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日本消化器外科学会 第 67 回日本消化器外科学会総会【2012 年 7 月】
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要望演題 1 : 肥満に対する外科治療
司会:伊藤 壽記(大阪大学大学院生体機能補完医学講座)
日時:2012年7月18日(水)8:30∼9:30
会場:第3会場(富山国際会議場2F 203)
RS-1-1 高度肥満症に対する腹腔鏡下手術の検討
RS-1-2 当科における肥満症に対する開腹減量手術について
川野 雄一郎:1 太田 正之:1 岩下 幸雄:1 矢田 一宏:1 江口 英利:1 小
森 陽子:1 増田 崇:1 平下 禎二郎:1 北野 正剛:2 1:大分大学第 1 外科 2:大分大学
大城 崇司:1,2 齋木 厚人:2 吉田 豊:1 瓜田 祐:1 高木 隆一:1 北原 知
晃:1 白井 厚治:2 川村 功:1 岡住 慎一:1 加藤 良二:1 1:東邦大学佐倉病院外科 2:東邦大学医療センター佐倉病院 糖尿病・内分泌・代謝セ
ンター
【はじめに】わが国では 2000 年に肥満症に対する腹腔鏡下手術が導入され,2009 年
末までに 340 例がすでに施行されている.当科では 2005 年から腹腔鏡下調節性胃バ
【背景】病的肥満症に対する減量手術は国際的な動向をみると鏡視下手術が 9 割超だと
ンディング術 (LAGB) と腹腔鏡下スリーブ状胃切除術 (LSG) を施行してきた.その成
報告されている.本邦では胃縮小術が保険収載されているものの,腹腔鏡手術は対象外
果として 2010 年 1 月には LSG が先進医療として厚生労働省に承認されている.今
であり,またその手術点数は 21,700 点と,鏡視下に減量手術を行うにはコスト的にも
回,当科で施行した LAGB と LSG の成績を検討したので報告する.【方法】2005 年
困難な状況にある.しかしながら肥満と関連合併症を抱える患者の減量手術を求める声
8 月から 2011 年 11 月までに当科において LAGB31 例,LSG26 例,計 57 例を施行
した.適応は内科的治療無効の肥満関連健康障害を有する BMI ≧ 35kg/m2 の肥満症
患者とした.LAGB は Pars Flaccida 法で全例行い,LSG はブジーの替わりに内視鏡
(32Fr) を使用し補強付きの自動縫合器を用いて切離した.【結果】LAGB については
早期合併症として術後腹腔内出血を 1 例 (3%) に認め,また晩期合併症としてポート
の破損を 1 例 (3%) に認めそれぞれ再手術を必要とした.LAGB 後 3 年,5 年の減少
体重は 32kg,29kg であり,過剰体重減少率 (%EWL) は 56%,51% であった.LSG
については現在まで重篤な合併症を経験しておらず,LSG 後 2 年の減少体重,%EWL
はそれぞれ 46kg,67% であった.両手術術後,良好な体重減少により,肥満関連健康
障害,特に糖尿病やメタボリックシンドロームが高率に寛解治癒した.【結語】LAGB
や LSG などの腹腔鏡下肥満外科手術が,今後わが国においても普及していくものと思
も多く,当院では multidisciplinary team による多面的な評価後に,患者の同意を得
Gray Multiflex Retractor を開創器として用いた.スリーブ径は 36Fr.Alimentary
limb は 120-150cm, Biliopancreatic limb は 50cm とした.吻合は手縫いもしくは器
械吻合.
【結果】平均手術時間 133 分,出血量 120ml,術後在院日数は 13 日間.術後
合併症は上腸間膜静脈血栓症 1 例,スリーブリーク 2 例,吻合部血腫 1 例.スリー
ブリークについては内視鏡下ステント留置術を要し,また 1 例については腹腔鏡下ド
レナージ手術も行った.術後 15∼30Kg の体重減少があり,関連合併症の改善を認め
われた.
