5 点アップ問題 (権利関係編)

5 点アップ問題
(権利関係編)
権利関係(民法・権利能力・意思能力)
1
買主である団体Aが、法律の規定に基づかずに成立した、権利能力を有しない任意の
団体であった場合、AはBとの間で売買契約を締結しても、当該土地の所有権はAに
帰属しない。
2
父母とまだ意思疎通することができない乳児は、不動産を所有することができない。
3
売主Cが所有する土地を買主Dが購入する場合、買主Dが意思無能力者であった場合、
Dは、Cとの間で締結した売買契約を取り消せば、当該契約を無効にできる。
(解 説)
1
○
団体Aは、権利義務の主体となることができる「権利能力」がないので、土地の
所有権を取得することはできない。
2 × 私権の享有は、出生に始まるため、乳児も権利能力を有する(民法3条1項)。し
たがって、たとえ乳児であっても、権利の主体となるので不動産を所有すること
ができる。
3
×
意思能力がない者がした売買契約は当初から無効であり、取り消して無効となる
のではない(大判明 38.5.11)。
権利関係(民法・制限行為能力者①)
1
売主Aが所有する土地を買主Bが購入する場合、買主Bが被保佐人であり、保佐人の
同意を得ずにAと売買契約を締結した場合、当該売買契約は当初から無効である。
2 未成年者が婚姻をしたときは、成年に達したものとみなされる。
3 未成年者が土地を売却する意思表示を行った場合、その未成年者が婚姻をしていても
親権者が当該意思表示を取り消せば、意思表示の時点に遡って無効となる。
4 買主Cが婚姻している未成年者であり、当該婚姻がCの父母の一方の同意を得られな
いままなされたものである場合には、Cは未成年者であることを理由に当該売買契約
を取り消すことができる。
5 土地を売却すると、土地の管理業務を免れることになるので、婚姻していない未成年
者が土地を売却するに当たっては、その法定代理人の同意は必要ない。
6
営業を許可された未成年者が、その営業のための商品を仕入れる売買契約を有効に締結す
るには、父母双方がいる場合、父母のどちらか一方の同意が必要である。
(解 説)
1 × 被保佐人が保佐人の同意を得ずにした売買契約は、
「取り消すことができる」ので
あって、初めから無効なのではない(民法 13 条1項3号・4項)
。
2
○
未成年者が婚姻をしたときは、婚姻によって成年に達したものとみなされる(同
法 753 条)
。
3 × 未成年者は、婚姻をすれば成年に達したものとされる(同法 753 条)
。したがって、
制限行為能力を理由とする取消しはできない。
4
×
未成年者は、たとえ父母の一方の同意がなくても婚姻をすれば成年者である(同
法 737 条2項、753 条)
。したがって、制限行為能力を理由とする取消しはできな
い。
5 × 婚姻していない未成年者は、契約を行う場合、法定代理人の同意が必要である
(=同意なしに行った契約は、取消しできる。同法5条1項)
。
6 × 営業を許可された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を
有する(同法6条)
。したがって、父母の同意は不要である。
権利関係(民法・制限行為能力者②)
1
成年被後見人が成年後見人の事前の同意を得て土地を売却する意思表示を行った場合、
成年後見人は、当該意思表示を取り消すことができる。
2
成年被後見人が行った法律行為は、事理を弁識する能力がある状態で行われたもので
あっても、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行
為については、この限りではない。
3
被保佐人が保佐人の事前の同意を得て土地を売却する意思表示を行った場合、保佐人
は、当該意思表示を取り消すことができる。
4 被保佐人については、不動産を売却する場合だけではなく、日用品を購入する場合も、
保佐人の同意が必要である。
5 被補助人が法律行為を行うためには、常に補助人の同意が必要である。
(解 説)
1
○
成年被後見人の意思表示は、成年後見人の事前の同意を得ていても、一定の場合
を除き、取り消すことができる(民法9条)
。
2
○
成年被後見人の法律行為は、当該行為をしたときの状況にかかわらず、日常生活
に関するもの以外は取り消すことができる(同法9条)
。
3
×
被保佐人が保佐人の同意を得て土地を売却する意思表示を行った場合、この意思
表示を取り消すことはできない(同法 13 条1項3号・4項)
。
4
×
被保佐人が不動産の売却をするには、保佐人の同意を必要とするが、日用品を購
入する場合は保佐人の同意は不要である(同法 13 条1項ただし書・3号)
。
5
×
被補助人が補助人の同意を必要とするのは、一定の法律行為だけであり、すべて
の法律行為が対象ではない(同法 17 条1項)。
権利関係(民法・心裡留保と虚偽表示)
1
A所有の土地につき、AとBとの間で売買契約を締結する場合、Aの売渡し申込みの
意思は真意ではなく、BもAの意思が真意ではないことを知っていたときは、AとB
との意思は合致しているので、売買契約は有効である。
2 Aは甲土地を「1,000 万円で売却する」という意思表示を行ったが、当該意思表示はA
の真意ではなく、Bもその旨を知っていた。この場合、Bが「1,000 万円で購入する」
という意思表示をすれば、AB間の売買契約は有効に成立する。
3
A所有の土地につき、AとBとの間で売買契約を締結する場合、Aが、強制執行を逃
れるために、実際には売り渡す意思はないのにBと通じて売買契約の締結をしたかの
ように装った場合、売買契約は無効である。
4
AB間の売買契約が、AとBとで意を通じた仮装のものであったとしても、Aの売買
契約の動機が債権者からの差押えを逃れるというものであることをBが知っていた場
合には、AB間の売買契約は有効に成立する。
(解 説)
1
×
Aが自分の真意でないと知りながらした意思表示は原則有効であるが、相手方B
がAの真意を知っていたか、又は知ることができたときは、無効となる(民法 93
条)
。
2
×
Aが自分の真意でないと知りながらした意思表示は原則有効であるが、相手方B
がAの真意を知っていたか、又は知ることができたときは、無効となる(同法 93
条)
。
3
○
売買契約をする意思がないにもかかわらず、売主と買主が通じてした契約は虚偽
表示であり無効である(同法 94 条1項)
。
4 × 売主と買主が通じてした仮装の売買契約は、無効となる(同法 94 条1項)。
権利関係(民法・錯誤)
1 意思表示に法律行為の要素の錯誤があった場合は、表意者は、その意思表示を取り消すこ
とができる。
2 Aが、Bに住宅用地を売却した場合、錯誤を理由としてこの売却の意思表示が無効と
なる場合であっても、意思表示者であるAに重過失があるときは、Aは自らその無効
を主張することができない。
3
Aが、Bに住宅用地を売却した場合、売買契約に要素の錯誤があったときは、Bに代
金を貸し付けたCは、Bがその錯誤を認めず、無効を主張する意思がないときでも、
Aに対し、Bに代位して、無効を主張することができる。
4
Aが、Bに住宅用地を売却した場合、錯誤を理由としてこの売却の意思表示が無効と
なるときは、意思表示者であるAがその錯誤を認めていないときは、Bはこの売却の
意思表示の無効を主張できる。
5
Aが、Bに住宅用地を売却した場合、錯誤が、売却の意思表示をなすについての動機
に関するものであり、それを当該意思表示の内容としてAがBに対して表示した場合
であっても、この売却の意思表示が無効となることはない。
6
意思表示をなすについての動機は、表意者が当該意思表示の内容とし、かつ、その旨
を相手方に明示的に表示した場合は、法律行為の要素となる。
(解 説)
1 × 法律行為の要素に錯誤があったときは無効である(民法 95 条)。したがって、錯
誤による意思表示は、取り消すことができるのではない。
2
○
法律行為の要素の錯誤と認められる場合であっても、表意者Aに重大な過失があ
る場合に、Aは、無効を主張することはできない(同法 95 条)
。
3
×
Bが錯誤を認めていても、錯誤による無効を主張する意思がなければ、Cは、C
のBに対する貸金債権を保全するために、無効を主張できる(最判昭 45.3.26)。
ただし、本肢の場合は、Bが錯誤を認めていないので、Cは、無効を主張できな
い。
4
×
表意者Aが錯誤を認めていなければ、相手方Bは、無効を主張することはできな
い(最判昭 40.9.10)
。
5
×
売却する「動機」に錯誤があっても、原則として無効を主張することができない
