演題抄録集

抄 録
一般演題
要望演題
ショートレクチャー
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一般演題
01. 腹腔鏡下直腸切除術における HALS 併用法の有用性
奥田 浩、中原雅浩、仁科麻衣、別木智昭、武智 瞳、竹元雄紀、山根宏昭、藤國宣明、安部智之、山木 実、
天野尋暢、則行敏生
(JA 尾道総合病院外科 ・ 内視鏡外科)
腹腔鏡下直腸切除術における低位での直腸間膜処理、直腸切離、吻合は依然として難易度の高い手技である
が、我々は、HALS(Hand Assisted Laparoscopic Surgery) を併用することにより、安全かつ確実な手技を行
い得ると考えている。
体位は頭低位、右半側臥位、低載石位。気腹法で、5 ポートをおき、通常の腹腔鏡下直腸切除術と同様に進め
る。最初に内側アプローチにより下腸間膜動脈周囲郭清と血管処理を行い、次に S 状結腸間膜の授動、続いて直
腸間膜の授動を行う。ここで臍部のポート創を 6cm に延長、HALS 用開創器具 (GELEXISTM) を装填し再気
腹を行い、HALS により切離予定線の直腸間膜の処理と直腸切離を行う。直腸間膜の処理は Vessel sealing
system を、直腸の切離は Endoscopic linear Stapler を用いる。その後、小切開創から腸管を創外に引き出し
口側の切離を行い、再気腹下に DST(double stapling technique) で吻合する。
現在までに 31 例を経験し、腫瘍存在部位は Ra18 例、Rs10 例、Rb3 例であった。手術時間は
270±66(200-315) 分、出血量は 82 (10-483)g であった。HALS を併用しなかった症例と比較検討すると手
術時間、出血量には有意差は認めなかったが、術者のストレスは軽減したと考える。
02. 大腸 2 領域以上 / 腹部 2 臓器切除における HALS の有用性
小池卓也¹、向井正哉¹、横山大樹¹、吉井久倫¹、日上滋雄¹、宇田周司¹、和泉秀樹¹、長谷川小百合¹、田島
隆行 ²、野村栄治¹、幕内博康¹
(東海大学医学部付属八王子病院外科¹、東海大学医学部付属大磯病院外科²)
当院で施行された大腸癌根治切除例において HALS が施行された症例の内、大腸 2 領域以上の切除やその他の
腹部臓器を切除した 28 例について、手術時間 / 出血量 / 合併症 / 術後在院期間等について検討を行った。1)
大腸内 2 重複癌は 9 例 (A+R/3 例、A+S/3 例、T+D/2 例、C+S/1 例 )、UC+Rb 癌 /1 例 (TC-IPAA+LAR) で、2) 大腸癌 + 胆石 11 例、+ 他臓器 GIST3 例 ( 部分切除 )、+ 卵巣嚢腫 2 例、+ メッケル 1 例、
+ 早期胃癌 1 例 (LATG) であった。1) 手術時間は 3hr21min-6hr52min( 平均 4h29m/ 中央値
3h36m)、出血量 5-568ml( 平均 326.1ml/ 中央値 358.0ml)、術後在院期間 10-53 日 ( 平均 21.3 日
/ 中央値 15.0 日 ) で、2) 各々 2h20m-6h45m(3h50m/3h13m)、10-842ml(147.8/90.0)、術後在
院期間 6-31 日 (15.3/14.0) であった。これら 1)2) のいずれにおいても開腹移行や再手術は認めず、術後合併
症はイレウス 1 例、創感染 1 例、吻合部狭窄 1 例を認めたが、いずれも保存的に軽快した。近年の大腸 HALS
法は、大腸癌による多病巣切除や他臓器切除にも安全 / 確実に適応拡大可能で、且つ低コストと考えられた。今
回は A+S 癌同時性 2 領域切除と A+Rb 癌同時性右半結腸切除 + マイルズ手術をビデオで供覧する。
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一般演題
03. 高度腹膜播種を伴う大腸癌に対して HALS で原発巣を切除した1例
十倉知久 ¹、西川晋右 ²、鶴田 覚 ¹、米内山真之介 ¹、櫻庭伸吾 ¹、青木計績 ¹、川嶋啓明 ¹、豊木嘉一 ¹、
川崎仁司 ¹、遠藤正章 ¹
(青森市民病院外科 ¹、青森県立中央病院がん診療センター外科 ²)
【症例】63 歳 女性 【現病歴】貧血 ・ 体重減少を主訴に前医受診。S状結腸癌の診断で当院消化器内科紹
