High heat Resistance Amorphous Polymer

TECHNICAL NOTE
超高耐熱エンジニアリング・プラスチック
ポリエーテルサルホン
High heat
Resistance
Amorphous
Polymer
スミカエクセルPESに関するご注意
この資料の記載内容は現時点で入手できる資料、情報、データに基づ
いて作成しており、新しい知見により改訂されることがあります。
(1)取り扱い上の注意
次の事項はスミカエクセル PES の取り扱いの要点です。スミカエク
セル PES の安全な取り扱いにご活用下さい。なお、スミカエクセル
PES の取り扱い上の注意については製品安全データシートを別途作
成していますので、ご使用前に必ずお読み下さい。スミカエクセル
PES以外で貴社が用いる添加剤等の安全性については、貴社にて調査
下さるようお願い致します。
①安全衛生上の注意
スミカエクセル PES の乾燥、溶融時に発生するガスの眼、皮膚への
接触や吸入を避けるように気をつけて下さい。また、高温の樹脂に
は直接触れないようにして下さい。乾燥、溶融の各作業において
は、局所排気装置の設置や保護具(保護眼鏡、保護手袋等)の着用が
必要です。
②燃焼に関する注意
スミカエクセル PES は難燃性です(UL94 V-0 に該当)が、取り扱い、
保管は熱及び発火源から離れた場所で行って下さい。万一燃焼し
た場合には有毒ガスを発生する恐れがあります。消火には水、泡消
火剤、粉末消火剤が使用できます。
③廃棄上の注意
スミカエクセル PES は埋め立て又は焼却により処理できます。埋
め立てる時は、
「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に従って、公
認の産業廃棄物処理業者もしくは地方公共団体に委託して処理下
さい。焼却する時は、燃焼設備を用いて大気汚染防止法等の諸法令
に適した処理を施して下さい。焼却時には有毒ガスを発生する恐
れがあります。
④保管上の注意
スミカエクセル PES は直射日光、水漏れ及び湿気を避けて常温で
保管下さい。
(2)適合規格に関して
ス ミ カ エ ク セ ル PES は、UL94、UL746 等 の 米 国 Underwriters
Laboratoryが規定する規格や米国食品安全局(FDA)等の規格を取得、
スミカエクセルPES テクニカルノート目次
あるいは認可されている各種グレードがあります。詳細は本冊子を
ご参照頂くか、弊社までご連絡下さい。その他特殊用途への使用をご
1.
特徴とグレード構成
検討の際は、弊社担当までご連絡頂ければ、個別にご相談に応じま
1-1
PESの特徴
01
す。
1-2
PESのグレード構成
03
1-3
PESの一般グレード物性一覧表
04
(3)規制貨物等に関して
スミカエクセル、スミプロイの各グレードは、輸出貿易管理令第1の
2. 物性
1から15の項に該当いたしません。
2-1
PESの耐熱性
06
ただし、同令別表第 1 の 16 項 ( キャッチオール規制 ) には該当いたし
2-2
PESの機械的特性
08
ます。
2-3
PESの寸法安定性
10
(4)医療・食品工業・容器・雑貨分野へのご使用について
2-4
PESの難燃性
11
医療・食品工業・容器・雑貨分野へのご使用をご検討の際は、必ず
2-5
PESの化学的安定性
12
2-6
PESの電気的特性
17
事前に弊社カスタマーサポートチームにご連絡下さい。
(5)その他
3.
射出成形/2次加工
本資料に記載の数値は保証値ではありません。
3-1
PESの流動特性
18
ご使用に際しては知的財産権等にもご注意下さい。
3-2
PESの射出成形条件
22
3-3
PESの再生利用
25
3-4
PESの金型設計
25
3-5
PESの2次加工
27
4-1
PESの成形用グレード
28
4-2
PESのパウダーグレード
28
4.
TECHNICAL NOTE
用途
1.
PESの特徴とグレード構成
1-1 PESの特徴
はじめに
スミカエクセル PES(Polyethersulphoneの略称)は、ICI社のライセンスを受け、国産化した非晶性の耐熱樹脂で、以下の分
子構造を持っています。
[
O
SO2
]n
(ガラス転移温度Tg225℃)
スミカエクセル PES は、琥珀色を帯びた透明樹脂で、耐熱性、耐クリープ性、寸法安定性、難燃性、耐熱水性などの特徴を有
し、成形材料としては、リレー、バーンインソケットなどの電子部品、ICトレー、プリンターおよび複写機部品、滅菌が必要
な医療機器部品および歯科用備品、ページャーおよび携帯電話における LCD基板用フィルムをはじめ、種々の用途に展開
されています。
また、パウダーグレートも取り揃えており、航空機用途におけるエポキシ系複合材料の靭性付与剤、耐熱塗料、接着剤、医
療用や食品用に平膜および中空糸膜などの用途に幅広く展開されています。
スミカエクセル PES の特徴
耐熱性
熱変形温度は200∼220℃であり、連続使用温度は UL温度インデックスで180∼190℃に認定されています。
弾性率は−100∼200℃までの温度領域ではほとんど変化しません。特に 100℃以上では、
あらゆる熱可塑性樹脂より優れ
ています。
(図1-1)。また、成形時の熱安定性が優れるため、製品(成形品)に包埋されるガスは、他のエンプラ材料と比べ極
めて少ないレベルです。
(図 1-2)。
図1-1 曲げ弾性率の温度依存性
曲げ弾性率(MPa)
×103
20
スミカスーパー
E6008
15
VICTREX PEEK
450GL30
PPS
(GF40%)
10
スミカエクセル
4101GL30
VICTREX PEEK
450G
5
スミカエクセル
4100G
PC
0
−100
PSF
0
100
200
300
温度(℃)
図1-2 成形温度と成形品からの発生ガス量
発生ガス量(ppm)
100
80
PBT
PPS
60
40
スミカスーパー
E6008
20
(各温度で成形したダンベル型試験片を 120℃
×20hr 加熱した時に発生するガスをヘッドス
ペースガスクロマトグラフで分析)
スミカエクセル
3601GL20
0
200
250
300
350
400
450
成形温度(℃)
SUMIKAEXCEL PES
01
1.
PESの特徴とグレード構成
耐衝撃性
良好な耐衝撃性を持っており、ナチュラルグレードはスナップフィットも可能ですが、鋭いノッチに鋭敏なので設計上、
注意が必要です。
耐クリープ性
180℃までの温度領域では、熱可塑性樹脂の中で最も優れています。
光線透過率
耐熱エンプラの中では優れたレベルの光線透過率を有しています。
図1-3 PESの光線透過率
光線透過率(%)
成形品厚み1mm
100
PC
50
0
スミカエクセル
PES
PEI
400
500
600
700
800
波長(nm)
寸法安定性
線膨脹係数は小さく、その温度依存性が小さいことが特長です。特に、ガラス繊維強化系(4101GL30)の線膨脹係数は、
2.3×10-5/Kで、アルミニウムに近い値を 200℃近くまで保持しています。
図1-4 線膨脹係数の温度依存性
線膨脹係数(×10−5/K)
15
ポリアセタール
PPS(GF 40%)
10
ポリカーボネート
スミカエクセル
4800G
5
スミカエクセル
4101GL30
0
50
100
150
200
温度(℃)
難燃性
難燃剤無添加でUL94 V-0に認定されています。また、燃焼時の発煙量は、American National Bureau of Standards の試験
結果によれば、プラスチックの中では最も少ないことが知られています。
図1-5 米国NBSのスモークチャンバー試験結果
吸光度(補正値)
800
スミカエクセルPES
フェノール樹脂
PTFE
200
ポリカーボネート
PVC
300
ABS
400
ポリスチレン
500
ポリエステル積層
600
ポリサルフォン
700
100
(炎上状態 1/8"サンプル)
0
耐熱水性
加水分解を起こさず、160℃の熱水、スチーム下でも適用できます。ただし、吸水に伴う特性変化に注意が必要です。
耐薬品性
ガソリン、エンジンオイルなどのオイル、グリース類、およびクロロセン、フレオンなどの洗浄溶剤に耐えます。ただし、ア
セトン、クロロホルムなどの極性溶剤には侵されますので、
使用にあたっては注意が必要です。
一方、耐ストレスクラッキ
ング性は、非晶性樹脂の中で最も優れています。
(表 1)。
また、高温下でもアルカリ、酸に耐性があります。ただし、実用にあたっては実成形品を用いた事前評価が必要です。
02
TECHNICAL NOTE
表1-1 耐薬品性、耐ストレスクラッキング性
浸漬試験
耐ストレスクラッキング試験
4800G
4800G
ポリサルフォン
A
A
A
A
C
A
A
B
C
C
A
A
A
A
A
A
C
a
a
c
c
a
a
a
a
a
a
b
c
c
c
c
a
a
a
a
a
b
c
アンモニア
50%苛性ソーダ
濃塩酸
10%硝酸
濃硝酸
過酸化水素水
ベンゼン
キシレン
アセトン
メチルエチルケトン
ヘプタン
シクロヘキサン
グリセリン
エチレングリコール
四塩化炭素
ガソリン
酢酸エチル
A:
B:
C:
a:
b:
c:
影響なし。
若干影響あり。
使用に耐えない。
荷重が余程大きい場合を除いて使用しうる。
荷重が小さい場合のみ使用しうる。
使用に耐えない。
耐候性
スミカエクセル PES の耐候性は良好ではありません。カーボンブラック添加グレードは、屋外での使用が可能な場合があ
ります。
安全性
米国の FDA(Food and Drug Administration)に認可(4100G、4800G、5200G、および 3600P を除くパウダーグレード)され
ており、日本の食品衛生規格(厚生省告示 201 号)に適合しています。
1-2
PESのグレード構成
成形用グレード
非強化グレード、ガラス繊維強化グレードからなる標準グレードと、
摺動グレード、制電グレード、非強化グレードなどの
機能性グレードを取り揃えております。なお、機能性グレードは、スミプロイの商標で販売しています。
表1-2 成形用グレード
充填剤
グレート名
スミカエクセル
標準グレード
特徴
3600G
4100G
4800G
-
3601GL20
3601GL30
4101GL20
4101GL30
ガラス繊維20%
ガラス繊維30%
ガラス繊維20%
ガラス繊維30%
射出成形用高流動
射出、押出成形用標準
射出、押出成形用高分子量
射出成形用高流動
射出成形用高流動
射出成形用標準
射出成形用標準
パウダーグレード
分子量の目安となります RV
(還元粘度)の異なる各種グレードを取り揃えており、用途に応じて使い分けられます。
また、スミカエクセル PES の溶剤としては N- メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトア
ミド、γ-ブチルラクトン、塩化メチレン /1,1,2 トリクロロエタン=50/50(重量比)などが用いられます。
表1-3 パウダーグレード
用途
還元粘度
(*1)
(RV)
コンパウンド
3600P
0.36
◎
4100P
0.41
○
4800P
0.48
-
5200P
0.52
-
-
5003P(*2)
0.50
-
◎
グレート名
塗料
エポキシ強化剤
接着剤
膜
-
-
-
○
-
○
-
○
-
○
○
-
-
◎
◎
◎
-
(*1) 1(W/V)%PESのDMF溶液中での還元粘度。
(*2) 5003Pは、
100 重合繰り返し単位当たり0.6∼1.4 と、多くの末端水酸基を有しています。
SUMIKAEXCEL PES
03
1.
