JR東日本 EV-E301系 蓄電池駆動電車

JR 東日本 EV-E301系 蓄電池駆動電車
生産本部 技術部
図 1 EV-E301 系 外観
1 はじめに
車体断面は車体幅2800mmのストレート車体とし,床面
高さはE233系と同様の1130mmである.
2014年3月のダイヤ改正より営業運転を開始した蓄電
池駆動電車EV-E301系(図1)は,新しい蓄電池駆動シ
車体は,軽量ステンレス構体にE233系と同様のリン
ステムを搭載した日本初の営業用電車である.この電車
グ構造と結合強化構造を取り入れた構造とした上で,車
は,電化区間では通常の電車と同様にパンタグラフを上
体質量の増加に見合った補強を追加した構造である.側
昇させ,架線からの電力により走行し,その際に蓄電池
外板の表面処理は,デザインコンセプトに沿いダルフィ
の充電率が低い場合は,架線からの電力やブレーキ時の
ニッシュ仕上げとした.
室内の割付はMc車,Mc'車共通としており,片側3扉で,
回生電力で充電を行うものである.また,非電化区間で
は,パンタグラフを上昇させず,蓄電池に蓄えた電力に
扉間に12人掛ロングシート4つを,車端部に車椅子スペ
て走行する.この時,非電化区間でも,蓄電池にてブレ
ースと機器室を持つ割付としている.
ーキの回生電力を回収することが出来るため,エネルギ
2.1.2 デザイン
効率の上昇にも寄与している.
「人に優しい未来につなぐ,次世代車両」を車両コン
このEV-E301系は,当社製ステンレス車両のブランド
セプトにした上で,走行する烏山線沿線にも調和するデ
名sustinaの第2弾に位置づけられる.
ザインとしている.
2 構造および特徴
エクステリアデザインは,
「先進性」
「環境へのやさし
2.1 車体
さ」
「蓄電池駆動電車」の3つをキーワードにしている.
2.1.1 基本構造
前頭形状は,前面ガラス窓下を凹ませた新たな形状と
車体長さは19570mm,連結面間距離は20000mmである.
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し,緑色と黒色のストライプの配色により先進性を表現
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した.側面の吹寄部に,客先の一般公募により決定した
また優先席部は,床敷物と吊手の色を一般部と替える
愛称ACCUM(アキュム)のロゴとエネルギの流れをイ
ことで明確にし,腰掛部の握り棒も滑り止めの凹凸加工
メージしたシンボルマーク,そしてストライプになるよ
と黄色の着色を行ったものとしている.
車椅子スペース(図3)は車端部に設けてあり,ワン
うに配置した緑色の細帯を配置することで,環境へのや
マン運転時を考慮して,隣接する妻引戸の開口は車椅子
さしさと蓄電池駆動電車を表現した.
でも通行可能な有効開口幅を確保している.
インテリアデザインは,
「先進性」
「次世代サービス」
「烏
山線のポテンシャル」の3つをキーワードにしている.
2.1.4 室内設備
側天井形状は,一般的なR天井ではなく3面折り形状
とし,3面折りの中央部のみ色を替えた.客室の灯具は
腰掛は,座り心地向上のためにSばね方式を採用し,
LEDを用いた反射式照明とし,灯体の形状を工夫するこ
E233系と同様の座席幅460mm,座席高さ420mmとし,
とで,灯体を連続的に見せている.これらにより,いま
利用しやすくした.
までの通勤車両にない先進的なイメージの客室となって
また側窓には熱線と紫外線を吸収する機能に加え,赤
いる.また腰掛の生地と床敷物は,烏山の山あげ祭をモ
外線を吸収する機能を持ったガラスを用いることで,室
チーフにしたデザインとし,烏山線のポテンシャルを表
内環境の改善を図っている.
現している(図2)
.
図 2 客室内
2.1.3 ユニバーサルデザインとバリアフリー化
図 3 車椅子スペース
車内設備には,ユニバーサルデザインとバリアフリー
化の考え方を積極的に取り入れ,高齢者や身体障がい者
への配慮をしつつ,より多くの人にとって利用しやすい
2.2 ぎ装・システム
車両としている.