介受診。【検査所見】CEA 447.6 CA19-9 8165.4 CT 検査では、S状結腸に全周性壁肥厚および周囲リン
パ節腫大複数あり。肝外側区域に 10cm の転移性腫瘍および腹膜播種を示唆する大小様々な結節性病変多
数認めた。また、臍ヘルニア部に大小多数の播種性結節を含む大網が脱出していた。【経過】大腸ステント留置後、
mFOLFOX6+Pmab 9コース施行。CEA 10.5 CA19-9 20.1 と著明に低下し、CT 上も肝転移 ・ リンパ節転
移 ・ 播種性結節ともに縮小傾向となったが、神経障害高度となり FOLFILI+Pmab へ変更し2コース施行。原発
巣切除目的に当科紹介となった。【手術所見】臍ヘルニア部の播種性腫瘤を切除し同部位よりジェルポート挿入。
HALS 操作で左側結腸を授動。無数の播種性結節あり再建困難と判断。原発巣切除し単孔式結腸ストー造設
した。【考察】高度腹膜播種を伴う大腸癌に対して HALS 操作で原発巣を切除した1例を経験した。高度腹膜播
種を伴う場合でも授動操作については HALS を有効に利用することができる。
04. 回盲部切除後の吻合部周囲膿瘍を伴ったCrohn病に対するHALSの1例 ~初めてのHALS経験~
松尾夏来 ¹、板橋道朗 ²、髙部裕也 ¹、谷 公孝 ¹、春日満貴子 ¹、小川真平 ¹、山本雅一 ²、岡本高宏 ¹
(東京女子医科大学第二外科 ¹、東京女子医科大学消化器 ・ 一般外科 ²)
回盲部切除後の吻合部周囲膿瘍を伴ったクローン病に対する HALS の 1 例を経験したので報告する。症例は 47
歳、男性。2週間持続する右下腹部痛を主訴に当院受診となった。既往歴として、Crohn 病に対して回盲部切除
後、術後5年目に腸閉塞を発症し保存的治療を行っている。初診時の血液検査では、白血球 11.19×103/μ
l 、CRP 10.81 ㎎ /dl と炎症反応は高値で、腹部造影 CT では、吻合部周囲に膿瘍を認め、消化管穿通を
疑った。腹部超音波検査では、右下腹部の前回の手術時のドレーン孔瘢痕部の皮下より腹腔内膿瘍に連続する
瘻孔を認めた。瘻孔部よりドレーンを挿入し、ドレナージと抗生剤投与による保存的治療を行った。しかし、炎症所見
は改善乏しく、手術の方針となった。入院後8日目に Crohn 病、吻合部口側の小腸穿通、腹腔内膿瘍、腸管 皮膚瘻に対して HALS
(腹腔鏡補助下吻合部切除)を施行した。また、回腸に Crohn 病による狭窄部を認め、
stricture plasty を行った。病理組織学的検査では、局所的な狭窄を伴う Crohn 病の診断であった。術後 11
日目に経過良好で退院となった。回盲部切除後の吻合部周囲の腹腔内膿瘍を伴った Crohn 病に対して HALS
を施行した。初めて経験した HALS 症例について、若干の文献学的考察を加えて報告する。
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一般演題
05. 術中の病変確認に HALS が有効であったクローン病の1例
森本幸治、山名哲郎、西尾梨沙
(東京山手メディカルセンター大腸肛門病センター)
【はじめに】術中に横行結腸脾彎曲部の狭窄病変の確認について、用手補助下腹腔鏡手術(以下 HALS)
が有効
であったクローン病(以下 CD)
の1例を報告する。【症例】58 歳、女性。1970 年痔瘻を契機に CD 診断された。
2008 年イレウス症状が増悪、小腸造影で終末回腸の縦走潰瘍病変を指摘されていた。外来通院で infliximab
投与等の内科治療を行っていたが、イレウス症状を頻回に繰り返すようになり入院精査行なわれ、小腸造影で終末
回腸の縦走潰瘍、狭窄病変の増悪を認めた。またこれまで大腸病変は指摘されていなかったが、術前の注腸造影で
横行結腸脾彎曲近傍に狭窄病変の可能性を指摘された。【手術】完全鏡視下での回盲部切除術と横行結腸病
変の確認をすることとした。臍下にカメラポート、左上下腹部、右下腹部に 5mm ポートを配する 4 ポートでアプロー
チした。終末回腸の病変部を確認し、回盲部外側から肝彎曲まで右側結腸を剥離授動した。術前に指摘された横
行結腸の狭窄病変が存在するか、鏡視下に確認したが、目視のみでは検索が不十分であったため、HALS で触診
を行うこととした。6cm の正中切開行い、GelPort を装着。HALS で脾彎曲部の視触診を行い、炎症所見がないこ
とを確認した後、回盲部切除を施行した。【結語】HALS は完全鏡視下手術から、わずかな創の延長で触診が可能
