心腎連関に切り込む - リオナ.jp 鳥居薬品 医療関係者向け情報

The 59th Annual Meeting of the Japanese Society of Nephrology, Luncheon Seminar 22
第59回日本腎臓学会学術総会「ランチョンセミナー 22」
心腎連関に切り込む
開催日:2016年6月18日(土) 場所:パシフィコ横浜 会議センター 503(Room12)
司会:平方
秀樹 先生(福岡腎臓内科クリニック 院長)
深川 雅史 先生(東海大学医学部内科学系 腎内分泌代謝内科 教授)
演者:濱野 高行 先生(大阪大学大学院医学系研究科 腎疾患統合医療学 寄附講座准教授)
風間 順一郎 先生(新潟大学医歯学総合病院 血液浄化療法部 准教授/
福島県立医科大学 医学部腎臓高血圧内科学講座 主任教授)
Hideki HIRAKATA
Masafumi FUKAGAWA
Takayuki HAMANO
Junichiro KAZAMA
慢性腎臓病
(CKD)
に伴う骨・ミネラル代謝異常
(CKD-MBD)
にも変更が加えられた。
における高リン血症治療薬としてクエン酸第二鉄水和物
こうした新しい流れのなか、貧血の有無にかかわらず鉄
(商品名:リオナ 錠 250mg)が発売され 2 年が経過した。
欠乏がさまざまな病態に関連することが注目されつつある。
この 2 年間にリン代謝と鉄代謝の繋がりについて、新しい
本セミナーでは、
「 心腎連関に切り込む」というテーマで、
知見が数多く発表された。また年初にはわが国の腎性貧血
CKD患者におけるリン管理と適正な鉄補充の意義について
治療ガイドラインが改訂され、鉄剤の投与開始・中止基準
お二方にお話しいただいた。
®
講演1
腎性貧血ガイ
ドライン改訂;
「かつ」
か「または」か
懸念される。
同ガ イドラインの 2 0 0 8 年 版 2 )では 、鉄 補 充 の 開 始 基 準 は
「トランスフェリン飽和度
(TSAT)
20%以下および血清フェリチン値
100ng/mL以下」
とされ、
その結果、
国内の透析施設を対象に実施
した2012年末国内統計調査
(JRDR)
の解析ではTSAT20%未満、
血清フェリチン値50ng/mL未満の患者割合がそれぞれ35%に達
経口による維持的な鉄補充により
ヘモグロビンサイクリングは避けられる
した。
このような鉄枯渇状態になってはじめて鉄の投与を行うと、急
激にヘモグロビンが上昇し、
今度は赤血球造血刺激因子製剤
(ESA)
本年2月に2015年版
「慢性腎臓病患者における腎性貧血治療の
の減量を急ぐ結果、ヘモグロビンは後になって急激に下がり、結果
1)
ガイドライン」
(2015年版GL)
が発表され、
透析患者に対する鉄補
的にヘモグロビンサイクリングが起こる。これを回避するには、
鉄が
充の基準は緩和されたが、
解釈の幅も広がり、
臨床現場での混乱が
枯渇する前に鉄剤を投与する必要がある。透析患者を対象とした
経口鉄投与による医療経済面での便益も検討されている。
司 会
米国で実施された、透析患者にクエン酸第二鉄を投与した第Ⅲ
福岡腎臓内科クリニック 院長
相の無作為割付介入試験では、鉄を含まないリン吸着薬の使用
平方 秀樹 先生
と比べ、
有害事象の発現率と入院率が低下し
(図1)
、
その結果患者
1人あたり年間3,002USドルの医療費が削減された 8)。
また、
Hideki HIR AK ATA
クエン酸第二鉄投与により、静注鉄剤およびESAの使用量が低
演 者
9)
下したとの解析結果も得られている
(図2)
。
安全性、医療経済性を考慮すると、鉄は経口による維持的な
大阪大学大学院医学系研究科
腎疾患統合医療学 寄附講座准教授
投与が優先されるべきである。
濱野 高行 先生
ESA使用時の適切な鉄剤の併用が
血小板凝集を抑制する
Takayuki HAMANO
最近の観察研究において、鉄を経静脈的に補充する場合、
鉄欠
乏をきたしてから短期間に大量補充するよりも、
維持的に少量ず
鉄欠乏が臨床的アウトカムに与える影響として注目されて
つ補充する方が、
感染症による入院や死亡のリスクが低いことが
いるのが血小板に対する作用である
(図3)10)。鉄欠乏は、
セロ
明らかになっている3)。
また、
保存期CKD患者を対象とした前向き
トニン誘導性の血小板凝集を強めることがわかっている11)。
研 究では、ES A 使 用開始から
6ヵ月以内に鉄剤が投与された
図1
患者群の方が鉄剤を投与されな
Proportion of subjects hospitalized