が、「動機」を相手に表示した場合は、無効を主張することができる(最判昭
29.11.26)
。
6
○
意思表示をなすについての動機は、表意者が当該意思表示の内容とし、かつ、そ
の旨を相手方に明示的に表示した場合は、法律行為の要素となる(同法 95 条、大
判大 3.12.15)
。
権利関係(民法・詐欺・強迫)
1
Aが、Bの欺罔行為によって、A所有の建物をCに売却する契約をした場合、Aは、
Bが欺罔行為をしたことを、Cが知っているときでないと、売買契約の取消しをする
ことができない。
2
Aが、Cの詐欺によってBとの間で売買契約を締結した場合、Cの詐欺をBが知って
いるか否かにかかわらず、Aは売買契約を取り消すことはできない。
3
Aが、Cの強迫によってBとの間で売買契約を締結した場合、Cの強迫をBが知らな
ければ、Aは売買契約を取り消すことができない。
4
Aが自己の所有する土地について第三者Cの強迫によりBとの間で売買契約を締結し
た場合、Bがその強迫の事実を知っていたか否かにかかわらず、AはAB間の売買契
約に関する意思表示を取り消すことができる。
(解 説)
1
○
Aが、相手方C以外のB(=第三者)による詐欺を理由に取り消すことができる
のは、相手方Cが詐欺の事実を知っていた場合に限られる(民法 96 条2項)。
2
×
Aは、相手方Bが詐欺の事実を知っていた場合に限り、相手方B以外の第三者C
による詐欺を理由に、当該意思表示を取り消すことができる(同法 96 条2項)。
3
×
強迫による意思表示は、相手方Bが強迫の事実を知っていたかどうかにかかわら
ず、取り消すことができる(同法 96 条1項)。
4
○
第三者Cによる強迫の場合、Aは相手方Bが強迫の事実を知っていたかどうかに
かかわらず取り消すことができる(同法 96 条1項)。
権利関係(民法・代理1)
1
未成年者が代理人となって締結した契約の効果は、当該行為を行うにつき当該未成年
者の法定代理人による同意がなければ、有効に本人に帰属しない。
2
Aが、Bに代理権を授与してA所有の土地を売却する場合、Bが自らを「売主Aの代
理人B」と表示して買主Dとの間で締結した売買契約について、Bが未成年者であっ
たとしても、AはBが未成年者であることを理由に取り消すことはできない。
3 AがA所有の甲土地の売却に関する代理権をBに与えた場合、18 歳であるBがAの代
理人として、甲土地をCに売却した後で、Bが未成年者であることをCが知った場合
には、CはBが未成年者であることを理由に売買契約を取り消すことができる。
4 Aが、Bの代理人としてCとの間で、B所有の土地の売買契約を締結する場合、Bは、
Aに対してCとの間の売買契約を委任したが、Aが、DをCと勘違いした要素の錯誤
によってDとの間で契約した場合、Aに重過失がなければ、この契約は無効である。
(解 説)
1 × 代理人は行為能力者であることを要しない(民法 102 条)。未成年者でも代理人と
なることができる。
2 ○ 代理人は行為能力者であることを要しないので、Bが未成年者であったとしても、
AはBが未成年者であることを理由に売買契約を取り消すことはできない(同法
102 条)
。
3 × 代理人は行為能力者であることを要しない(同法 102 条)。未成年者でも代理人と
なることができる。
4
○
錯誤による無効の主張を本人Bができるかどうかは、代理人Aにより判断される
(同法 101 条1項)
。したがって、代理人Aに重過失がなければ、この契約は無効
となる(同法 95 条)。
権利関係(民法・代理2)
1
Aが、Bに代理権を授与してA所有の土地を売却する場合、Bは、Aの同意がなけれ
ば、この土地の買主になることができない。
2 Aが、B所有の建物の売却(それに伴う保存行為を含む。)についてBから代理権を授
与されている場合、Aが、Bの名を示さずCと売買契約を締結した場合には、Cが、
売主はBであることを知っていても、売買契約はAC間で成立する。
3
買主Aが、Bの代理人Cとの間でB所有の甲地の売買契約を締結する場合、CがBの
代理人であることをAに告げていなくても、Aがその旨を知っていれば、当該売買契
約によりAは甲地を取得することができる。
4
不動産の売買契約に関して、同一人物が売主及び買主の双方の代理人となった場合で
あっても、売主及び買主の双方があらかじめ許諾をしているときには、当該売買契約
の効果は両当事者に有効に帰属する。
5
AがA所有の土地の売却に関する代埋権をBに与えた場合、Bは、Aに損失が発生し
ないのであれば、Aの意向にかかわらず、買主Dの代理人にもなって、売買契約を締
結することができる。
6
Aが、Bの代理人としてB所有の甲土地について売買契約を締結した場合、Aが甲土
地の売却を代理する権限をBから書面で与えられている場合、A自らが買主となって
売買契約を締結したときは、Aは甲土地の所有権を当然に取得する。
(解 説)
1
○
原則として、売主Aの代理人Bが、契約の相手方である買主となることはできな
いが、本人Aの同意があればできる(民法 108 条)
。
2
×
代理人Aが本人のためにすることを示さなくても、相手方Cが代理人が本人Bの
ためにすることを知っていれば、契約は、「本人Bと相手方Cとの間」で成立する
(同法 100 条ただし書)
。
3
○
代理人Cが本人Bのためにすることを告げなくても、相手方Aがその旨を知って
いれば、直接本人Bと相手方Aとの間で契約が成立する(同法 100 条ただし書)。
4
○
双方代理は、原則として禁止されている。しかし、本人があらかじめ許諾してい
る場合は、例外的に双方代理も許される(同法 108 条)
。
5
×
本人の許諾を得た場合などは、当事者双方の代理人となることができるが、Aの
意向にかかわらず、買主Dの代理人にもなって、売買契約を締結することができ
るわけではない(同法 108 条)
。
6 × 売主Bの代理人A自らが、買主となることはできない(同法 108 条)。この場合、
Aは、代理人として契約をしたことにはならないので、当該契約は無効である。
権利関係(民法・代理3)
1 法定代理人は、やむを得ない事由がなくとも、復代理人を選任することができる。
2 Aが、Bに代理権を授与してA所有の土地を売却する場合、Bは、自己の責任により、
自由に復代理人を選任することができる。
3 Aが、B所有の建物の売却(それに伴う保存行為を含む。)についてBから代理権を授
与されている場合、Aは、急病のためやむを得ない事情があっても、Bの承諾がなけ
れば、さらにCを代理人として選任しBの代理をさせることはできない。
4 Aは、不動産の売却を妻の父であるBに委任し、売却に関する代理権をBに付与した。
Bが、Bの友人Cを復代理人として選任することにつき、Aの許諾を得たときは、B
はその選任に関し過失があったとしても、Aに対し責任を負わない。
5 Aは、不動産の売却を妻の父であるBに委任し、売却に関する代理権をBに付与した。
Bが、Aの許諾及び指名に基づき、Dを復代理人として選任したときは、Bは、Dの
不誠実さを見抜けなかったことに過失があった場合、Aに対し責任を負う。
6
Aが、A所有の土地の売却に関する代埋権をBに与えた場合、Bは、自らが選任及び
監督するのであれば、Aの意向にかかわらず、いつでもEを復代理人として選任して
売買契約を締結させることができる。
(解 説)
1
○
法定代理人は、自己の責任で、いつでも復代理人を選任することができる(民法
106 条)
。
2
×
委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるとき
でなければ、復代理人を選任できない(同法 104 条)
。
3
×
委任による代理人Aは、本人Bの許諾がある場合だけでなく、やむを得ない事由
があるときのいずれかであれば、復代理人を選任できる(同法 104 条)
。
4
×
代理人Bは、本人Aの許諾を得て復代理人を選任したとき、本人Aに対し、選任
及び監督の責任を負う(同法 105 条1項)
。
5
×
復代理人Dを本人Aが指名した場合であれば、代理人Bは、選任及び監督の責任
を負わないのが原則である(同法 105 条2項)。
6
×
委任による代理人は、本人Aの意向にかかわらず、いつでもEを復代理人として
選任できるわけではない(同法 104 条)
。
権利関係(民法・無権代理)
1
B所有の土地をAがBの代理人として、Cとの間で売買契約を締結した場合、Aが無
権代理人である場合、CはBに対して相当の期間を定めて、その期間内に追認するか
否かを催告することができ、Bが期間内に確答をしない場合には、追認とみなされ本
