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平成 27 年度女性に対する暴力防止講演会 in 多久市
要旨
講師:伊田 広行 氏
(DV加害者プログラム・NOVO(ノボ)運営者、
神戸大学・立命館大学非常勤講師)
超リアルなデートDV・ストーカー対処方法を若者と一緒に考える
●ストーカー被害
ストーカーに関する警察庁の統計によると、被害者と行為者の関係で、約 5 割が交際相手(元
交際相手含む。
)
、これに配偶者(内縁・元配偶者含む。)を合わせると、約 6 割がカップルか元カ
ップルとなる。知人友人も約 1 割で、多くは見知らぬ人からの被害ではない。また、被害者の 8
割以上を女性が占める。
2014 年のストーカー被害件数は過去最多の 2 万 2,823 件(前年比 1,734 件増)
。ストーカ
ー規制法に基づく警告や禁止命令、被害者が警察に被害防止のための支援を申し出た件数も大き
く増えている。
●DV とストーカー
基本的に、DV は交際中や配偶者間に起こり、ストーカーは付き合っていない人との関係で起
こる。よって、別れでもめている場合、別れさせてくれないのは DV で、別れを告げた後もずる
ずると関わりを持つのはストーカーと言える。原則、相手が別れたいと言えば別れるしかない。
ただし、法律上、DV 防止法は配偶者や同棲している交際相手を対象にしているため、同棲し
ていない交際相手からの被害については、ストーカー規制法の対象となる。
●危険な恋愛観
壁ドンや俺様系と言われるストーリーが漫画やドラマで今も多く扱われているが、こうした恋
愛観があると、DV やストーカーを見抜けなくなる。
親や社会から十分に承認されず、自分に自信がない、居場所がない、さみしいと感じながら成
長する中で、交際相手から「愛している」などと言われると、暴力を振るうなどの難点があって
も目をつぶろうとなり、なかなか別れられないことがある。
また、別れの際に相手の同意がいるという考えは、原則、間違い。別れの理由を「あなたのよ
うにすばらしい人に私は不釣り合い」
、「あなたを好きだけど、今は一人になりたい」などと間接
的に伝えるのも、原則、間違い。
DV やストーカーを蔓延させないためには、危険な恋愛観や別れについての常識を変えること
が必要。
●シングル単位感覚
ひとり=自立を基本とする考え方、シングル単位の感覚を広げることが必要。シングル単位感
覚とは、自分自身を大切にしながら、家族や恋愛などの関係性を作っていくこと。
シングル単位的な関係であれば、結婚や恋愛の相手だけでなく、それ以外の関係性も発展的に
形成できて成長していくことができる。DV の関係では、常に相手から支配され成長の可能性を
奪われていると言える。
●別れについての考え方
別れに相手の同意はいらない。双方の合意があってこそ恋愛は成り立つので、片方がその意思
をなくせば自動的に恋愛は消滅(終結)する。いくら好きでも、相手から別れを告げられたら付
きまとってはならない。また、被害者には、相手が納得するまで説明する責任があるわけではな
い。別れに抵抗するのは DV である。
別れを切り出された側は、苦しくても耐えるしかない。
●恋愛するに際しての契約案
恋人と、自分の恋愛観、結びたい恋愛契約について話してみよう。希望を言うと怒られる、何
も言えないと感じるようであれば、既に DV 的な関係になっている可能性がある。
①恋愛では、相手の自己決定や自由を侵害しないで、お互いの違いを認めあう。
②相手の全てを知る権利はないことを確認する。
③片方が別れたいと言ったら、受け入れる。
④相手と自分の成長や安全(安心)を大切にする。
⑤相手の友人関係に干渉しない。関係性を広げ、交流することを応援する。
⑥相手の嫌がることを強制しない。相手をコントロールしない。
⑦性役割を押し付けない。
●リベンジポルノとセクストーション(性的脅迫)
リベンジポルノとは、別れた相手の裸の写真や動画を、相手の同意なくインターネット上など
に公開する行為を言う。日本では 2014 年 11 月にリベンジポルノ防止法が成立した。
セクストーションとは、交際していないネット上のみの関係で裸の写真や動画の情報を送って
しまった後、それをもって脅される(金銭を要求される)ことを言う。
もし、被害に遭った場合は、最寄りの警察に相談する。そして、被害に遭わないようにするた
めには、性的な写真は撮らない、知られてはまずいデータはネットにつながない、データはでき
るだけスマホや PC に残さないようにする。
(*この要旨は、講演内容の一部を佐賀県DV総合対策センターでまとめたものです。)