at least once during
the 52-week study period
かった患者群より生命予後が良
かったとの報告がなされている4)。
これらの報告より、
適切な貯蔵
鉄量を維持するには、鉄を持続
的かつ定期的に投与することが
有効であると考えられる。
しかし、
CKD患者においては静注により
このような補充を行うのは困難
である。
保存期CKD患者を対象
に鉄 補 充を経 静 脈 的もしくは
経 口的に行い、腎 機能 低下速
度 に 与 え る 影 響 を 検 討し た
REVOKE試験では、経静脈投
与群は経口投与群に比べ心血
管イベントと感染症のリスクが
1回以上入院した患者の割合と主な入院理由(追跡期間52週)
<海外データ>
(%)
50
Ferric citrate(n=289)
Active control(n=149)
40
14
12
30
示した結果といえるだろう。
また、
過去には鉄の経静脈的投与は
酸化ストレスマーカーを上昇さ
20
15
n=68
0
25% rel.
difference
n=35
4.8%
49% rel.
difference
n=24
n=18
Infection
*:p = 0.024(chi-square test statistic to determine risk reduction)
45% rel.
difference
n=18
Gastrointestinal
disorder
n=14
n=13
Cardiac disorders
Phosphorus binding with ferric citrate is associated with fewer hospitalizations and reduced hospitalization costs, Rodby, R. et al,
Expert Review of Pharmacoeconomics & Outcomes Research, 15
(3)
: 545-50, 2015, reprinted by permission of Taylor & Francis Ltd.
図2
クエン酸第二鉄は静注鉄の必要量を低下させた<海外データ>
Dose of
IV Iron
70∼
90
mg/week
80
35∼69
mg/week
70
mg/week
Percent
∼34
Calcium Acetate/
Sevelamer Carbonate
Ferric Citrate
(%)
100
60
50
40
30
No use
20
10
投与経路の違いによる酸化スト
0
あるだろう。
2
0
の報告もある7)。
このような鉄の
の発生に影響を与えた可能性は
6.2%
6
n=100
5
鉄
(リオナ)
を投与した場合、
酸化
レスへの影響が、
心血管イベント
8.7%
4
10
透析患者に対してクエン酸第二
ストレスの産生が抑制されたと
12.1%
8
24% risk
reduction*
せるといわれていた6)が、
最近で
は高リン血症を呈する維持血液
12.1%
10
25
2倍以上高かった 5 )。同試験の
結 果は経口鉄投与の安全性を
16.1%
16
34.6%
35
Ferric citrate(n=289)
Active control(n=149)
(%)
18
45.6%
45
Top three reasons for hospitalization
during the 52-week study period
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9 10 11 12
0
1
2
Ferric Citrate
Categories of IV Iron(mg/week)
3
4
5
6
7
8
Active Control
0
>0∼35
>35∼70
9 10 11 12 Month
Treatment
>70
Republished with permission of the American Society of Nephrology, from, Ferric Citrate Reduces Intravenous Iron and
Erythropoiesis-Stimulating Agent Use in ESRD, Umanath, K. et al.: 26
(10)
, 2015 : permission conveyed through Copyright Clearance Center, Inc.