件売買契約は有効となる。
2
買主Aが、Bの代理人Cとの間でB所有の甲地の売買契約を締結する場合、CがBか
ら何らの代理権を与えられていない場合であっても、当該売買契約の締結後に、Bが
当該売買契約をAに対して追認すれば、Aは甲地を取得することができる。
3
AはBの代理人として、B所有の甲土地をCに売り渡す売買契約をCと締結した。し
かし、Aは甲土地を売り渡す代理権は有していなかった。この場合、Bが本件売買契
約を追認しない間は、Cはこの契約を取り消すことができる。ただし、Cが契約の時
において、Aに甲土地を売り渡す具体的な代理権がないことを知っていた場合は取り
消せない。
4
AはBの代理人として、B所有の甲土地をCに売り渡す売買契約をCと締結した。こ
の場合、Bが本件売買契約を追認しない場合、Aは、Cの選択に従い、Cに対して契
約履行又は損害賠償の責任を負う。ただし、Cが契約の時において、Aに甲土地を売
り渡す具体的な代理権はないことを知っていた場合は責任を負わない。
(解 説)
1 × 本人Bが期間内に確答しないときは、追認を拒絶したものとみなされる(民法 114
条)
。
2
○
無権代理人Cがした契約であっても、本人Bが相手方Aに対して追認をすれば、
契約は有効に成立したものとされる(同法 116 条)
。
3
○
本人Bが追認しない間であれば、相手方Cが善意であれば、当該契約を取り消す
ことができる。しかし、CがAに代理権がないことを知っていた(悪意)場合は、
取り消すことはできない(同法 115 条)
。
4
○
本人Bが追認を拒絶した場合、無権代理人Aは、無権代理について善意無過失の
相手方Cの選択に従い、責任を負う(同法 117 条1項)
。しかしCが、Aに代理権
がないことを知っていた場合は、責任を負わない(同条2項)。
権利関係(民法・表見代理)
1 AはBの代理人として、B所有の甲土地をCに売り渡す売買契約をCと締結した。し
かし、Aは甲土地を売り渡す代理権は有していなかった。この場合、BがCに対し、
Aは甲土地の売却に関する代理人であると表示していた場合、Aに甲土地を売り渡す
具体的な代理権はないことをCが過失により知らなかったときは、BC間の本件売買
契約は有効となる。
2 AはBの代理人として、B所有の甲土地をCに売り渡す売買契約をCと締結した。し
かし、Aは甲土地を売り渡す代理権は有していなかった。BがAに対し、甲土地に抵
当権を設定する代理権を与えているが、Aの売買契約締結行為は権限外の行為となる
場合、甲土地を売り渡す具体的な代理権がAにあるとCが信ずべき正当な理由がある
ときは、BC間の本件売買契約は有効となる。
3 買主Aが、Bの代理人Cとの間でB所有の甲地の売買契約を締結する場合、Bが従前
にCに与えていた代理権が消滅した後であっても、Aが代理権の消滅について善意無
過失であれば、当該売買契約によりAは甲地を取得することができる。
4 Aが、Bの代理人としてCとの間で、B所有の土地の売買契約を締結する場合、Bが、
AにB所有の土地を担保として、借金をすることしか頼んでいないときは、CがAに
土地売却の代理権があると信じ、それに正当の事由があっても、BC間に売買契約は
成立しない。
(解 説)
1
×
本人Bが、相手方Cに対し、Aに代理権を与えた旨を表示していた場合であって
も、CがAに代理権がないことを過失により知らなかったときは、表見代理が成
立しない(民法 109 条)
。したがって、BC間の売買契約は有効とはならない。
2
○
代理人Aが権限外の行為を行い、相手方CがAに代理権があると正当な理由によ
り信じたときは、表見代理が成立する(同法 110 条)
。したがって、BC間の売買
契約は有効となる。
3
○
代理権が消滅した後にした代理行為であっても、相手方Aが代理権消滅について
善意無過失であれば、契約は成立する(同法 112 条)
。
4
×
代理人Aが権限外の行為を行い、相手方CがAに代理権があると正当な理由によ
り信じたときは、表見代理が成立する(同法 110 条)
。したがって、BC間の売買
契約は有効となる。
権利関係(民法・同時履行の抗弁権)
1 動産売買契約における目的物引渡債務と代金支払債務とは、同時履行の関係に立つ。
2
目的物の引渡しを要する請負契約における目的物引渡債務と報酬支払債務とは、同時
履行の関係に立つ。
3
宅地の売買契約における買主が、代金支払債務の弁済期の到来後も、その履行の提供
をしない場合、売主は、当該宅地の引渡しと登記を拒むことができる。
4
宅地の売買契約が解除された場合で、当事者の一方がその原状回復義務の履行を提供
しないとき、その相手方は、自らの原状回復義務の履行を拒むことができる。
5
建物の建築請負契約の請負人が、瑕疵修補義務に代わる損害賠償義務について、その
履行の提供をしない場合、注文者は、当該請負契約に係る報酬の支払いを拒むことが
できる。
6
金銭の消費貸借契約の貸主が、借主の借金に係る抵当権設定登記について、その抹消
登記手続の履行を提供しない場合、借主は、当該借金の弁済を拒むことができる。
(解 説)
1
○
動産(不動産に該当しないもの)の売買契約における目的物の引渡し義務と代金
の支払義務は、同時履行の関係に立つ(民法 533 条)
。
2
○
目的物の引渡しを要する請負契約における目的物の引渡債務と報酬の支払債務は、
同時履行の関係に立つ(同法 633 条、大判大5.11.27)
。
3
○
買主が代金を支払うべき時期であるにもかかわらず支払わない場合、売主は、引
渡しや登記の移転を拒むことができる(同法 533 条、大判大 7.8.14)
。
4 ○ 契約解除による原状回復は同時履行の関係である(同法 545 条1項、546 条、533
条)
。一方が原状回復しない場合、他方は、原状回復を拒むことができる。
5
○
請負人の瑕疵修補義務に代わる損害賠償義務と、注文者の報酬支払義務は同時履
行の関係に該当する(同法 634 条2項、533 条、最判平 9.2.14)
。
6
×
金銭の借主による弁済と、貸主の抵当権の登記の抹消手続は、同時履行の関係で
はない(最判昭 57.1.19)
。金銭の弁済が先になる。
権利関係(民法・売主の担保責任・権利の瑕疵)
AからBが建物を買い受ける契約を締結した場合(売主の担保責任についての特約はな
い。
)に関する次の記述で、民法の規定及び判例によって、正誤を答えなさい。
1
AからBが建物を買い受ける契約を締結した場合、この建物がCの所有で、CにはA
B間の契約締結の時からこれを他に売却する意思がなく、AがBにその所有権を移転
することができない場合でも、AB間の契約は有効に成立する。
2
AからBが建物を買い受ける契約を締結した場合、Aが、この建物がAの所有に属し
ないことを知らず、それを取得してBに移転できない場合は、BがAの所有に属しな
いことを知っていたときでも、Aは、Bの受けた損害を賠償しなければ、AB間の契
約を解除することができない。
3
AからBが建物を買い受ける契約を締結した場合、AがDに設定していた抵当権の実
行を免れるため、BがDに対しAの抵当債務を弁済した場合で、BがAB間の契約締
結の時に抵当権の存在を知っていたとき、Bは、Aに対し、損害の賠償請求はできな
いが、弁済額の償還請求はすることができる。
4
AからBが建物を買い受ける契約を締結した場合、Bが購入した土地の一部を第三者
Dが所有していた場合、Bがそのことを知っていたとしても、BはAに対して代金減
額請求をすることができる。
(解 説)
1
○
他人物売買は有効である。したがって、所有者Cが他に売却する意思がなく、売
主Aが買主Bに所有権を移転できなくても、AB間の売買契約は有効に成立する
(民法 560 条、最判昭 25.10.26)。
2
×
他人物と知らなかった売主Aは、損害を賠償して売買契約を解除することができ
る。しかし、買主Bが悪意であれば、損害賠償せず解除することができる(同法
562 条2項)
。
3
×
買主Bが、抵当権の実行を免れるために費用を支出した場合には、Bが抵当権の
存在を知っていても売主Aに費用の償還及び損害賠償を請求することができる
(同法 567 条2項・3項)
。
4
○
目的物の一部を第三者Dが所有し、買主Bに引渡しができない場合、Bは、悪意
でも売主Aに対し代金減額請求をすることができる(同法 563 条1項)
。
権利関係(民法・売主の担保責任・瑕疵担保責任)
1 売主AがBに売却した建物に隠れた瑕疵があった場合、Bは、この瑕疵がAの責めに
帰すべき事由により生じたものであることを証明した場合に限り、この瑕疵に基づき
