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欧州連合統一特許(EU Unitary Patent)発効に向け大きく前進
-欧州連合統一特許裁判所本部の所在地がパリに決定-
〔概要〕
欧州連合(EU:European Union)のメンバー国は、2012年6月29日、EU統一
特許の第1審裁判所の本部(Central Division)をパリ(フランス)に置き、その支所
をロンドン(イギリス)及びミュンヘン(ドイツ)に置くことに合意しました。なお、ロンドン
支所は医薬を含む化学関連のケースに特化し、ミュンヘン支所は機械関連のケース
に特化することとなっています。
これにより、EU統一特許の導入に対する最後の障害が除かれ、長年にわたって
議論されてきたEU統一特許制度の成立への道が開かれました。
EU統一特許裁判所は、EU統一特許の有効性及び侵害に係る事項をすべて管
轄するもので、これにより、EU統一特許制度の参加国においては、同一の論争に関
する判断が各国間で異なるという問題だけでなく、同一の特許に関して複数の国で
特許訴訟が係属するという問題をなくすことができます。
<目 次>
1.欧州連合(EU)統一特許制度が発効するまでの今後の道筋
2.欧州連合(EU)統一特許制度の参加国
3.欧州特許と欧州連合(EU)統一特許との関係
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〔詳細〕
1.欧州連合(EU)統一特許制度が発効するまでの今後の道筋
欧州議会は2012年7月にEU統一特許制度の「パッケージ」に係る投票を行い、
その後、理事会が統一特許自体に関する規定及び統一特許の翻訳に関する規定を
採択します。
EU統一特許制度の参加国は2012年の後半に統一特許裁判所の合意書に署名
し、その後、少なくとも13の参加国が批准すれば統一特許制度は発効します。この
発効は2014年の早い時期になると予想されています。
2.欧州連合(EU)統一特許制度の参加国
〔EU統一特許制度の参加国及び非参加国〕
IS
統一特許制度の
参加国
FI
SE
RU
NO
EE
統一特許制度の
非参加国
(EUメンバー国)
LV
LT
DK
BY
IE
GB
PL
NL
BE
LU
FR
CH LI
MC
CZ
AT
SK
MD
HU
RO
SI HR
SM
IT
PT
統一特許制度の
非参加国
(EPC 締約国)
(非EUメンバー国)
UA
DE
RS
BA
ME
ES
MT
2
MK
AL
GR
BG
TR
(注)EUのメンバー国はすべ
て欧州特許条約(EPC)の締約
国です。
<EU統一特許制度参加国(25カ国)>
AT:オーストリア
FR:フランス
BE:ベルギー
GB:英国
BG:ブルガリア
GR:ギリシャ
CY:キプロス
HU:ハンガリー
CZ:チェコ
IE:アイルランド
DE:ドイツ
LT:リトアニア
DK:デンマーク
LU:ルクセンブルグ
EE:エストニア
LV:ラトヴィア
FI:フィンランド
MT:マルタ
NL:オランダ
PL:ポーランド
PT:ポルトガル
RO:ルーマニア
SE:スウエーデン
SI:スロヴェニア
SK:スロヴァキア
EU統一特許制度は欧州連合(EU)内の制度ですので、欧州特許条約(EPC)の
締約国であってもEUのメンバー国ではない国は、EU統一特許制度には参加しませ
ん(例えばスイス(CH)、トルコ(TR))。また、EUのメンバー国の中でも、イタリア(IT)
及びスペイン(ES)は、EU統一特許制度に参加しません。
3.欧州特許と欧州連合(EU)統一特許との関係
現在、欧州特許条約(EPC:European Patent Convention)に基づき欧州特
許を付与する欧州特許制度が存在します。この制度では、単一の出願(欧州特許出
願)を欧州特許庁(EPO:European Patent Office)に対して行うことによって、審
査を経て欧州特許が発行されます。
この欧州特許は単一の特許ではなく、EPC締約国で権利行使可能な各国特許の
束であり、各国での審査を経て付与される国内特許と同様に扱われます。したがって、
欧州特許に基づく特許権の有効性及び侵害についての争いは、各国の裁判所及び
/又は特許庁で処理されます。
一方、EU統一特許制度の下で付与される統一特許はこの制度に参加している25
カ国の全域で有効な単一の特許であり、その有効性及び侵害についての争いは上
述のEU統一特許裁判所で処理されます。
なお、統一特許制度の管理は欧州特許庁(EPO)が行いますので、EU統一特許
と欧州特許とは、権利が及ぶ地域が異なりますが、特許が付与されるまでの手続は
同じになります。
すなわち、EU統一特許と欧州特許の違いは特許が付与された後の段階にあり、
欧州特許庁によって特許を付与された特許権者は、EU統一特許制度に参加してい
る25カ国すべてにわたって有効なEU統一特許とするか、又は特許権者が指定した
3
欧州特許条約の締約国においてそれぞれ国内特許と同様に扱われる特許とするか、
選択することができます。
(参考)
EU Council Website > EU unitary patent – a historic breakthrough
http://www.european-council.europa.eu/home-page/highlights/eu-unitary-patent
-–-a-historical-breakthrough?lang=en
EPO Website > News & issues > News > 2012 > 20120629
http://www.epo.org/news-issues/news/2012/20120629.html
(IP情報室)
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