The 59th Annual Meeting of the Japanese Society of Nephrology, Luncheon Seminar 22
一方で、鉄欠乏に伴う反応性血小板増多症が、心筋梗塞や一
尿毒症ラットモデルにおいて、鉄を投与することで血管平滑筋
過性脳虚血発作(TIA)、脳卒中リスクを高めること
のリン 酸トランスポーターであるP i t - 1や 転 写 因 子 である
12-15)
や、
鉄欠乏性貧血そのものが虚血性脳疾患と強く関連するとの
R un x - 2の発 現が減 少し、血 管 石 灰 化が抑 制されたことも
報告もある
報 告されている
(図4)19)。最近ではフェリチンのサブユニット
。
16)
最近われわれは、TSAT20%未満の保存期CKD患者に
であるHフェリチンの抗石灰化作用が、平滑筋細胞の骨芽細胞
おいてESAの高用量投与が血小板上昇に関与することを報告
への分化を抑制するといった報告もあり20)、血管石灰化に対
した17)。そもそも高用量ESAを使用せざるをえない症例はエリ
する鉄の防御的関与もまた注目を集めている。
スロポエチン(EPO)低反応性であることから、ESAの増量
よりも鉄補充の検討が必要であると考えられる。
このように、
鉄欠乏は血小板の凝集能上昇と血小板数増加を介し血栓性
経口による維持的な鉄投与が、
鉄利用能の上昇とESAの適正使用につながる
疾患をもたらす可能性がある
(図3)10)。一方で、CKD患者で
鉄剤の投与基準を かつ とすると、
鉄枯渇状態に鉄を投与する
は鉄欠乏がfibroblast growth factor( FGF)23上昇を介
こととなり、結 果的に急 激にヘモグロビンが上昇することに
して心不全リスクとなる可能性も示唆されている。
なって、
危険なヘモグロビンサイクルがもたらされる。
これを回避
2015年版GLでは鉄剤投与の開始基準が改訂され、鉄利用
するのは利用できる鉄量を一定にする鉄の維持的な経口投与
率を低下させる病態が認められず、同時に「血清フェリチン値
である。ESAの適正使用の観点からも、鉄補充は推奨されるで
が100ng/mL未満またはTSATが20%未満の場合」
に、鉄剤
あろう。
より安全な経口投与で鉄を投与するならば、わが国で
投与が認められるようになった。
「 鉄利用率を低下させる病態」
は慢性炎症により鉄利用能が低下した患者が少ないこともふま
とは、血清フェリチン値は高いがTSATが低い、いわゆる
「鉄の
え、鉄剤投与の開始基準は かつ より または を推奨したい。
囲い込み」患者を指すが、前述のJRDR解析によるとわが国に
おいては、TSAT20%未満で血清フェリチン値が100ng/mL
を超える症例は約8%、TSAT20%未満で血清フェリチン値
300ng/mLを超える症例は約1.5%と非常に少ない。つまり、
95%以上の患者で、血清フェリチン値100ng/mL未満 また
は T S A T 2 0%未 満の時には、鉄 剤の投 与を考 慮す べきと
いえる。
鉄がCKD-MBDの
血管石灰化を抑制する可能性
近年、鉄とCKD-MBDの関係をさらに興味深くする報告が
相次いでいる。
ヒト平滑筋細胞を用いた培養系において鉄の
血管石灰化抑制作用を示唆する結果が得られている18)。
また、
鉄欠乏がCKD患者の臨床的アウトカムに与える影響
図4
鉄投与によるPit-1とRunx-2の発現減少および血管石灰化抑制効果(ラット)
胸部大動脈(von kossa染色)
ESA量の
増加
Control
FGF23
上昇
血小板数の
増加
血小板凝集能
上昇
10
8
心不全
血栓性疾患
(脳梗塞、心筋梗塞 等)
Uremic
4
Uremic Fe
(+)
Runx-2
P<0.05
45
40
a,b
6
a,b
2
35
30
25
20
15
10
5
0
濱野高行: 腎と骨代謝 29
(2)
: 153-62, 2016
Control Fe
(+)
Pit-1
RUNX-2/GADPH
鉄欠乏
Pit-1/GADPH
図3
引用文献
1)日本透析医学会: 2015年版 慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン,
透析会誌 49
(2)
: 89-158, 2016
2)日本透析医学会: 2008年版 慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン,
透析会誌 41
(10)
: 661-716, 2008
3)Brookhart, MA. et al.: J Am Soc Nephrol 24
(7): 1151-8, 2013
4)Kuo, KL. et al.: Nephrol Dial Transplant 30
(9)
: 1518-25, 2015