PESの特徴とグレード構成
1-3 PES の一般グレード物性一覧表
表 1-4 成形用グレード
スミカエクセル
3601GL20
4101GL20
3601GL30
4101GL30
非強化
ガラス
ガラス
ガラス /LCP
-
なし
20%
30%
20%
-
℃
350/360
350/360
350/360
360
比重
ASTM D792
-
1.37
1.51
1.60
1.51
吸水率
ASTM D570
%
0.43
0.36
0.30
-
%
0.60
0.30
0.20
0.39
%
0.60
0.40
0.40
0.60
MPa
84
124
140
104
%
40∼80
3.0
3.0
4.0
試験法
単位
充填材
-
-
添加量
-
標準成形温度
MD
成形収縮率
4100G
4800G
ES5340
住化法
TD
引張強度
ASTM D638
引張伸び率
曲げ強度 23℃
ASTM D790
MPa
129
172
190
138
曲げ弾性率 23℃
ASTM D790
GPa
2.6
6.0
8.4
7.6
アイゾット 6.4t ノッチ付き
衝撃値
6.4t ノッチなし
J/m
85
80
81
-
ASTM D256
J/m
破断せず
431
539
186
ロックウエル硬度
ASTM D785
R スケール
120
134
134
-
荷重たわみ温度 (DTUL 1.82MPa)
ASTM D648
℃
203
210
216
211
×10-5/K
5.5
2.6
2.3
-
×10 /K
5.7
4.8
4.3
-
UL94
-
V-0
V-0
V-0
-
厚み
mm
0.46
0.43
0.43
-
体積固有抵抗
ASTM D257
Ω・m
1015
1014
1014
-
耐アーク性
ASTM D495
sec
70
120∼180
120∼180
-
線膨張係数
(50∼150℃)
MD
-5
TD
難燃性
04
住化法
TECHNICAL NOTE
スミプロイ *
GS5620
FS2200
CS5600
CS5220
ガラス / フッ素
フッ素
炭素繊維
炭素繊維 / フッ素
40%
10%
30%
20%
370
340
370
370
1.66
1.42
1.47
1.45
0.29
0.39
0.40
0.30-0.40
0.14
0.60
0.10
0.18
0.30
0.60
0.25
0.35
123
77
176
134
4.5
15.0
4.0
5.0
159
118
255
176
8.6
2.5
15.2
7.6
71
78
59
-
363
980
510
400
123
118
122
124
218
203
217
210
1.5
5.9
1.2
1.9-2.8 5.3
6.2
5.0
5.0-6.3
V-0
V-0
V-0
-
0.75
0.43
0.53
-
1014
1014
108
-
-
80
-
-
*スミプロイ S シリーズはスミカエクセルをベースとした特殊コンパウンドです。
SUMIKAEXCEL PES
05
2.
PESの物性
2-1 PES の耐熱性
スミカエクセルPESについて設計に必要な熱的性質を表 1 に示しました。
表2-1 スミカエクセルPESの熱的性質
熱的性質
非強化
テスト方法
(ASTM)
テスト項目
単位
4100G
4800G
ガラス繊維強化
3601GL20
4101GL20
3601GL30
4101GL30
荷重たわみ温度(0.45Ma)
D648
℃
210
-
-
荷重たわみ温度(1.82Ma)
D648
℃
203
210
216
ヴィカット軟化点(1kg)
D1525
℃
226
-
-
ヴィカット軟化点(5kg)
D1525
℃
222
-
-
線膨脹係数 MD
D696
10-5/K
5.5
2.6
2.3
線膨脹係数 TD
D696
10-5/K
5.7
4.8
4.3
熱伝導度
C177
W/(m・K)
0.18
0.22
0.24
比熱
-
J/(kg・K)
1,121
-
-
温度インデックス
UL746
℃
180
180
190
連続使用温度
スミカエクセルPESは長期連続使用の指標となる UL 温度インデックスが 180∼190℃であり、非晶性樹脂の中では最も優
れています。
図 2-1 にスミカエクセル PES の引張強度の半減時間を示します、スミカエクセル PES の引張強度を半減させるために要す
る時間は180℃で20年間、200℃では 5 年間と推定されます。
図2-1 引張強度半減時間の温度依存性
時間
20 年
スミカエクセル 4800G
10 年
5年
1年
6ケ年
1ケ年
250
240
230
220
210
200
190
180
温度(℃)
弾性率の温度依存性
図2-2に曲げ弾性率の温度依存性を示します。弾性率は−100℃∼200℃までほとんど変化しません。特に、100℃以上では
結晶性樹脂の PBT、PPS 等のガラス繊維強化グレードよりもはるかに優れており、あらゆる熱可塑性樹脂の中で最高の部
類に属しています。
図2-2 曲げ弾性率の温度依存性
曲げ弾性率(MPa)
GF強化
×103
15
PPS
(GF 40%)
10
スミカエクセル4101GL30
ナチュラル
ポリカーボネート
(GF30%)
5
スミカエクセル 4100G
0
0
06
50
TECHNICAL NOTE
100
150
200
温度(℃)
エージング特性(空気中および熱水中)
熱エージング性
スミカエクセル PES を 150℃空気中にエージングした場合でも強度低下はなく、耐熱性に優れています。
図2-3 引張強度の 150℃空気中エージング特性
引張強度(MPa)
150℃
スミカエクセル4800G
100
75
50
1
1年
0
1ケ月
1週間
25
102
10
103
時間(日)
熱水性
スミカエクセル PES を水中(23℃)または熱水中(100℃)で無負荷でエージングした場合、引張強度はほとんど変化しませ
ん(図2-4)
。
衝撃強度は熱水中(100℃)では初期に低下を起こしますが、その後は十分に高い耐衝撃性を維持して安定しています(図
2-5)
。
図2-4 引張強度の水中におけるエージング時間依存性
引張強度(MPa)
100
100℃
23℃
75
50
1
1年
0
1ケ月
1週間
25
102
10
103
時間(日)
103
時間(日)
図2-5 衝撃強度の水中におけるエージング時間依存性
衝撃強度(MPa)
23℃
15
10
ノッチ先端半径2mm
10
1年
1
100℃
1ケ月
0
1週間
5
102
耐スチーム性(スチーム殺菌サイクルの影響)
3.2気圧スチーム圧
(143℃)
⇔真空乾燥
(室温)サイクル試験の結果、衝撃強度に変化は見られませんでした。
しかし、スミカエクセル PES を高温あるいは熱水中で使用する場合は、それぞれの用途に応じて実使用雰囲気下でテスト
を行うことが必要です。
SUMIKAEXCEL PES
07
2. PESの物性
2-2 PES の機械的性質
長期的変形
クリープ
実用部品の強度計算に当たって、標準テスト
(例えば ASTM)による強度・弾性率のみを使用することは避けなければなりませ
ん。最適デザインを決定するに当たっては、
クリープ特性と温度による特性変化を元に、使用条件下での成形品の寸法変化お
よび強度変化を考慮する必要があります。
図2-6に非強化グレード4800Gの 20℃および 150℃における引張りクリープ特性を示します。
図から明らかなようにスミカエクセル PES は耐クリープ性に優れています。
ナチュラルグレードでは 20℃で 20MPa の負荷で 3
年後のクリープ変形がわずか 1%であり、150℃では 10MPa の負荷でも3 年後のクリープ変形が 1%にすぎません。
図 2-7 にガラス繊維強化グレード
(3601GL30、4101GL30)の 150℃における曲げクリープ特性を示します。結晶性の PPS(ガラ
ス繊維40%強化グレード)
に比べ、
スミカエクセルPES は優れたクリープ特性を有していることがわかります。
図2-6 スミカエクセル非強化グレード
(4800G)
の
引張クリープ特性
図 2-7 スミカエクセルガラス繊維強化グレード
(3601GL30、
4101GL30)
の曲げクリープ特性
引張クリープ歪(%)
曲げクリープ歪(%)
2.0
2.0
1.5
20℃、39MPa
1.0
20℃、29MPa
150℃、49MPa
PPS(GF40%)
150℃、20MPa
1.5
PES(GF30%) 150℃、62MPa
1.0
150℃、10MPa
105
106
3年
1年
0
101
1日
20℃、20MPa
0.5
20℃、10MPa
102
103
104
107
108
時間(sec)
0.5
PES(GF30%) 150℃、37MPa
0
10−1
100
102
101
103
時間(hr)
衝撃強度
スミカエクセル PESは強靱な樹脂であり、優れた耐衝撃性を有
図 2-8 耐衝撃性
しています。
アイゾット衝撃強度(3.2t、
ノッチ無)
(J/m)
図2-8にアイゾット衝撃強度について他の耐熱樹脂と比較した
PEEK
(450G)
>2200
ものを示しますが、
ノッチなしのナチュラルグレードでは破壊
しないことがわかります。
GF強化
PES
(4800G)
>2200
部品設計に当って、鋭角部分や鋭角なネジ切りをなるべく作ら
ないことが大切です。
また、
スプルーやゲートをきれいに切断
したり、金型の表面をきれいにすることも応力集中を防ぎ、
ス
PEEK
(450GL20)
1000
ミカエクセルPES本来の強度を引き出せることになります。
図 2-10 に衝撃強度の温度依存性を示します。
スミカエクセル
PES
(4101GL20)
500
ポリアミ
ドイミド
PESは0℃以下の温度、たとえば、−100℃でも十分な衝撃強度
付加型
PPS
ポリイミド (GF40%)
を有していることがわかります。
図2-9 衝撃強度のノッチ先端半径依存性 20℃
(4800G)
図 2-10 衝撃強度の温度依存性
(4800G)
衝撃強度(J/m)
衝撃強度(J/m)
300
750
20℃、65%RHで
2週間調整
200
ノッチ先端半径
1mm
500
乾燥PES
100
250
0
0
0.5
1.0
1.5
2.0
ノッチ先端半径(mm)
08
TECHNICAL NOTE
0
ノッチ先端半径
0.25mm
−100 −80 −60 −40 −20
0
20
40
60
80
100 120
試験温度(℃)
ウエルド強度
ウエルド強度
射出成形をする場合、
ウエルド部(樹脂の合流点)は非ウエルド部より強度が低くなります。
ガラス繊維強化グレードのウエル
ド部の強度はガラス繊維の含有量に応じて低下します。図 2-11 には非ウエルド強度とウエルド強度の比較を、表 2-2 にスミカ
エクセルPES のウエルド部の引張強度を示します。
表 2-2 ウエルド部の引張強度
図2-11 ウエルド部と非ウエルド部の曲げ強度
曲げ強度(MPa)
( 単位:MPa)
非ウエルド部強度
ウエルド部強度
グレード
非ウエルド部
ウエルド部
4100G
84
81
4800G
84
82
3601GL20
124
67
4101GL20
