世界をリードするステークホルダーの動向

世界をリードするステークホルダーの動向
- プラットフォームの構築
⽥中 聡志
統括研究ディレクター/プリンシパル・フェロー
平成28年12⽉1⽇
COP22の特徴
 パリ協定の発効 (CMA1の開催)
 ノーマルCOP
 アクションCOP
 アフリカCOP
 ⽶国⼤統領選のタイミング
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成果1:パリ協定のルール策定の作業計画
成果2:パリで培われた政治的意志の再確認
気候及び持続可能な開発のためのマラケシュ⾏動宣⾔
 気候はかつてない割合で温暖化しており、対応する緊急の義務がある
 パリ協定の完全な実施の約束を再確認
 今年⽰された異例の気運を覆すことはできない、政府のみならず、科
学、ビジネス、あらゆるレベルでのグローバルな⾏動によって突き動かされ
ているもの
 最⼤限の政治的コミットメントを求め、⾏動と⽀援の強化を求め、⾮政
府主体の参加を求める
 経済の転換は、更なる繁栄と持続可能な開発の積極的機会
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成果3:ステークホルダーの積極的関与
「グローバル気候⾏動」の実施
 気候チャンピオンが中⼼となり、⺠間主体の取組を促進するイニ
シアティブ
 積極的に取り組むビジネス、⾃治体、NGOなどがその進展や課
題を持ち寄り、パリ協定実施のための実際の⾏動を促す
 COPで正式な位置付けを確保して、交渉にも弾みをつける
 8分野のテーマ別のセッションで議論
(森林、⽔、ビジネス・産業、⼈間居住(強靭性、建築物)、
エネルギー、運輸、海洋、農業)
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グローバル気候⾏動マラケシュ・パートナーシップ
 経済社会の転換に重要な役割を担うステークホルダーの参加を
得て、持続可能な開発の達成にも貢献するための⻑期的な
パートナーシップ
 気候チャンピオンが中⼼となり、ステークホルダー、UNFCCC関係
機関、国連関係機関と協⼒し、COP議⻑、国連事務総⻑、
UNFCCC事務局⻑とともに運営
 あらゆるステークホルダーが集まり、協⼒の強化、規模の拡⼤を
⽀援
 成功事例を⽰し、新たなイニシアティブやより野⼼的取組のプラッ
トフォームを提供
 進展を追跡し、成果と⾏動強化のオプションをCOPに報告
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官⺠連携イニシアティブの例
(森林、ビジネス、⼈間居住、エネルギー)
 Bonn Challenge(2020年までに
1.5億ha、2030年までに3.5億haの
森林破壊地を再⽣)
 Africa Palm Oil Initiative(パーム
オイル事業の低炭素化への移⾏を⽀
援)
 Collect Earth(衛星データ、ソフト
ウェア等の活⽤)
 Carbon Pricing Leadership
Coalition(カーボンプライシングの経
験共有)
 Science Based Targets
Initiative(企業による科学ベースの
削減⽬標設定を⽀援)
 Commitment for Adaptation
and Resilience(企業が気候リスク
評価、適応⽬標設定、適応事業⽀
援、情報開⽰)
 Global Alliance for Buildings
and Construction(建設セクターの
気候変動対策⽀援)
 RegionsAdapt(州・地⽅レベルでの
適応の経験共有、協⼒)
 Cities Climate Finance
Leadership Alliance(低炭素気候
強靭なインフラ投資⽀援を提案)
 RE100(100%再エネをコミット)
 EP100(エネルギー⽣産性倍増をコ
ミット)
 One for All(資産の1%をエネルギー
アクセス資⾦の増強に投資)
 SIDS Lighthouses Initiative(島
嶼国のエネルギーシステム⽀援)
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官⺠連携イニシアティブの例
(運輸、海洋、農業)
 Aviationʼs Climate Action
Takes Off(国際航空の排出削減)
 Global Fuel Economy(⾃動⾞燃
費改善による資⾦、資源の節約)
 Global Green Freight Action
Plan(グリーン貨物プログラム実施)
 Zero Emission Vehicle Alliance
(2050年までに乗⽤⾞販売を
100%ZEV化)
 Africa Package for ClimateResilient Ocean Economies(強
靭性強化、早期警戒システム開発等
の技術、資⾦⽀援)
 Strategic Action Roadmap on
Oceans and Climate(海洋と気候
変動に関する5カ年計画)
 Global Ocean Acidification
Observing Network(海洋酸性化
プロセスの理解向上)
 Adaptation of African
Agriculture to Climate
Change(⼟壌管理、⽔管理の改善
等による農業の適応強化)
 Milan Urban Food Policy
Pact(都市の持続的⾷料システム、
GHG排出削減、適応)
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⺠間主体の取組の強化(議論のポイント)