2.2.1 床下機器配置
側出入口部の床敷物は出入口部を明確にする黄色と
EV-E301(Mc)
,EV-E300(Mc')の両車に主回路用
し,さらに側引戸の戸先ゴムを黄色とすることで,戸先
蓄電池箱(図4)を搭載している.主回路用蓄電池箱内
部を明確にした.また出入口の上部には開閉動作知らせ
部にはGSユアサ製のLIM30H-8Aリチウムイオン蓄電池
灯を設置し,扉の開閉に対して注意を促すようにしてい
が22モジュール直列に接続され,この箱が各車両に1群
る.
単位(5箱)ずつ,編成で10箱設置している.
吊手と荷物棚は,優先席を含む先頭寄の12人掛部を一
このほか,Mc車には電力変換装置,フィルタリアク
般部よりも50mm低い高さとし,低身長者への配慮をし
トル,高速度遮断器などの主回路関係機器を搭載してい
ている.腰掛部にある握り棒は,立っている方にも座っ
る.Mc'車には,補助電源装置,トランスフィルタ箱,
ている方にもつかまりやすいよう,通路側に湾曲させた
制御用蓄電池のほか電動空気圧縮機,除湿装置,元空気
形状としている.
タンクなど空制機器を搭載している.
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2.2.4 運転室機器
運転室は,ワンマン運用に対応した非貫通の全室運転
台としている(図6)
.ワンマン運転を行うため,運転室
には運賃箱,室内確認ミラー,ワンマン操作器,ワンマ
ン設定器を設置している.
EV-E301系は,主回路用蓄電池を搭載しているため,
電圧計は架線,主回路用蓄電池,制御用蓄電池の3連と
なっている.このほか,急速充電等を行う操作スイッチ
盤や架線認識装置(Mc車のみ)といった主回路用蓄電池搭
載車特有の機器も搭載している(図7)
.
運転台にはモニタ装置を設け,従来車で使用される運
転情報の表示やワンマン装置制御等の機能のほか,主回
図 4 主回路用蓄電池箱
路用蓄電池の充電量や各機器間における電気の流れ,架
2.2.2 屋根上機器
線状態を表示する機能を備えている.
両 車 に 搭 載 し た 空 調 装 置 は 冷 却 能 力38.4kW
(33000kcal/h)のAU736を使用している.Mc車に搭載し
たパンタグラフは,主回路用蓄電池への急速充電に対応
するため,すり板部を強化したPS38型を2台搭載とし,
架線下走行時や充電時には2台両方のパンタグラフを使
用する.
2.2.3 室内機器
客室内の照明にはLED室内灯を採用し,消費電力の
低減を行っている.ワンマン運転を行うため,前位寄り
上部に液晶式運賃表示器兼用車内案内表示器を,中央部
を除くドア付近には整理券発行器を設置している.各車
両の3位車端上部には車内情報提供表示器(図5)を設け,
車両が架線電力・蓄電池どちらの電力で走行しているか
を示すほか,走行中の電気の流れや充電状態についても
表示している.
Mc,Mc'各車両とも4位車端部を機器室としている.
図 6 運転台周辺
各車両の機器室には,配電盤などの電気機器のほか,ブ
レ-キ制御装置,直通予備ユニット,供給空気タンクな
どの空制機器も搭載している.
図 5 車内情報提供表示器
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図 7 架線認識異常扱いスイッチ箱
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2.2.5 主回路構成
で,部品の共通化を図っている.
主回路構成は,架線電圧(1500V)を降圧して,主回
軸箱支持装置は,軸梁式である.台車枠は,横梁にシ
路用蓄電池(630V)に充電が出来るようDC-DCコンバ
ームレスパイプを用いた鋼板溶接構造で,横梁パイプは
ータを搭載している.そのDC-DCコンバータとモータ
空気ばねの補助空気室を兼ねている.
車体支持装置は,車体直結式空気ばね,および1本リ
を制御するVVVFインバータ装置を一体箱にまとめ,電
ンク式牽引装置から成る.
力変換装置として,車両へ搭載している.
主回路用蓄電池は,冗長性を持たせた2群構成となっ
基礎ブレーキ装置は,電動台車が踏面片押し式のユニ
ており,走行時の消費電力(走行用の電力とサービス機
ット式,付随台車が踏面ブレーキとディスクブレーキ(1
器等の負荷)に加え,輸送障害時に対応可能な余裕分や
軸2ディスク)の併用である.
編成の両端となる付随台車の先頭軸には,滑走防止用
蓄電池の経年劣化による減少分を考慮し,190kWhの容
にセラミック噴射装置を装備しており,制動時の滑走検
量となっている.
知再粘着は台車単位で制御される.