となり、CD 腸管病変の把握にはきわめて有効である。
06. S状結腸憩室炎に伴う高度癒着に対し HALS が有効であった一例
矢野雷太、大毛宏喜、渡谷祐介、繁本憲文、嶋田徳光、上神慎之介、上村健一郎、村上義昭、末田泰二郎
(広島大学大学院応用生命科学部門外科学)
<症例>70 歳、女性。<既往歴>子宮全摘術、小腸部分切除術、虫垂切除術<現病歴>S状結腸憩室炎
に対し、内科的治療にて炎症反応は正常化するもS状結腸に高度狭窄が残存し、手術の方針となった。<術式
選択>術前 CT にてS状結腸ほぼ全長に壁肥厚を認め、既往歴から腹腔内の癒着が予想されたため、小切開創
を利用できる HALS でのS状結腸切除術を選択。<手術所見>7cm の下腹部正中切開で開腹。腹壁と小腸
や、S状結腸と小腸間膜 ・ 外側腹壁の間に強固な癒着を認め、まず直視下にこれらを剥離。外側からS状結腸
間膜を授動し、肛門側腸管切離の後に腸管に沿ってS状結腸間膜を処理してから、HALS 操作を開始。GelPort
からS状結腸を体外へ導出した後に術者の左手を挿入。腸管を体外で牽引しテンションをかけながら、脾彎曲を授
動した。気腹終了してS状結腸を摘出後、DST にて再建。術後経過は良好であった。<考察>保存的治療後の
S状結腸憩室炎では高度癒着を伴う場合がある。開腹術を選択した場合、脾湾曲の授動には臍上に及ぶ皮膚切
開を要するが、小開腹の癒着剥離を先行させることで HALS の選択が可能となる。本疾患のように癒着の範囲が術
前に想定でき、下腹部に限局している場合に有効な術式と考えられた。
<結語>HALS では、完全鏡視下手術が困難な症例でも、開腹のメリットを生かすことで、最小限の皮膚切開によ
り安全な腸管切除が可能となる。
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一般演題
07. 5 ㎝以上の胃 GIST に対する HALS の有用性の検討
五十嵐雅仁、萩原 謙、高山由理子、松野順敬、宮国泰己、宋 圭男、林 成興、高山忠利
(日本大学病院消化器外科)
諸言)GIST 診療ガイドラインでは 5cm を超える胃 GIST に対して腹腔鏡手下手術を推奨していない。これは高悪
性度の腫瘍が多く鉗子操作による偽被膜損傷の危険性のためである。またリンパ節郭清が不必要のため部分切除
が基本術式となるが術中の正確な位置の同定がより重要となる。我々は 2005 年から 5cm を超える胃 GIST に
対して HALS を導入しておりその成績を報告する。対象)
2005 年 1 月から 2016 年 7 月までの HALS を施行し
た 5cm 以上の胃 GIST11 例。手術手技)心窩部 7cm の切開創に Gelport を装着し他 4 ポートにて施行した。
結果)平均年齢 50.1 歳、平均 BMI23.04、腫瘍径中央値 70mm(50-140)、胃上部 8 例、胃体部 2 例、
幽門前庭部 1 例であった。術式は部分切除術(PR)4 例、噴門側胃切除 (PG)5 例、幽門側胃切除 (DG)1 例、
胃全摘術 (TG)(膵尾部、脾臓合併切除)1 例、手術時間は PR︓103 分、PG︓233 分、DG︓160 分、TG︓
270 分。偽被膜損傷や合併症なく完遂し、左手の触覚により、PR から PG への術式変更 1 例、脾臓、膵臓への
浸潤による合併切除 1 例を認めた。Modified Fletcher 分類で低リスク 2 例、中リスク 5 例、高リスク 4 例であり
観察期間中央値 4 年 5 か月で 10 例は無再発生存し、1 例に腹腔内再発を認め再切除を行った。考察)5cm
を超える胃 GIST は壁外浸潤も多く偽被膜損傷の回避が重要であり、胃体上部に発生する症例が多く左上腹部
領域の視野確保は必須である。HALS は同部位の良好な視野が得られ、左手による腫瘍の愛護的な把持や正確
な部位判断による術式の選択(部分切除かそれ以外か)が可能である。また HALS は腫瘍摘出のための切開創を
手術開始から有効利用することができる。結語)HALS は 5cm を超える胃 GIST に対して合理的で有用な手術手
技である。
08. 噴門近傍内腔突出型 GIST に対し HALS 内視鏡合同手術を行った 1 例
楊 昌洋 ¹、服部桜子 ¹、山岸俊介 ¹、八木廉平 ¹、間宮孝夫 ¹、海賀照夫 ¹、窪田信行 ¹、中田泰彦 ¹、中河