5)Agarwal, R. et al.: Kidney Int 88
(4)
: 905-14, 2015
6)Maruyama, Y. et al.: Nephrol Dial Transplant 22
(5)
: 1407-12, 2007
7)Tanaka, M. et al.: Biol Pharm Bull 39
(6)
: 1000-6, 2016
8)Rodby, R. et al.: Expert Rev Pharmacoecon Outcomes Res 15
(3)
:545-50, 2015
9)Umanath, K. et al.: J Am Soc Nephrol 26
(10)
: 2578-87, 2015
10)濱野高行: 腎と骨代謝 29
(2)
: 153-62, 2016
11)Shovlin, CL. et al.: PLoS One 9
(2)
: e88812, 2014
12)Aundhakar, SC. et al.: J Assoc Physicians India 61
(10)
: 745-7, 2013
13)Batur Caglayan, HZ. et al.: Case Rep Neurol Med 2013: 813415, 2013
14)Williams, B. et al.: Am J Med Sci 336
(3)
: 279-81, 2008
15)Naito, H. et al.: Intern Med 53
(21)
: 2533-7, 2014
16)Chang, YL. et al.: PLoS One 8
(12)
: e82952, 2013
17)米本佐代子, 濱野高行, 他.: 日腎会誌 58
(3)
: 337, 2016
18)Zarjou, A. et al.: J Am Soc Nephrol 20
(6)
: 1254-63, 2009
19)Seto, T. et al.: J Nephrol 27
(2)
: 135-42, 2014
20)Becs, G. et al.: J Cell Mol Med 20
(2)
: 217-30, 2016
Fe
(+)
Fe
(+)
Control group
Uremic group
a : P<0.01. vs. control
b : P<0.01. vs. control + Fe
0
Fe
(+)
Control rats
Fe
(+)
Uremia rats
Seto, T. et al.: J Nephrol 27
(2)
: 135-42, 2014
障害1)や加齢、寿命短縮、心不全に寄与している可能性があり、
講演2
そのコントロールが重要な課題として注目されるようになった。
心臓にやさしいリンと鉄の管理について
真核生物の誕生と生物の鉄利用の始まり
再び原初の地球に目を向けると、
海で生命が誕生した頃、
海水
司 会
東海大学医学部内科学系
腎内分泌代謝内科 教授
中には大量の鉄イオンが存在していた。
しかし、始生代後期に
光合成生物が出現して酸素を産生し始めると、鉄イオンは酸化
深川 雅史 先生
Masafumi FUK AGAWA
鉄となって沈殿し、
海水中から鉄イオンが消えてしまった。
この環境の激変を乗り越えたのが真核細胞である。
真核細胞
が誕生する際、
もとは異生物であったミトコンドリアが細胞内に侵
入し、共生が始まった。
ミトコンドリアは、生物にとって毒であった
演 者
新潟大学医歯学総合病院 血液浄化療法部 准教授/
福島県立医科大学 医学部腎臓高血圧内科学講座
主任教授
風間 順一郎 先生
Junichiro K AZAMA
酸素を利用し、
エネルギーを産生することで、
細胞と共生関係を
築いた。
その際、
電子や酸素の受け渡しを得意とする鉄が細胞内
に持ち込まれたが、
鉄もまた単体では生物にとっては有毒な存在
であった。
そこで鉄をトランスフェリンなどの蛋白質と結合させ、
2価の自由鉄が存在しない生理システムが確立され、
鉄は安全に
原初生命は海で育まれた
−リンは生命活動に必須の元素
利用・貯蔵されてきた。
鉄はFGF23産生・分解を制御する因子
原初の生命は海で育まれたため、
生物と海水の元素組成は似
前述の生理システムはわれわれヒトにも受け継がれ、
ミトコン
ているが、
リンは例外で、
海水中のリン比率は体液中の比率の約
ドリアが持ち込んだ鉄がヘモグロビンや代謝酵素
(シトクロム)
と
1,000分の1と非常に低い。
また、地表のリンはほとんど生物に
して機能している。
鉄が不足した場合の生体への影響について、
利用されており、環境中のリンは枯渇状態にある。
しかし、
リンは
近年では心不全患者において複数の研究結果が報告されて
細胞の形成・遺伝・代謝といった生命活動に必須の元素である。
いる。心不全患者には鉄欠乏が多く2)、
欧州の心不全患者を対象
