アイルランドの緊急融資要請について

ご参考資料(情報提供用資料)
平成 22 年 11 月 22 日
アイルランドの緊急融資要請について
財政・金融危機に直面しているアイルランド政府は 11 月 21 日(日本時間 22 日未明)、欧州連
合(EU)と国際通貨基金(IMF)に対し緊急融資を要請しました。これを受けて EU は加盟国財務
相の協議により同国支援を決定し、IMF は複数年の融資提供の用意があることを表明していま
す。EU と IMF は総額 7,500 億ユーロ(約 86 兆円)の「欧州金融安定化基金」を活用する方針で、
こうした緊急融資はギリシャに次いで 2 例目となります。
大手金融機関に対する公的資金注入に伴い拡大した財政赤字
アイルランドがこのような財政・金融面での支援を求めた背景には、2008 年の金融危機以降に
経営が行き詰まった国内大手銀行を国有化したことなどが重荷となって、財政状況が悪化している
ことがあります。
政府は今年 9 月末、大手金融機関に対する公的資金注入総額を約 500 億ユーロに拡大させるこ
とを決定し、これにより 2010 年の財政赤字は国内総生産(GDP)の 32%に達する見込みとなりまし
た(政府当初見通しは 11.6%)。そのため、政府は 10 月 26 日に 4 年間で総額 150 億ユーロの財政
緊縮策を発表し、財政赤字を 2014 年までに GDP 比で 3%以内に抑制する方針を示しました。しか
しながら、10 月 28 日の EU 首脳会議でドイツとフランスが、財政危機に陥った国を救済する代わり
に国債保有者に損失負担を義務づけると提案したことをきっかけに、アイルランド 10 年国債利回り
は一時 9.1%まで急上昇し、ドイツ国債に対する上乗せ金利は過去最大水準まで拡大しました。ア
イルランドは 2011 年半ばまでの国債償還金等の資金繰りは手当てしたとしているものの、銀行救
済費用が今後更に拡大するとの見方から信用不安懸念が広がるなか、アイルランド政府は事実上
自主再建を断念し、緊急融資を正式に要請したものとみられます。
緊急融資要請については、EU と IMF の支援以外に、ユーロに参加していない英国とスウェーデ
ンがアイルランドへの 2 国間融資を用意する意向を表明しています。G7 財務相は共同で金融支援
要請を歓迎するとの声明を発表するとともに、アイルランドの決定を全面的に支持すると表明しまし
た。また、アイルランドのカウエン首相は、金融支援に関する合意が今後数週間で成立するとの見
解を示し、レニハン財務相は融資の規模が 1,000 億ユーロ(約 11 兆 4,500 億円)を下回る見通しと
しています。
先行きの不透明感は後退、正式要請を受けた欧州市場の動向に注目
こうした動きを受けて、アイルランドを巡る先行き不透明感が後退したことを好感し、22 日正午現
在の東京外国為替市場では、ユーロが対ドルで 1.37 ドル台半ば、対円で 114 円台後半と先週末比
それぞれ約 0.6%、0.5%上昇しています。また東京株式市場でも欧州財政不安後退やユーロ高円
安が好材料視され、堅調な動きとなりました。先週後半から、海外市場でも支援要請を織り込んだ
動きが一部みられており、正式要請を受けた欧州市場の動向が注目されます。
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