原浩史 ²、松田 年 ³、神野大乗 ¹
(みつわ台総合病院外科 ¹、日本大学病院消化器内科 ²、神楽坂 D.S. マイクリニック ³)
症例︓76 歳 男性 健診の胃透視検査にて腫瘤を指摘され、精査のため当院消化器内科に入院。当院での上
部消化管内視鏡検査にて噴門近傍の後壁寄りに約 5cmの粘膜下腫瘍をみとめ EUS-FNA にて GIST の診断
となった。しかし術前精査にて大動脈弁狭窄症が認められ手術適応であることよりまず大動脈弁置換術を施行。その
半年後に十分な IC を行い、腫瘍の大きさも考慮し噴門近傍後壁寄りにあることから HALS 内視鏡合同手術を施
行した。ハンドアシストポートは上腹部正中に配置、腹腔鏡補助下に腫瘍の部位を確認し周囲の血管の処理を行
い、内視鏡下に粘膜全周切開を行い内視鏡下に胃壁を貫通させた後、超音波凝固切開装置にて胃壁を切離し
腫瘍を切除した。胃壁の縫合は 3 か所の固定糸を置き内視鏡にて噴門部を確認しながら自動縫合器にて縫合閉
鎖した。術後経過良好であり 10 日後に退院となった。今回噴門近傍後壁の内腔突出型 GIST に対し腹腔鏡補
助下での内視鏡合同手術を施行した。本症例のような噴門近傍の GIST に対しては非常に有効な方法であると考
えられた。
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一般演題
09. 食道亜全摘術における HALS 腹部操作の経験
木村昭利、岡野健介、横山拓史、堤 伸二、石澤義也、加藤雅志、梅原 実、梅原 豊、西川晋右、村田暁彦、
高橋賢一、森田隆幸
(青森県立中央病院がん診療センター外科)
【目的】当科において、胸部食道癌手術は、2015 年より再開し、2016 年 7 月 31 日までに 6 例施行した。5 例
目までは、右開胸開腹食道亜全摘、胸骨後経路胃管再建を施行してたが、全国的に腹部操作で HALS でのアプ
ローチを行っている事を受け、6 例目で HALS での腹部操作を行った。HALS での腹部操作における利点、欠点に
ついて考察する。【症例】63 歳、男性。胸部上部食道癌。cStageII のため、NAC を 2 コース施行した後、平成
28 年 7 月中旬、右開胸 HALS 食道亜全摘術、頸胸腹 3 領域郭清、胸骨後経路胃管再建を施行した。
HALS 操作は、上腹部に 8cm の小切開創を置き、術者左手を腹腔内に挿入し、臍下にカメラポート、右側腹部
に術者右手用 12mm ポ-ト、左側腹部に助手用 5mm ポート 2 つを挿入し、気腹下に施行した。HALS での腹
部操作時間は 68min( 全体の手術時間 475min) であった。術後反回神経麻痺を認めなかったが、嚥下機能低
下があり、現在嚥下訓練施行中であるが、その他は合併症なく経過している。【考察】HALS での腹部操作は、特に
開腹手術と特に変わらずに行う事ができ、術者左手とカメラや鉗子との干渉が多少あるものの大きな問題はなかった。
小切開創からも胸骨後経路での胃管再建も問題なく施行できた。【結果】HALS での腹部操作動画を提示し、利
点、欠点等を検討し報告する。
10. 十二指腸潰瘍穿孔症例に対し、HALS を用いて大網充填を行った 1 例
砂河由理子、五十嵐雅仁、松野順敬、宮国泰己、萩原 謙、宋 圭男、林 成興、高山忠利
(日本大学病院消化器外科)
【はじめに】今回十二指腸潰瘍穿孔症例に対し、HALS を用いて大網充填を行い良好な術後経過を得たので文献
的考察を加えて報告する。
【症例】43 歳男性。2016 年 1 月心窩部痛出現し、徐々に増悪したため救急要請し当院に搬送され上部消化
管穿孔の診断で同日緊急手術となった。
体位は左手内転位。気腹圧は 10mmHg。上腹部正中切開にて、心窩部を 7cm 切開し開腹。ジェルポート ®
を装着。臍直下に 12mm、左側腹部に 5mm、右側腹部に 12mm と 5mm のポートを挿入し手術開始した。
直視下に十二指腸球部に 5mm の穿孔を確認。右横隔膜下 ・ 右側腹部 ・ 左横隔膜下 ・ 左側腹部 ・ 骨盤腔 ・
小腸間膜内をくまなく洗浄後、直視下にて大網充填を行った。ポートはドレーン挿入に利用した。術後 5 日目で胃
透視検査施行し、明らかな腹腔内への造影剤漏出所見なく、同日より食事開始した。食上げ後も合併症認めず、
術後 14 日目に退院となった。
【まとめ】消化管穿孔例の手術では腹腔内を効率よく十分に洗浄できること、大網の充填等穿孔部の閉鎖を確実に
