私のソフトロー研究概説 勤務先のホームページで業績を公開して以来

私のソフトロー研究概説
勤務先のホームページで業績を公開して以来、法学関係者のみならず、
「ソフトロー」という
言葉に興味を持たれて検索して来られた方など、一般の方々からもお問い合わせをいただくこと
があり、結果的に私の「守備範囲」ではないというお答えを返さざるをえないこともしばしばあ
りますので、あらかじめここに私の研究していること(の範囲)などメモしておきます。ここに
は特に目新しいことは書いてありません(し、むしろ不用意なこともざっくばらんに書きます)
ので、専門の研究者の方はどうぞこのページは素通りされますようお願いいたします。
まず、
「ソフトロー」について、これでわかるという一冊(一論文)を紹介してくださいと言われる方
がおられますが、私の知る限りではそれはありません。むしろ何だかわからない曖昧な言葉であるからこ
そ、色々と使われているという事情ではないかということが、私の法律時報の論文で指摘させていただい
たことです。ただ、私も関わらせていただいた東大 COE ソフトロー研究プロジェクトでは、概念規定な
ど、相応に議論が進んできておりますので、まずは、そのプロジェクトの中心におられる藤田先生の概念
整理を参考にされるとよいと思われます。該当論文は『ソフトロー研究』第6号に掲載されておりますし、
同プロジェクトのホームページのディスカッションペーパーからも議論の概要を知ることができます。
上記にも関連しますが、私がソフトローについて直接に研究上の知見として申し上げられるのは、唯一、
国際法(国際法学)上の「ソフトロー」という言葉の歴史的変遷(概念史といいたいところですがそれほ
ど詳細な研究はまだなしえておりません)だけです。もっとも、それについても法律時報掲載の論文と、
これをよりわかりやすくふまえたソフトロー研究4号に載せたシンポジウム報告の短い論文2つしかあり
ません(これは論文の成立事情もかかわりますが、COE プロジェクトのホームページのディスカッショ
ンペーパーから辿れる右ソフトロー研究掲載論文の原型――pdf で印刷もできます――は、口語調(です
ます調)でより報告原稿に近くなっており、そちらの方がわかりやすい方がおられるかもしれません)
。
なお、ソフトロー研究4号が販売元で品切れであるということですが、私の手元に数冊余部があります
ので(現在6冊)
、必要な事情がある方(近くに大学図書館がないなど)は、事情を記して連絡をくだされ
ばお送り申し上げます。連絡先は、私の学内ホームページのトップページ下欄にあるメールアドレスを使
ってください(申し訳ありませんが、迷惑メール対策のため、あえてここに再記はしません。興味のある
方が現に該当ページを辿って連絡をとられていますので、何卒ご了承ください。
)
また、私の 2003 年の国際規範論文にも副題にソフトローとありますが、これは(国際政治学との学際
的な動向も関連した)国際法学上の「国際規範」一般の議論との関連で使われているにとどまりまして、
先の東大の研究プロジェクトを始め、今日学問的探究の対象となっているソフトロー研究自体との関連は
一部分にとどまります。そしてまた、この論文で指摘したソフトロー概念の使用をめぐる政治性等につい
ては、それこそ上記の2つの論文で正面から展開したことですので、この 2003 年の論文を参照されるよ
りは、
『法律時報』の論文を参照される方が手っ取り早いように思われます。
他方、この 2003 年論文が素描している法使用類型論には、言葉の歴史とは別の意味でソフトロー研究
と言える側面があります。この事情については、東大の COE プロジェクトのニューズレター第5号にエ
ッセイとして書いた「私のソフトロー研究」にありますので、プロジェクトのホームページの「刊行物」
という欄から辿ってご覧ください。念のため、そのさわりだけですが、ここにも引用しておきます。
・・・国際法研究の方法論として私が提案してきたのは、
「適用」
、
「援用」
、
「参照」という3類型を
もって、従来の司法過程中心の概念枠組を補うアプローチです。これは、従来もっぱら想定されてき
た司法的な「適用」
(第三者による法使用であり、典型的には裁判官による法の適用)をひとつの類
型としながらも、これまであまり論じられることのなかった当事者間の法の「援用」
(二者間におけ
る法使用であり、典型的には交渉における法使用)という類型を加え、さらには、当事者単独におけ
る法の「参照」
(一者による法使用であり、日常的な法の使われ方・働き方の多くを占める)という
類型も付加して、この新たな3類型をもとに、法が使われ、働く多様な場面を整理していくというも
のです。このように国際法の実態を社会学的に把握する試みは、ソフトロー研究そのものと言えるか
もしれません。言ってみれば、これは、国際法の「ソフトさ」を直視しながら、
「国際法がどのよう
にソフトなのか」という課題を解明する試みに他ならないからです。
この法使用類型論については、その後、国内法一般についても問題提起をする趣旨で法社会学会でも報
告させていただき、またその延長で今年の5月にも同じく法社会学会で関連した問題提起をさせていただ
く予定です。また、そのエッセンスについては、先の 2003 年論文と同様、素描にとどまりますが、国際
法の国内適用との関連でこの類型論を用いる論文を書いたところです。この論文については、業績紹介の
ホームページから PDF でもダウンロードできます。なお、この法使用類型論については、近いうちに、
もうすこし詳しい研究成果を発表できる予定です。
ともあれ、概念整理などソフトロー研究そのものについては、上記の東大のプロジェクトにおいて研究
を継続しているところで(その一端として、業績紹介欄の研究会レジュメなどを参照してください)
、その
成果は、一定のまとまった論文として(おそらくやはり概念整理ということになるとは思いますが)
、2007
年の夏頃には仕上がる予定です(*)
。
以上、取り急ぎ、私の「守備範囲」のお知らせとなります。なにぶん不十分で後日また補充できればと
思いますが、今のところ時間がありませんのでとりあえずこのまま載せておきます。ソフトロー研究につ
いて私にお尋ねになる方は、以上をご了解の上、ご連絡をとられるようお願い申し上げます。
2007年1月(2008 年 3 月再補訂)
齋藤民徒
追記(2008 年 3 月)
:
上記(*)ですが、
『ソフトロー叢書第5巻』所収の論文「国際法学におけるソフトロー概念の再検討」
として、2008 年夏にも公刊される予定です。