顔面用マッサージローラーの使用が顔面皮膚血流に

顔面用マッサージローラーの使用が顔面皮膚血流に及ぼす影響
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3)
宮路茜 、川出周平 、杉森香織 、林直亨
【方法】
健常な成人男女12名(男性10名、女性2名、 22±1歳)を対象に、室
温 (24度)順化のための30分間の座位安静後、皮膚をつまむ形状の
顔面用マッサージローラー(ReFa CARAT, 株式会社MTG)を用いて右頬
を5分間マッサージさせた。マッサージの圧力やローラーの往復回数
は任意とした。マッサージ直前に1回、マッサージ直後
から10分間1分ごとにレーザースペックル血
流計(LSFG-ANW, SoftCare社)を用いて顔面
皮膚血流速度(SkBF)を測定した。対照試行
として、30分の安静後、5分間安静にした際
にも同様に血流を計測した。SkBFの解析部
位は鼻、右頬および左頬の3箇所とした。ま
Fig. 1
た、マッサージ中の様子をビデオカメラで撮
ReFa CARAT 影し、マッサージ回数を計測した。
↓↓↓↓ ↓↓ ↓↓ ↓↓ ↓↓
SkBFの測定:↓
マッサージ
無し or 有り
0
回復期
5
15(min)
0分時点
5分時点
0分時点
5分時点
5分間
マッサージ無し
5分間
マッサージ有り
Fig. 2 実験プロトコールとLSFG測定イメージ
マッサージローラーを使用した5分後に右頬の血流が
増加していることが分かる(赤い部位が血流が高い)。
時間 (分)
5分間
マッサージ有り
時間 (分)
Fig. 3 SkBF変化率の経時変化
マッサージをした右頬においてのみ、マッサージ終了
10分後まで、安静時に比べて有意に血流が増加した。
Fig. 4 SkBF変化率のマッサージ後10分間の平均変化率
すべての被験者で、マッサージ後の値が高かった。
ΔSkBF (%)
【緒言】
肌の美容や顔の浮腫改善を目的とした顔面用マッサージローラーの
利用については、皮膚の血流に及ぼす影響といった客観的な評価が
なされていない。圧迫や擦過により皮膚が紅潮するように、マッサージ
ローラーによる物理的刺激は皮膚血流を増加させる可能性がある。
一般に、血流の増加は酸素・栄養分の供給と代謝産物の除去の効果
を有することから(Guyton and Hall 2000など)、ローラーの使用が皮膚
血流の増加をもたらすならば、美容効果の傍証となる。
そこで,本研究では、皮膚をつまむ形状の顔面用マッサージロー
ラーの使用が皮膚血流に与える影響について検討する。具体的に
は、ローラーの接触部および非接触部における皮膚血流を非侵襲的
な手法(レーザースペックル血流計)を用いて測定する。マッサージ
ローラー使用中の血流を計測することが不可能であるため,使用後
の血流を記録した。
5分間
マッサージ無し
ΔSkBF (%)
【要約】
肌の美容を目的とした、皮膚をつまむ形状の顔面用マッサージロー
ラーが皮膚の血流に及ぼす影響は検討されていない。圧迫や擦過に
より皮膚が紅潮するように、マッサージローラーによる物理的刺激は
皮膚血流を増加させる可能性がある。一般に、血流の増加は酸素・栄
養分の供給と代謝産物の除去の効果を有することから、ローラーの使
用が皮膚血流の増加をもたらすならば、美容効果の傍証となる。本研
究では、顔面用マッサージローラーの使用が、ローラーの接触部およ
び非接触部における皮膚血流に与える影響を検討した。
健常成人男女12名(男性10名、女性2名、22±1歳)を対象に、室温
順化のための30分間の座位安静後、皮膚をつまむ形状の顔面用マッ
サージローラーを用いて右頬を5分間マッサージさせた。マッサージの
圧力やローラーの往復回数は任意とした。マッサージ直前に1回、マッ
サージ後10分間1分ごとにレーザースペックル血流計を用いて顔面皮
膚血流速度を測定した。対照試行として、30分の安静後、5分間安静
にした際にも同様に血流を計測した。鼻、右頬および左頬の3箇所の
血流を解析した。
マッサージローラーを使用した右頬のみ、皮膚血流速度の上昇が認
められた。右頬における皮膚血流速度のベースラインに対する変化
率は、マッサージ終了2分後に平均値は最大となった(30±7%)。右頬
の皮膚血流速度は、10分経過しても上昇したままであった。対照試行
では、5分間の安静後に、いずれの部位の皮膚血流速度も変化しな
かった。
これらの結果から、顔面用マッサージローラーの使用は接触部の皮
膚血流を増加させること、さらに、その血流の増加は使用後にも維持
されることが示唆された。これらのことから、顔面用マッサージロー
ラーは皮膚血流を増加させるのに有効な手段である可能性が示唆さ
れた。
ΔSkBF (%)
社会理工学研究科・3)リベラルアーツ研究教育院、2)株式会社MTG
ΔSkBF (%)
1)東京工業大学
Tokyo Tech
5分間のマッサージ回数 (回)
Fig. 5 SkBF変化率のマッサージ後10分間の平均変化率と
マッサージ回数との関連
マッサージ回数とマッサージ後10分間のSkBF平均
変化率との間に有意な相関関係はなかった(r=0.25)。
【結果・考察】
マッサージローラーを使用した右頬のみ、皮膚血流速度の有意な上
昇が認められ(P<0.05)、非接触部の鼻および左頬では変化は認めら
れなかった。右頬における皮膚血流速度のベースラインに対する変化
率は、マッサージ終了2分後の平均値が最大となった(30±7%)。右頬
の皮膚血流速度は、マッサージ終了後10分経過しても上昇したままで
あった。対照試行では、5分間の安静後に、いずれの部位の皮膚血流
速度も変化しなかった。また、マッサージ後10分間の平均値で比較し
ても、マッサージの効果は有意であった(P<0.05)。マッサージ回数と
マッサージ後10分間のSkBF平均変化率との間に有意な相関関係はな
かった(r=0.25, p=0.39)。
これらの結果から、顔面用マッサージローラーを用いた部位のみの
皮膚血流を増加させること、その血流増加は使用後10分後までも維
持されることが示唆された。これらのことから、顔面用マッサージロー
ラーの使用は皮膚血流を増加させることが示唆された。マッサージ中
のみではなく、使用後にも皮膚血流を増加させる手段であることが推
察された。
【結語】
被験者の好みの強度・頻度で片頬を顔面用マッサージローラーで5
分間マッサージさせた。その結果、マッサージした部位のみで皮膚血
流が増加した。顔面用マッサージローラーの使用は皮膚血流を増加さ
せることが示唆された。
開示すべきCOIはありません。