によって個別に行われてきました。補助金を
廃止し、灯油への依存を少なくするためには、今こそ、共同体に基づいた練炭生産事業を再検討し、能
力を発展させ、競争力を高めるべきです。上記の達成のために、いくつか重要な焦点となるのは、品質
を向上させ、生産技術を開発することによって生産量を増大することです。
ここでは、粉化泥炭とバイオマスの生原料を使った「小規模泥炭・練炭生産工場」のモデル試験の一
部として、粉化あるいは非粉化泥炭を使ったこれまでの炭化技術における考え方や開発事例を再評価
します。
閉会の挨拶
田中博士とアントン・スジャルウォ氏がそれぞれ閉会のスピーチを行いました。そして、3日間のワーク
ショップ期間中の、主催者、講演者、そして参加者それぞれの活発な役割に感謝しました。また、スジャ
ルウォ氏は、本セミナーはこれで終わりますが、これは同時にバイオマス開発の分野で活動している、個
人、機関、団体などの間でさらなる協力やサポート関係を築く始まりとすべきであることを付け、閉会の
挨拶としました。
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