行えることが必要不可欠な条件となる。HALS は最低 2 名で施行可能であり、触覚およびカメラの視覚を利用でき
るため腹膜炎における癒着の剥離や場の展開、確実な洗浄が可能であること、開腹手術の手技の能力で直視下で
の確実な大網充填を施行できることより条件を満たす手術手技の選択肢の 1 つとして有用であると考える。
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一般演題
11. 当科での肝部分切除症例の検討
菅又嘉剛、多賀谷信美、平野康介、斉藤一幸、山形幸徳、奥山 隆、鮫島伸一、野家 環、大矢雅敏
(獨協医科大学越谷病院外科)
背景︓最近 3 年間の肝部分切除術は 42 例で、開腹 (OLR、16 例 )、完全鏡視下 (pure-LLR、16 例 ) とともに、
pure-LLR が困難な病変に対しては用手補助鏡視下 (HALS、10 例 ) を行ってきた。
目的︓OLR、pure-LLR、HALS の 3 群について手術時間、出血量、経口摂取開始までの期間、術後在院日数、
術後合併症について比較検討した。
結果︓全体の年齢は 68.7 歳、性別(男︓女)は 30︓12、硬変肝 7 例、切除個数は 1 箇所 34 例、2 箇所 7
例、4 箇所 1 例であった。各群とも 2 例ずつ大腸癌同時切除術が行われた。開腹移行は Pure-LLR で 2 例、
HALS で 1 例認めた。手術時間は OLR が 186 分、pure-LLR が 175 分、HALS が 175 分、出血量は OLR
が 696g、pure-LLR が 582g、HALS が 570g で、いずれも有意差を認めなかった。経口摂取開始までの期間は
3 群間とも 2、3 日で、術後在院日数は OLR が 14.7 日、pure-LLR が 9.7 日、HALS が 10.4 日と腹腔鏡下
手術で短い傾向にあった。術後合併症は、OLR が 5 例、pure-LLR が 2 例、HALS では認めなかった。
考察︓肝部分切除術において、pure-LLR は OLR との比較で手術時間が短く、術中出血量が少なく、術後在院
日数も短い傾向があった。HALS の短期成績は OLR と同等以上と考えられ、pure-LLR が困難な症例に対し推
奨できると考えられた。
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要望演題 RA︓HALS の創からできること、できないこと
RA-1. 大腸全摘術における、HALS 創からおこなう直腸処理
木村英明 ¹、井上英美 ¹、辰巳健志 ²、小金井一隆 ²、杉田 昭 ²、遠藤 格 ³
(横浜市立大学附属市民総合医療センター炎症性腸疾患センター ¹、横浜市立市民病院炎症性腸疾患センター ²、
横浜市立大学消化器 ・ 腫瘍外科 ³)
当科では、潰瘍性大腸炎に対する 1 期的大腸全摘、回腸嚢肛門管吻合術の際に、結腸の剥離授動を HALS で
おこない、直腸剥離と肛門管切離は HALS の小切開創から腹腔鏡を併用した直視下手術 (video assisted
intrapelvic surgery︓VIPS) でおこなっている(2007 年以降 91 例に施行)。HALS の創からおこなう直腸操
作を紹介する。
【方法】通常 HALS device は臍を中心に留置することが多いが、われわれは直腸操作を直視下におこなうために下
腹部に HALS の切開創をおいている。
結腸の剥離授動は、正中上腹部、臍部、左下腹部の 3 か所に 5mm port を挿入、5mm の腹腔鏡で観察しな
がら HALS でおこなう。
回腸の切離、直腸の剥離授動、肛門管の切離は切開創から直視下におこなう。特に骨盤深部の後壁側や深部側
壁では腹腔鏡を併用して(VIPS)
良好な視野のもとで操作をおこなっている。後壁正中に残る索状平滑筋組織
(hiatal ligament、肛門尾骨靱帯、直腸尾骨筋などと呼ばれている)を確実に切離することと、歯状線につけたマー
キングを触診で確認しながら切離線を決定することで、残存粘膜の少ない確実な肛門管吻合をおこなうようにしてい
る。回腸嚢を作成し、吻合器で回腸嚢肛門管吻合をおこなう。
HALS の創を利用した直視下操作を併用することで、容易でスピーディーな手術が可能となる。
RA-2. 用手補助腹腔鏡下噴門側胃切除術における小切開創を用いた再建手技
萩原 謙、五十嵐雅仁、高山由理子、松野順敬、宮国泰己、宋 圭男、林 成興、高山忠利