124
68
4101GL30
140
61
200
100
PES
4100G
PES(GF30%)
4101GL30
PPS(GF40%)
スミカエクセル PES は他樹脂と比較して、ウエルド強度が非常に高いことがわかります。特に非強化グレードはウエルド
部の強化低下がほとんどなく、非ウエルド部と同等の強度を有しています。
4100G のウエルド強度
ウエルドライン
ウエルド部
ガス抜きなし
金型温度:120℃
64
3t
ゲート
38
64
(単位:mm)
表2-3 ウエルド強度
非ウエルド部
4100G
PES
アイゾット衝撃強度(J/m)
曲げ強度
(MPa)
樹脂
140*
ノッチなし
ウエルド部
140*
非ウエルド部
>1960*
0.25OR ノッチ
ウエルド部
非ウエルド部
ウエルド部
2156
68
49
117
68
29
4101GL20
190
110
4101GL30
180
110
362
98
68
29
170
70
166
29
49
19
PPS(GF40%)
411
*印=破断しない。
注1)
成形機:
住友重機械製
ネオマット N47/28
射出圧力:
130MPa
射出速度:
60%
シリンダ温度: 340 ℃(4100G)
50 ℃
(4101GL20・4104GL30)
射出時間:
10 秒
冷却時間:
20 秒 薄肉成形品のウエルド強度
図2-12 成形品肉厚とウエルド部の引張強度との関係
引張強度(MPa)
90
4100G
4800G
80
3601GL20
4101GL20
3601GL30
4101GL30
70
60
50
0
0.5
1.0
1.5
2.0
成型品肉厚(mm)
SUMIKAEXCEL PES
09
2. PESの物性
ウエルド強度の改善
ウエルドによる強度低下が実用上問題になる場合には、以下の方法により改善が図られる可能性があります。
●アニールによる改善
ガラス繊維強化グレードのウエルド部は、150∼180℃のアニール処理により 15∼20%向上します。
適切なアニール条件は0.5mm∼1.5mmt の肉厚の場合 150℃×20 分、
2mmt の肉厚の場合 180℃×180 分です。
表2-4 ガラス繊維強化グレードのアニールによるウエルド部引張強度の向上
(単位:MPa)
グレード
50℃
アニール前
180℃
20min
20min
180min
3601GL20
4101GL20
68
76
(113%)
76(113%)
77
(114%)
3601GL30
4101GL30
61
75
(123%)
75(121%)
75
(121%)
( )内は、
アニール前の強度を
100%とした場合の比率
●金型温度による改善
ウエルド強度は成形時の金型温度は高い方が強くなりますので、金型温度を 160∼180℃と高くして検討してくださ
い。
2-3 PES の寸法安定性
線膨脹係数
スミカエクセル PES は線膨脹係数が小さく、その温度依存性が小さいことが特徴です。図 1 に線膨脹係数の温度依存性を
示します。結晶性の PPS(GF40%)は温度上昇と共に線膨脹係数が大きくなりますが、非結晶性のスミカエクセル PES は、
温度に依存せず 200℃まで一定の値を示します。さらにガラス繊維強化の 4101GL30 は 2.3×10-5(/K)とアルミニウム並の
低い線膨脹係数を有することから、精密成形に適した材料といえます。
図2-13 線膨脹係数の温度依存性
線膨脹係数(×10−5/K)
15
ポリアセタール
PPS(GF40%)
10
ポリカーボネート
5
スミカエクセル 4800G
スミカエクセル 4101GL30
0
0
10
50
TECHNICAL NOTE
100
150
200
温度(℃)
形収縮率
スミカエクセル PES の成形収縮率は非強化品で 0.6%と小さく、かつ異方性がありません。ガラス繊維強化グレードは MD
方向0.2%、
TD方向 0.4%と異方性を有します。
図2-14 成形収縮率の比較
成形収縮率(%)
POM
非強化グレード
PBT
2.0
ガラス繊維強化グレード
PA
1.0
スミカエクセル
PES
PC
Uポリマー
変性
PPO
PPS
PSU
0
吸水による寸法変化
スミカエクセル PES は吸水性があり、成形直後の部品は、1.1%の吸湿による寸法変化は飽和状態(1.1%)で 0.15%と小さ
な値です。
図2-15 寸法変化の吸水率依存性
寸法変化(%)
50%RH、20℃の平衡点
水中、20℃の平衡点
1.0
水中、100℃の平衡点
POM
PA
0.5
スミカエクセル PES
PC
1.0
2.0
3.0 吸水率(%)
2-4 PESの難燃性
難燃性を他樹脂と比較するために、図 2-16 に限界酸素指数を示します。
さらにスミカエクセル PES は発煙量が非常に少ないことでも知られており、飛行機の内装部品にも採用されています。
図2-17にはAmerican National Bureau of Standards の発煙量試験結果を他樹脂と比較して示します。
また、スミカエクセル PES は成形時の腐食性のガスの発生、および成形品からのアウトガスの発生も非常に少ない樹脂で
す。
図2-16 限界酸素指数(ASTM D-2863)
図 2-17 発煙量
限界酸素指数(%)
吸光度(補正値)
100
米国NBSスモークチャンバー試験
炎上状態、1/8"サンプル
50
800
40
PEEK(450GL)
PES(4800G)
PTFE
PC
PVC
200
フェノール樹脂
400
ABS
PEEK(450GL20)
PES(4101GL30)
PES(4800G)
PC
ポリサルホン
PPS
0
付加型ポリイミド
10
ポリアミドイミド
20
ポリサルホン
600
30
0
SUMIKAEXCEL PES
11
2. PESの物性
2-5 化学的安定性
■スミカエクセルPESは、
加水分解を起こしません。
■強酸には侵される場合がありますので注意を要します。
■スミカエクセル PES は非結晶性ポリマーの中では、耐薬品性に優れますが、使用条件に応じて注意が必要です。ある種
の有機薬品、特にケトン、エステルにより、ストレスクラッキングを受けます。さらに、ジメチルスルホキシド(DMSO)、
芳香族アミン、ニトロベンゼン、およびある種の塩素化水素(ジクロロメタン、クロロホルムなど)のような極性の強い
溶剤には溶解します。
■脂肪族炭化水素、アルコール、ある種の塩素化炭素水素、一部の芳香族薬品、オイル類、グリースには優れた耐性をもち
ます。また使用条件次第では、たいていの漂白剤、殺菌剤の影響を受けません。
実用にあたっては、実成形品での評価が必要になります。
耐熱水性
加水分解を起こさず、160℃の熱水、
スチーム下でも適用できます。ただし、吸水に伴う特性変化に注意が必要です。
表2-5 熱水中、荷重下での耐性(熱水 90℃)
応力(MPa)
スミカエクセル PES
13
20
26
33
40
4100G
R56.5
R20.2
R15.3
R12.5
-
4800G
989.6
R65.5
R18.7
-
-
-
-
987.3
732.5
R25.5
-
-
R130
R87
-
4101GL30
(GF30%)
PPS
(GF40%)
表中[R=Ruptured、数字は経過時間]
PES4100G は、
13MPaの荷重下では、56.5 時間でクラック発生。
PES4101GL30 は、
26MPaの荷重下では、987.3 時間まで問題なし
(987.3 時間でクラックが発生することを意味しません)。
表2-6 140℃での耐熱水性(4100G)
期間(週)
引張強度(MPa)
変化率(%)
シャルピー衝撃強度(J/m)
変化率(%)
コントロール
81
100
382
100
2
88
108
176
46
7
93
114
137
35
14
92
113
137
34
29
81
100
137
37
42
84
104
147
39
●140℃でのスチーム滅菌
スミカエクセル PES を、140℃で 24 時間スチーム滅菌をしても引張強度は、なんら変化を示しません。重量増加は 1%で
す。
※4100Gよりも高分子量である 4800G の方が苛酷な条件の熱水に耐えます。
耐薬品性
ガソリン、エンジンオイルなどのオイル、グリース類、およびクロロセン、フレオンなどの洗浄溶剤に耐えます。ただし、ア
セトン、クロロホルムなどの極性溶剤には侵されますので、
使用にあたっては注意が必要です。一方、耐ストレスクラッキ
ング性、非晶性樹脂の中で最も優れています。
(表 2-7)
。
また、高温下でもアルカリ、酸に耐性があります。
12
TECHNICAL NOTE
表2-7 無機薬品に浸漬した場合の重量および引張強度の変化
薬品名
水
水
水
10%塩酸
濃塩酸
15%塩酸
10%硫酸
50%硫酸
50%硫酸
濃硫酸
25%硫酸
40%硫酸
40%燐酸
40%硫酸
40%燐酸
10%硝酸
濃硝酸
5%硝酸
10%苛性ソーダ
飽和苛性ソーダ
5%苛性ソーダ
飽和塩化カリ
飽和次亜塩素酸ソーダ
25%飽和次亜塩素酸ソーダ
10%水酸化アンモニウム
過酸化水素水
塩素化臭素水(PH4)
5%みょうばん
亜硫酸ガス
二酸化窒素
六弗化硫黄
塩素
グレード
4100G
4100G
4100G
4100G
4100G
4100G
4100G
4100G
4101GL30
4100G
4100G
重量変化
温度
(℃) 浸漬時間 重量変化
(日)
(wt%)
室温
1
0.43
50
- 100
- 室温
180
1.95
室温
180
2.19
90
- 室温
180
1.82
60
14
-0.39
60
14
-0.20
室温
90
-
4100G
60
14
- - 7.0
-15.6
- - - 6.3
- - - 引張強度変化(%)
浸漬時間(日)
30
90
180
-17.7
-16.6
-21.1
-13.5
-13.1
-17.7
7.4
9.8
9.2
-14.9
-17.8
-21.1
-6.3
-12.2
-21.1
- -40.0
-49.0
-13.2
-17.7
-23.4
- - - - - - - - - - 2.0
3.0
備考
360
- - 9.5
- - -53.0
- - - - 7.0
かなりクレーズ発生
- - 溶解
-
14
-0.55
- - - - - -
4101GL30
60
14
-0.37
- - - - - 4100G
4100G
4100G
4100G
4100G
4100G
4100G
4100G
4100G
4100G
4100G
4100G
4100G
4100G
4100G
4100G
4100G
室温
室温
90
室温
室温
90
室温
室温
90
室温
室温
90
90
室温
室温
室温
室温
180
180
180
120
180
120
120
30
180
180
30
28
2.27
1.79
0.82
1.46
1.42
1.63
2.52
0.33
8.49
1.19
-0.11
0.47
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -13.9
-4.8
- - -9.8
-10.0
- -9.8
-1.0
- -15.0
-4.5