ている.【結論】肥満症に対する減量手術はデバイスの進歩もあり開腹手術でも行える
た上で開腹による減量手術を行っている.【対象】2010 年 7 月から,複数の肥満関連
合併症を有する 10 例の病的肥満患者に対して開腹減量手術を行った.男性 5 例,女
性 5 例.平均 40.8 歳.平均 BMI44Kg/m2 .術式はスリーブ 6 例,胃バイパス 2 例,
スリーブバイパス 2 例.【方法】左季肋下切開にて開腹.Alexis Wound Retractor と
と思われるが,深部操作については視認性が悪く非常にストレスフルである.術後合併
症への対応についても,非肥満患者では通常に行える処置も困難であることが少なくな
い.開腹減量手術後の効果についてはチームアプローチが機能しており良好であると考
えるが,今後も開腹による減量手術を継続していくべきかについては検討すべき課題で
ある.
RS-1-3 腹腔鏡下胃バイパス術と腹腔鏡下スリーブ状胃切除術の手技の
RS-1-4 腹腔鏡下スリーブ状胃切除術後における 2 型糖尿病の改善効果
要点
稲嶺 進:1 卸川 智文:1 間山 泰晃:1 嘉数 修:1 兼城 達也:1 砂川 宏
樹:1 當山 鉄男:1 座波 久光:1 大城 直人:1 大田 守雄:1 1:敬愛会中頭病院外科
佐々木 章:1 馬場 誠朗:1 大渕 徹:1 梅邑 晃:1 木村 祐輔:1 新田 浩
幸:1 大塚 幸喜:1 肥田 圭介:1 水野 大:1 若林 剛:1 1:岩手医科大学外科
【目的】減量手術は,継続的な体重減少という点で唯一有効な治療法として実施さ
【はじめに】内科的治療に抵抗性の高度肥満の急増に伴い世界中で外科治療が多く行
れてきたが,最近,減量手術により効果的に metabolic syndrome が改善されるこ
われている.また減量手術に端を発した metabolic surgery の概念が出現し糖尿病を
とが報告されるようになった.日本人は,欧米人と比較してインスリン分泌能が低
消化管手術で“治す”という消化器外科医が活躍できる新たな分野が開拓されつつあ
いことが指摘されており,個々の 2 型糖尿病 (T2DM) の病態を把握することは外科
るが,本邦はこの分野で立ち後れているといわざるを得ない状況である.【目的】2004
治療戦略で重要である.今回,食事摂取制限手術である腹腔鏡下スリーブ状胃切除
年 11 月から 7 年間に当院で施行した肥満外科手術は 28 例(腹腔鏡下胃バイパス術
術 (LSG) の減量成績と T2DM の改善効果について報告する.【方法】2008 年 6 月
20 例,腹腔鏡下スリーブ状胃切除術 8 例)であった.それらの手術のコツやピット
から 2011 年 11 月までに LSG 14 例を施行した.男性 9 名,女性 5 名,平均年齢
フォールを示し今後の本邦での発展に寄与したい.【手術手技】硬膜外麻酔なしの全身
を予防する.スリーブ状胃切除術でのポート位置もガストリックバイパスとほぼ同様で
37(24-52) 歳.平均術前体重 131(93-180)kg,平均 BMI 45(37-56)kg/m2 ,T2DM は 7
例 (50%),耐糖能異常は 4 例 (29%) に併存していた.T2DM の術前平均 C ペプチド
は 4.1 pmol/l であった.【成績】平均術後観察期間は 20 か月 (1-42 か月).平均 BMI
は,術後 1 か月 42(35-51)kg/m2 ,3 か月 36(28-45)kg/m2 ,6 か月 33(25-44)kg/m2 ,
1 年 32(25-44)kg/m2 ,2 年 28(23-38)kg/m2 ,3 年 26(25-27)kg/m2 .平均超過体重
減少率は,術後 1 か月 17(11-23)%,3 か月 38(17-51)%,6 か月 48(42-63)%,1 年
58(49-86)%,2 年 75(52-92)%,3 年 81(72-89)% であった.糖尿病・耐糖能異常の改
善率は 100%(空腹時血糖 100mg/dl 未満,HbA1c 5.8% 未満) であった.糖尿病患者
の術後 75gOGTT では,胃バイパス術で報告されているように GLP-1 の過剰分泌と
麻酔で完全腹腔鏡手術を行った.ファーストポートはブレードレス・トロッカーでのオ
プティカル法を用いた.15mmHg で気腹し 4 ポートから 5 ポートで手術を行った.
