第Ⅰ章 今後の具体的なサービスの検討委員会

第Ⅰ章
今後の具体的なサービスの検討委員会
目
次
第Ⅰ章 今後の具体的なサービスの検討委員会
1.目的 5
2.方法 5
2.1 委員会の構成 6
2.2 小委員会 6
2.3 委員会の開催状況 6
3.結果 7
3.1 今後の具体的なサービスの検討委員会 7
3.2 介護予防の総合的評価・分析に係る研究委員会 7
3.3 介護予防の先駆的な取組に係る調査分析委員会 8
3.4 介護予防に関する科学的知見の収集及ぶ分析委員会
3.5 介護予防の評価手法の開発委員会 9
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8
第Ⅰ章
今後の具体的なサービスの検討委員会
1.目的
平成 18 年度には、できる限り要支援・要介護状態にならない、あるいは、重度化しないよ
う「介護予防」を重視したシステムの確立を目指した制度の見直しが行われ、見直しにおい
ては、要支援 1・2 といった軽度な要支援者が要介護 1~5 といったより重度の状態に移行す
ることを防止する観点から「新予防給付」を創設した。また、要支援・要介護になる可能性
の高い特定高齢者やその予備軍である全ての高齢者に対して介護予防事業(地域支援事業)
を創設している。
平成 21 年度には、これらの介護予防システムを導入して 4 年目となるが、導入以降 3 年間
の経緯において、いくつかの課題点が明らかになりつつあるところである。
これらの課題に対応し、より効果的・効率的な介護予防事業の実施方法等を検証するため、
全国の市町村において、介護予防実態調査分析支援事業(厚生労働省補助金)が実施されて
いる。当該事業では、平成 18 年度から 20 年度までに実施された継続的評価分析等事業から
得られた成果等を踏まえ、より高い効果が見込まれる介護予防事業のモデル事業を実施し、
併せて当該サービスを受けた高齢者の状況等を定期的に調査し、その効果等について検証を
行うこととしており、厚生労働省は、この事業における検証結果を踏まえ、第 5 期介護保険
事業計画期間より、より効果的・効率的な介護予防事業を全国的に導入することとしている。
そこで、本研究では、上記の行政の状況を踏まえた上で、今後の介護予防のあり方及び具
体的なサービスについて一定の結論を出すことを最終目的とした。さらに、その最終目的の
達成のために、以下のような個別の小目的を設定した。
①介護予防実態調査分析支援事業において、心身の状態に係る情報等を適切に収集するため
の調査票原案を作成する。
②収集された「介護予防事業に係る情報」を、科学的に分析するための方法論等を検討する。
③予防給付についての経年的なモニタリングの手法を開発するため、我が国で最も確実な情
報であるレセプト情報を用い、介護予防効果等を科学的に算出するための方法論について
検討する。また、特定高齢者施策の効果についての再分析を行う。
④全国で取組が進んでいる介護予防の実例を収集し、それを、先駆的である特徴ごとに分類
する。さらに、先駆的な取組がなされている理由等を分析し、介護予防をより的確に進め
るための一定の方法論を確立する。
⑤今後の介護予防の展開に資する介護予防に係る科学的知見(エビデンス)を収集し、分析
を行う。
⑥行政に求められている介護予防に係る評価の手法を開発する。
2.方法
本事業実施にあたっては、以下のように、4 つの小委員会および小委員会の代表者等から
なる委員会を設置し、4 回にわたって今後の具体的なサービスの検討を行った。
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2.1
委員会の構成
【委員長】
鈴木 隆雄
国立長寿医療センター研究所 所長
【委員(50 音順)】
辻
一郎
東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野 教授
川越 雅弘
国立社会保障・人口問題研究所社会保障応用分析研究部
第4室長
木村 隆次
一般社団法人日本介護支援専門員協会 会長
武林 亨
慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学 教授
成川 衛
北里大学大学院薬学研究科臨床医学(医薬開発学)准教授
野中 博
医療法人社団博腎会野中医院 院長
藤原 啓子
名古屋市 健康福祉局 高齢福祉部介護保険課 主査
三上 裕司
社団法人日本医師会 常任理事
村口 桂子
熊本県人吉市役所高齢者支援課 課長補佐
安村 誠司
福島県立医科大学医学部公衆衛生学講座 教授
山縣然太朗
山梨大学大学院医学工学総合研究科社会医学講座 教授
2.2 小委員会
○介護予防の総合的評価・分析に関する研究委員会
(委員長: 鈴木 隆雄
国立長寿医療センター研究所