そこで、生物は積極的に外部からリンの取り込みを行い「大量
とした5つのコホート研究のメタ解析では、心不全患者に鉄欠乏
摂取・大量排泄」
の代謝戦略をとってきた。
[血清フェリチン値100ng/mL未満または血清フェリチン値100
ところが、
現代は飽食の時代である。
さらに腎代替療法の進歩
∼299ng/mLかつトランスフェリン飽和度
(TSAT)
20%未満]
により、
腎死=個体死ではなくなった。
その結果、
体内に余剰のリン
が高率に認められた2)。
また、鉄欠乏は心不全患者の生命予後
が蓄積し、
血清リン濃度の上昇とともに死亡リスクも上昇する現象
不良因子であることも指摘されている3)。
鉄欠乏が心不全を惹起
が起こった。明確なメカニズムはわかっていないが、
リンは血管
する機序として、貧血を介する機序と、そうでない機序が提唱
図1
鉄欠乏が心不全のリスクになるメカニズム
貧血を介さない機序
↓ O2 storage
(myoglobin)
図2
心臓におけるFGFR4活性化による心肥大のメカニズム
Chronic Kidney Disease
Non-hematopoietic tissues
Serum FGF23
(Skeletal muscle, Cardiac muscle,
Adipocytes, Liver, Kidney, Brain)
FGF23
↓ Tissue oxidative capacity
FGFR4
↓ Energetic efficiency
Iron deficiency
Anaerobic metabolism
High phosphate diet
cardiac
myocyte
P
PLCγ
PLCγ
Mitochondrial dysfunction
Ca2+
貧血を介する機序
Hematopoietic tissues
(Erythropoiesis, Immune cells,
Platelets)
↓ Hb(anemia)
↓ O2-carrying capacity
Reproduced from Heart, Cohen-Solal, A. et al.: 100
(18)
: 1414-20, 2014 with permission
from BMJ Publishing Group Ltd.
Calcineurin/NFAT
Genes regulating cardiac remodeling
Cardiac hypertrophy
Cardiac fibrosis
Cardiac dysfunction
Reprinted from Cell Metab 22
(6)
, Grabner, A. et al.: Activation of Cardiac Fibroblast Growth
Factor Receptor 4 Causes Left Ventricular Hypertrophy, 1020-32, Copyright(2015)
,
with permission from Elsevier
The 59th Annual Meeting of the Japanese Society of Nephrology, Luncheon Seminar 22
4)
されている
(図1)
。
前者は、鉄欠乏により酸素の運搬能が低下
維持したまま、
経口リン吸着薬をリオナへ切り替え12週間投与し
する機序であり、
後者は、
鉄欠乏により、
酸素貯蔵量の減少、
組織
たところ、血清フェリチン値などの鉄関連指標は有意に上昇し、
酸化容量の低下、
エネルギー効率の低下、嫌気的代謝、
ミトコン
血清intact FGF23値およびC-terminal
(C-term)
FGF23の
13)
いずれも切り替え前に比べ有意に低下した
(図3)
。
この結果は
ドリア機能障害が起こる機序である。
鉄欠乏の外来心不全患者459例を対象に静注鉄剤もしくは
リオナ投与時の血清FGF23値低下が、
リン負荷軽減以外に、
吸収
プラセボを24週間投与したFAIR-HF試験では、
鉄の補充により
された鉄の影響もあることを示唆するものである。
複数の心不全症状の有意な改善がみられ 、特に6分間歩行は
5)
貧血
(ヘモグロビン値12.0g/dL未満)
の有無にかかわらず改善
した6)。同様のプロトコルを用いて二重盲検で304例を対象に
「心臓を護る」観点からリン管理と鉄補充の
両面を考慮した薬剤選択を
鉄補充を52週間実施したCONFIRM-HF試験では鉄補充群で
最後に、
現在得られている知見よりリン過剰から心不全に至る
心不全の指標が改善し、
心不全の悪化による入院が減少した7)。
メカニズムをまとめておく
(図4)
。
皮肉なことに、生命にとって貴
これらの知見は、鉄欠乏の治療が心不全の改善に有用である
重なはずのリンは、体内で余るとかえって寿命を縮めてしまう玉