(日本大学病院消化器外科)
諸言)2005 年 1 月より胃体上部の cT1 胃癌と GIST に対して用手補助腹腔鏡下噴門側胃切除術
(Hand-assisted laparoscopic proximal gastrectomy:HALPG) を行ってきた。HALPG は左手を用いた視
野展開だけでなく直視下に複雑な再建手技を簡便、確実に行うことが可能である。今回我々の心窩部切開創を用
いた空腸パウチ間置再建と観音開き再建を報告する。対象)2005 年 1 月~ 2016 年 8 月に施行した
HALPG25 例。手術手技)心窩部 7cm の切開創に Gelport を挿入。術中の視野展開と直視下再建の点から
切開創頭側は食道裂孔直上付近が理想的である。空腸パウチ間置再建ではトライツ靭帯から 20cm より 25cm
部をテーピングし結腸後で拳上し気腹を終了とする。直視下に肝臓を頭側に圧排し食道裂孔を十分に露出する。
拳上空腸を創外に引出し直視下に 5cm の犠牲腸管を作成し自動縫合器で 10cm のパウチを作製する。食道空
腸パウチ吻合は自動吻合器で空腸パウチ残胃吻合は手縫いで施行する。観音開き再建は直視下に残胃前壁に
4cm の漿膜筋層フラップを作製し、食道残胃吻合後壁は食道全層胃粘膜下層吻合、前壁は食道全層胃全層
縫合を施行する。さらに漿膜筋層フラップで食道断端より 3 ㎝被覆する。結果)
平均年齢 62.8 歳、BMI23.1、胃
癌 20 例、胃 GIST5 例に施行した。空腸パウチ間置再建 23 例、観音開き再建 2 例で手術時間は各々 235 分、
235 分であり全例切開創を用いた直視下再建が可能であり合併症なく完遂した。考察)腹腔鏡下噴門側胃切除
術後再建は術後 QOL に寄与する貯留能と逆流防止能を目指した様々な術式が考案されているが複雑なものが
多い。HALS の小切開創は鏡視下の良好な視野展開と確実、簡便な再建手技の両方に利用可能である。結語)
HALPG の小切開創を用いた再建手技は簡便、確実であり合理性や汎用性に優れる。
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要望演題 RB︓完全鏡視下から HALS への移行
RB-1. StageⅣ大腸癌 ・ 局所進行大腸癌に対する HALS の有用性
富塚龍也
(武蔵野総合病院外科)
HALS を用いた進行大腸癌手術について検討した。症例 1︓ S 状結腸癌同時性肝転移。長径 10cm 大腫瘍。
経肛門的イレウス管挿入し減圧、5 トロッカーで手術開始。腫瘍径あり HALS に移行し切除吻合。手術時間 231
分、出血量 100ml。症例 2︓直径 10 ㎝大 S 状結腸癌。5 トロッカーで手術開始。腫瘍は腹壁 ・ 小腸に癒着。
HALS 移行し Hartmann 手術施行。手術時間 170 分、出血量 300ml。症例 3︓下行結腸癌腹膜播種。大
腸ステント挿入し減圧後、5 トロッカーで手術開始。原発巣は鏡視下に切除。口側は人工肛門とする方針としたが
脾弯曲部授動目的に HALS 移行。手術時間 221 分、出血量 300ml。症例 4︓S 状結腸癌腹膜播種。5 トロ
ッカーで手術開始するも腹壁全体に播種による癒着と粘液認め HALS 移行。用手的に剥離するも癒着が広範囲
に及び開腹移行し Hartmann 手術施行。手術時間 155 分、出血量 500ml。症例 5︓S 状結腸癌 ・ イレウス。
狭窄強く術前減圧不可。HALS にて手術開始するも腸管拡張著明で開腹移行し Hartmann 手術施行。手術
時間 218 分、出血量 800ml。ジェルポート装着を念頭に置きトロッカー配置を臍のトロッカーから離して配置した。
5 ㎜フレキシブルスコープを用いることでトロッカーを追加せず手術可能であった。StageⅣ大腸癌手術に HALS を用
いることで安全かつ低侵襲な手術が可能であった。
RB-2. クローン病に対する HALS の有用性
西尾梨沙、森本幸治、山名哲郎
(東京山手メディカルセンター大腸肛門病センター)
〈はじめに〉クローン病症例では高度の炎症や瘻孔により完全鏡視下手術は困難な症例があり、用手補助腹腔鏡下
手術(HALS)
に移行することにより鏡視下手術を完遂できることが少なくない。今回、当院でクローン病に対し HALS
を施行した症例についてその有用性を検討した。
〈方法〉2009 年 1 月から 2016 年 7 月までに HALS を行ったクローン病症例のうち、自験例 21 例について検討
