マイコンカーができるまで

マイコンカーができるまで
平成 21年 1 月 熊本県立球磨工業高等学校
ここ数年、地域のイベントなどでマイコンカーの実演走行をする機会があります。そのときの子どもたちか
ら「これはどこで売ってますか?」と質問がありました。もちろんどこの店に行っても売ってありません。そ
こで今回は、本校のマイコンカーの製作過程を簡単に紹介したいと思います。
液晶
マイコン
ハンドルを切るモータ
速度検出センサ
ラインセンサ
センサアーム
駆動モータ
坂検出センサ
タイヤ
マイコンカーラリー2009全国大会優勝マシン
ボディ
ボディは車体の土台となる部分で、アルミ板を切り出して作ります。
厚さは 1mm~2mm まで様々ですが、
何しろ面積が大きいので、わずかな厚さの違いが車重に大きく響いてきます。軽量化とボディ剛性のバランス
を考慮して厚さを決定します。軽ければ軽い方が良いかと言われると必ずしもそうではない部分もあるし、ボ
ディ剛性もガチガチに堅ければ良いとも言い切れません。適度なしなりがある方が良い結果を生むときもあり
ます。何より重視することは 4 つのタイヤをしっかりと路面に押さえ付けさせることです。この部分が曲が
っていたり、穴の位置が不正確だと良いマシンができません。
アルミ板
切り出し・穴あけ後
ギヤボックス
ギヤボックスは、モータとタイヤを固定して、モー
タの回転をギヤを介してタイヤに伝える部分です。
ここ
この部分
1
ギヤボックスは、歯車の軸間距
離を正確にとらないと、効率が悪
くなってしまいます。そこで、今
年のテーマの一つとして「MC を
使いこなす技術を身に付ける」を
挙げ、これを利用してギヤボック
スの製作を行いました。MC を使
うと 1000 分の 1 ミリ単位で、
正確に加工することができます。右の写真は、MC 講
習会の様子です。電気工作部に半数以上いる電気科の
生徒は特に、MC が使えることに感激でした。
加工後
加工前
サーボ機構
サーボ機構とは、ハンドルを切る部分のことです。下の写真がその部分ですが、黒い巨
塔のようにそびえ立っている細長いものがハンドルを切るモータです。これはマクソン社
の RE-16 という非常に高性能かつ超強力な奴で、正転・逆転も瞬時に反応してくれます。
このモータで前輪側に取り付けられたスパーギヤを回すことによってハンドルを切ること
ができます。ただし、むやみやたらとモータを回しても、ハンドルが右か左に目一杯切れ
てしまって壊れるだけです。そこで、ハンドルがいま何度切れているかをボリュームによ
って検知して、目標角度と現在角度の差に応じてモータの回転を賢く制御することによっ
て、スムーズなハンドル操作を実現します。例えば、目標角度と現在角度が大きく離れて
いるときはモータを目一杯回してやり、目標角度に近づいてくるとモータの力を緩めてい
くといった具合です。ここもギヤ同士の軸間距離がシビアなので、MC を使って正確な加
工をしています。
ボリューム
ボリューム
軸の角度を 0~5V
の電圧で検出する
ことができる。
モータ
ピニオンギヤ
スパーギヤ
2
ホイール&タイヤ
ホイールにはフィルムケースを使用しています。何より軽量で真円度が高いというメリットがありますが、
世の中のフィルムカメラがすっかり姿を消してしまったので、入手性が悪いということが悩みの種です。この
フィルムケースにギヤを 2mm のネジで固定して、2mm 厚のスポンジを巻き付けます。スポンジは裏がシー
ルタイプとなっていて、貼り付けるだけで良いので簡単です。ただし、厚さが均一となるように貼り付けるの
には慣れが必要です。さらに、スポンジの上には強力なグリップ力を生み出すシリコンシートを巻き付けます。
フィルムケース
シールタイプのスポンジ
旋盤工作機械にてギヤに
ベアリング用の穴を空ける
ホイールの外側
ギヤとフィルム
ケースの固定
ギヤを固定してベアリングを
介して車軸に取り付ける
まだまだ先は長い・・・
以上で、簡単な製作の様子を紹介しましたが、完成までにはまだまだ先があります。ドライブ基板やセンサ
基板を作り(これがまた大変)、電池パックを半田付けして作り、エンコーダやリミットスイッチといった各
種センサ群を取り付けて、液晶基板をエッチングして作るといった、膨大な作業がこの先待っているのです。
ドライブ基板の製作
製作途中の写真
モータの駆動テストの様子
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