ことを無作為化比較対照試験にて実証したものである。
手箱であった。
リンの過剰は、
血管毒性を介して心血管イベントリ
鉄補充による心不全の改善には、
ミトコンドリア機能の改善な
スクを高めると同時に、
FGF23の上昇を介して左室肥大、ひい
どに加え、
fibroblast growth factor
(FGF)
23の関与も示唆
ては心不全を惹起する。
一方、
鉄不足もまたミトコンドリア機能異
されている。
FGF23の上昇は、
心血管リスク8)やうっ血性心不全
常を介した心不全リスクを高めるのみならず、
FGF23を上昇さ
のリスク9)を増大させることが知られていた。
FGF23はFGF受容
せる要因になり得ると考えられる。
こうした有害な流れを遮断す
体1
(FGFR1)
とα-klothoの共受容体を介して作用発現すると考
るには、
リン吸着薬による過剰なリンの排泄と、鉄補充の両者が
えられているが、
α-klothoは心筋には存在しないため、
これまで
必要である。
2014年の血液透析患者の死因の第1位は心不全で
FGF23の心筋への作用は不明であった。
しかし近年、
FGF23が
あり、
全体死因の約4分の1を占める。
「 心臓にやさしい」
リンと
心筋細胞上のFGF受容体4(FGFR4)
を介して心肥大を誘発
鉄の管理が求められている今日、
リン代謝・鉄代謝の双方に介入
することが報告され
(図2) 、
FGF23は単なる予後予測因子では
するリオナは、
高リン血症治療の新たな選択肢となるであろう。
10)
なく、
それ自体が心毒性物質であるとの認識が広がっている。
これらの知見に鑑みると、
FGF23の作用抑制による心毒性の
予防には治 療 的 意 義があると結 論できる。そして近 年では
FGF23産生・分解を制御する因子の一つとして鉄が注目される
ようになった11)。保存期CKD患者を対象としたクエン酸第二鉄
(リオナ)
の第Ⅲ相試験においてもFGF23の低下は認められた12)。
そこで、
われわれはリオナを用いて高リン血症を伴う維持透析患
者におけるFGF23低下への鉄の影響を検討した。
他の経口リン
吸着薬を投与中の維持透析患者27名を対象に血清リン濃度を
図3
セベラマー塩酸塩からクエン酸第二鉄へ切り替え後の
intact FGF23およびC-term FGF23
intact FGF23
10.0
9.0
図4
8.0
*
心臓にやさしいリンと鉄の管理
リン過剰
C-term FGF23
リン吸着
尿毒物質
8.0
log C-term FGF23
log intact FGF23
9.0
引用文献
1)Ellam, TJ. et al.: Atherosclerosis 220(2): 310-8, 2012
2)Cohen-Solal, A. et al.: Eur J Heart Fail 16(9): 984-91, 2014
3)Klip, IT. et al.: Am Heart J 165(4): 575-82, 2013
4)Cohen-Solal, A. et al.: Heart 100(18): 1414-20, 2014
5)Anker, SD. et al.: N Engl J Med 361
(25): 2436-48, 2009
6)Filippatos, G. et al.: Eur J Heart Fail 15(11): 1267-76, 2013
7)Ponikowski, P. et al.: Eur Heart J 36(11): 657-68, 2015
8)Parker, BD. et al.: Ann Intern Med 152(10): 640-8, 2010
9)Gutiérrez, OM. et al.: Circulation 119(19): 2545-52, 2009
10)Grabner, A. et al.: Cell Metab 22(6): 1020-32, 2015
11)Wolf, M. et al.: J Bone Miner Res 28(8): 1793-803, 2013
12)Yokoyama, K. et al.: Clin J Am Soc Nephrol 9(3): 543-52, 2014
13)Iguchi, A. et al.: Nephron 131
(3): 161-6, 2015
*
リン吸着
7.0
鉄補給
FGF23上昇
FGFR4刺激
鉄不足
FGFR4
遮断
(?)
7.0
6.0
6.0
5.0
血管毒性
心筋細胞肥大・増殖
鉄補給
0
3
Weeks
12
n=27
Median log of intact FGF23 after switching from
sevelamer-HCl to FCH.
The error bars represent the interquartile range.
