建物被害認定調査のための事前トレーニング -公正かつ迅速な調査を

大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
The Great Hanshin-Awaji Earthquake Memorial Disaster
Reduction and Human Renovation Inst.
建物被害認定調査のための事前トレーニング
-公正かつ迅速な調査を実施するために
必要なトレーニングを体験する-
人と防災未来センター
専任研究員 堀 江 啓
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
本日のトレーニングプログラム
z
被害認定業務の目的/目標
DATSの特徴と内閣府ガイドラインとの位置づけ
認定業務の流れ:2段階調査プロセス
調査方法(木造)
z
調査方法(非木造)
z
調査時の留意点
z
z
z
z
– 外観目視調査
– 詳細調査
– 外観目視調査
– 詳細調査
–
–
–
–
調査時の安全に関わる事項
調査時に必要な資材
傾斜の測定方法
住民への対応について
DATS様式の使い方
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
被害認定業務には2つの目的がある
z 災害救助法適用など,災害対応における意思
決定の判断根拠となる被害情報を報告するた
めの業務
初動調査
z 被災者の生活再建に必要な支援内容や支援
範囲を決定するための基礎資料となるり災証
明書を発行するための業務
被害認定調査
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
応急危険度判定 と 被害認定調査
の違いを理解する
応急危険度判定
被害認定調査
●余震などによる倒壊や,部材
や物などの落下など安全性
に関わる被害を判定する
●住まいの継続使用が可能か
どうか,構造的・経済的視
点から被害を判定する
●2次災害を防止し,被災者に
避難が必要かどうかの情報
を提供することを目的とする
●被災者の生活再建を
目的とする
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
応急危険度判定 と 被害認定調査
の違いを理解する
応急危険度判定
被害認定調査
●余震などによる倒壊や,部材
や物などの落下など安全性
に関わる被害を判定する
●住まいの継続使用が可能か
どうか,構造的・経済的視
点から被害を判定する
●2次災害を防止し,被災者に
避難が必要かどうかの情報
を提供することを目的とする
●被災者の生活再建を
目的とする
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
り災証明書発行のための
被害認定業務の目標を確認する
z
z
被災者の生活再建を
目的した業務
建物の被害調査
その業務はどうあるべ
きか?
調査情報の集積
1. 全ての被災者に対して
公正に被害認定を行う
2. 大量の建物被害判定
を実施するために迅速
に被害認定を行う
り災証明書の発行
公的な支援
私的な支援
被害認定調査・訓練システム
Damage Assessment Training System
(DATS)
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
被害認定調査・訓練システム(DATS)の主な特徴
1.
内閣府のガイドライン(住家の被害認定基準運用指針)によ
る判定との整合性を検証して設計
2.
大規模災害の発生を考慮
¾
調査効率を高め、非専門家の動員・活用を可能とするシステム
3.
被災者の納得を得るための2段階調査プロセスを確立
4.
非専門家の運用に配慮し,被災者の判定に対する理解を
促す調査手法および調査票を開発
5.
効率的に学習できる非専門家向けの訓練システムを構築
6.
調査結果の電算処理を省力化する調査票/電子調査票を
開発
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
内閣府ガイドラインとの位置づけ
内閣府ガイドライン
災害対応業務分析
指針を補完
1995年 阪神・淡路大震災など
災害の教訓を体系化
災害の教訓を体系化
自治体ニーズを明確化
自治体ニーズを明確化
被害認定調査・訓練システム
被害認定調査・訓練システム
被災家屋GISデータベースシステム
被災家屋GISデータベースシステム
り災証明書発行支援システム
り災証明書発行支援システム
り災証明書
り災証明書
小千谷市への適用/改良
被害認定業務総合支援システム
放送受信
被災者
保育料・ 国民健康 国民年金
解体廃棄
銀行等の
災害援護 義捐金の 各種税の
介護保険 住宅応急
応急仮設
料の免除
公費解体 物の撤去・
その他
生活再建
授業料等 保険料の 保険料の
融資の条
資金
配布
減免
料の減免 修理
住宅入居
(日本放
支援金
の減免
減免
減免
処分
件
送協会)
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
被災者の納得を得るための
2段階調査プロセスの確立
z 明瞭簡潔で迅速かつ公正な調査システム
の構築を目指す
– 外観目視による迅速な調査を実施
– 外観目視による判定結果に不満があれば内閣府
の被害認定運用指針を用いて,建物内部を含め
た詳細調査を実施
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
2段階調査プロセス:迅速性+正確性(公正性)
適用ポイント
全
壊
大
外観目視による
規
迅速な調査
模
半
母数が多い=効率化
壊 ・
ある程度の知識が必要=要トレーニング
半
壊 ・
一
再調査申請 部
建物内部を含めた
損
詳細調査
壊
判定結果を納得してもらう必要がある=個別対応
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
2段階調査プロセス:迅速性+正確性(公正性)
適用ポイント
調査ツール
DATS
+訓練
内閣府ガイドライン
大
規
非専門家の運用を考慮し,
外観目視による
模
調査の簡潔性を高める
迅速な調査
半
外観目視調査
壊
母数が多い=効率化
・
全第2次判定ある程度の知識が必要=要トレーニング
大規模災害の発生を考慮し,
半
外観
調査の効率性を高める
壊
壊
・
再調査申請 一
建物内部を含めた
部
第3次判定
詳細調査
損
建物内部を含めた
壊
判定結果を納得してもらう必要がある=個別対応
第1次判定
(倒壊建物認定)
外観
詳細調査
内閣府による調査の流れとDATSの関係
別紙2
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
非専門家の動員を考慮した調査票の開発
判定手順の標準化
判定基準の視覚化
判定根拠の数値化
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
調査の迅速性を高める
各調査手法における1日・1班あたりの調査棟数の比較
調査棟数/1日・1班
80
60
外観目視調査
外観目視調査
60棟
40
内部詳細調
内部詳細調
30棟?