所長)
○介護予防の先駆的な取組に係る調査分析委員会
(委員長: 山縣然太朗
山梨大学大学院医学工学総合研究科社会医学講座
○介護予防に関する科学的知見の収集及び分析委員会
(委員長: 武林 亨
慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学
教授)
○介護予防の評価手法の開発委員会
(委員長: 辻
一郎
東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野
2.3
教授)
教授)
委員会の開催状況
開
催
状
況
第1回
○開催日時 平成 21 年 6 月 15 日(月)18:00~20:00
○開催場所 東京ステーションコンファレンス
○議題
(1)平成21年度老人保健健康増進等事業及び本委員会の目
的・概要
(2)介護予防実態調査分析支援事業(モデル事業)
(3)今後のスケジュール
第2回
○開催日時 平成 21 年 9 月 30 日(水)10:00~12:00
○開催場所 東京ステーションコンファレンス
○議題
(1)介護予防実態調査分析支援事業(モデル事業)について
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(2)各委員会の進捗状況について
第3回
○開催日時 平成 22 年 2 月 19 日(金)17:00~19:00
○開催場所 東京ステーションコンファレンス
○議題
(1)介護予防実態調査分析支援事業(モデル事業)について
(2)各委員会の進捗状況について
(3)今後の介護予防の具体的なサービスについて
第4回
○開催日時 平成 22 年 3 月 15 日(月)15:00~17:00
○開催場所 東京国際フォーラム
○議題
(1)各委員会の進捗状況について
(2)今後の介護予防の具体的なサービスについて
(3)まとめ
3.結果
本委員会および小委員会において検討された内容について、ここではそれらの概要を報告
する。各小委員会からはそれぞれ詳細な報告書が提出されているので参照されたい。
3.1 今後の具体的なサービスの検討委員会
(委員長: 鈴木 隆雄
国立長寿医療センター研究所 所長)
本委員会では、各小委員会からの進捗状況報告等を中心に、今後の介護予防の具体的なサ
ービスについて検討を行った。具体的には、平成 20 年度老人保健健康増進等事業((財)日本
公衆衛生協会)
「今後の介護予防事業のあり方に関する研究委員会」のまとめで出されたモデ
ル事業への課題を踏まえて、下記「3.2 介護予防の総合的評価・分析に係る研究委員会」に
おいて作成された介護予防に関するモデル事業(平成 21 年度開始)について、プログラムの
内容から年度末の中間データ報告まで、年間を通じたテーマとして協議した。
また、介護予防の 6 分野(運動器の機能向上、栄養改善、口腔機能の向上、閉じこもり予
防・支援、認知機能低下予防・支援、うつ予防・支援)のうち、閉じこもり、認知機能、う
つについての介護予防としての位置づけ及び今後の方向性について検討がなされた。議論の
方向性としては、この分野について、①更なる取組みの強化が図られるべきであること、ま
た、②これらの対象者を早急に把握し、適切な対応が取りやすいような仕組みづくりを考え
ること等、広義の介護予防という視点での取組みが増々重要になるという結論に至った。
3.2 介護予防の総合的評価・分析に係る研究委員会
(委員長: 鈴木 隆雄
国立長寿医療センター研究所 所長)
本研究実施にあたっては、3 つの小委員会を設置し、以下のことを実施した。
<実施委員会>
運動器疾患対策プログラムおよび複合プログラムについては、介護予防実態調査分析支援
事業におけるモデル事業の実施内容、モデル事業を評価するための調査票を作成した。また、
モデル事業について、平成 21 年 12 月末までの状況を調査・分析した。
認知機能向上プログラムについては、研究交流会を開催し、平成 22 年から開始するモデル
事業のプロトコル作成および評価方法の検討を行った。
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<進捗管理委員会>
進捗管理委員会では、介護予防実態調査分析支援事業において、モデル事業の効果等を検
証するための調査デザインを検討するとともに、モデル事業の実施市町村における進捗管理
を行った。
<費用分析>
特定高齢者施策の効果についての再分析を実施した。また、予防給付についての経年的な
モニタリングを行うための手法を開発するため、レセプトデータを用いた検証を試みた。
3.3 介護予防の先駆的な取組に係る調査分析委員会
(委員長: 山縣然太朗
山梨大学大学院医学工学総合研究科社会医学講座 教授)