2.4
-62.8
- - 0.0
-18.2
-11.0
3.0
- -15.8
-9.0
- - - -8.0
- - - - - - -29.0
-22.3
-14.2
2.0
- -19.6
-6.0
- - - -11.0
-34.0
-4.5
- - - - -24.0
- - 6.1
- - - - - - -12.0
- - - - 溶解
わずかにクレーズ
わずかにクレーズ
クラック発生
耐有機薬品
耐ストレスクラッキング性
引張衝撃試験片(1.6mm 厚)
に一定荷重をかけ、各薬品に最大 20 分間浸漬し、試験片の状態を凡例にしたがい示します。
表2-8 耐ストレスクラッキング性
応力 10MPa
応力 19MPa
4100G
4800G
4101GL30
ポリサ
ルホン
非強化
4100G
4800G
4101GL30
ポリサ
ルホン
非強化
アセトン
メチルエチルケトン
シクロヘキサノン
R1S
R1S
R1S
R4S
R2S
R19S
○
○
○
R2S
R1S
D
R1S
○
D
○
R18
D
R1S
R1S
R1S
R3S
R1S
R5S
○
○
○
R2S
R1S
D
R1S
R5
D
○
R20S
D
ベンゼン
トルエン
キシレン
C20
○
○
○
○
○
○
○
○
R1S
R1S
R4S
R4
R11
R15
D
D
D
R2
R6
○
C20
C20
○
○
○
○
R1S
R1S
R2S
R3
R3
R11
D
D
D
トリクロロエチレン
1.1.1 トリクロロエタン(クロロセン)
四塩化炭素
1.2 ジクロロエタン
パークロロエチレン
クロロホルム
トリクロロトリフルオロエタン(フレオン)
C20
○
○
R1S
○
R1S
○
C20
○
○
R1S
○
R1S
○
○
○
○
○
○
○
○
D
R8S
SLC20
D
C20
D
○
○
R3
R6S
D
R1S
D
○
D
D
D
D
D
D
D
R6
○
○
R1S
○
R1S
○
R11
○
○
R1S
○
R1S
○
○
○
○
○
○
○
○
D
R3S
R3
D
R8
D
○
R17
R1
R3S
D
R1S
D
○
D
D
D
D
D
D
D
メタノール
エタノール
n- ブタノール
エチレングリコール
2- エトキシエタノール
プロパン 1.2 ジオール
○
○
○
○
C20
○
○
○
○
○
SLC20
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
C20
○
○
○
○
○
R17
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
C20
○
○
○
○
○
C20
○
○
○
○
○
○
○
○
○
C20
○
C20
○
○
○
C20
○
R10
○
○
○
○
○
○
○
ヘプタン
酢酸エチル
ジエチルエーテル
二硫化炭素
○
R31S
C20
○
○
C20
S1.C20
○
○
○
○
○
○
R3S
C20
R8S
○
○
R1
R1S
○
○
○
D
○
R17S
C20
○
○
R7
C20
○
○
○
○
○
○
R1S
R7
R5S
SLC20
R4
R1
R1S
R19
○
R15
D
○
○
○
○
○
○
○
○
C20
○
○
○
○
○
○
○
○
○
C20
○
R3
○
R1
○
ポリエーテルサルホン
ガソリン
軽油
( 凡例 ) ○ ………… 試験片が20 分間浸漬後も全く変化しなかった。
C20 ……… 20 分間浸漬後、クレージングが起こった。
SLC20 …… 20 分間浸漬後、
わずかにクレージングが起こった。
ポリカー 変性
ボネート PPO
非強化 非強化
ポリエーテルサルホン
ポリカー 変性
ボネート PPO
非強化 非強化
R8 ………… 8 分間浸漬後、割れた。
R2S ……… 2 秒浸漬後、割れた。
D ………… 試験片が溶解した。
SUMIKAEXCEL PES
13
2. PESの物性
溶解性
スミカエクセル PESは極性ポリマーなので極性溶媒に溶けます。スミカエクセル PES の溶解性は、コーティング用途、溶剤
接着において重要です。
スミカエクセルPESの溶剤には下記のものがあります。
ジメチルスルホキシド、N.N-ジメチルホルムアミド、
N- メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド。
重量変化、引張強度変化
種々の有機薬品に浸漬した場合の重量変化を表 5 に示します。非溶媒に対しては浸漬温度、時間により、-0.5∼2%の重量
変化を起こしますが、寸法は安定です。部分溶剤に対しては一般に軟化、
膨潤し、重量は著しく増大します。
表2-9 有機薬品に浸漬した場合の重量および引張強度の変化
商品名
グレード
25%酢酸
重量変化
温度
(℃) 浸漬時間 重量変化
(日) (wt%)
引張強度変化
浸漬時間(日)
7
-
30
-
90
−3.00
備考
180
−27.00
360
−42.00
-
-
90
-
-
室温
30
0.31
-
-
-
5%フェノール
室温
90
6.66
−29.70
−35.70
−45.80
-
-
- 無水ヒドラジン
室温
14
3.50
-
-
-
-
-
軟化
氷酢酸
ベンゼン
室温
180
1.48
−3.20
−3.10
−8.60
キシレン
室温
7
0.49
-
-
-
360 日ではクレーズ発生
- −13.50
-
- -
-
- - ヘプタン
室温
180
0.21
−0.80
−1.00
−5.80
−10.00
-
シクロヘキサン
室温
120
0.12
-
-
-
-
-
- メタノール
室温
14
2.09
-
-
-
-
-
- −13.60
−18.70
-
- -
-
-
- エタノール
室温
180
1.46
−2.20
−5.00
エチレングリコール
室温
120
0.53
-
-
100
14
−0.36
-
-
-
-
-
- 150
14
0.06
-
-
-
-
-
- わずかにクラック
プロピレングリコール
4100G
グリセリン
ホワイトスピリット
130
7
−0.51
-
-
-
-
酢酸エチル
室温
60
10.70
+21.90
-
-
-
-
-
軟化
酢酸アミル
室温
120
−0.08
-
-
-
-
-
- ジエチルエーテル
室温
120
2.91
-
-
-
-
-
-
四塩化炭素
室温
180
0.44
−0.40
−0.30
−6.40
−11.30
-
- 室温
120
1.01
−10.20
−19.20
−32.80
−51.60
-
- Genklene
室温
120
1.13
-
-
-
-
-
- パークレン
室温
120
0.78
-
-
-
-
-
- North Sea Gas
室温
180
0.01
−0.90
−0.34
-
0.20
-
- エチレンオキサイド
室温
190
7.59
-
−14.00
-
−39.10
-
140kg/cm2 の応力下ではクラック
プロピレンガス
室温
180
0.21
−0.60
-
-
−0.11
-
- 1.1.1- トリクロロエタン
(クロロセン)
洗浄溶剤
特に塗装または接着などを行うときには、成形品表面のグリース、オイル、離型剤を除去することがしばしば必要になり
ます。そのときには、アセトン、メチルエチルケトンなどの洗浄溶剤の使用は避けてください。表 2-10 に、4100G への洗浄
溶剤の影響を示します。
表2-10 洗浄溶剤の影響
(4100G)
洗浄溶剤(還流下)
時間(分) 硬度(初期値=98) 重量増加(%)
Arklone P
2
10
30
98
98
98
0
0
0
Arklone L
2
10
30
98
98
98
0
0
0
Genklene
2
10
30
98
98
98
0
0
0
Trinklone A
2
10
30
98
98
98
0
1
1
Trinklone N
2
10
30
98
表面にクラック発生
表面にクラック発生
1
1
2
パークロロエチレン
2
10
30
98
98
98
0
0
0
2
10
30
91
溶解
溶解
3
塩化メチレン
14
TECHNICAL NOTE
耐オイル、ガソリン(およびトランスミッションオイル)性
表2-11 オイル、ガソリン中での重量変化(4100G)
環境
浸漬時間(日) 温度(℃) 重量変化(%)
亜麻仁油
180
室温
0.63
2
180
−0.10
シリコーンオイル(ICI 190)
180
室温
0.37
Veedol ATF 3433(トランスミッションオイル)
365
130
0.38
90
160
−0.55
0.30
Deep Frying Oil
Castrol ATF
Shell Diala トランスオイル
180
室温
Castrol ATF Solvent flushing Oil
90
室温
0.50
Duckhams 20/50 Oil
90
160
2.84
0.55
Gunk
98 オクタンガソリン
90
室温
180
室温
0.60
90
室温
0.20
7
室温
0
3 Star ガソリン
ASTM II Oil
図2-18 トランスミッションオイル中での機械的性質の変化(4100G)
保持率(%)
120
引張強度
100
80
引張衝撃強度
60
ノッチ付衝撃強度
40
1週間
1ケ月
(浸漬条件)
トランスミッションオイル VEEDOL ATF
温度:130℃
1年
時間
表2-12 ガソリン中での耐ストレスクラッキング性(室温)
応力(MPa)
グレード
環境
4100G
9
19
28
ディーゼルガソリン
20
20
20
37
20
4100G
97 オクタンガソリン
20
20
SLC20
C20
4100G
100 オクタンガソリン
20
R270h
C20
R19
4100G
パラフィン
2110h
2110h
2110h
2110h
4101GL30
97 オクタンガソリン
20
20
20
20
4101GL30
100 オクタンガソリン
360h
360h
20
20
R
:クラック
C
:クレーズ発生
SLC :わずかにクレーズ発生
h
:時間 特に単位のないものは分
(凡例)
20:20 分間問題なし
R270h:270 時間でクラック発生
2110h:2110 時間まで問題なし
表2-13 オイル(Vactralite Oil)中での耐ストレスクラッキング性(100℃)
グレード
応力(MPa)
ノッチ半径
(mm)
5
10
20
25
30
40
4100G
0.01
2000h
R150h
-
-
-
-
4100G
0.25
2300h
R110h
-
-
-
-
4100G
0.50
-
1450h
R330h
-
-
-
4100G
1.00
-
2000h
2000h
-
3000h
R790h
4100G
2.50*
-
-
2300h
-
2000h
R700h
4101GL20
0.50
-
-
-
1632h
R460h
R160h
*モールドノッチ
(*印のないものはマシーンノッチ)
(凡例)
20:20 分間問題なし
R270h:270 時間でクラック発生
2110h:2110 時間まで問題なし
表2-14 タービン・オイル中での耐ストレスクラッキング性(160℃)