ガストリックバイパスはトライツから 50cm の空腸をエンドリニアステイプラーで離
断後,Roux 脚を 150cm とり腹腔鏡下に空腸空腸吻合を行った.胃上部小弯にエンド
リニアステイプラーを用いて Gastric pouch〔胃嚢〕を作成する.胃嚢と前結腸経路,
または後結腸経路で挙上した Roux 脚を腹腔鏡下に吸収糸での手縫い 2 層縫合で吻合
する.小腸間膜間隙,横行結腸間膜,Petersen’s space を非吸収糸で縫合し内ヘルニア
ある.幽門輪から約 5cm 口側から脾下極に至る大網を胃壁から超音波凝固装置を用い
インスリン分泌の増加を伴って,血糖値の低下が認められた.また,インスリン抵抗性
て剥離していく.胃小弯においた 36Fr. 経口胃管をブジーとしてエンドリニアステイ
指数は術後早期から改善,HbA1c は術後 1 か月で正常化して,全例がインスリン注
プラーを複数回使用して小弯側に胃管を作成する.ステイプルラインの止血及び縫合不
射・血糖降下薬から離脱できた.【結語】高度肥満症に対して LSG は有効な減量が得
全予防を目的に約 30cm に及ぶステイプルラインを吸収糸による漿膜筋層連続縫合を
られ,インスリン分泌能が保たれている T2DM 患者に対しては有用な減量手術と考え
行っていく.【結果】開腹へのコンバート 1 例.縫合不全なし.手術関連死亡なし.糖
られたが,その機序を検討する必要がある.
尿病寛解率 85%,術後 1 年以降の超過体重減少率は平均で 70% と良好であった.
第67回 日本消化器外科学会総会
日本消化器外科学会
The Japanese Society of Gastroenterological Surgery
日本消化器外科学会 第 67 回日本消化器外科学会総会【2012 年 7 月】
RS-1-5 腹腔鏡下スリーブ状胃切除術後の非アルコール性肝疾患改善の
2
RS-1-6 肥満症例に対する大腸癌腹腔鏡下手術
定量的評価
馬場 誠朗:1 佐々木 章:1 大渕 徹:1 梅邑 晃:1 木村 祐輔:1 新田 浩
幸:1 大塚 幸喜:1 肥田 圭介:1 水野 大:1 若林 剛:1 1:岩手医科大学外科
鈴木 英之:1 吉野 雅則:1 松信 哲朗:1 三浦 克洋:1 菅 隼人:2 松本 智
司:2 小泉 岐博:2 渡辺 昌則:1 内田 英二:2 1:日本医科大学武蔵小杉病院消化器病センター 2:日本医科大学外科・消化器外科
【目的】肥満症例に対する大腸癌腹腔鏡下手術は一般に 1)手術時間が長い,2)出血量
【目的】腹腔鏡下減量手術では,噴門部の視野確保のため肥大・硬化した脂肪肝の圧排
が多い,3)合併症発症率が高い,4)開腹移行率が高い,など短期成績について非肥満
操作ができるかが,手術の重要なポイントとなる.また,手術の難度評価と術後非アル
症例に比べて劣性が報告されている.また,長期予後に関しては無再発生存率が不良と
コール性脂肪性肝疾患の改善を評価することは,今後の肥満症に対する内科的そして
の報告も見られる.今回自験症例から肥満症例大腸癌腹腔鏡手術の特徴と対策を検討す
外科的治療戦略に重要と考えられる.今回,腹腔鏡下スリーブ状胃切除術 (LSG) 後の
る.