した。
〈結果〉対象は男性 9 例、女性 12 例、手術時平均年齢は 35.7 歳(21 歳~ 58 歳)、手術回数は初回手術
17 例、2 回目 3 例、3 回目 1 例で、病型は小腸型 2 例、小腸大腸型 16 例、大腸型 3 例だった。術式は回盲
部切除 6 例、大腸亜全摘 5 例、左半結腸切除 4 例、右半結腸切除 3 例、回結腸吻合部切除 3 例で、
HALS 選択理由は高度炎症のもの 11 例、術野が広範囲に及ぶもの 10 例で、うち 9 例が高度炎症のため完全
鏡視下から HALS へ移行したものだった。術後経過は MRSA 腸炎 1 例、胃潰瘍穿孔 1 例を認めたが、19 例は
経過良好だった。
〈結語〉病変の炎症や癒着が高度なクローン病症例に対し HALS にてアプローチすることにより、開腹手術に移行す
ることなく病変腸管の切除が可能となり有用な術式であると考えられた。我々の手技をビデオで供覧する。
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ショートレクチャー︓HALS 手技の knack&pitfalls
SL-1. 食道がんに対する HATS 手技の knack&pitfalls
奥芝俊一
(国家公務員共済組合連合会 斗南病院 病院長)
略歴
所属 国家公務員共済組合連合会 斗南病院
役職 病院長
専門 消化器外科、内視鏡外科
¹⁹⁷⁸ 年 東京医科大学卒業
¹⁹⁸² 年 同大学院医学研究科 麻酔学専攻博士課程修了
¹⁹⁸³ 年 北海道大学 第二外科入局
¹⁹⁸⁶ 年 北海道大学 放射線科助手
¹⁹⁸⁸ 年 癌研究会付属病院外科 研修
¹⁹⁹¹ 年 北海道大学外科学 第二講座助手
¹⁹⁹⁴ 年 同講師
²⁰⁰⁰ 年 同助教授
²⁰⁰⁶ 年 斗南病院 診療部長
²⁰⁰⁷ 年 同副院長 北海道大学大学院 医学研究科連携分野教授
²⁰¹⁰ 年 北海道内視鏡外科研究会 代表世話人
²⁰¹⁴ 年 斗南病院 病院長
HATS による胸腔内操作はまず左側臥位にて腹部操作で用いる HALS の上腹部小切開創か
ら助手が右胸腔内へ左手を入れて肺や気管を圧排、牽引して術野展開し、術者は右胸壁、肋
間に挿入したポートから鏡視下用の器具を用いて食道切除、縦隔リンパ節郭清を行う。その後、
体位を仰臥位にして HALS で切除標本を回収し、頸部で食道胃管吻合を行う。手術適応は
通常の開胸食道癌症例と同じである。胸腔鏡手術のメリットは安定した術野展開により狭いワー
キングスペースで操作が可能で、特に食道手術は深部の操作が多いので近接して拡大視すること
で精密な操作が行える。また、HATS は胸腔内に挿入した助手の左手であらゆる方向へ牽引や
圧排ができ、癒着があっても胸腔鏡下手術は可能である。術者は両手が使え、繊細な剥離や切
離を行え、助手の触診も利用できる点が有益である。カメラは第 4 肋間と第6肋間中腋窩線の
2 個のポート孔を上縦隔と下縦隔の術野展開で使い分ける。軟性鏡を用いるが、軟性鏡の操作
のポイントは硬性鏡と同じように真直ぐに操作部位に近接して固定する。その後にアングルをかけ
て微調整する。カメラの保持・固定にはユニトラックを使用して長時間、ぶれない術野を確保する。
コツとして肋骨弓が急峻な場合、挿入した手首から前腕部が肋骨弓にあたるので剣状突起より
数cm下方から皮膚切開創をおく。HATS は肺、気管を圧排して後縦隔の術野確保を行うので
助手の左手の動きが特に重要である。
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ショートレクチャー︓HALS 手技の knack&pitfalls
SL-2. HALS 膵体尾部切除術の knack and pitfalls
菅原秀一郎、手塚康二、高橋良輔、渡邊利広、平井一郎、木村 理
(山形大学医学部 外科学第一講座)
略歴
²⁰⁰⁵ 年 ³ 月 山形大学医学部医学科卒業
²⁰⁰⁷ 年 ⁴ 月 山形大学医学部 外科学第一講座 医員
²⁰⁰⁸ 年 ⁴ 月 日本海総合病院 外科
²⁰¹⁰ 年 ⁴ 月 山形県立中央病院 外科
²⁰¹² 年 ¹⁰ 月 山形大学医学部 外科学第一講座 助教
専門領域 肝胆膵外科 脾動静脈温存による脾温存膵体尾部切除術
(以下 SpDP)
は木村らが 1996 年に提唱した
術式であり、従来の Warshaw 法と比べて脾梗塞や胃静脈瘤が起こりにくいメリットがある。また、