応力(MPa)
オイル
ノッチ半径
(mm)
30
40
4800G
Aeroshell 555
2.5
3000h
R1h
-
-
4101GL20
Aeroshell 555
0.5*
250h
R3h
-
-
4101GL30
Aeroshell 555
2.5
- 3700h
-
-
Esso Turbo 2380
2.5
3200h
- -
-
4101GL30
Esso Turbo 2380
2.5
- - 1650h
R2h
4800G
Esso Turbo 2389
2.5
1400h
R20h
-
-
グレード
4800G
10
20
*モールドノッチ
(*印のないものはマシーンノッチ)
(凡例)
20:20 分間問題なし
R270h:270 時間でクラック発生
2110h:2110 時間まで問題なし
SUMIKAEXCEL PES
15
2. PESの物性
表2-15 オイルの機械的性質に及ぼす影響(4800G)
オイルタイプ
浸漬時間(週)
温度(℃)
ミネラルオイル
100
120
140
2
+
+
+
4
+
+
0
6
+
+
0
16
+
+
0
32
+
0
0
52
+
0
合成炭化水素油
100
120
140
+
+
0
+
+
0
+
+
0
+
+
0
0
0
−
0
0
ジメチル
120
160
+
+
+
0
+
0
+
0
0
0
0
0
120
140
160
180
+
+
+
+
+
+
0
0
+
0
0
−
+
0
0
−
+
0
0
−
+
メチルフェニル
クロロフェニル
200
160
180
−
0
−
−
0
−
−
0
−
−
0
−
−
0
−
−
0
−
エステルオイル
ジエステル
120
+
+
+
+
0
0
ポリエステル
120
160
180
+
0
0
+
0
−
0
−
−
0
−
−
−
−
−
−
−
−
ポリグリコールオイル
100
120
140
+
+
0
+
+
0
+
+
0
+
0
0
+
0
0
+
0
フッ化アルキルエーテルオイル
180
200
0
−
0
−
0
−
−
−
−
−
−
−
水性オイルエマルジョン
80
0
0
0
0
−
−
ミネラルベースオイル+シックナー
a)カルシウム石鹸
b)リチウム石鹸
c)リチウム鉛石鹸
d)カルシウムコンプレックス石鹸
e)
ナトリウム合成石鹸
f)ポリ尿素
80
120
120
120
120
120
+
+
0
+
0
0
+
0
0
+
0
0
0
0
0
+
0
0
0
−
0
+
−
0
0
−
−
+
−
−
0
−
−
−
−
−
ジエステル+リチウム石鹸
120
+
+
+
+
0
0
120
120
140
160
+
+
+
+
0
+
+
+
0
+
+
0
0
+
+
0
0
0
0
0
シリコーンオイル
シリコーンベースオイル
ジメチル + 変性アミド
メチルフェニル + リチウム石鹸
0
−
(凡例)
+ 耐性
0
−
優
良
不可
保持率
表2-16 種々のタービン・オイル中で一定変形を与えた場合の耐ストレスクラッキング性(4800G)
温度
室温
3%
150℃
変形量
2%
1%
0%
Aeroshell 500
0.05
R5
0.15
15
Aeroshell 555
5
R5
15*
15
Aeroshell 750
5
R5
15
-
Castrol 580
5
R5
15
-
Esso Turbo 25
5
R5
25
-
Esso Turbo 274
5
R5
R25**
15
Esso Turbo 2380
5
R5
R25**
15
Esso Turbo 2389
5
R5
-
-
オイル
160℃
(凡例)* 表面のクラックは樹脂の流れ方向に平行。
** 15分ではクラックは発生しなかった。
耐漂白剤、滅菌液
スミカエクセル PESは、
その濃度が特に濃くなければたいていの漂白剤および滅菌液の影響を受けません。滅菌液に浸漬後、
スミカエクセル PES 成形品を引き続いてスチーム滅菌または、乾熱滅菌する場合には、充分に水で洗浄しなければなりませ
ん。
表2-17 漂白剤、滅菌液の影響(4100G)
溶液
16
重量変化
(%)
引張強度変化(%)
10% Lissapol N
1.46
-11.6
2% Ivisol
1.35
-14.6
0.5% Gevisol
1.40
-14.8
2% Instrusan
1.42
-15.6
1% Bentenol
1.30
-13.6
1% Soilay 901-SD
1.36
-14.7
家庭用漂白剤
1.27
-
TECHNICAL NOTE
浸漬条件:室温 1カ月
75%以上
50%以上
50%未満
アニーリング
成形品中の残留応力は、
アニーリングによって緩和することができ、耐薬品性の向上に効果があります。
このことは、
トルエン
あるいはMEKに浸漬すれば容易に確認できます。
2-5 電気的性質
スミカエクセル PES は耐熱性の電気絶縁材料であり、
200℃を越える高温まで誘電率、誘電正接、絶縁抵抗に優れた特性を維持
しています。
誘電正接
スミカエクセル PESの誘電正接は20∼150℃の温度範囲でほぼ 0.001と低い値で安定しています
(図 2-19)
。
誘電正接の周波数依存性では109Hzでも0.003 程度です
(図 2-20)
。
図2-19 誘電正接の温度依存性
(60Hz)
図 2-20 誘電正接の周波数依存性
(室温)
誘電正接 (−)
誘電正接(−)
0.1
0.010
PC
PC
0.008
0.01
PPS
PES 4800G
0.006
ポリアミドイミド
ポリサルホン
PES 4800G
0.004
0.001
0.002
ポリサルホン
50
100
150
200
0
温度(℃)
PPS
10
102
103
104
105
106
107
108
109 1010
周波数
(Hz)
誘電率
スミカエクセル PESの誘電率は60∼109Hzにわたって一定(3.5)
であり、試料が吸水している場合でも少し高くなるだけです
(図2-21)
。
図2-21 誘電率の周波数依存性
誘電率
5
PPS
(GF40%)
4
PES 4800G
(乾燥)
PSU
3
PES 4800G
(未乾燥)
PC
2
10
102
103
104
105
106
107
108
109 1010
周波数(Hz)
体積固有抵抗
スミカエクセルPES の体積固有抵抗は 200℃においても 1011Ω・mと高い値を有しています(図 2-22)。
図2-22 体積固有抵抗の温度依存性
(分極時間 1000sec)
体積固有抵抗(Ω・m)
1017
PES 4800G
1016
PC
1015
1014
1013
1012
1011
0
50
100
150
200
温度(℃)
SUMIKAEXCEL PES
17
3. PESの射出成形 / 2次加工
3-1 PES の流動特性
流動性
スミカエクセル PES の流動性は、シリンダ温度、射出圧力および成形品肉厚の増加とともに大幅に向上します。一方、金型
温度の影響はあまり大きくありません。ただし、
スミカエクセル PES のガラス移転温度が 225℃と高いため、160℃以上の
金型温度を推奨します。金型温度が低い場合には、離型不良や、ガラス繊維強化グレードの場合はガラス繊維の浮出し、
ウ
エルド発生の原因となるので注意が必要です。
一般成形
肉厚3mmでの流動特性を中心に述べます。
シリンダ温度の影響
シリンダ温度を上げると樹脂の溶融粘度が下がり、流動性が向上します。20℃高く設定することによりバーフロー長が
30∼60%向上します。
図3-1 温度依存性
バーフロー長
(mm)
600
変性
PRO
PES 4101GL30
ポリサルホン
400
200
ポリエーテルイミド
(非強化)
ポリカーボネート
PES 4100G
PES 4800G
0
250
300
350
400
成形機:
射出圧:
射出速度:
金型:
型温:
住友重機製ネオマット N47/28
130MPa
12(中速)
3mmt×8mmw
120℃
成形温度(℃)
射出圧力の影響
射出圧力を 20MPa高く設定することによりバーフロー長が 10∼20%向上します。
一般には高圧成形を推奨しますが過充
填による離型不良や残留応力に注意が必要です。さらに二次圧の設定により適正条件を選定します。
図3-2 射出圧力依存性(4100G)
バーフロー長
(mm)
500
350℃
400
330℃
300
成形機:
射出圧:
射出速度:
樹脂温度:
金型:
型温:
200
100
住友重機製ネオマット N47/28
130MPa
9(中∼高速)
330 ℃、350 ℃
3mmt×8mmw
120℃
0
50
100
150
射出圧力(MPa)
射出速度の影響
射出速度は、バーフロー長には大きな影響を与えません。
図3-3 射出速度依存性(4100G)
バーフロー長
(mm)
樹脂温度
500
射出圧
400
350℃
130MPa
300
350℃
330℃
78MPa
130MPa
330℃
78MPa
200
成形機: 住友重機製ネオマット N47/28
金型: 3mmt×8mmw
型温: 120℃
100
0
15
18
30
TECHNICAL NOTE
45
60
(%)
射出速度
製品肉厚の影響
流動長は肉厚とともに急激に向上します。1.5mm 以上の肉厚では肉厚が 0.5mm 増すことにより、流動性は 40∼70%向上
します。
図3-4 肉厚の影響
(4100G)
バーフロー長
(mm)
600
400
成形機:
射出圧:
射出速度:
樹脂温度:
金型:
型温:
200
住友重機製 ネオマット N47/28
130MPa
60%
360℃
8mmw バーフロー
120℃
0
1.0
2.0
3.0
肉厚(mm)
薄肉成形
肉厚0.1∼0.7mm での流動特性について述べます。
シリンダ温度の影響
シリンダ温度の上昇で流動性は向上しますが、0.3mm 以下の肉厚ではその効果は小さくなります。滞留の影響を考慮す
れば380℃位までが適当です。
図3-5 シリンダ温度依存性(厚み 0.7mm)
図 3-6 シリンダ温度依存性(厚み0.5mm)
バーフロー長(mm)
バーフロー長(mm)
60
40
3601GL20
4100G
40
4100G
3601GL20
3601GL30
30
3601GL30
4101GL30
4101GL30
20
20
10
0
340
360
成形機:
射出圧:
射出速度:
金型:
型温:
380
成形温度(℃)
住友重機製 ネオマット N47/28
130MPa
75%
0.7mmt×8mmw
140℃
0
340
360
380
成形機:
射出圧:
射出速度:
金型:
型温:
成形温度(℃)
住友重機製 ネオマット N47/28
130MPa
75%
0.7mmt×8mmw
140℃
図3-7 シリンダ温度依存性(厚み 0.3mm)
バーフロー長(mm)
40
30
20
4100G
3601GL20
10
3601GL30
4101GL30
0
340
360
成形機:
射出圧:
射出速度:
金型:
型温:
380
成形温度(℃)
住友重機製 ネオマット N47/28
130MPa
75%
0.7mmt×8mmw
140℃
SUMIKAEXCEL PES
19
3.