2.2.6 架線認識装置
この電車は,電化区間と非電化区間を直通して走行す
るため,パンタグラフの上昇・下降扱いが多く,また地
上側に急速充電設備のある駅では,通常の架線より大き
い電流で充電を行う急速充電の扱いもある.そのため,
充電電流の制限を行ったり,パンタグラフを非電化区間
で誤って上げてしまうことのないよう,地上からの地点
情報を受信し,車両がどの架線状態の場所にいるのか,
自動で認識が出来る架線認識装置を搭載している.
図 8 電動台車(DT79 台車)
この架線認識装置は,地点情報が入力されると,リレ
ーの働きにより,現在の架線状態に応じた制御を行うよ
う,回路が構成されている.その制御としては,以下の
ようなものがある.
① パンタグラフの制御
急速充電時のパンタグラフの操作(上昇・下降)を
制限する.
(パンタグラフおよび架線の保護のため)
② パンタグラフの集電電流制御
現在地の架線条件を電力変換装置へ入力し,その場
図 9 付随台車(TR255D 台車)
にあった,充電電流の制限を行うよう制御する.
(パ
ンタグラフの損傷や架線溶断の防止のため)
3 おわりに
③ 車両移動の制御
パンタグラフを上昇させた状態での,非電化区間へ
EV-E301系は,2014年3月15日から営業運転を開始し
の侵入防止を行う.
(パンタグラフ上昇時に非電化区
た.営業運転初日の1番列車には乗車できない方もいる
間を認識すると非常ブレーキが作用する)
ほどの盛況振りで,終着駅の烏山駅では歓迎イベントと
急速充電中に車両が走行しないようにする.
(急速充
して臨時の山あげ祭が行われるなど,多くの方に迎えら
れた.このEV-E301系が烏山線沿線の皆様に長く愛され
電時に非常ブレーキが緩解しないように制御する)
ることを願う.
2.3 台車
(藤澤朝岐,関根眞一,相坂拓,平井明正 記)
台車はボルスタレス台車であり,Mc車,Mc' 車ともに
前位側が付随台車,後位側が電動台車を装備する.台車
形式は電動台車がDT79(図8)
,付随台車がTR255D(図
9)である.主な構成は,既に導入されているE531系/
E233系電車用のDT71/TR255系台車を基本にすること
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サービス機器
冷房装置
保安装置
制御方式
ブレーキ方式
運転室構造
情報装置
そ 座席配置
の 側出入口
他 トイレ
パンタグラフ
主 主電動機
要 主制御器
機 補助電源
器
電動空気圧縮機
台車形式(歯車比)
最高運転速度
号車
車種
形式
定員(人)
質量(t)
連結面間距離
車 車体長さ
体 車体幅
寸 屋根高さ
法 床面高さ
台車間中心距離
編成
Mc
Mc'
①
+
-
-
SC101形(100kVA), lvLB
MH3108-C1200M形
-
(1200L/min)
AU736形 集中式冷房装置38.4kW(33000kcal/h)
ATS-P形(車上装置1台/両を運転室に搭載),デジタル列車無線,EB・TE装置, 防護無線
VVVFインバータ制御方式, 回生ブレーキ付
回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ,直通予備ブレーキ,耐雪ブレーキ, 抑速ブレーキ
高運転台,非貫通,ワンマン対応
モニタ装置 MON22形
ロングシート,車椅子スペース付
片側扉数:3,TK116B形空気式戸閉装置(戸ばさみ安全機能および半自動機能付),側開閉表示灯付
-
-
行先表示器,車内案内表示器(ワンマン表示器兼用),車内情報表示器(1台/両)
自動放送装置,車外スピーカ
MT78A×2
SC100形(主回路電圧633.6V(22モジュール))
-
PS38形×2
20000mm
19570mm
2800mm
3620mm
1130mm
13800mm
TR255D(前位台車)
DT79(後位台車) (1:6.06)
133(48)
37.7
車軸(○:T軸,●:M軸)
133(48)
40.2
宝積寺→
1号車
Mc'
EV-E300
100km/h
●● ○○
--
○○ ●●
+
< >
②
2号車
Mc
EV-E301
←烏山
表 1 主要諸元表
有効開口幅1300mm
応荷重・滑走制御機能付
軽量ボルスタレス台車
軌間1067㎜,軸距2100㎜
シングルアーム(急速充電対応)
三相誘導電動機 1時間定格95kW
パンタグラフ折りたたみ高さ:3980mm
2両編成
図 10 編成図
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