20
10棟
0
DATS
内閣府
調査手法
内閣府,DATS
DATSによるトレーニングを
体験する
[木造建物・外観目視調査]
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
被害写真を用いた演習の流れ
STEP1:被害箇所に着目する.
STEP2:調査ツールを用いて
判定する.
STEP3:判定結果を確認する。
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
外観目視調査の流れと調査項目
被害パターンチャートによる
建物全体の判定
○宅地地盤の被害
○液状化による沈下
地盤被害の確認
上部構造被害の確認
○層破壊被害
○基礎被害(建物のゆがみ)
○傾斜被害
判定チェックシートによる
部位の判定
屋根被害の確認
○屋根被害
壁被害の確認
○壁被害(基礎を含める)
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
調査票/被害パターンチャートの構成
住家及
び調査
の概要
被害
程度
特記
事項
上部構
造被害
調査
フロー
判定
結果
地盤・
液状化
被害
建物価値の損失・
補修判断の目安
チェック
シート
損傷点
の集計
屋根の
損傷の
様子
外壁の
損傷の
様子
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
DATSツールの使い方(その1):
被害認定用パターンチャートで正しい評価軸を身につける
被害
程度
上部構
造被害
地盤・
液状化
被害
建物価値の損失・
補修判断の目安
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
DATSツールの使い方(その2):
判定フローで正しい手順を覚える
被害パターンチャートによる建物全体の判定
地盤被害の確認
上部構造被害の
確認
判定チェックシートによる
部位の判定
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
DATSツールの使い方(その3):
判定チェックシートで判断根拠を明確にする
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
The Great Hanshin-Awaji Earthquake Memorial Disaster
Reduction and Human Renovation Inst.
外観目視調査の具体的手順
判定フローに従い,
調査手順とDATSツールの使い
方をマスターする
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
無被害建物
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
53379-304-050
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
70015-355-020
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
地盤被害
液状化被害
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
地盤被害の確認
上部構造に被害なし
→原則無被害(要検討)
上部構造に被害あり
→上部構造被害を判定
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
傾斜
液状化被害の確認
主要な被害モードは傾斜と沈下
沈下量30cm以上で全壊
沈下
上部構造に被害なし
→原則無被害(要検討)
上部構造に被害あり
→上部構造被害を判定
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
層破壊被害
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
06073-097-315
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
23686-320-346
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
全壊
(基礎破壊)
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
基礎の破壊とは?
基礎
軽微な被害
基礎の破壊
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
建物全体にゆがみ
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
全壊
(傾斜)
※外壁又は柱の傾斜
120cm
d cm
d cm
最大傾斜を測定する
1.d=6cm~ :全壊
2.d=2~6cm:チェックシートの傾斜ありへ
3.d=0~2cm:チェックシートの傾斜なしへ
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
09311-332-094
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
03376-326-364
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
半壊
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
被災者再建支援制度の対象枠の拡大:
大規模半壊の導入(2004年4月)
z
大規模半壊世帯:居住する住宅が半壊し,構造耐力
上主要な部分の補修を含む大規模な補修を行わな
ければ当該住宅に居住することが困難であると認め
られる世帯
半壊
住家の損壊,焼失,流失し
た部分の床面積の延べ床
面積に占める損壊割合
住家の主要な構成要素の
経済的被害の住家全体に
占める損害割合
全壊
その他
大規模半壊
20%以上
50%未満
50%以上
70%未満
70%以上
20%以上
40%未満
40%以上
50%未満
50%以上
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
判定チェックシートを使ってみる
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
半壊
例えば…
屋根:4点
(20%~30%)
壁 :21点
(20%~30%)
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
27804-126-213
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
22141-180-233
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
大規模半壊
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
大規模半壊
傾斜や壁のはがれ,基礎に亀裂がはいるなど
建物のいたるところに被害があらわれる
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
一部損壊
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
07826-321-361
07826-321-36.jpg
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
20725-012-291
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
42417-268-362
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
18106-321-302
演習
繰り返し判定を実施する
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
本日のトレーニング目標
1.
被害認定基準(内閣府ガイドライン)が定義
する被害の評価軸を学習する
2.
各人が持つ評価軸のずれを矯正する
3.
安定した被害判定が行えるようになる
4.
被害認定(判定)の難しさを体験し,事前訓
練の大切さを認識する
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
E-ラーニングを用いた訓練システム
トップ画面
判定画面
解説画面
総合評価画面
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
被害調査を支援するツールの開発
電子調査票(モバイル端末)
大大特Ⅲ-3 Hands-on Session
阪神・淡路大震災の教訓
ー 被害認定のあり方 ー
‡ 被害認定調査の目的を明確にする
‡ 被害認定の基準を統一する
‡ 被害認定調査システムを簡潔化し、標準化する
‡ 人員体制を整備する
‡ 情報処理システムを開発する
(重川, 2000)
ご静聴ありがとうございました