PESの射出成形 / 2次加工
製品肉厚の影響
流動性は肉厚に依存しますので、製品設計に際してはご留意ください。
図3-8 肉厚依存性(4100G)
図 3-9 肉厚依存性(3601GL20)
バーフロー長
(mm)
80
バーフロー長
(mm)
80
樹脂温度
380℃
樹脂温度
380℃
60
60
360℃
360℃
40
40
340℃
340℃
20
20
0
0
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
肉厚(mm)
0
0.2
成形機:
住友重機製ネオマット N47/28
射出圧:
130MPa
射出速度:
75%
バーフロー幅:8mm
型温:
140℃
0.4
0.6
0.8
1.0
肉厚(mm)
成形機:
住友重機製ネオマット N47/28
射出圧:
130MPa
射出速度:
75%
バーフロー幅:8mm
型温:
140℃
射出圧力の影響
薄肉流動性は射出圧力の影響を比較的大きく受けます。130MPa 以上の射出圧力を推奨します。また、製品外観、残留応力
を考慮して適正圧力を選定します。
図3-10 射出圧力依存性(4100G)
図 3-11 射出圧力依存性(3601GL20)
バーフロー長
(mm)
80
バーフロー長
(mm)
60
60
80
0.7mmt
40
0.7mmt
40
0.5mmt
0.5mmt
20
20
0.3mmt
0.1mmt
0
100
130
160
0.3mmt
0
200
100
射出圧力(MPa)
成形機:
住友重機製ネオマット N47/28
射出速度:
75%
樹脂温度:
340℃
バーフロー幅:8mm
型温:
140℃
130
160
200
射出圧力(MPa)
成形機:
住友重機製ネオマット N47/28
射出速度:
75%
樹脂温度:
340℃
バーフロー幅:8mm
型温:
140℃
射出速度の影響
薄肉流動性は射出速度の影響をあまり受けません。射出速度が大きすぎるとヤケ等の不良原因となる可能性があります。
図3-12 射出速度依存性(4100G)
図 3-13 射出速度依存性(3601GL20)
バーフロー長
(mm)
80
バーフロー長
(mm)
80
60
60
樹脂温度
0.7mmt
360℃
40
40
340℃
360℃
20
0.5mmt
340℃
360℃
340℃
0
20
50
60
75
20
0.3mmt
0.3mmt
90
射出速度(%)
成形機:
住友重機製ネオマット N47/28
射出圧:
130MPa
バーフロー幅:8mm
型温:
120℃
TECHNICAL NOTE
0.5mmt
0.7mmt
0
50
60
75
90
射出速度(%)
成形機:
住友重機製ネオマット N47/28
射出圧:
130MPa
樹脂温度:
360℃
バーフロー幅:8mm
型温:
140℃
金型温度の影響
薄肉流動性は、金型温度の影響をあまり受けません。
ただし、
スミカエクセル PES のガラス転移温度が 225℃と高いため、160℃以上の金型温度を推奨します。金型温度が低い
場合には、離型不良や、ガラス繊維強化グレードの場合はガラス繊維の浮出し、ウエルド発生の原因となるので注意が必
要です。
図3-14 金型温度依存性(4100G)
図 3-15 金型温度依存性(3601GL20)
バーフロー長
(mm)
80
バーフロー長
(mm)
80
60
60
40
0.7mmt
20
0.5mmt
0.7mmt
40
0.5mmt
20
0.3mmt
0.3mmt
0
90
120
150
金型温度(℃)
0
100
130
160
金型温度(℃)
成形機:
住友重機製ネオマット N47/28
射出圧:
130MPa
射出速度:
75%
樹脂温度:
360℃
バーフロー幅:8mm
成形機:
住友重機製ネオマット N47/28
射出圧:
130MPa
射出速度:
75%
樹脂温度:
340℃
バーフロー幅:8mm
粘度特性
見掛けの溶融粘度は以下のようになっています。
図3-16 金型温度依存性
図 17 見掛けの溶融粘度のせん断速度依存性
見掛けの溶融粘度(Pa・s)
見掛けの溶融粘度(Pa・s)
4
10
2
せん断速度=9.8×10 sec
−1
104
360℃
4101GL30
4101GL30
3
103
10
4800G
4100G
3600G
4100G
3600G
2
10
4800G
102
1
10
320
340
360
380
400
420
温度(℃)
101
102
103
104
105
せん断速度(sec−1)
SUMIKAEXCEL PES
21
3. PESの射出成形 / 2次加工
3-2 PES の射出成形条件
射出成形機の選定
スミカエクセル PES は、通常のインラインタイプの射出成形機やプランジャー(プリプラ)タイプの射出成形機で成形す
ることが可能です。
スクリュ、シリンダ
●スミカエクセルPESのフィラー強化グレードは、ガラス繊維などを充填しているため、耐摩耗仕様の材質が好ましい。
●スクリュデザインは、せん断発熱量が少ない標準的なフルフライトタイプが適している。サブフライト付きスクリュや
高混練スクリュの使用は、樹脂の滞留やせん断発熱により樹脂温度が 400 ℃以上になり、
好ましくありません。
以下に代表的なスクリュデザインを示します。
●L/D スクリュの長さ
(L)/スクリュの径(D)=20 前後が好ましい。
●圧縮比 圧縮比=2∼2.2前後が好ましい。
●各ゾーン
供給ゾーン:55%前後
圧力ゾーン:25%前後
計量ゾーン:20%前後
●スクリュヘッドは、逆流防止機構付きスクリュヘッドを推奨します。
ノズル
●材質は、スクリュ、シリンダに準じます。
●オープンタイプのノズルの使用が適している。シャットオフノズルは、デッドスペースが多く樹脂が滞留しやすいので
好ましくありません。
●ノズルヒーターは、独立した温度制御器を使用し、制御性が良好な PID 制御方式が好ましい。
●延長ノズルを使用する場合は、温度分布が均一になるように十分考慮されたものを使用します。
射出ユニットおよび制御系
●スミカエクセルPESは溶融粘度が高いため、射出圧力が 200MPa 以上の成形機が好ましい。
●スミカエクセルPESは溶融粘度が高いため、計量時のトルクが大きく、標準よりも高出力タイプを推奨します。
成形機容量
●製品の大きさにもよるが、計量値が全射出容量の 1/3∼3/4 となるようなシリンダ径と型締め力の組み合わせとなるよ
う選定することが望まれます。計量値が小さいと、無用な樹脂滞留から、種々の成形不良となることがあるため注意し
てください。
予備乾燥
スミカエクセル PES は吸水性があるため、十分乾燥する必要があります。熱風循環式オーブン、除湿乾燥機を使用し、160
∼180℃で5∼24時間乾燥してください。棚段式オーブンを用いる場合は 50mm 以下の厚さに広げ、乾燥してください。
特
に大型成形品を成形する際には 180℃での乾燥をお奨めします。
また、非強化品や大型成形の場合、除湿乾燥機を使用することをお奨めします。ホッパードライヤを使用する場合は、十分
な容量があり、熱容量の大きいものが必要です。予備乾燥が不十分な場合、
成形品表面にシルバーストリーク・フラッシュ
マーク等が現れることがあります。上記のような現象が発生した場合、
さらに乾燥が必要です。
スミカエクセルPESは加水分解しないため上記の条件下での乾燥による劣化はありません。
図3-18 4100Gの乾燥曲線
吸水率(%)
0.20
0.15
0.10
160℃
0.05
0.00
0
22
180℃
10
TECHNICAL NOTE
20
30
乾燥時間(hr)
成形条件
スミカエクセルPES の標準的な成形条件を示します。
3600G
4100G
グレード
4800G
ガラス繊維充填系
160∼180℃×
5∼24hr
160∼180℃×
5∼24hr
160∼180℃×
5∼24hr
後部
300∼340
320∼340
300∼340
中央部
320∼370
330∼370
320∼370
前部
330∼380
340∼390
330∼380
ノズル
330∼380
340∼390
330∼380
金型温度(℃)
120∼180
120∼180
120∼180
射出圧力(MPa)
100∼200
120∼200
100∼200
乾燥条件
シリンダ温度(℃)
保持圧力(MPa)
射出速度
スクリュ回転数(rpm)
スクリュ背圧(MPa)
50∼100
80∼150
50∼100
低速∼中速
低速∼中速
低速∼中速
50∼100
50∼100
50∼100
5∼10
5∼20
5∼10
樹脂温度
樹脂温度として 330∼380℃を推奨します。スミカエクセル PES は溶融粘度が高いため、せん断発熱によりシリンダ温度
設定値に比べ樹脂温度が高くなる傾向があり、
40℃以上差が生じる場合があります。
樹脂温度を確認しながら成形を行う
必要があります。
図3-19 PESの流動長
1mmt 流動長(mm)
300
200
PBT
PES 3600G
PPS
100
PC
PEI
PSU
PES 4100G/
PES 3601GL20
0
250
300
350
400
成形温度(℃)
金型温度
金型温度は表面温度で 120∼180℃になるように設定してください。また、金型表面の温度分布が小さくなるように設計
してください。
金型温度が低すぎると残留応力による成形品の反りやクラック(割れ)が発生します。ガラス繊維グレードではガラス繊
維の浮き出しの原因になります。金型温度を高く設定することにより、残留応力の少ない成形品が得られます。ただし、金
型温度が高すぎると、成形品取り出し時の変形の原因となります。
加熱方法としては、ヒータ方式・オイル温調方式のいずれも使用できますが、複雑形状金型、深物金型およびスライドコ
アのある金型では、オイル温調方式を使用し、金型温度分布をできるだけ小さくしてください。
特に大型成形の場合や非強化品を使用する成形の際には、金型温度に十分な注意を払う必要があります。
射出圧力、保持圧力
一般的にスミカエクセル PES の成形では高い射出圧力が要求されます。薄肉成形品やガラス充填グレード、流動長の大き
い成形品は、150MPa 以上の射出圧力が必要です。
保持圧力は射出圧力の 1/2∼1/3 に設定することを推奨します。保持圧力は低い方が残留応力の少ない成形品を得られま
す。
SUMIKAEXCEL PES
23
3. PESの射出成形 / 2次加工
射出速度
スミカエクセルPESは一般的に低速∼中速の射出速度が適していますが、成形品形状により最適な射出速度は違います。
スミカエクセル PES は溶融粘度が高いため、速すぎる射出速度ではせん断発熱やエアの断熱圧縮によるヤケやシルバー
の原因になります。一方、薄肉成形品(1mmt 以下)
や流動距離の長い成形品では、速い射出速度が必要になります。
一般的には、射出速度を低速にした方が、残留応力の少ない成形品が得られます。
スクリュ回転数、背圧
せん断発熱による樹脂温度上昇を防ぐため、スクリュ回転数は 50∼100rpm を推奨します。
適当な背圧をかけることにより、均一な溶融状態となります。背圧は 5∼10MPaが好ましく、分子量の高いグレードは、高
めの背圧を設定してください。ただし、高すぎると樹脂の加熱や過負荷等の問題がおこる可能性があります。
パージング
パージ材としては、MFR0.05 程度の高分子量ポリエチレン、またはポリカーボネート、好ましくはそのガラス繊維強化グ
レードが適しています。
シリンダに滞留している樹脂を射ち切った後に、シリンダ温度を 280∼300℃に設定し、
340℃以下の温度になってから高
分子量ポリエチレンを投入し、設定温度になるまでパージを続けます。パージ後にスミカエクセル PES を投入する場合に
は、シリンダ内に滞留しているパージ材を射ち切った後、シリンダ温度を比較的低温(300∼320℃)に設定し、この温度で
シリンダをスミカエクセル PES で十分に置換した後にシリンダ温度を成形温度まで上昇させてください。シリンダ温度
を成形温度まで上昇させてからスミカエクセル PES を投入した場合はパージ材のシリンダ内での滞留やパージ材の熱劣
化が起きやすくなります。これらは成形不良を引き起こす原因となります。
成形を一時休止する場合には、樹脂の熱劣化を防止するためシリンダ温度は 250∼260℃に設定してください。樹脂温度
が 250℃未満になりますと、スクリュ表面やシリンダ内壁を損傷したり、成形再開後の異物発生の原因になる恐れがあり
ます。長時間休止する場合にはシリンダ内をパージ材でパージしてからシリンダ温度を下げてください。
パージ方法
スミカエクセルPESご使用時のパージ方法について、説明いたします。
推奨パージ材:MFR0.05 程度の高分子量ポリエチレン、またはポリカーボネート、好ましくはそのガラス繊維強化グレー
ド
●加工温度が高いため、
発煙、ガス噴出、樹脂の飛散等があることを十分ご考慮ください。
●パージ材をシリンダ内で滞留させないようご注意ください。
1 成形終了
先行樹脂(ホッパー内、
シリンダ内)を射ちきる。
シリンダ温度を280∼300℃に設定する。
2 パージ材投入
340℃以下の温度になってからパージ材を投入し、設定温度になるまでパージを続ける。
パージ材射ちきり後、
ポリカーボネート使用の場合にはポリエチレンに置き換える。
3 終了操作
電源OFF(降温途中で可)
スミカエクセルPESへの切り替え
24
1 成形終了
先行樹脂(ホッパー内、
シリンダ内)を射ちきる。
2 シリンダ昇温
スミカエクセルPESの成形温度に設定
3 樹脂置き換え
スミカエクセルPESで十分に置換後、成形開始
TECHNICAL NOTE
3-3 PESの再生利用
バージンペレットに再生ペレットを混合させる場合は、グレードおよび用途により混合比の調整が必要です。
各グレード毎の再生ペレットの混合可能な割合を表 1 に示します。
表3-18 再生ペレットの推奨混合割合
グレード
再生ペレットの割合(%)
4100G / 4800G
30 以下
3601GL20 / 4101GL20
20 以下
3601GL30 / 4101GL30
10 以下
非強化グレードは、再生ペレットを過剰に使用すると、製品の着色が強くなり、脆くなる可能性があります。また、ガラス
繊維強化グレードは、再生の際にガラス繊維長が短くなり、機械的強度の低下を起こすため、混合割合は制限されます。表
2に各グレードの再生使用割合(再生繰り返し回数)と引張特性の変化を示します。
表3-19 非強化グレードおよびガラス繊維強化グレードの再生使用割合と引張特性
4100G / 4800G
グレード
再生ペレット割合(%)
物性
再生くり返し
回数
バージン
1
2
3
4
5
30
引張強度
(MPa)
86
87
89
88
88
89
3601GL20 / 4101GL20
100
破壊の態様
引張強度
(MPa)
延性
延性
延性
延性
延性
延性
86
87
87
87
88
87
30
破壊の態様
引張強度
(MPa)
延性
延性
延性
脆性
脆性
脆性
126
126
125
126
124
122
100
破壊の態様
引張強度
(MPa)
破壊の態様
延性
延性
延性
延性
延性
延性
126
121
116
109
102
98
延性
延性
延性
延性
延性
延性
3-4 PESの金型設計
スミカエクセル PES は、溶融粘度が高く、成形収縮率が小さいため、金型の設計にあたって、以下の点に留意してくださ
い。
スプル
●長さはできるだけ短く、テーパーは大きく (∼5゚)
とることが好ましい。
●スプル抜けを良くするため、図に示すようなスプルロックを設けることが望ましい。
アンダーカット
Zピン
スプルロック
テーパー
ランナ
●太く短かくする。流動性を考慮して決定する。
●断面形状は、円形もしくは台形。
●ゲートバランスを取ることが必要である。
B
A
10°
10°
E
円形
C
D
台形
準円形
ランナ断面寸法例(mm)
A
B
C
D
E
>4
>3
>3
>4
D/2
SUMIKAEXCEL PES
25
3.
