視覚認知検査 小児神経学クリニック

VMI-6th
視覚-運動統合(目と手の協応)発達検査
(Developmental Test of Visual-Motor Integration)
視覚認知検査
この検査は、模写によって「目と手の協応」の能力をみま
す。被検者には、見本図形の形を認識すること(入力)と、そ
れを描くためにイメージどおりに自分の手で作業する(出力)
ことが求められます。
こうした手作業を微細運動といいます。手先で物を作るこ
とはもちろん、日常生活でコップを握るといった、さまざまな
細かい動きも微細運動です。
ちなみに身体全体を使う運動を粗大運動といいます。ス
ポーツはもちろん、歩くことも粗大運動です。
いずれの運動も、視覚からの情報が重要です。視覚によ
って、自分の身体と周囲の空間の関係を捉えられないと、文
字学習にも影響しますし、日常において物につまずいたりぶ
つかることも多く、また、いろいろな道具を上手に利用しにくい
ものです。
こんなお子さまにおすすめの検査です
★ 文字を読むのに時間がかかる。
★ 行を飛ばしたり同じところを読んでしまう。
★ 字を覚えにくい。
★ 図形の理解が苦手。
★ 手先の作業が、うまくこなせない。
★ 左右を認識しにくい。
★ 鏡文字を書いてしまう。
★ 探し物をうまく見つけられない。
こうしたことは、視覚認知の発達に問題がある場合が
あります。
視覚認知検査は、複数の検査を組み合わせて施行し、さまざまな
DAM グッドイナフ人物画知能検査
観点から目で見たものをどのように捉え理解しているかを調べます。
(Draw A Man)
この検査は、人間の顔や身体をどう把握しているかという
観点で発達をみる検査です。絵の上手下手ではありません。
「人」を描くためには、自分自身の身体感覚をつかむことや、
他の人のしぐさを見てその意味を理解できることが必要で
す。
お友達の顔の表情やジェスチャーの意味を理解し、自分
からも表現できることは、共感的なコミュニケーションとして楽
しいことです。
ただし… 結果の数値は「グッドイナフ人物画知能検査・ハ
ンドブック」にしたがって算出しますが、この検査により動作性
の知能や発達のすべてが分かるわけではありません。
検査を受けられた方が、今後とも「人」だけではなく、周囲
のあらゆるものに対する豊かな視覚認知を育むために参考
にしてください。
作業に必要な微細運動、学習や読書に必要な眼球運動など、総合
的に視覚情報処理能力の確認をします。
小児神経学クリニック
〒101-0062
東京都千代田区神田駿河台2-8 瀬川ビル2F
Tel 03-3294-0371(代表)
Tel 03-3294-0372(予約)
小児神経学クリニック
・DEM
眼球運動発達検査
(Developmental Eye Movement test)
この検査では、読書をするときと同じような眼球運動が要
求されます。視線を効果的に文字に向けられないと「行」が
つかめず、斜めに数字を追ったり飛ばしてしまったり、あるい
は同じ箇所を重複して読んでしまうといったことが起こりえま
す。被検者の眼球運動を把握することで今後の学習支援に
役立つ検査です。
・TVPS-R(Test of Visual-Perceptual Skills‐R)
・TVPS-3(Test of Visual-Perceptual Skills‐3)
・MVPT-3(Motor-Free Visual-Perceptual Test-3)
視知覚検査視知覚スキル検査
これら3つの検査は、同じ目的の検査です。子どもの発達に
応じた検査を1種類、施行します。(MVPT-3 は主に幼児に
施行します)。子どもが視覚情報をどのように認知しているか
を把握する検査で、下記の 7 つの観点で視覚情報処理能力
を測ります。
1) 識別〈Visual Discrimination〉
見本の図形と同じものを、よく似た数個の図形から選択し
ます。図形の細かい特徴をつかめないと、はっきりと「これが
見本と同じだ。」と選べず、「なんとなく、同じ感じ。」とか、ある
いは、「みんな似ていて違いが分からない。」ということが起こ
りえます。
2) 図と地〈Visual Figure-Ground〉
見本の図形と同じ「形」を含んでいる選択肢を選びます。
見本と同じ形が「図」と呼ばれるものです。「図」が隠れている
選択肢には、余分な図形も密集して描かれています。その
余分な部分が「地」と呼ばれるものです。
この項目では、自分にとって必要な視覚情報だけを、選択
的に取り出す能力が求められます。目常で物を探す時や、
勉強中に本の文字列から要となる言葉を見つけだす時にも
必要な能力です。
・指標による眼球運動の確認
3) 空間関係〈Visual Satia1-Relationship〉
視覚的な上下左右の方向性、垂直、水平、斜めさ加減の
空間認識が問われる課題です。こうした認識は自分の身体
を中心に育まれます。空間感覚が発達することで、物の形態
の把握や文字学習が楽になります。
また、自分を中心とした空間を把握できてこそ、自分以外
の人の立場からも物理的に何がどのような関係に置かれて
いるかを理解しやすいものです。
4) 恒常性〈Visual Form-Constancy〉
恒常性の能力とは、ある対象が置かれている環境や条件
が変化しても、それがいつも同じものであると認識する力で
す。見たものに対して確実な概念をつかめないと、判断があ
やふやになってしまいます。
たとえば、文字やマークなどは日常の様々な場面にあふ
れています。ひとつの漢字でも、印刷されているものと学校
の先生が黒板に手書きしたものが、同じ文字として理解でき
ないと学習しにくいものです。
5) 閉合〈Visual Closure〉
部分しか見えない情報から、全体像をイメージする課題で
す。小刻みな手がかりを、頭の中で適切にまとめる必要があ
ります。全体を分解分析する能力も求められます。
ちなみに、どの課題にも眼球運動は重要ですが、特にこの
課題では眼球運動を効果的に活かせないと、ばらばらな部
分を関連付けにくいと考えられます。
6) 単一図形の記憶〈Visual Memory〉
7) 連続図形の記億〈visual Sequential Memory〉
被検者の視覚的短期記億の能力が問われる課題です。
視覚情報を正確に記憶すると、刻一刻と変化する身の回りの
出来事や状況を適切に関係付けることができます。そうした
記憶が保てないと、作業をしていても「あれ、なんだったけ?」
といつも確認しなくてはならなかったり、あるいは、よいと判断
して一生懸命にしたことが勘違いだったりしかねません。
・固視
じっと見つめる機能です。見るべきものに安定して指線を
向け続けられることは大切です。
・追従性眼球運動
ゆっくりとした視線で対象を追う眼球運動です。飛んでいる
虫を目で追うような眼球運動で、たとえば先生が書いて見せ
る漢字の書き順を理解するときも、こうした追従性眼球運動
が必要です。
・衝動性眼球運動
一点から別の一点に、すばやく視線を移動する眼球運動
です。たとえば黒板とノートに交互に視線を向けるときや、読
書時に単語や文節ごとに視線を移動して読むためにも、こう
した衝動性眼球運動が必要です。
・眼球運動の基盤となる身体感覚(前庭覚)
運動しているときに、いま自分がどの方向に、どんな速さ
で、どのように進んでいるか(手や足がどこにどのようにある
か。)といった身体の状態を自動的に感じることで、行動(運
動)しながら必要なものを見ていることができます。また、逆
に動きを抑制して落ち着いた姿勢の保持にも身体感覚は重
要です。
身体感覚に派生して方向性をつかめると、視線も適切な
方向に向けやすいものです。
担当
本多 和子 (臨床心理士)
(転載厳禁)