 事業者としての責任と影響⼒
 技術、資⾦、情報開⽰
 バリューチェーン、調達⽅針、多国籍企業
 リスクと機会
 将来のリスクの増⼤
 適応も含めた膨⼤な対策投資
 公的セクターとの連携
 官⺠パートナーシップ、環境整備、補助⾦改⾰
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トランプ次期⼤統領の波紋-⽶政府の反応
 ケリー国務⻑官
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 パーシング気候変動特使
⽶国でも転換が始まっており、ど
のような政策を選ぶかに関わら
ず、将来について確信
市場の動きのゆえに、これまで約
束した⽬標を達成してきたので、
それが覆されることはないと信じ
る
新政権のポジションを憶測するこ
とはできないが、いくつかの問題
については、就任後、選挙中と
は異なる⾒⽅をするもの
• 中国の代表は前進を⽰唆してい
た、パリ合意はそれぞれの開発経
路に応じたもの
• ⽶国でも、太陽光発電は、政策
的な選択ではなく、経済的な要
因で導⼊されている
• 新政権の取組を憶測することは
時期尚早。新政権がコミットメン
トをグローバルな利益の観点で検
討し、その政策に整合的にどう取
り組むか決定
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トランプ次期⼤統領の波紋-各国の反応
 オランド仏⼤統領
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パリ協定は、法的にも、事実上も、
⼼情的にも、覆すことのできない
⽶国は最⼤の経済国で、第2の
GHG排出国であり、交わしたコミッ
トメントを尊重すべき
気候変動の影響を受ける⽶国⺠
の利益であり、環境保全型への移
⾏に投資してきた⽶国企業の利益
であり、協定で動き出した都市や州
の利益でもある
⽶国とその新たな⼤統領との間で、
オープンにかつ尊敬⼼をもって、しか
し要求と決意をもって対話を主導
する
 解中国気候変動特別代表
• パリ協定における各国政府の取組は
今後も続けられるべき
• 気候変動対策は⼈類や⽂明の発展
に役⽴つ
• 中国、⽶国、その他の国との協⼒が
取組を強化することが必要
 バイニマラマ・フィジー⾸相
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トランプ次期⼤統領は、現在の考え
⽅を改めるべき
世界第2の排出国として、責任を取
り、リーダーシップを⽰すべき
フィジーに来て気候変動影響を⾒て
太平洋諸国のリーダーと議論するよ
う提案
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⽶国内での反応
 ⾃治体の動き
 ビジネスの動き
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気候変動の影響の顕在化
気候変動対策、事業の権限
(都市計画、交通、防災、再
エネ、燃費規制等)
• Business Backs LowCarbon USA(350以上の⽶
企業が低炭素政策の継続、パリ
協定の実施を呼びかけ)
•
•
国連プロセス参加の検討の動き
Under2 MOU(パリ協定実施
に向け、⼀⼈当たり排出量を2t
以下に削減する⾃体体の協⼒)
• 新政権の政策の如何にかかわら
ず、ビジネスとして気候変動対策
にコミット
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これまでの主張から想定され得る動き
 EPAの⻑官⼈事、組織の改変?
 CPPなど環境規制の廃⽌、後退?(Day One 6で⾔及)
 パリ協定(あるいは枠組み条約)からの脱退、あるいは事実上
の不実施?
 枠組み条約やGCFなどへの拠出の停⽌?
 国内の資源開発の加速?
 最⾼裁判事に保守系判事を任命?
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急激な政策変更をしないとも考えられる要因
 低炭素経済への移⾏は、既にマーケットの規定路線
 積極的に取り組む州政府の政策を左右できない
 新興国にとっても低炭素経済への移⾏は、国内的にもメリットが
⼤きく、むしろ新しい開発パラダイムとして新興国がリードする可
能性
 既存の規制の改廃は時間と検討を要し、新たな法案は議会の
協⼒を要し、早急には実現できない
 選挙公約とは異なり、⼤統領として責任ある⽴場に⽴てば、国
際社会との協調を考えざるを得ない
 勝利演説で国際社会との協調、共通点の模索に⾔及、NYTの
インタビューでは「関連性」を⽰唆し、open mindを強調
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国際社会への影響
 第2の排出国、国際交渉、国際協⼒の主導国
 他⽅、パリで形成された政治的気運が維持されている
 ビジネス、⾃治体、NGOなど⺠間主体の積極的な取組
 新興国にとっても低炭素経済への移⾏は、国内的にもメリットが
⼤きく、むしろ新しい開発パラダイムとして新興国がリードする可
能性
 いまや⽶国だけで世界全体の気運を覆すことはできない
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今後の取組の⽅向性
 科学に基づき⻑期的視点で着実な取組
 多元的なパートナーシップ
 パリ協定のルール策定は着実に推進
 ⽶国新政権の政策:「予断せず、ともに取り組む」
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