【対象】2000 年から 2009 年に行われた腹腔鏡下大腸癌手術 413 例を対象とした.
肝実質の硬度と肝容積を経時的に検討した.【対象と方法】LSG を施行した内科治療
【方法】全症例を BMI により 25 未満(非肥満群:A)
,25 以上 30 未満(肥満群:B)
,
抵抗性の高度肥満症 10 例を対象とした.男性 6 例,女性 4 例,平均年齢 36 歳,平
30 以上(高度肥満群:C)の 3 群に分け,各群について男女別,結腸・直腸別に手術
均 BMI 44.9 kg/m2 であった.術後超過体重減少率 (%EWL),肝線維化マーカー,腹
時間,出血量,開腹移行率,周術期合併症について検討した.下腹部手術の既往,大腸
部 CT による肝容積・L/S 比・脂肪量,生体内音響的特徴量を定量化する Acoustic
癌イレウス,多重癌は除外した.【結果】手術時間は女性直腸で C 群が B 群に比べて
Structure Quantification(ASQ-mode) による Focal Disturbance-Ratio(FD 比)(10
回測定した平均値) を術前 1 か月,術直前,術後 1・6 か月で測定した.【成績】平均
観察期間は 13.3 か月.平均 %EWL は,術後 1 か月 17.3%,3 か月 37.2%,6 か月
45.2% であった.術中肝生検では,全例単純性脂肪肝で炎症や繊維化は認めず脂肪沈
着は 30-60% であった.FD 比は B-mode では肝実質エコーレベルの若干の低下を
認めたが,主観的評価手法であり全例測定可能であった (術前 0.018 vs 術後 6 か月
0.102, p=0.013).また,L/S 比 (0.73 vs 1.20, p=0.027) であり,FD 比と同様な変化
を示した.平均肝容積 (術前/術後 1 か月) は,全体 2390/右葉 1569/左葉 821 ml vs
1825/1144/681 ml (p=0.018/ p=0.018/ p=0.018),脂肪量は,皮下 573/内臓 295 cm2 vs
477/241 cm2 (p=0.012/ p=0.011)であった.ヒアルロン酸,4 型コラーゲン 7S,AST
及び ALT には有意差は認めなかった.【結語】高度肥満合併脂肪肝は,LSG 後に肝実
質の硬度と肝容積の点から改善を認めた.また,ASQ 法は,定量的で CT 値ともパラ
有意に長く,男性直腸で A 群に比べて B 群が長かった.出血量では女性結腸で C 群
が A 群,B 群に比べて有意に多く,男性結腸で B 群が A 群に比べて多かった.開腹
移行率は全体で 10.4% であったが BMI の値が大きくなるほど開腹移行率も高くなる
傾向があり,女性結腸,男性直腸症例で C 群が A 群に比べて開腹移行率が高く,とく
に C 群では女性結腸・直腸 50%,男性直腸で 100% と高い率を示した.【結語】手術
時間,出血量,開腹移行率についてはほぼ BMI と正の相関があり,男女別,結腸・直
腸別に特徴がみられた.【対策】1)必要に応じて気腹圧を調整する.2)追加ポートに
よる視野展開.3)止血能力の高いエネルギーデバイスの使用.4)直腸牽引の工夫.な
どが有効と考えられる.手術操作中は出血をさせないような丁寧な操作,脂肪に隠れた
ランドマークとなる構造物を目標に膜を意識した精緻な手術が要求される.また開腹移
行に関しては早期判断が合併症発症率の低下につながると考えられ,早期の的確な判断
も重要と考えられる.
レルな変化を示し,高度肥満症の脂肪肝の非侵襲的評価方法として有用と考えられた.
第67回 日本消化器外科学会総会
日本消化器外科学会
The Japanese Society of Gastroenterological Surgery