行使できる権利を主張できる。
2
売主AがBに売却した建物に隠れた瑕疵があった場合、Bは、この売買契約を解除で
きない場合でも、この瑕疵により受けた損害につき、Aに対し賠償請求できる。
3
売主AがBに売却した建物に隠れた瑕疵があった場合、Bが、Aに対し、この瑕疵に
基づき行使できる権利は、Bが瑕疵を知った時から1年以内に行使しなければならな
い。
4 売主AがBに売却した建物に隠れた瑕疵があった場合、Bは、この瑕疵があるために、
この売買契約を締結した目的を達することができない場合に限り、この売買契約を解
除できる。
5
売主AがBに売却した建物に隠れた瑕疵があった場合、売買契約に、隠れた瑕疵につ
いてのAの瑕疵担保責任を全部免責する旨の特約が規定されていても、Aが知りなが
らBに告げなかった瑕疵については、Aは瑕疵担保責任を負わなければならない。
6
売主AがBに売却した建物に隠れた瑕疵があった場合、Bが不動産に隠れた瑕疵があ
ることを発見しても、当該瑕疵が売買契約をした目的を達成することができないとま
ではいえないような瑕疵である場合には、Aは瑕疵担保責任を負わない。
(解 説)
1
×
瑕疵担保責任は売主の無過失責任なので、買主Bは売主Aに過失があることを証
明することなく、瑕疵担保責任を追及することができる。
2
○
買主Bは、契約を解除できないときであっても、売主Aに対して、損害賠償を請
求できる(民法 570 条、566 条1項)
。
3
○
瑕疵担保責任に基づく契約の解除や損害賠償請求は、買主Bが瑕疵があることを
知った時から1年以内に限られる(同法 570 条、566 条3項)
。
4
○
買主Bは、契約の目的を達せられないときのみ、売買契約を解除することができ
る(同法 570 条、566 条1項)
。
5
○
売主が瑕疵担保責任を負わない旨の特約は有効である。ただし、売主Aが知りな
がら買主Bに告げなかった瑕疵については、Aは、原則どおり責任を負う(同法
572 条)
。
6
×
買主Bは、契約の目的を達することができないとまではいえない場合でも、損害
賠償の請求はできるので、売主Aは、瑕疵担保責任を負う(同法 570 条、566 条
1項)
。
権利関係(民法・注意義務)
1
ある物を借り受けた者は、無償で借り受けた場合も、賃料を支払う約束で借り受けた
場合も、善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。
2
委託の受任者は、報酬を受けて受任する場合も、無報酬で受任する場合も、善良な管
理者の注意をもって委任事務を処理する義務を負う。
3
商人ではない受寄者は、報酬を受けて寄託を受ける場合も、無報酬で寄託を受ける場
合も、自己の財産と同一の注意をもって寄託物を保管する義務を負う。
4
相続人は、相続放棄前はもちろん、相続放棄をした場合も、放棄によって相続人とな
った者が管理を始めるまでは、固有財産におけると同一の注意をもって相続財産を管
理しなければならない。
(解 説)
1
○
使用貸借及び賃貸借における借主は、借りた目的物の返還義務を負う。また、善
良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない(民法 400 条、593
条1項、601 条)。
2
○
委任契約の受任者は、報酬の有無に関係なく、善良な管理者の注意をもって、委
任事務を処理する義務を負う(同法 644 条)
。
3
×
無償の寄託は、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、寄託物を保管する
義務を負い(同法 659 条)
、有償の寄託は、善良な管理者の注意をもって、寄託物
を保管しなければならない。
4
○
相続人は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産を管理しな
ければならず(同法 918 条)、相続の放棄をした者は、相続人となった者が相続財
産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもっ
てその財産の管理を継続しなければならない(同法 940 条)
。
権利関係(民法・債権譲渡)
1
Aが、AのBに対する金銭債権をCに譲渡した場合、Aは、Cへの譲渡について、B
に対しては、Aの口頭による通知で対抗することができるが、第三者Dに対しては、
Bの口頭による承諾では対抗することができない。
2
Aが、AのBに対する金銭債権をCに譲渡した場合、Bは、譲渡の当時Aに対し相殺
適状にある反対債権を有するのに、異議をとどめないで譲渡を承諾したときは、善意
のCに対しこれをもって相殺をすることはできないが、Aが譲渡の通知をしたにとど
まるときは、相殺をすることができる。
3
Aが、AのBに対する金銭債権をCに譲渡した場合、Aが、Cに対する債務の担保と
して債権を譲渡し、Aの債務不履行があったとき、CからBに対して譲渡の通知をす
ることとしておけば、Cは、Aに代位して自己の名義で有効な譲渡の通知をすること
ができる。
4
指名債権が二重に譲渡され、確定日付のある各債権譲渡通知が同時に債務者に到達し
たときは、各債権譲受人は、債務者に対し、債権金額基準で接分した金額の弁済請求
しかできない。
5
指名債権の性質を持つ預託金会員制ゴルフクラブの会員権の譲渡については、ゴルフ
場経営会社が定める規定に従い会員名義書換えの手続を完了していれば、確定日付の
ある債権譲渡通知又は確定日付のある承諾のいずれもない場合でも、ゴルフ場経営会
社以外の第三者に対抗できる。
(解 説)
1
○
債権譲渡を第三者に対して対抗するには、確定日付のある証書による通知又は承
諾が必要である(民法 467 条1項・2項)
。
2 ○ 債権譲渡の際に相殺が可能な場合、債務者Bが異議をとどめないで承諾をすれば、
Bは、譲受人Cに対して相殺をすることはできないが、債権者Aが通知や異議を
とどめて承諾をすれば、相殺をすることができる(同法 468 条)
。
3 × 債権譲渡の通知は、譲渡人Aから債務者Bに対して行う(同法 467 条1項)
。譲受
人Cから債務者Bに対して行ってもCはBに対抗できない。
4
×
複数の確定日付のある通知が同時に債務者に到達した場合、各債権者は全額を請
求することができる(同法 467 条、最判昭 55.1.11)。
5
×
ゴルフクラブ会員権の譲渡を第三者に対抗するには、確定日付のある譲渡通知又
は確定日付のある承諾が必要である(同法 467 条、最判平 8.7.12)
。
権利関係(民法・保証と連帯保証)
1
保証人となるべき者が、主たる債務者と連絡を取らず、同人からの委託を受けないま
ま債権者に対して保証したとしても、その保証契約は有効に成立する。
2
保証人となるべき者が、口頭で明確に特定の債務につき保証する旨の意思表示を債権
者に対してすれば、その保証契約は有効に成立する。
3 AがBに 1,000 万円を貸し付け、Cが連帯保証人となった場合、Aは、自己の選択に
より、B及びCに対して、各別に又は同時に、1,000 万円の請求をすることができる。
4 AがBに 1,000 万円を貸し付け、Cが連帯保証人となった場合、Cは、Aからの請求
に対して、自分は保証人だから、まず主たる債務者であるBに対して請求するよう主
張することができる。
5 AがBに 1,000 万円を貸し付け、Cが連帯保証人となった場合、AがCに対して請求
の訴えを提起することにより、Bに対する関係で消滅時効の中断の効力が生ずること
はない。
6 AがBに 1,000 万円を貸し付け、Cが連帯保証人となった場合、CがAに対して全額
弁済した場合に、Bに対してAが有する抵当権を代位行使するためには、Cは、Aの
承諾を得る必要がある。
(解 説)
1
○
保証契約は、債権者と保証人との契約であり、主たる債務者の委託を受けない場
合でも有効である(民法 446 条1項)
。
2 × 保証契約は、書面又は電磁的記録で行わなければならない(同法 446 条 2 項・3
項)
。
3
○
債権者Aは、主たる債務者B及び連帯保証人Cに対して、各別に又は同時に履行
を請求することができる(同法 454 条)
。
4 × 連帯保証人Cには、催告の抗弁権がないので、Cは、「まず主たる債務者Bに請求
せよ」と主張することはできない(民法 452 条、454 条)
。
5
×
債権者Aが、連帯保証人Cに対し請求すれば、請求の効力は主たる債務者Bにも
及ぶので、Bについても消滅時効は中断する(同法 458 条、434 条)。
6
×