PESの射出成形 / 2次加工
ゲートシステム
サイドゲート
●矩形ゲートは、ランド長さを短く、深さを深くすると効率的です。ゲート深さは成形品肉厚 ×0.7 を目安とし、ランド長
さは1mm以下が好ましい。
深さ
PL
幅
ランド<1mm
ピンポイント/サブマリンゲート
●ゲート径は 0.8∼1.2mmφ、
ゲートランドは 1mm以下が望ましい。。また流動距離が長くなる場合は、ゲート径を大きく
するより、多点ゲートにする方が望ましい。
30∼45°
PL
ランド<1mm
(サブマリンゲート例)
フィルムゲート
●ゲートの厚みは、成形品肉厚 ×0.5 が好ましく、ランドは 1mm 以下が好適です。
<1mm
PL
抜きテーパー
●スミカエクセル PES は成形収縮率が小さいため、浅いものでも 1゚(1/60)
∼2゚(1/30)の抜きテーパーをとることをお奨
めします。深いものはより大きくとることを推奨します。
●なお、薄肉成形品は過充填になりやすいため、抜きテーパーを大きめにとることを推奨します。
また、ガラス繊維強化グレードも抜きテーパーを大きめにとることを推奨します。
●製品の形状により、十分な抜きテーパーが取れない場合は、スライドコア、突出し方式を工夫する必要があります。
エアベント(ガス抜き)
●スミカエクセル PES は、溶融粘度が高いため、1/100∼5/100(mm)程度のエアーベントを設置してもバリは発生しにく
い。
●薄肉成形品ではエアーベントの設置が望ましい。
金型材質
●試作および小ロットの成形に対しては、機械構造用炭素鋼(S55C)が使用できますが、摺動部を有する場合には焼き入
れを推奨します。
●量産および高寸法精度が要求される場合には、より強靱な、クロムモリブデン鋼(SCM3,4)合金工具鋼(SKD11,61)の使
用を推奨します。
●上記以外の材質をご使用される場合、事前に問題が無いか十分にご検討ください。
(金型材質として Cu 系アロイ等は推
奨できません。)
26
TECHNICAL NOTE
3-5 PES の2次加工
接着剤
スミカエクセルPES は市販の一般的な接着剤(例、表 3-20)が使用できます。
表 3-20 接着剤
種類
名称
メーカー
アラルダイト AW136、AV138
2 液タイプ
エポキシ系
1 液タイプ
ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ
エコボンド 104、144B
エマーソン&カミングジャパン
アミコン 316
グレースジャパン
スミマック ECR9000 系
住友ベークライト
アラルダイト XN1244
ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ
テクノダイン AH-3063R
田岡化学
ゴム系
ハマタイト PL605-50
横浜ゴム
ポリイミド
サーモケット CS-170
東レ
表3-21 各接着剤の接着強度
(単位:MPa)
接着剤
キュア条件
4100G
アラルダイト AW136、AV138
120℃×1hr
3.0
−
エコボンド 104
180℃×1hr
5.4
8.8
エコボンド 144B
150℃×1hr
2.0
3.5
アミコン 316
150℃×1hr
3.2
7.4
6.7
スミマック ECR9000 系
4101GL30
100℃×1hr
4.6
ハマタイト PL605-50
250∼300℃×5min
13.0
−
サーモケット CS-170
70℃×1hr→180℃×3hr
4.1
8.1
超音波溶着
スミカエクセルPES は非晶性の樹脂であるため、スミカエクセル PES 同士の超音波溶着は比較的簡単に行うことができま
す。溶着の組み合わせは、
1.ナチュラルグレード同士
2.ナチュラルグレードと繊維強化グレード
3.繊維強化グレード同士
の3通りが考えられますが、1 が最も容易で、
かつ溶着強度も大きくなります。
しかしながら、
2、3のケースでも十分な溶着
強度を示し、結晶性の樹脂(例えば PPS)
に比べて溶着性は優れています。
超音波溶着の条件は、ホーン出力、製品形状、溶着面積およびグレード等により変化しますが、
標準的な条件は以下のとお
りです。
表3-22 超音波溶着の標準条件
圧力(MPa)
30∼60
振幅(μm)
50∼80
溶着時間(sec.)
0.1∼2.0
超音波溶着後のせん断強度の測定結果を以下に示します。試験方法および試験片は以下のとおりです。
超音波ウエルダー
SONOPET-1200B(精電舎電子工業株式会社)
公称出力:
1200W
発振周波数: 19.5kHz
加圧力:
18N
振幅:
34μm
図3-20 溶着部せん断強度測定用試験片
表 3-23 溶着部せん断強度
工具ホーン
0.3
0.3
10
(単位:N)
発振時間(sec.)
12.7
(単位 mm)
試験片:12.7mm×78mm×1.6mmt
0.1
0.2
0.3
PES 3600G
680
700
溶着部以外で破断
PES 3601GL20
660
850
溶着部以外で破断
PES 3601GL30
740
830
溶着部以外で破断
SUMIKAEXCEL PES
27
4. PESの用途
4-1 PES の成形用グレード
電気・電子分野
低アウトガス性、寸法安定性、耐クリープ性、低バリ性、耐洗浄溶剤性などの特長が生かされ、以下の用途に展開されてい
ます。
●リレーのベース
●コイルボビン
●可動板(接極子のブロック)
●スイッチのベース
●バーンインソケット
●コネクター
●ヒューズケース
●各種センサーのケース、カバー
●IC トレー
●プリント基板 など
熱水分野
耐熱水、スチーム性(160℃)
、寸法安定性、耐クリープ性などの特長が生かされ、
以下の用途に展開されつつあります。
●熱水、スチーム用のバルブのジョイント
●防蝕電極の絶縁材
●温度センサーのセル ●温水ポンプ部品
●限外濾過装置部品 など
自動車、機械分野
広い温度範囲(−100∼180℃)での剛性、寸法安定性、高温での耐クリープ性、耐ガソリン、ガソホール、エンジンオイル性
に優れることや、スミプロイグレードの摺動特性が生かされ、以下の用途に展開されつつあります。
●ギヤボックスのベアリングリテーナー
●ブレーキシャフト用ブッシュ
●キャブレター用コイルボビン
●スラストワッシャー
●ランプリフレクター など
OA・AV機器部品
寸法安定性、クリープ特性に優れることや、スミプロイグレードの摺動特性が生かされ、
以下の用途に展開されています。
●複写機やプリンターの各種無給油軸受、ガイド、ギヤ類
●光ピックアップ部品 など
LCD基板用フィルム分野
押出成形により成膜したフィルムは、透明性(全光線透過率 89%)、耐熱性、寸法安定性に優れ、ITO(酸化インジウムスズ)
膜を蒸着したものは、以下の LCD 基板として展開されています。
●カード電卓
●ページャー
●携帯電話
●電子手帳 など
4-2 PES のパウダーグレード
はじめに
スミカエクセルPESのパウダーグレードは以下の用途に好適なグレードです。
●溶媒に溶解させて接着剤、塗料・コート剤として使用
●溶媒に溶解させて中空糸膜やキャスト膜(平膜)に加工
●スミカエクセルPESベースの各種コンパウンド用途やエポキシ強化用途
パウダーグレードとして次のグレードを取り揃えています。
表4-1 スミカエクセルPESパウダーグレード
パウダーグレード
RV
(還元粘度)
主用途
3600P
0.36
コンパウンド
4100P
0.41
塗料・コート剤、接着剤
4800P
0.48
中空糸膜、接着剤
5003P
0.50
塗料・コート剤、接着剤、エポキシ強化剤
5200P
0.52
中空糸膜
*還元粘度は DMF1%溶液中で測定したものです。
28
TECHNICAL NOTE
スミカエクセル パウダーグレードの物性
スミカエクセル 3600P、
4100P、
4800P および 5200Pの性質
3600P、4100P、4800P、5200P の物性値はぺレットタイプの 3600G、4100G、4800G、5200G の物性値(表 4-2)を参考にして
ください。
表4-2 3600G、4100G、4800G、5200G の物性値
テスト方法
(ASTM)
単位
3600G/4100G
4800G/5200G
比重
成形収縮率 MD
TD
吸水率(23℃、
24hr)
屈折率
D792
D955
D955
D570
−
−
%
%
%
−
1.37
0.6
0.6
0.43
1.65
引張強度(23℃)
破断伸び
曲げ強度
曲げ弾性率(23℃)
圧縮強度
圧縮弾性率
アイゾット衝撃強度 (6.4m/m. ノッチ付)
(6.4m/m. ノッチなし)
ロックウェル硬度
テーバー磨耗(1kg荷重.CS17Wheel)
D638
D638
D790
D790
D695
D695
D256
−
D785
−
D1044
MPa
%
MPa
GPa
MPa
MPa
J/m
J/m
−
−
mg/1000rev
85
40∼80
130
2.6
109
1,625
85
破壊しない
M88
R120
20
熱的性質
荷重たわみ温度(0.46MPa)
荷重たわみ温度(1.82MPa)
ビカット軟化点(1kg)
ビカット軟化点(5kg)
線膨張係数 MD
TD
熱伝導率
比熱
温度インデックス
D648
D648
D1525
D1525
D696
D696
C177
−
UL746
℃
℃
℃
℃
10-5/K
10-5/K
W/(m・K)
J/(kg・K)
℃
210
203
226
222
5.5
5.7
0.18
1,121
180
電気的性質
誘電率(23℃.
60Hz)
誘電率(23℃.
106Hz)
誘電率(23℃.
2.5×109Hz)
誘電正接(23℃.
60Hz)
誘電正接(23℃.
106Hz)
誘電正接(23℃.
