講演内容(PDF) - 千葉科学大学 図書館

地震の科学
−地震波を使うと何を知ることが出来るのか−
千葉科学大学 危機管理学部
防災システム学科
栗田 勝実
地震に対するイメージ
・危ない
・こわい
・大きな地震に遭遇したくない
負のイメージしかない
神戸市中央区にて
地震は何も役に立たないのか?
講演内容
1.地球の内部はどうなっているの?
2.地震波を使うと人間にどんな幸福をもたらすの?
1.地球の内部はどうなっているの?
固体? 液体? 気体? それとも 空洞?
答え
地殻・・・地球の表面を構成
厚さは数km∼30km
マントル・・・地殻と核の間にある層
固体の岩石で構成
コア・・・地下2900km以下の層
2層に分けられる。
外核・・液体
内核・・固体
19世紀までに分かっていたこと
1.地球の平均密度
地球の平均密度:5.48 g/cm3
万有引力の法則を用いて
H.Cavendish(1798)が求める
(参考)地表の岩石の平均密度:2.6 g/cm3
地球内部にいくにしたがって
密度の大きい物質にならなければならない
19世紀までに分かっていたこと
2.地球の剛性率
地球潮汐の現象から推定される剛性率は、地表
にある岩石より値より小さい
(防災科学技術研究所から)
剛性率・・・変形のしにくさをきめる指数
大→変形しにくい
小→変形しやすい
地球内部に大きな体積の柔らかい物質がないと
説明出来ない
地球内部にいくにしたがって
密度の大きい物質にならなければならない
+
地球内部に大きな体積の柔らかい物質がないと
説明出来ない
この2点の条件を満たす地球のモデルが必要
どのようにして調べたのか?
直接観察するのが一番
穴を掘って調べた?
地球
赤道半径 :6,378Km
極半径 :6,357km
現実的ではない
世界最深の穴
ロシアのコラ半島
地下12kmまで掘られている
どのようにして調べたのか?
地球上で観測される地震波を用いて調べた
波の性質を知ることが必要
波の性質-その1
真直ぐなストローを水の入ったコップに挿すと
ストローはどの様に見えるだろう?
波の性質-その1
こんな様に見えることはありませんか?
波は異なる媒質の境界で進行方向を変える性質がある
屈折の法則
速さ:小さい
速さ:大きい
θ
速さ:大きい
*速さが小から大に入る
θは大きくなる
θ
速さ:小さい
*速さが大から小に入る
θは小さくなる
波が屈折する性質を利用すると
パ∼ン
▲
▲
地表面
▲
▲
▲
▲
Vp=1500m/s
Vp=3000m/s
▲
:センサー
:波線
左:各地表で観測される波動
波面
(佐々・他1993)
▲1
▲2
右:地中を波が伝
わっている様子を
イメージした図
波線
▲3
▲4
▲5
▲6
地震波の性質
0
5
10
P波(縦波)
15
Time(s)
20
25
30
S波(横波)
P波・・・固体・液体を介して波が伝わる性質を持つ
S波・・・固体を介して波が伝わる性質を持つ
地震波形の記録をみると
いろいろな地震記録を使うと
(Kennette and Engdahl,1991)
走時曲線
(防災科学技術研究所から)
地震波形
どのようにして地震波は
地球内部を伝わるのか
近地での地震波の伝わり方
速さ:小
速さ:大
浅い部分の地下構造モデル
(金森,1978)
観測記録が説明出来る→○
遠地での地震波の伝わり方
(金森,1978)
問題点・・・
103°から143°の地域にはP波初動が現れない
シャドーゾーン
どのようなモデルを作れば説明が出来るのか
速さ:大
速さ:小
(金森,1978)
波の伝わる速さが遅い核を入れたモデル
観測記録が説明出来る→○
物質の化学的組成境界が存在することを示す
もう一つの問題
P波は143°より遠い部分で現れたが・・・・
S波の初動部分は103°以降は現れない
(金森,1978に加執)
仮定:核は液体である
観測記録が説明出来る→○
地球内部に大きな体積の柔らかい物質がないと
説明出来ない
地球内部に液体が存在すれば説明可能
地球内部へ行くにしたがって
密度の大きい物質にならなければならない
地球内部の条件下における
密度と伝播速度の関係は弾性論で説明できる
問題解決!
観測機器の精度が向上すると・・・
110°にP波が現れることが確認
(金森,1978に加執)
仮定:核の中に固体物質があるとすれば
観測記録が説明出来る→○
地殻・・・地球の表面を構成
厚さは数km∼30km
マントル・・・地殻と核の間にある層
固体の岩石で構成
コア・・・地下2900km以下の層
2層に分けられる。
外核・・液体
内核・・固体
地震波によって
地球内部の構造を見出す
地震波トモグラフィー
2.地震波を使うと人間にどんな幸福をもたらすの?
地震波トモグラフィーの応用
地球科学分野では・・・・
・活断層調査
・石油資源探査
波の性質-その2
やっほー
壁
やっほー
人が壁に向かって大声で叫んだらどうなるか?
時間をおいて壁から自分の声が跳ね返ってくる
波動は反射する性質を持っている
波の反射を利用すれば
パ∼ン
▲
地表面
▲
▲
▲
▲
▲
Vp=1500m/s
Vp=3000m/s
▲
:センサー
:波線
(佐々・他1993)
上図:波線で示した水平二層構造における波の伝わりかた
下図:上図の場合における走時曲線
直接波
屈折波
反射波
実際に観測された
地震記録
(佐々・他1993)
反射波の相似計算
三平方の定理から
V2Te2=V2T02+x2
零オフセット記録
(佐々・他1993)
V:波の伝わる速度
Te:震源から反射点を通り受振点まで伝播する反射波の走時(時間)
T0:震源における垂直往復走時(時間)
・石油資源探査の場合
無計画にトモグラフィーを実施してもだめ
1.有機物に富む堆積岩が存在する地域
2.石油の集積が期待される地下構造である
ある程度の地質学的な情報を基に探査をする
*油層の位置の把握
*貯留層の広がりが大きい
アメリカ ワイオミング州ユタ州の事例
反射法地震探査による地下構造
(Brown,1991)
ワイオミング州ユタ州フィールドの地質断面構造
(Brown,1991)
左図:反射法地震探査を実施した地域
下図:解析から求められた
地下構造断面図
千葉県
消防防災課の
HPから
地震波トモグラフィーの応用
もっと身近なものでは(?)・・・・
・超音波診断(エコー)
超音波を利用
・CTスキャン(断層撮影)
X線を利用
(高等学校物理Ⅰ 啓林館)
まとめ
1.地球の内部はどうなっているの?
・地球内部は地殻、マントル、外核、内核に分類
・外核は液体の性質を持っている
2.地震波を使うと人間にどんな幸福をもたらすの?
・地震探査で石油の埋蔵位置などが分かる
・CTや超音波(エコー)で体内の状況が分かる
波の性質を上手に利用することで、直接見ることが
出来ない物体のイメージを知ることが出来る
地球物理学(地震学)の発達による所が大きい