連帯保証人Cのように弁済をするについて正当な利益を有する者が弁済をすれば、
債権者Aの承諾がなくても当然に代位する(同法 500 条)
。
権利関係(民法・共有)
A、B及びCが、持分を各3分の1として甲土地を共有している場合に関する記述で、
民法の規定及び判例によって、正誤を答えなさい。
1 甲土地全体がDによって不法に占有されている場合、Aは単独でDに対して、Dの不
法占有によってA、B及びCに生じた損害全額の賠償を請求できる。
2
共有物たる甲土地の分割について共有者間に協議が調わず、裁判所に分割請求がなさ
れた場合、裁判所は、特段の事情があれば、甲土地全体をAの所有とし、AからB及
びCに対し持分の価格を賠償させる方法により分割することができる。
3
共有者の協議に基づかないでAから甲土地の占有使用を承認されたEは、Aの持分に
基づくものと認められる限度で甲土地を占有使用することができる。
4
A、B及びCが甲土地について、Fと賃貸借契約を締結している場合、AとBが合意
すれば、Cの合意はなくとも、賃貸借契約を解除することができる。
5
A、B及びCは、5年を超えない期間内は甲土地を分割しない旨の契約を締結するこ
とができる。
6
Aがその持分を放棄した場合には、その持分は所有者のない不動産として、国庫に帰
属する。
(解 説)
1 × 不法占拠者からの損害賠償金は分割できるものであるので、各共有者は持分の割
合においてのみ、損害賠償を請求することができる(最判昭 51.9.7)
。
2
○
裁判による分割においては、共有物を共有者の1人Aに所有させ、他の共有者に
持分の価格を賠償させる方法によることができる(民法 258 条1項、最判平
8.10.31)
。
3
○
共有者Aから共有物の占有使用を承認された者Eは、Aの持分の範囲内で共有物
を占有使用することができる。
4
○
賃貸借契約の解除は共有物の管理に該当し、各共有者の持分の価格に従い、過半
数の合意があれば当該契約を解除することができる(同法 252 条)。
5 ○ 各共有者は、5年を超えない期間内は分割しない旨の契約をすることができる(同
法 256 条1項ただし書)
。
6 × 共有者の1人Aが持分を放棄したときは、Aの持分は、他の共有者に帰属する(同
法 255 条)
。
権利関係(抵当権・賃借人の保護)
1
抵当権の被担保債権につき保証人となっている者は、抵当不動産を買い受けて第三取
得者になれば、抵当権消滅請求をすることができる。
2
抵当不動産の第三取得者は、当該抵当権の実行としての競売による差押えの効力が発
生した後でも、売却の許可の決定が確定するまでは、抵当権消滅請求をすることがで
きる。
3 BはAに対して自己所有の甲建物に平成 25 年4月1日に抵当権を設定し、Aは同日付
でその旨の登記をした。また、Bは平成 26 年 12 月1日に甲建物をCに期間2年の約
定で賃貸し、同日付で引き渡していた。この場合、Cはこの賃貸借をAに対抗できる。
4 BはAに対して自己所有の甲建物に平成 26 年4月1日に抵当権を設定し、Aは同日付
でその旨の登記をした。また、Bは、平成 26 年2月1日に甲建物をDに期間4年の約
定で賃貸し、同日付で引き渡していた。この場合、Dはこの賃貸借をAに対抗できる。
5 Aは、Bから借り入れた 2,400 万円の担保として第一順位の抵当権が設定されている
甲土地を所有している。Aは、さらにEから 1,600 万円の金銭を借り入れ、その借入
金全額の担保として甲土地に第二順位の抵当権を設定した。Bの抵当権設定後、Eの
抵当権設定前にAとの間で期間を2年とする甲土地の賃貸借契約を締結した借主Fは、
Bの同意の有無にかかわらず、2年間の範囲で、Bに対しても賃借権を対抗すること
ができる。
(解 説)
1
×
主たる債務者、保証人及びこれらの者の承継人は、抵当権の消滅請求をすること
ができない(民法 380 条)
。
2
×
抵当不動産の第三取得者は、抵当権の実行としての競売による差押えの効力が発
生する前に、抵当権消滅請求をしなければならない(同法 382 条)
。
3 × 賃借権による建物の引渡しが抵当権の設定登記よりも後なので、建物賃借人Cは、
抵当権者Aに対して賃借権を対抗できない(借地借家法 31 条1項、民法 177 条)
。
4 ○ 賃借権による建物の引渡しが抵当権の設定登記よりも先なので、建物賃借人Dは、
抵当権者Aに対して、賃借権を対抗できる(借地借家法 31 条1項、民法 177 条)
。
5
×
抵当権設定登記以後の賃借権は、登記済抵当権者全員の同意があり、かつ、その
同意の登記がなければ、その抵当権者に対抗できない(同法 387 条1項)
。
権利関係(根抵当権)
1
根抵当権は、根抵当権者が債務者に対して有する現在及び将来の債権をすべて担保す
るという内容で、設定することができる。
2
根抵当権の極度額は、いったん登記がされた後は、後順位担保権者その他の利害関係
者の承諾を得た場合でも、増額することはできない。
3 根抵当権者は、総額が極度額の範囲内であっても、被担保債権の範囲に属する利息の
請求権については、その満期となった最後の2年分についてのみ、その根抵当権を行
使することができる。
4
元本の確定前に根抵当権者から被担保債権の範囲に属する債権を取得した者は、その
債権について根抵当権を行使することはできない。
5
根抵当権設定者は、担保すべき元本の確定すべき期日の定めがないときは、一定期間
が経過した後であっても、担保すべき元本の確定を請求することはできない。
6
根抵当権設定者は、元本の確定後であっても、その根抵当権の極度額を、減額するこ
とを請求することはできない。
(解 説)
1
×
根抵当権は、一定の範囲に属する不特定の債権について、一定の種類の取引によ
って生じるものに限定して設定できる(民法 398 条の2第1項)
。
2
×
極度額の増額変更は、登記後であっても、後順位抵当権者などの利害関係人の承
諾を得ればすることができる(同法 398 条の5)
。
3
×
根抵当権において、極度額の範囲で、元本、利息等の全部について、根抵当権を
行使することができる(同法 398 条の3第1項)
。したがって、利息が満期となっ
た2年分に限るわけではない。
4
○
元本の確定前の根抵当権は随伴性を有しない。したがって、元本の確定前に根抵
当権者から債権を取得した者は、その債権について根抵当権を行使することはで
きない(同法 398 条の7第1項)
。
5
×
根抵当権設定者は、根抵当権の設定の日から3年を経過したときは、担保すべき
元本の確定を請求することができる(同法 398 条の 19 第1項)
。
6
×
元本の確定後は、根抵当権設定者は、極度額を現に存する債務の額と以後2年間
に生ずべき利息等の額を加えた額に減額することを請求することができる(同法
398 条の 21 第1項)。
権利関係(不法行為・使用者責任)
1
事業者Aが雇用している従業員Bの不法行為がAの事業の執行につき行われたもので
あり、Aに使用者としての損害賠償責任が発生する場合、Bには被害者に対する不法
行為に基づく損害賠償責任は発生しない。
2
事業者Aが雇用している従業員Bが営業時間中にA所有の自動車を運転して取引先に
行く途中に前方不注意で人身事故を発生させても、Aに無断で自動車を運転していた
場合、Aに使用者としての損害賠償責任は発生しない。
3
事業者Aが雇用している従業員Bの不法行為がAの事業の執行につき行われたもので
あり、Aが使用者としての損害賠償責任を負担した場合、A自身は不法行為を行って
いない以上、Aは負担した損害額の2分の1をBに対して求償できる。
4
Aの被用者Bが、Aの事業の執行につきCとの間の取引において不法行為をし、Cか
らAに対し損害賠償の請求がされた場合、Bの行為が、Bの職務行為そのものには属
しない場合でも、その行為の外形から判断して、Bの職務の範囲内に属すると認めら
れるとき、Aは、Cに対して使用者責任を負うことがある。
5
Aの被用者Bが、Aの事業の執行につきCとの間の取引において不法行為をし、Cか
らAに対し損害賠償の請求がされた場合、Bが職務権限なくその行為を行っているこ
とをCが知らなかった場合で、そのことにつきCに重大な過失があるとき、Aは、C
に対して使用者責任を負わない。
(解 説)
1
×
使用者Aは使用者責任を負う場合でも、被用者Bは自身の不法行為に基づく損害
賠償責任を負う(民法 715 条、709 条、最判昭 46.9.30)。
2
×
被用者Bが使用者Aに無断で自動車を運転した場合でも、外形から判断して事業
の執行によって被害者に損害を加えている場合、Aは、使用者責任を負う(同法