2.5×109Hz)
体積固有抵抗
絶縁破壊電圧
耐トラッキング性
耐アーク性(タングステン電極)
高電圧アークイグニッション
高電流アークイグニッション
D150
D150
D150
D150
D150
D150
D257
D149
DIN53480
D495
UL746
UL746
−
−
−
−
−
−
Ω・m
kV/mm
V
sec
sec
sec
3.5
3.5
3.4
0.001
0.0035
0.004
1015
16
150
70
300
200
燃焼性
難燃性
限界酸素指数(1.6m/m)
ホットワイヤイグニッション
UL94
D286
UL746
−
−
sec
V-0
38
80
一般的物性
機械的性質
スミカエクセル 5003Pの性質
●ガラス転移点、230℃を有する非晶性樹脂です。
●100重合繰り返し単位当たり、
0.6∼1.4 と多くの末端水酸基を有しているために接着性が良好です。
●他の性質はスミカエクセル PES の他のグレードと同等です。
SUMIKAEXCEL PES
29
4. PESの用途
塗料・コート分野
塗料・コート分野にはスミカエクセル 4100P、5003P が使用されています。特に、5003P は熱時硬度、耐薬品性と金属との
接着力を強化したグレードです。
スミカエクセル5003Pを使用した塗料・コート剤について述べます。
スミカエクセル5003P使用塗料・コート剤の特徴
●空気中で250℃の長期使用、
あるいは冷熱サイクル(0℃⇔250℃)
使用に対しても安定です。
●接着性、密着性 = ガラス、セラミックス、鉄、ステンレス、アルミニウム或いはアルミニウム合金等に対して優れた接着
性を発揮します。
●耐溶媒性=非晶性樹脂の中では最も優れた耐溶媒性を示します。
●耐加水分解性 = ポリエーテルサルホン樹脂自体、耐加水分解性に優れた樹脂であり、PES 5003P は更に優れた耐加水分
解性を示します。
●良成膜性=成膜性に優れ、
基材を十分に保護します。
●難燃性=難燃剤無添加で高い難燃性を有しております。
●透明性=優れた透明性を有しており、
コート後も基材のままの外観を保持します。
●衛生性=可塑剤等の添加剤を含まず衛生的です。
スミカエクセル5003P塗布方法
(溶液法の例)
●基材を脱脂、必要に応じてブラスト又はエッチングを行う。
●スミカエクセル5003Pを溶媒に溶解させる。
●この溶液を浸漬、はけ塗り、スプレー法等で基材に塗布し、風乾する。
●350∼400℃、
空気中で30分間熱処理を行う。
アルミニウム板におけるスミカエクセル 5003P コートの耐熱性(例)
表4-3 連続使用耐熱性(250℃空気中 )
時間(hr)
評価項目
外観変化
0
115
235
−
変化なし
変化なし
碁盤目試験(*1)
100/100
100/100
100/100
耐蝕テスト(*2)
腐蝕なし
腐蝕なし
腐蝕なし
表4-4 冷熱サイクルテスト(0℃ 氷水中、2 分⇔250℃ オーブン、2 分)
サイクル回数
(回)
評価項目
外観変化
0
25
50
−
ほとんど変化なし
エッジ部若干発泡
碁盤目試験(*1)
100/100
100/100
100/100
耐蝕テスト(*2)
腐蝕なし
腐蝕なし
腐蝕なし
(*1)スミカエクセル 5003P コート層を基材にいたるまで、安全かみそりで 100mm2 の面積にわたり 1mm×1mm の交差碁盤目状に刻み
を入れ、次いでセロハン粘着テープを押しつけて押圧後、剥離して、基材に残ったスミカエクセルPES切片の個数。
(*2)スミカエクセル 5003P コート面に 15vol%硫酸溶液を滴下後、ガラス板を重ねて、24 時間放置後、表面の変化状態を観察することに
より判断。
エポキシ系強化システム用途
従来よりスミカエクセル5003P はエポキシ系複合材に使用されてきました。
5003P使用のメリットは次のとおりです。
●エポキシの破壊強度を向上させます。
●非常に高いTg(230℃)
を有します。
●優れた機械的性質を有しています。
エポキシ樹脂の靭性強化
スミカエクセル 5003P は本質的に靭性があり、高い Tg と弾性率を有しているので、システム全体の性能を低下させるこ
となく、エポキシに靭性を付与することができます。
表4-5 TGDDM/4,4-DDS系での効果
5003P濃度
(%)
曲げ弾性率(GPa)
Tg(℃)
G1C
(kJ/m2)
0
3.34
205
0.28
10
3.21
205
0.41
15
3.07
200
0.47
(注)
1)G1C は -65℃で平面歪み条件下で測定
2)Tg は捻れ DMA で測定
上記表より大幅な破壊強度(G1C)の増加が見られ、Tg はそれほど低下していないことがわかります。
30
TECHNICAL NOTE
表4-6 スミカエクセル PES と PEI の比較
エポキシレジン/As4CF 系、
ポリマー濃度 30wt%での比較検討結果
PEI
CAI(Compressive strength after impact) MPa
194
圧縮強度
MPa
8℃粘度
5003P
223
(室温)
1697
1731
(82℃)
1434
1648
(82℃)
/Wet
N/A
1076
(Pa・s)
130
100
N/A:分析データなし
航空機・スポーツ用品分野へのスミカエクセル PES の応用
CFRP(カーボン繊維と樹脂とからなる複合材料)のマトリックス樹脂には熱硬化性エポキシ樹脂が使用されています。エ
ポキシ樹脂は機械的、熱的特性は優れていますが熱可塑性樹脂に比べると脆い欠点があります。航空機・スポーツ用品分
野での利用においては破壊靭性(残存圧縮強さ:CAI=Compressive Strength After Impact)の向上が必須とされます。
5003P を添加することによりエポキシ樹脂と反応してマトリックス樹脂中の層間剥離を伴う衝撃破壊に対して高靭性を
持たせることができます。
●スミカエクセル PES の使用法
エポキシ主剤に 5003P を溶解し、均一系とします。これに硬化剤を加えて、硬化させると 5003P の水酸基と反応して、海
島構造の特殊なモルホロジーを形成して耐衝撃性が改善されます。エポキシ主剤に 5003Pを溶解して、均一系を得るに
は、5003Pを微粉砕して、直接エポキシ主剤に N2 雰囲気下、150℃程度で溶解させるか、溶媒に 5003Pを均一溶解させ、
そ
の後溶媒を留去した後にエポキシ主剤を加えて均一系を得る方法があります。
●単位コンポジット当たりのスミカエクセル PES 使用量
(例)
○単位マトリックスレジン当たり
エポキシ主剤(100 部)
:硬化剤
(30∼40 部)
:5003P
(30 部)
○単位プリプレグ当たり
∼10wt%
●航空機用構造材としての使用法
実際に航空機等の構造材としての使用に当たっては上記 " スミカエクセル 5003P の使用法 " で調製して得られる CF プ
リプレグの表面に 5003P の粒度調整した粒子(Tough ball)をまぶして、数十枚積層して成形すると、界面にある PES
ballによって耐衝撃性が更に向上します。積層の方法については、種々の工夫がなされています。
(例:Boeingの航空機構造材としての規格)
○ CAI
(Compressive strength after impact)値が 310MPa 以上
○ CS(Compressive Strength.Hot/Wet Condition)
値が 1100MPa
(82℃)以上
接着剤用途
スミカエクセルPES は耐熱接着剤として利用できます。特に、金属同士の接着では優れた接着強度を有しています。
特徴
●接着層は高い引張せん断接着強度と、T 剥離接着強度を有し、剛性と可撓性を併せもつバランスのとれた特性を示しま
す。
●市販熱可塑性樹脂接着剤の中では最高の耐熱性を有し、200℃においても実用的な引張破断接着強度は 20MPa と非常
に高いものです。
また、短時間であれば 250℃までの温度でくり返し使用できます。
●耐薬品性、耐熱性が優れています。
●溶剤または揮発成分を含まず、アルミニウム、ステンレス、鋼、真ちゅう等の広範囲の材料に対してプライマーなしで優
れた接着性を示します。
接着方法
●スミカエクセル PES フィルム使用のホットメルトタイプ接着方法
○被着体の大きさにフィルムを切断します。
○必要に応じて被着体表面をサンドペーパー、ディスクサンダー等で粗面化し、アセトン、トルエン等で清浄します。
○被着体の間にフィルムを挟み、治具を使用して軽く圧着して 300∼360℃で 10∼30 分加熱します。圧着の程度は溶融
した樹脂が被着体の間から僅かにバリとして出る程度で十分です。
○放冷すれば強固な接着体が得られます。
SUMIKAEXCEL PES
31
4.
PESの用途
●接着溶液を用いる接着方法
スミカエクセル 5003Pの溶媒系
PES 5003Pを単一溶媒に溶解した場合、不安定で PES が析出してきますので、通常混合溶媒系
(例を表 4-7 に示す)
を使用し
ます。
(単一溶媒では溶液安定性が低くゲル化します。)
表4-7 スミカエクセル 5003Pの混合溶媒系の例
溶媒
溶媒
混合比(体積比)
1
1,1,2- トリクロロエタン
A
1(重量比)
ジクロロメタン
B
C
D
ジメチルホルムアミド
20
シクロヘキサノン
80
メチルエチルケトン
25
N- メチル -2- ピロリドン
2
トルエンまたはキシレン
1
N- メチル -2- ピロリドン
1
ジクロロメタン
1
N- メチル -2- ピロリドン
60
トルエンまたはキシレン
E
30
シリコン流動調節剤
0.5∼1
メチルエチルケトン
35
接着方法
PES接着剤の接着強度は、
熱処理条件によって変化するため、使用方法に応じた条件設定が必要です。
(条件例1) 130℃、2時間乾燥
(条件例2) 100℃、1時間後に 350℃で 15 分間乾燥
スミカエクセル 5003P接着剤系の性質
高温下での接着強度に優れます。例として、18-8 ステンレス同士を PES 5003P 接着剤系を使用して接着した場合、温度を
220℃まで上昇させた時の接着強度の変化と 150℃でエージングした場合の接着保持力についての結果を表 4-8 と表 4-9
に示します。
表 4-9 剥離強度と高温保持時間の影響
表4-8 剥離強度と温度の影響
温度
(℃)
剥離強度 MPa
150℃で保持時間(hr)
150℃での剥離強度 MPa
23
37
保持なし
26
150
26
1000
21
220
14
剥離強度の測定は剥離速度 12.5mm/minで行った。
150℃、
1000 時間保持しても初期の接着強度の81%を
保持している。
PESメンブレンフィルター製カートリッジフィルター
(ご提供:東洋濾紙株式会社)
PES 製のメンブランフィルターとポリプロピレン
70mm
27mm
から構成された、耐薬品性・耐熱性に優れたカー
トリッジフィルターです。
■特徴
●溶出する物質がほとんど無く、前処理としての
カートリッジ洗浄が少量で済みます。
エンドキャップ
サポートメディア
●メディアが非対称であり、
また、
異孔径のプレメ
プレメンブランフィルター
ンブランフィルターを内蔵する為、高効率・高
メインメンブランフィルター
流量で長い濾過寿命が得られます。
●オートクレーブ滅菌、インラインスチーム滅菌
が行なえます。
●メディア自体が不活性である為、試料中の成分
が吸着されることがほとんどありません。
■応用用途
●エレクトロニクスにおける超純水の精密濾過
●プロセスガス、ベントエアーの除粒子、除菌濾過
32
TECHNICAL NOTE
サポートメディア
コアー
プロテクター
245mm