*p =0.01
(vs. 0 weeks, Wilcoxon signed-rank test) 0
3
Weeks
左室肥大
12
n=27
Median log of C-term FGF23 after switching from
sevelamer-HCl to FCH.
The error bars represent the interquartile range.
*p = 0.007(vs. 0 weeks, Wilcoxon signed-rank test)
Iguchi, A. et al.: Nephron 131
(3)
: 161-6, 2015
Copyright © 2015 Karger Publishers, Basel, Switzerland.
心血管イベント
心不全
ミトコンドリア
機能異常
提供:風間 順一郎 氏
**2016年1月改訂
(第5版)
*2015年5月改訂
クエン酸第二鉄水和物(Ferric Citrate Hydrate)錠
商品名
注1)注意−医師等の処方箋により使用すること
承 認 番 号
22600AMX00005000
洋 名
Riona ®Tab. 250mg
承 認 年 月
2014年1月
薬 価 収 載
2014年4月
販 売 開 始
2014年5月
クエン酸第二鉄水和物
(Ferric Citrate Hydrate)
87219
セルロース、
ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、
ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、
ヒドロキシプロ
ピルセルロース、
クロスポビドン、
ステアリン酸Ca、
ヒプロメロース、酸化チタン、
タ
ルク、
ポリエチレングリコール
白色のフィルムコーティング錠
サ
イ
ズ
識 別 コ ー ド
キノロン系抗菌剤
シプロフロキサシン等
機序・危険因子
テトラサイクリン系抗生物質
テトラサイクリン等
セフジニル
抗パーキンソン剤
ベンセラジド・レボドパ等
経口アルミニウム製剤 注2 )
水酸化アルミニウムゲル
合成ケイ酸アルミニウム
側面
4. 副作用
国内における本剤の主要な臨床試験において、
801例中204例
(25.5%)
に副作用が認め
られた。
主な副作用は、
下痢、
便秘、
腹部不快感、
血清フェリチン増加であった。
(承認時)
その他の副作用
下記の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場
合は適切な処置を行うこと。
JTP 751
効能・効果
種類
用法・用量
通常、成人には、
クエン酸第二鉄として1回500mgを開始用量とし、1日3回食直後に経口
投与する。以後、症状、血清リン濃度の程度により適宜増減するが、最高用量は1日
6,000mgとする。
<用法・用量に関連する使用上の注意>
・本剤投与開始時又は用量変更時には、1∼2週間後に血清リン濃度の確認を行う
ことが望ましい。
・増量を行う場合は、
増量幅をクエン酸第二鉄として1日あたりの用量で1,500mgまで
とし、
1週間以上の間隔をあけて行うこと。
使用上の注意
1.慎重投与
(次の患者には慎重に投与すること)
(1)消化性潰瘍、
炎症性腸疾患等の胃腸疾患のある患者[病態を悪化させるおそれが
ある。]
(2)ヘモクロマトーシス等の鉄過剰である患者[病態を悪化させるおそれがある。]
(3)C型慢性肝炎等の肝炎患者[病態を悪化させるおそれがある。]
(4)
血清フェリチン等から鉄過剰が疑われる患者[鉄過剰症を引き起こすおそれがあ
る。]
(5)他の鉄含有製剤投与中の患者[鉄過剰症を引き起こすおそれがある。]
(6)発作性夜間血色素尿症の患者[溶血を誘発し病態を悪化させるおそれがある。]
2. 重要な基本的注意
(1)本剤は、血中リンの排泄を促進する薬剤ではないので、食事療法等によるリン摂取
制限を考慮すること。
(2)本剤は、定期的に血清リン、血清カルシウム及び血清PTH濃度を測定しながら投
与すること。血清リン、血清カルシウム及び血清PTH濃度の管理目標値及び測定
頻度は、学会のガイドライン等、最新の情報を参考にすること。低カルシウム血症の
発現あるいは悪化がみられた場合には、活性型ビタミンD製剤やカルシウム製剤の
投与を考慮し、
カルシウム受容体作動薬が使用されている場合には、
カルシウム受
容体作動薬の減量等も考慮すること。
また、