715 条1項、最判昭 39.2.4)
。
3 × 使用者Aが損害賠償責任を負担した場合、被用者Bに対し信義則上相当と認めら
れる限度において求償することができる(同法 715 条3項、最判昭 51.7.8)
。
4
○
加害者Bの行為が職務行為でなくても、外形から判断して職務の範囲内に属する
と認められれば、使用者Aは使用者責任を負う(同法 715 条1項、最判昭 39.2.4)
。
5
○
使用者Aは、被用者Bの行為が職務権限外の行為であることを、重大な過失があ
って知らなかった被害者Cに対しては、使用者責任を負わない(同法 715 条1項、
最判昭 42.11.2)。
権利関係(民法・取得時効)
1
Bは所有の意思をもって、平穏かつ公然にA所有の甲土地を占有している場合、Bの
父が 15 年間所有の意思をもって平穏かつ公然に甲土地を占有し、Bが相続によりその
占有を承継した場合でも、B自身がその後5年問占有しただけでは、Bは、時効によ
って甲土地の所有権を取得することができない。
2
Bは所有の意思をもって、平穏かつ公然にA所有の甲土地を占有している場合、Bが
2年間自己占有し、引き続き 18 年間Cに賃貸していた場合には、Bに所有の意思があ
っても、Bは、時効によって甲土地の所有権を取得することができない。
3
Bは所有の意思をもって、平穏かつ公然にA所有の甲土地を占有している場合、Dが
Bの取得時効完成前にAから甲土地を買い受けた場合には、Dの登記がBの取得時効
完成の前であると後であるとを問わず、Bは、登記がなくても、時効による甲土地の
所有権の取得をDに対抗することができる。
4
A所有の土地の占有者がAからB、BからCと移った場合、Bが平穏・公然・善意・
無過失に所有の意思をもって8年間占有し、CがBから土地の譲渡を受けて2年間占
有した場合、当該土地の真の所有者はBではなかったとCが知っていたとしても、C
は 10 年の取得時効を主張できる。
5
A所有の土地の占有者がAからB、BからCと移った場合、Bが所有の意思をもって
5年間占有し、CがBから土地の譲渡を受けて平穏・公然に5年間占有した場合、C
が占有の開始時に善意・無過失であれば、Bの占有に瑕疵があるかどうかにかかわら
ず、Cは 10 年の取得時効を主張できる。
(解 説)
1 × 占有期間が、前の占有者である父の占有期間と併せて 20 年あれば、Bは、前占有
者の悪意を承継しても時効は完成する(民法 187 条1項、162 条1項)
。
2
×
占有は賃貸人が間接的に占有しているときでも構わない。したがって、BC併せ
て 20 年の占有となり、Bに所有の意思があれば、時効は完成する(同法 181 条、
162 条1項)
。
3
○
時効により所有権を取得したBは、時効完成前に取得したDに対して、登記がな
くても所有権を主張することができる(同法 177 条、大判大 7.3.2)
。
4
○
Cが前の占有者Bの占有と併せて主張するときは、Bの善意悪意を引き継ぐ(同
法 187 条)
。Bは善意無過失だったため、10 年で時効が完成する(同法 162 条2
項)
。
5
×
CがBの占有と併せて主張する場合、Bが悪意又は有過失により占有の開始をす
れば、時効完成には 20 年が必要である(同法 187 条、162 条1項)
。
権利関係(民法・時効の中断)
1 AがBに対して有する 100 万円の貸金債権を有していた場合、AB間に裁判上の和解
が成立し、Bが1年後に 100 万円を支払うことになった場合、Aの債権の消滅時効期
間は、和解成立の時から 10 年となる。
2 AがBに対して有する 100 万円の貸金債権を有していた場合、AがBの不動産に抵当
権を有している場合に、Cがこの不動産に対して強制執行の手続を行ったときは、A
がその手続に債権の届出をしただけで、Aの債権の時効は中断する。
3
AのDに対する債権について、Dが消滅時効の完成後にAに対して債務を承認した場
合には、Dが時効完成の事実を知らなかったとしても、Dは完成した消滅時効を援用
することはできない。
4 Aは、Bに対し建物を賃貸し、月額 10 万円の賃料債権を有している。この場合、Aが
Bに対する賃料債権につき支払督促の申立てをし、さらに期間内に適法に仮執行の宣
言の申立てをしたときは、消滅時効は中断する。
5 Aは、Bに対し建物を賃貸し、月額 10 万円の賃料債権を有している。この場合、Aが
Bに対する賃料債権につき内容証明郵便により支払を請求したときは、その請求によ
り消滅時効は中断する。
(解 説)
1 × 消滅時効は、100 万円を支払うよう請求することができる「裁判上の和解成立の1
年後」から進行する(民法 166 条1項)
。
2 × Aが強制執行の手続に債権の届出をしただけでは、
「請求」に該当しないので、消
滅時効は中断しない(同法 147 条1号、最判平元 10.13)
。
3
○
消滅時効の完成後にその債務を承認したときは、消滅時効の完成を知らなかった
ときでも、その完成した消滅時効の援用をすることは許されない(同法 146 条、
最大判昭 41.4.20)
。
4 ○ 支払督促の申立てをした場合で、民事訴訟法 392 条の規定する期間内に仮執行の
宣言の申立てをしたとき、消滅時効は中断する(同法 150 条)
。
5
×
内容証明郵便により支払を請求する行為は催告であり、この催告は、6カ月以内
に、裁判上の請求、支払督促の申立てなどをしなければ、時効の中断の効力を生
じない(同法 153 条)
。
権利関係(民法・相続人・相続分)
1
Aが死亡し、配偶者B、Bとの婚姻前に縁組した養子C、Bとの間の実子D(Aの死
亡より前に死亡)
、Dの実子E及びFがいる場合、BとCとEとFが相続人となり、E
とFの法定相続分はいずれも1/8となる。
2
Aが死亡し、配偶者B、母G、兄Hがいる場合、Hは相続人とならず、BとGが相続
人となり、Gの法定相続分は1/4となる。
3
Aが死亡し、その死亡前1年以内に離婚した元配偶者Jと、Jとの間の未成年の実子
Kがいる場合、JとKが相続人となり、JとKの法定相続分はいずれも1/2となる。
4
Aが死亡し、AとBが婚姻中に生まれたAの子Cは、AとBの離婚の際、親権者をB
と定められたが、Aがその後再婚して、再婚にかかる配偶者がいる状態で死亡したと
きは、Cには法定相続分はない。
5
Aが死亡し、Aに実子がなく、3人の養子がいる場合、法定相続分を有する養子は2
人に限られる。
(解 説)
1
○
法定相続分は、配偶者Bが1/2、養子Cが1/4、Dの実子E、FはDを代襲
して各1/8となる(民法 900 条1号・4号、901 条1項)
。
2
×
相続人は配偶者Bと第2順位の母Gとなり、法定相続分は、配偶者Bが2/3、
母Gが1/3となる(同法 889 条1項1号、900 条2号)
。
3
×
被相続人が死亡したときに既に離婚していた元配偶者Jは相続人とはならない。
この場合、実子Kのみが相続人となる(同法 887 条1項)。
4
×
離婚し親権を失ったり、再婚しても、CはAの子であることに変わりなく、子と
して法定相続分がある(同法 887 条1項)
。
5 × 法定相続分を有する養子に人数制限はない(同法 887 条1項)
。
権利関係(民法・相続手続)
1 相続の放棄をする場合、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
2
相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをする
ことができる。
3
相続人が、自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月(家庭裁判所
が期間の伸長をした場合は当該期間)以内に、限定承認又は放棄をしなかったときは、
単純承認をしたものとみなされる。
4
被相続人の子が、相続の開始後に相続放棄をした場合、その者の子がこれを代襲して
相続人となる。
5 AがBに対して 1,000 万円の貸金債権を有していたところ、Bが相続人C及びDを残
して死亡した場合、Cが単純承認を希望し、Dが限定承認を希望した場合には、相続
の開始を知った時から3カ月以内に、Cは単純承認を、Dは限定承認をしなければな
らない。
6 AがBに対して 1,000 万円の貸金債権を有していたところ、Bが相続人C及びDを残
して死亡した場合、C及びDが相続開始の事実を知りながら、Bが所有していた財産
の一部を売却した場合には、C及びDは相続の単純承認をしたものとみなされる。
(解 説)
1
○
相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない
(民法 938 条)
。
2
○
相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみするこ
とができる(同法 923 条)
。
3
○
熟慮期間内に限定承認又は放棄をしなかったときは、単純承認をしたものとみな
される(同法 921 条 2 号)
。
4
×
被相続人の子が相続放棄をした場合、その者の子は代襲相続をすることはできな
い(同法 939 条)。
5 × 限定承認は共同相続人の全員が共同してする必要がある(同法 923 条)。Cが単純
承認をすれば、Dは限定承認ができない。
6
○
C及びDが相続財産の一部を売却したときは、C及びDは、単純承認をしたもの
とみなされる(同法 921 条1号)
。
権利関係(民法・遺言)
1 自筆証書による遺言をする場合、証人2人以上の立会いが必要である。
2
自筆証書による遺言書を保管している者が、相続の開始後、これを家庭裁判所に提出
してその検認を経ることを怠り、そのままその遺言が執行された場合、その遺言書の
効力は失われる。
3
適法な遺言をした者が、その後更に適法な遺言をした場合、前の遺言のうち後の遺言
と抵触する部分は、後の遺言により取り消したものとみなされる。
4
自筆証書遺言は、その内容をワープロ等で印字していても、日付と氏名を自書し、押
印すれば、有効な遺言となる。
5 未成年者であっても、15 歳に達した者は、有効に遺言をすることができる。
6 夫婦又は血縁関係がある者は、同一の証書で有効に遺言をすることができる。
(解 説)
1 × 自筆証書による遺言をする場合には証人の立会いは必要ない(民法 968 条1項)
。
証人の立会いが必要なのは公正証書遺言の場合である(同法 969 条1号)
。
2 × 自筆証書遺言の保管者は検認を請求しなければならないが(同法 1004 条1項)
、
これを怠ったとしても遺言書の効力は失われない。
3
○
前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分は、後の遺言で前の遺
言を撤回したものとみなされる(同法 1023 条1項)。
4
×
自筆証書遺言は、遺言者が全文、日付、氏名を自書し、これに印を押さなければ
ならない(同法 968 条1項)
。
5 ○ 未成年者でも 15 歳に達した者は、有効に遺言をすることができる(同法 961 条)
。
6 × 遺言は2人以上の者が同一の証書ですることはできない(同法 975 条)
。
権利関係(不動産登記法・表示の登記)
1
所有権の登記がない土地と所有権の登記がある土地との合筆の登記は、することがで
きない。
2 登記の申請をする者の委任による代理人の権限は、本人の死亡によっては、消滅しな
い。
3
承役地についてする地役権の設定の登記は、要役地に所有権の登記がない場合におい
ても、することができる。
4
地目が田である土地と地目が宅地である土地を合併する合筆の登記をすることはでき
ない。
5
所有権の登記名義人が異なる土地を合併して共有地とする合筆の登記をすることはで
きない。
(解 説)
1
○
所有権の登記がない土地と所有権の登記がある土地との合筆の登記はすること
ができない(不動産登記法 41 条5号)
。
2
○
登記申請者が委任した代理人の権限は、本人が死亡しても消滅しない(同法 17
条1号)
。
3 ×
要役地に所有権の登記がないときは、承役地に地役権の設定の登記をすることが
できない(同法 80 条3項)
。
4 ○
地目が相互に異なる土地の合筆の登記は、
することができない
(同法 41 条2号)
。
5
所有権の登記名義人が相互に異なる土地の合筆の登記は、することができない
○
(同法 41 条3号)
。
権利関係(不動産登記法・仮登記)
1
仮登記は、登記の申請に必要な手続上の条件が具備しない場合に限り、仮登記権利者
が単独で申請することができる。
2
仮登記権利者は、裁判所の仮登記を命じる処分の決定書正本を提供するときでなけれ
ば、単独で仮登記の申請をすることができない。
3
仮登記の抹消の申請は、申請情報と併せてその仮登記の登記識別情報を提供して、登
記上の利害関係人が単独ですることができる。
4
仮登記の抹消の申請は、申請情報と併せて仮登記名義人の承諾書を提供して、登記上
の利害関係人が単独ですることができる。
5
仮登記の登記義務者の承諾がある場合であっても、仮登記権利者は単独で当該仮登記
の申請をすることができない。
(解 説)
1
×
仮登記は、登記の申請に必要な手続上の条件が具備しない場合のほか、権利設定
等に関する請求権を保全する場合も申請できる(不動産登記法 105 条)。
2
×
裁判所の仮登記を命ずる処分があるときのほか、仮登記の登記義務者の承諾があ
る場合も、仮登記権利者は単独で仮登記の申請をすることができる(同法 107 条
1項)
。
3
×
仮登記の登記上の利害関係人は、仮登記名義人の承諾があれば、単独で抹消の申
請をすることができるが、仮登記の登記識別情報を提供しただけでは、単独で抹
消の申請はできない(同法 110 条)
。
4
○
仮登記の登記上の利害関係人は、仮登記の登記名義人の承諾があれば、単独で仮
登記の抹消を申請できる(同法 110 条)
。
5
×
仮登記の登記義務者の承諾があれば、仮登記権利者は、単独で仮登記の申請をす
ることができる(同法 107 条1項)
。
権利関係(賃貸借・借地借家法1)
1
AがB所有の建物について賃貸借契約を締結し、引渡しを受けた場合、AがBの承諾
なく当該建物をCに転貸しても、この転貸がBに対する背信的行為と認めるに足りな
い特段の事情があるときは、BはAの無断転貸を理由に賃貸借契約を解除することは
できない。
2
AがB所有の建物について賃貸借契約を締結し、引渡しを受けた場合、AがBの承諾
を受けてDに対して当該建物を転貸している場合には、AB間の賃貸借契約がAの債
務不履行を理由に解除され、BがDに対して目的物の返還を請求しても、AD間の転
貸借契約は原則として終了しない。
3 AはBに対し甲建物を月 20 万円で賃貸し、Bは、Aの承諾を得たうえで、甲建物の一
部をCに対し月 10 万円で転貸している。この場合、転借人Cは、賃貸人Aに対しても、
月 10 万円の範囲で、賃料支払義務を直接に負担する。
4 AはBに対し甲建物を月 20 万円で賃貸し、Bは、Aの承諾を得たうえで、甲建物の一
部をCに対し月 10 万円で転貸している。この場合、賃貸人Aは、AB間の賃貸借契約
が期間の満了によって終了するときは、転借人Cに対しその旨の通知をしなければ、
賃貸借契約の終了をCに対し対抗することができない。
(解 説)
1
○
賃貸人Bに無断で賃借物を転貸し、転借人Cに使用収益をさせても、背信的行
為と認めるに足りない特段の事情があれば、Bは賃貸借契約を解除することは
できない(民法 612 条2項、最判昭 28.9.25)
。
2
×
賃貸人Bが賃借人Aの債務不履行を理由に契約を解除した場合、賃借人Aは転
借人Dに使用収益させることができなくなるので、転貸借契約は終了する(同
法 613 条、最判昭 36.12.21)
。
3 ○ 転借人Cは、転借料(月 10 万円)が賃料(月 20 万円)より少額であれば、転
借料の範囲で、賃貸人Aに対して支払う義務を負う(同法 613 条1項)。
4
○
賃貸借契約が期間満了により終了する場合、賃貸人Aは転借人Cにその旨を通
知しなければ賃貸借の終了を対抗できない(借地借家法 34 条1項)
。
権利関係(賃貸借・借地借家法2)
1
Aは、BからB所有の建物を賃借し敷金をBに交付した。この場合、敷金返還請求権
は、賃貸借契約と不可分であり、Aは、Bの承諾があったとしても、これをAの債権
者に対して担保提供することができない。
2
Aは、BからB所有の建物を賃借し敷金をBに交付した。この場合、賃貸借契約が終
了した場合、建物明渡債務と敷金返還債務とは常に同時履行の関係にあり、Aは、敷
金の支払と引換えにのみ建物を明け渡すと主張できる。
3
Aは、BからB所有の建物を賃借し敷金をBに交付した。この場合、Bは、Aの、賃
貸借契約終了時までの未払賃料については、敷金から控除できるが、契約終了後明渡
しまでの期間の賃料相当損害額についても、敷金から控除できる。
4 Aは、自己所有の甲建物(居住用)をBに賃貸し、引渡しも終わり、敷金 50 万円を受
領した。この場合、Aが甲建物をCに譲渡し、所有権移転登記を経た場合、Bの承諾
がなくとも、敷金が存在する限度において、敷金返還債務はAからCに承継される。