脾臓摘出後には感染症、血栓症、悪性腫瘍発生のリスクが上昇すると報告されているが、当教
室においても脾臓合併切除群と脾臓温存群を比較して、血小板数、白血球数は術後 4 年目
まで脾臓合併切除群が有意に高値であると報告している。
当教室では IPMN や PNET など良性から境界悪性疾患に対して、木村法に準じて開腹で
SpDP を行ってきたが、2007 年より HALS-SpDP を導入している。
これまで我々は 28 例の腹腔鏡下膵切除術を行い、15 例の HALS—SpDP を経験してきた。
開腹の SpDP と比べても手術時間、出血量、膵液瘻に差はなく、安全に行えている。
HALS-SpDP では脾動静脈の処理や膵切離を小開腹下で行うため、開腹手術同様の手技で
遂行することができる。HALS では主に膵脾の脱転を行うが、手術方法や当科で気をつけている
ポイントなどビデオで提示する。
脾合併膵体尾部切除術に関しては従来 HALS で行ってきたが、最近では完全鏡視下手術に
移行しつつある。しかしながら、高度肥満症例など視野展開不良例では HALS で行った方が安
全に施行できるメリットがあるため、症例に応じて HALS を用いている。当教室における鏡視下膵
切除の変遷と今後の展望について述べる。
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ショートレクチャー︓HALS 手技の knack&pitfalls
SL-3. HALS 肝切除の knack and pitfalls
曽山明彦
(長崎大学大学院 移植 ・ 消化器外科)
略歴
²⁰⁰⁰ 年 ³ 月 長崎大学医学部卒業
²⁰⁰⁰ 年 ⁶ 月 長崎大学医学部付属病院 第ニ外科
²⁰⁰¹ 年 ⁶ 月 県西部浜松医療センター レジデント
²⁰⁰² 年 ⁴ 月 県西部浜松医療センター 外科 専修医
²⁰⁰³ 年 ⁴ 月 国立村山医療センター 外科
²⁰⁰⁴ 月 ⁴ 月 長崎大学大学院 移植 ・ 消化器外科 医学博士課程
²⁰⁰⁷ 月 ⁴ 月 オランダ ・ フローニンゲン大学病院 肝移植 ・ 肝胆膵外科クリニカルフェロー
²⁰⁰⁹ 月 ⁴ 月 長崎県島原病院 外科
²⁰⁰⁹ 年 ⁹ 月 長崎大学大学院 移植 ・ 消化器外科 医員
²⁰¹⁰ 年 ² 月 長崎大学大学院 移植 ・ 消化器外科 医学博士課程 卒業
²⁰¹⁰ 年 ⁴ 月 エイズ予防財団 リサーチレジデント
²⁰¹¹ 年 ⁴ 月 長崎大学大学院 移植 ・ 消化器外科 助教
日本外科学会 認定医 ・ 専門医
日本消化器外科学会 専門医 ・ 消化器がん治療認定医
日本肝胆膵外科学会 高度技能専門医
Fellow of American College of Surgeons (FACS)
European Diploma in Transplantation Surgery(ヨーロッパ移植外科認定医)
FEBS (Fellow of the European Board of Surgery, FEBS)
日本肝臓学会 専門医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
日本移植学会移植認定医
日本肝胆膵外科学会 評議員
腹腔鏡下肝切除は 2008 年の World Consensus Meeting において、Pure
laparoscopy (Pure-lap)、Hand-assisted laparoscopy (HALS)、鏡視下と直視下の組
み合わせである Hybrid technique の 3 つに定義されている。HALS を応用した肝切除の利
点としては、触覚を利用した手術が可能であること、また肝臓の愛護的圧迫や把持が可能であ
り、鏡視下操作中に自在な Counter traction をかけることができるという点である。また、不慮
の出血へも迅速な対応が可能である。以上の利点を鑑みると、例えば、手術歴があり、周囲組
織と高度癒着が予測されるような症例での肝切除や肝臓の愛護的操作が重要である生体肝ド
ナー手術における肝授動等では HALS の応用が有用である。HALS は pure laparoscopy と
しての bridge というだけではなく、上記のごとく HALS が有用と思われる場面は多く、外科医はそ
の特徴をよく理解し、各手技を使い分けることが重要と考える。
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