二次性副甲状腺機能亢進症の発現あ
るいは悪化がみられた場合には、
活性型ビタミンD製剤、
カルシウム製剤、
カルシウム
受容体作動薬の投与あるいは他の適切な治療法を考慮すること。
(3)本剤は消化管内で作用する薬剤であるが、
本剤の成分である鉄が一部吸収される
ため、血清フェリチン等を定期的に測定し、鉄過剰に注意すること。
また、ヘモグロ
ビン等を定期的に測定し、特に赤血球造血刺激因子製剤と併用する場合には、
過剰造血に注意すること。
販売元
東京都中央区日本橋本町3ー4ー1
他のクエン酸製剤との併用で血中アルミニ クエン酸との併用に
ウム濃度が上昇したとの報告があるので、 より、
吸収が促進され
同時に服用させないなど注意すること。
るとの報告がある。
注2)透析療法を受けている患者へは投与禁忌である。
長径 約14.9mm、短径 約6.9mm、厚さ 約4.6mm
慢性腎臓病患者における高リン血症の改善
2016年9月作成
臨床症状・措置方法
これら薬剤の作用を減弱させるおそれが これら薬 剤と結 合
あるので、
併用する場合にはこれらの薬剤 し、吸収を減少させ
の作用を観察すること。
るおそれがある。
エルトロンボパグ オラミン
形
上面
日本たばこ産業株式会社
甲状腺ホルモン剤
レボチロキシン等
有 効 成 分
クエン酸第二鉄水和物を無水物として
(クエン酸第二鉄として)250mg含有
( 1 錠 中 )
性 状 ・ 剤 形
鳥居薬品株式会社
製 造 販 売 元
薬剤名等
組成・性状
物
販 売 元
3. 相互作用
併用注意
(併用に注意すること)
【禁忌(次の患者には投与しないこと)】
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
外
3年
(外箱等に表示の使用期限を参照のこと)
リオナ®錠 250mg
日本標準商品分類番号
加
気密容器、室温保存
(「取扱い上の注意」参照)
使用期限
和 名
一 般 名
添
貯 法
製造販売元
頻度
2%以上
2%未満
胃腸障害
下痢(10.1%)、便秘(3.2%)、 腹部膨満、腹痛、十二指腸潰瘍、排便回数増
腹部不快感(2.5%)
加、
胃腸障害、
悪心、
嘔吐、
便通不規則
臨床検査
血清フェリチン増加(2.7%)
血中アルミニウム増加、
γ-グルタミルトランスフェ
ラーゼ増加、
ヘマトクリッ
ト増加、
ヘモグロビン増加
赤血球増加症、肝機能異常、食欲減退、
そう痒
症、
高血圧
その他
5. 高齢者への投与
一般に高齢者では生理機能が低下しているので、患者の状態を観察しながら慎重に
投与すること。
6. 妊婦、産婦、授乳婦等への投与
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人、産婦及び授乳婦には、治療上の有益性
が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
[これら患者への投与に
関する安全性は確立していない。]
7. 小児等への投与
小児等に対する安全性は確立していない
(使用経験がない)。
8. 適用上の注意
薬剤交付時:PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。
(PTPシートの誤飲により、
硬い鋭角部が食道粘膜に刺入し、
更には穿孔をおこして縦隔
洞炎等の重篤な合併症を併発することが報告されている。
)
9. その他の注意
(1)本剤の投与により便が黒色を呈することがある。
腹部のX線又はMRI検査で、本剤が存在する胃腸管の画像に未消化錠が写る可能性がある。
(2)
(3)
イヌを用いた長期反復投与毒性試験において、最大臨床用量の鉄として約5倍に
相当する用量より、鉄の過剰蓄積に伴う肝臓の組織障害(慢性炎症巣、細胆管の
増生及び肝実質の線維化)が認められた。
これらの変化は休薬による回復性はな
く、
休薬期間中に病態の進行が認められた。
包 装
リオナ®錠250mg:100錠(10錠×10 PTP包装)、500錠(10錠×50 PTP包装)、1,000錠
(10錠×100 PTP包装)
取扱い上の注意
アルミピロー開封後は湿気を避けて保存すること。
詳細は添付文書をご参照ください。
禁忌を含む使用上の注意の改訂に十分にご留意ください。
資料請求先
鳥居薬品株式会社 お客様相談室
TEL 0120-316-834
FAX 0120-797-335
® 登録商標
IF20-1609P
RIO TJ022A