5 Aは、自己所有の甲建物(居住用)をBに賃貸し、引渡しも終わり、敷金 50 万円を受
領した。この場合、BがAの承諾を得て賃借権をDに移転する場合、賃借権の移転合
意だけでは、敷金返還請求権(敷金が存在する限度に限る。
)はBからDに承継されな
い。
(解 説)
1
×
賃貸借契約期間中であっても、敷金返還請求権を賃借人の債権者に対して質権を
設定するなど、担保として提供することができる(最判昭 48.2.2)
。
2
×
特別の約定がない限り、建物の明渡しが先で、敷金返還がその後となるので、同
時履行の関係ではない(最判昭 49.9.2)
。
3
○
賃貸人は、賃貸借契約終了時までの未払賃料だけでなく、契約終了後明渡しまで
の間の賃料相当分の損害金も敷金から控除できる
(大判大 15.7.12、
最判昭 48.2.2)
。
4
○
賃貸人Aが建物を譲渡した場合、敷金に関する権利義務は、賃借人Bの承諾がな
くとも、建物を取得した新賃貸人Cに承継される(最判昭 44.7.17)
。
5
○
建物賃貸人Aの承諾を得て、賃借人Bが建物賃借権を譲渡する場合、特段の事情
がなければ、敷金返還請求権は新賃借人Dに承継されない(最判昭 53.12.22)。
権利関係(賃貸借・借地借家法3)
1
期間の定めのある建物賃貸借において、賃貸人が、期間満了の1年前から6月前まで
の間に、更新しない旨の通知を出すのを失念したときは、賃貸人に借地借家法第 28 条
に定める正当事由がある場合でも、契約は期間満了により終了しない。
2 期間の定めのある建物賃貸借において、賃貸人が、期間満了の 10 月前に更新しない旨
の通知を出したときで、
その通知に借地借家法第 28 条に定める正当事由がある場合は、
期間満了後、賃借人が使用を継続していることについて、賃貸人が異議を述べなくて
も、契約は期間満了により終了する。
3 期間の定めのある契約が法定更新された場合、その後の契約は従前と同一条件となり、
従前と同一の期間の定めのある賃貸借契約となる。
4
期間の定めのない契約において、賃貸人が、解約の申入れをしたときで、その通知に
借地借家法第 28 条に定める正当事由がある場合は、解約の申入れの日から3月を経過
した日に、契約は終了する。
5 Aは、B所有の甲建物につき、居住を目的として、期間2年、賃料月額 10 万円と定め
た賃貸借契約(以下「本件契約」という。)をBと締結して建物の引渡しを受けた。こ
の場合、本件契約期間中にBが甲建物をCに売却した場合、Aは甲建物に賃借権の登
記をしていなくても、Cに対して甲建物の賃借権があることを主張することができる。
(解 説)
1
○
期間の定めがある場合、期間満了の1年前から6カ月前までの間に相手方に更新
しない旨の通知をしなければ更新したものとみなされる
(借地借家法 26 条1項)
。
2
×
賃借人が期間満了後に使用していることについて、賃貸人が遅滞なく異議を述べ
なければ、更新したものとみなされる(同法 26 条2項)
。
3
×
法定更新後の契約は従前と同一の条件ですが、期間については定めがないものと
される(同法 26 条1項)
。
4
×
期間の定めがない契約の場合、賃貸人から正当事由をもって解約の申入れをした
ときは、申入れの日から6カ月後に賃貸借の契約は終了する(同法 27 条1項)。
5
○
賃借権の登記がなくても、建物の引渡しがあれば、その後物件を取得した者に対
抗できる(同法 31 条1項)
。
権利関係(定期借家権)
平成 15 年 10 月に新規に締結しようとしている、契約期間が2年で、更新がないことと
する旨を定める建物賃貸借契約(以下「定期借家契約」という。)に関する次の記述のうち、
借地借家法の規定によれば、正しいものはどれか。
1
事業用ではなく居住の用に供する建物の賃貸借においては、定期借家契約とすること
はできない。
2 定期借家契約は、公正証書によってしなければ、効力を生じない。
3
定期借家契約を締結しようとするときは、賃貸人は、あらかじめ賃借人に対し、契約
の更新がなく、期間満了により賃貸借が終了することについて、その旨を記載した書
面を交付して説明しなければならない。
4
定期借家契約を適法に締結した場合、賃貸人は、期間満了日の1カ月前までに期間満
了により契約が終了する旨の通知をすれば、その終了を賃借人に対抗できる。
(解 説)
1 × 定期建物賃貸借の対象となる建物の用途に制限はない(借地借家法 38 条1項・5
項)
。
2 × 定期建物賃貸借は公正証書による等書面により契約する(同法 38 条1項)
。公正
証書に限定されていない。
3
○
賃貸人は、定期建物賃貸借契約前に、賃借人に対し、更新がなく期間の満了によ
り終了する旨の書面を交付して説明する必要がある(同法 38 条2項)
。
4
×
期間満了の1年前から6カ月前までの間に、期間満了により契約が終了する旨の
通知をすれば、終了を賃借人に対抗できる(同法 38 条4項)
。
権利関係(区分所有法)
1
数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部
の共用に供されるべき建物の部分は、区分所有権の目的とならない。
2
形状又は効用の著しい変更を伴わない共用部分の変更については、規約に別段の定め
がない場合は、区分所有者及び議決権の各過半数による集会の決議で決することがで
きる。
3
一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものについての区分
所有者全員の規約の設定、変更、又は廃止は、当該一部共用部分を共用すべき区分所
有者全員の承諾を得なければならない。
4
集会の招集の通知は、会日より少なくとも2週間前に発しなければならないが、この
期間は規約で伸縮することができる。
5
集会においては、建物の区分所有等に関する法律で集会の決議につき特別の定数が定
められている事項を除き、規約で別段の定めをすれば、あらかじめ通知した事項以外
についても決議することができる。
6 集会の議事録が書面で作成されているときは、議長及び集会に出席した区分所有者の
2人がこれに署名しなければならないが、押印は要しない。
7
規約の保管場所は、建物内の見やすい場所に掲示しなければならないが、集会の議事
録の保管場所については掲示を要しない。
8
最初に建物の専有部分の全部を所有する者は、公正証書により、建物の共用部分を定
める規約を設定することができる。
9
規約を保管する者は、利害関係人の請求があったときは、正当な理由がある場合を除
いて、規約の閲覧を拒んではならない。
10 規約の保管場所は、各区分所有者に通知するとともに、建物内の見やすい場所に掲示
しなければならない。
(解 説)
1 ○ 構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分は、区分
所有権の目的とはならない(区分所有法4条1項)
。
2
○
軽微な共用部分の変更は、規約に別段の定めがなければ、普通決議により決める
ことができる(同法 17 条 1 項かっこ書)
。
3
×
区分所有者全員の利害に関係しない一部共用部分に関する事項についての区分所
有者全員の規約の設定等は、一部共用部分を共用する区分所有者の1/4を超え
る者又はその議決権の1/4を超える議決権を有する者が反対したときはするこ
とができない(同法 31 条2項)
。
4
×
集会の招集の通知は、会日より少なくとも1週間前に発しなければならず、この
期間は規約で伸縮することができる(同法 35 条1項)
。
5 ○
区分所有法で集会の決議について特別の定数が定められている事項を除き、規約
で別段の定めをすれば、あらかじめ通知した事項以外の事項についても決議する
ことができる(同法 37 条2項)
。
6 ×
議事録が書面であれば、議長及び集会に出席した区分所有者の2人が議事録に署
名押印しなければならない(同法 42 条3項)
。
7 ×
規約及び集会の議事録の保管場所は、建物内の見やすい場所に掲示しなければな
らない(同法 33 条3項、42 条5項)
。
8 ○
最初に建物の専有部分の全部を所有する者は、公正証書により、建物の共用部分
を定める規約を設定することができる(同法 32 条)
。
9 ○
規約保管者は、利害関係人の請求があったときは、正当な理由がある場合を除い
て、規約の閲覧を拒んではならない(同法 33 条2項)
。
10
×
規約の保管場所は、建物内の見やすい場所に掲示しなければならない(同法 33
条3項)
。しかし、保管場所を各区分所有者に対して通知する必要はない。