短歌部門

短歌部門
一席 沖縄県知事賞
ウミンチュ
さんてんもう
ハ ー リ ー スーブ
人の祭り近づき糸満の山巓毛にハーリー鉦鳴る
海
わだつみ
神を畏れ捧ぐる爬竜船競争海の男ら気勢の上がる
海
指笛に鉦鳴り止まぬ海神祭糸満おみなら岸辺に踊る
久手堅 稔
櫂を漕ぐピッチの上がるゴール前いよよ響動めく万余の声援
しぶき上げ抜きつ抜かれつ海面ゆくハーリースーブにわが血の滾る
1
短歌部門
二席 沖縄県文化振興会 理事長賞
宮城 瑛美
メール打つ消す打つ消すを繰り返し想い伝える言葉を探す
いつまでもなんて気安くいわないで澄んだ水さえいつかは腐る
生きている限り誰しも罪作り止まない雨の音が掻き消す
ダイヤルを回し繋がる五秒前呼び出し音と鼓動重なる
空模様心とリンクさせたなら世界が壊れ始めるでしょう
2
短歌部門
佳作
仲間 節子
エーファイとう祈りの言葉となえつつオナリ神へと心身は向かう
神聖なアシャギへ渡る七つ橋穢れより晴への結界となる
しんにょ
七つ橋渡りて籠るイザイヤマ「オモロ」をうたい神女となりゆく
神遊び
ユクネーガミアシ
降り注ぐ神の波動に包まれてシャーマンたちの夕
白は月赤は太陽黄は地神花差し遊びのイザイ花咲く
3
短歌部門
佳作
一フィート映像にこころ震うのみ叔父の潜みし恩納岳燃ゆ
終戦の恩納山中さ迷いて父は探しぬ叔父の墓標を
叔父の骨胸にいだきて戻りしと父は語りぬ盆の十五夜
祖ら眠る門中墓に叔父の骨納めてのちの山ひかるなり
安らかに眠れと祈る六月の遠山に伊集の花ほのじろし
伊波 瞳
4
短歌部門
佳作
緊張し叫びたくなるその時に支えてくれた友の声援
風のない体育館の半分で声が飛び交う真夏の練習
小濱 琴美
日焼け止めしっかり塗ったはずなのに波引いたあとの砂浜のよう
ぴとぴと、と窓をノックする音はなぜか落着きなぜか寂しい
帰り道車の音と笑い声いつかは変わるこの日常も
5
短歌部門
佳作
開きたる門中墓より取り出されずらりと並ぶ骨董厨子甕
うから
長年の小暗き奥処ゆ陽の下の親族に渡る骨壺数多
亡き義兄の一際小さき骨壺に戦地に拾ひし小石の三つ
ぼ
前城 清子
老い母の慈愛を込めて納めしか白きハンカチに確と包まる
つ
父母に抱かるるごと新らしき骨壺に納めし三つの小石
6
短歌部門
佳作
野原 誠喜
キリストの架刑について考える夜毎に愛がわからなくなる
遠くから救い求める細い声暴走族も泣いているのだ
羽のない天使の君とまた見たい原始時代のような夕焼け
万引きをした駄菓子屋がスーパーに悔い改めて歯ブラシを買う
唐揚げを売るバツイチのお姉さんオマケに愛はあるのでしょうか
7
短歌部門
奨励賞
岸本 周也
赤とんぼ台風のあととんで来た二十ぴきほどわになりとんだ
赤とんぼ海にもいたよぶつかってごめんなさいとあやまっていた
赤とんぼ庭にもいるよとまってるもうあきだよとしらせているよ
8