本委員会の目的は、先駆的な介護予防の取り組み事例を調査分析し、全国的に結果を公表
することで、平成 24 年度以降(第5期介護保険計画期間)の介護保険の具体的サービスを検
討する際の資料、また地域における介護予防の活動を円滑に進めるための資料とすることで
ある。
この目的を達成するため、これまでに全国の自治体(市区町村)で行われてきた、あるい
は現在行われている介護予防事業や関連する取り組みについて幅広く情報を収集し、1,927 の
取り組み情報が収集された。収集された取り組み情報について、委員会において詳細に検討
して、全国の自治体へ推薦するレベル「推薦度」を「ぜひ薦めたい」「薦めたい」
「可能であ
れば薦めたい」の 3 段階で評価した。1つの取り組みにつき 3 名以上の委員で評価を行い、
その平均点を用いて最終的な推薦度を決定した。委員によるスコア評価の結果、
「ぜひ薦めた
い」7 個、
「薦めたい」53 個、「可能であれば薦めたい」15 個と評価された。
また、先駆的な取り組みを実施していることと関連する要因について、市区町村や取り組
み自体の特徴を評価した。多変量解析の結果、住民が実施主体として参画していること、他
の市区町村・大学・研究機関・ボランティア団体と協力しながら実施していること、予算が
多いこと、他の事業との連携があること、予防給付との連続性があることが、専門家の評価
により、推薦度が「薦めたい」あるいは「ぜひ薦めたい」取り組みとして選択されたことと
強く関連していた。自治体や行政の枠を超えて幅広く協力しながら介護予防の取り組みを進
めていくことの重要性が確認された。
3.4 介護予防に関する科学的知見の収集及び分析委員会
(委員長: 武林 亨
慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学 教授)
本委員会では、高齢者の ADL、QOL や身体機能・精神機能等の維持・向上を目的として実
施される介入プログラムのうち、運動器機能向上、栄養改善、口腔機能向上、認知機能維持・
低下予防、閉じこもり予防、うつ予防の 6 領域において、1999 年以降 2009 年までの間(重
要な論文はそれ以前・それ以降を含む)に査読付き原著論文として公表された知見を包括的
に収集し、系統的な整理と分析を行った。さらに、科学的根拠の程度という観点から、これ
らの介入プログラムの効果について検討した。
作業にあたっては、一般に研究デザインによって科学的根拠の程度が左右されるとの観点
から、無作為化比較対照試験と非無作為化比較対照試験による研究を採用した。ただし、う
つ領域では、上述のエビデンスは不十分であったため、参照情報として、コホート研究等の
観察研究やヒストリカルコントロールを用いた研究の結果についてもまとめた。
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3.5 介護予防の評価手法の開発委員会
(委員長: 辻
一郎
東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野 教授)
本委員会では、地域支援事業の介護予防事業について、都道府県と市区町村が事業評価を
円滑に行うための評価指標を提示し、評価の方法(データ収集、集計・解析、提示方法)に
関するマニュアルを作成することを目的とした。
試行調査や委員からの意見を踏まえて修正を行った評価指標の構成を以下に示す。
①プロセス指標
・特定高齢者を実際に把握した経路の状況
・基本チェックリスト実施から本人への連絡までの経過期間
・通所型介護予防事業の実施期間
・プログラム終了者への対応状況
・プログラム終了者の受け入れ先の状況
・プログラム終了時点での評価や終了後の状況把握の有無
②アウトプット指標(
「介護予防事業(地域支援事業)の実施状況に関する調査」に準拠)
・特定高齢者把握事業の状況(基本チェックリスト配布人数、特定高齢者候補者数、決定
者数等)
・通所型介護予防事業への参加人数(プログラム別)
・訪問型介護予防事業への被訪問実人数(プログラム別)
・特定高齢者施策への参加(参加者数、非参加者数)
・一般高齢者施策への参加延べ人数(内容別)
・地域支援事業に関わる費用(費目別)
③アウトカム指標
・要支援/要介護者数(年度末時点)および新規認定者数(要支援/要介護度別)
・要支援/要介護認定への移行率
・主観的健康観の変化(全体および開始時の主観的健康感の低下者)
・基本チェックリスト 25 項目の総スコアの変化(全体、開始時 11 項目以上の該当者)
・基本チェックリストの領域別スコアの変化(IADL 等)
・特定高齢者の経過(参加者の終了状況別人数)
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