事業企画書(PDF)

地域 ICT 利活用広域連携事業企画書
別紙
1.地域課題の緊急性と課題解決に向けた ICT 利活用方法
これまで台風や地震など災害警戒・対応時は、消防防災関係機関や行政が現地状況等を把
握した後、対応方針を決定し住民に対して防災行政無線等を用いて、避難勧告や要援護者支
援行動を周知する事で対応してきた。行政側の人的限界もあり、情報収集力、集約力の限界
から、住民にとっては、伝達される情報量の少なさ、即時性、伝達性といった面で課題を抱
えている。また、今後、人口減少と高齢化が進む中で、とくに中山間地等の所謂限界集落と
される地域を中心にコミュニティ力が一層低下していくことが想定されており、これまで災
害情報等の不足をカバーしてきた地域での防災体制を維持存続していくことが困難になって
きている。このため、ICT技術を活用し、住民自らも防災活動に積極的に関わっていく体
制を再構築する。
具体的には、大雨等の際、地域住民は、周辺地域の現場写真を撮影しメールを送る。消防
職員は、当該メールから寄せられる画像までを含んだ情報を認知できる事によって、現場に
対する危険予知や対策の事前把握が可能となる。なお、当該地域における消防の組織構成で
は、コミュニティに依存する消防団が数多く存在している。この消防団との連絡においても、
ICTは有用性が高く、既往の防災無線と同時並行的に利用しながら、ICTの特質を活か
した応用性を講じることで、情報共有が進展する。
当該地域では、平成16年の台風23号により、宮津市の大手川氾濫を始め、管内全域で
大きな被害を受けたが、各地域の被災状況等の情報入手の遅れが教訓として挙げられる。情
報の伝達手段・共有の手段を有していれば、減災分野で特に有用性の高い利活用がなされ、
効果的であったと考える。
地域住民が、行政側で有する情報伝達並びに情報の共有の仕組みと親和性の高い仕組みを
有することの有益性は言うまでもなく高い。この場合、住民が自身で保有する携帯電話やパ
ソコン等といった各種情報機器をインターネット技術によって活用し、連携せしめることが
もっとも効率的且つ効果的であるといえる。
■課題解決に資する考え方
ICTは、より多くの機器やそれら機器使用する人を結びつける技術基盤ともなる。機
器類は、オープンプラットホームを採用した端末を活用することが、サービスの多様性に
とって効果的である。一方で多様性を存分に発揮するインターネット接続サービスでは、
セキュリティに対する問題が多く指摘されている。今般の事業モデルは扱う情報によって
は、秘匿性の高い情報もあることから、セキュリティ対策も重要となる。
オープンな環境とサービスの多様性を存分に活かしつつ、セキュリティレベルを向上す
ることへの柔軟性に富んだ仕組みを構築し、運用するため本事業モデルでは、事業の性質
上や現場スタッフの声等から携帯電話網を活用することとしている。このため、MVNE
から人材を招聘し、利活用分野ごとに専門知識の高い人材育成を行うとともに、広く住民
全体が活用できるよう、消防団員や自治会長等災害時にキーマンとなる人材に向けて研修
を実施する。こうすることによって、地域固有の課題解決や地域資源を他地域に拡大でき
る機会が広がるものである。
これを基本的な考え方として、防災と消防、そして減災に向けた取組み内容を、別添の
事業イメージ詳細図に記載する。
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2.ICT 利活用の対象範囲
今般のICT利活用の対象範囲は地域住民としており、住民の生活周辺環境を文字や画像
といったデータに合わせ、音声も同様に扱えるICT掲示板を構築・提供する。このユニフ
ァイド・メッセージングサービスは、コミュニティ内やコミュニティ間、行政間や行政と住
民など異種コミュニティ間でも情報の錯綜等がないよう配慮する。取り扱う内容や組織等、
属性や階層の区分を可能とし、情報の性質や有事の状況等にあわせ、臨機応変に対処可能な
仕様とする。運用に際しては、利用者毎にユーザーIDとパスワード(PW)を発行し、当
該IDとPWをもっていれば、使用するIT機器を選ばずサービスの利用を可能とする。な
お、行政間情報については、MVNOの閉域接続でもってセキュリティ性能に優れたネット
ワークを構築する。このMVNOの閉域接続では、消防無線の代替設備としての有用性が期
待でき、職員間や職員と司令室との連絡に有効な手段となりうる。
ICT掲示板は、地域住民が生活区域を中心とした、まちの見守り活動を活発化する役割
を担うが、この活動は、災害発生時における減災効果も大いに期待できるものである。例え
ば、ちょっとした大雨の後、ごみや流木などで支流や用水路がせき止められる事が多々ある
が、このような事象をカメラで撮影し、その画像をICT掲示板によって広く周知すること
で、住民に向けて警鐘をならすことができる。これは、大雨等に見舞われた旅行者に対して
も有用性の高い情報になりうる。場合によっては、この情報を見た関係職員が能動的に現場
対策を講じることができる。この活動の積み重ねは、大規模災害への未然防止となりうるこ
とは言うまでもない。あわせて、当該情報が蓄積されることは、地域の減災履歴情報として、
具体的に広く知らしめることができることができ、その恒久的対策についても手段を講じや
すくなると期待する。
地域住民を中心とした消防参画意識の高揚に向けたICT利活用と、行政側における当該
情報の利活用イメージを記述したが、行政の中でも特に消防については、MVNOによるV
oIP通信サービスが、連絡手段・情報収集手段として期待されている。この分野における
MVNOのサービスは、大別すると、行政から地域住民(コミュニティ単位)に向けた防災
連絡機能と緊急車両や隊員が保有する無線端末の携帯電話網接続機能を有するものになる。
前者は住民が有する家庭や事業所等の一般加入者電話及び携帯電話等の電話番号に対して、
電話をかけることで広く確実に伝達できるとした機能も有している。この場合、多くの電話
番号に対して短時間で架電することへの対応がとれていることは言うまでもない。なお、現
状の防災行政無線を通した連絡では、激しい風雨の際に雨戸を締め切った状態で、殆ど聞き
取れないといった問題がある。また、コミュニティ単位の防災情報はテレビ、ラジオ等のメ
ディアに頼る周知は不可能であることから、架電については、その実効性とコストパフォー
マンスから、最良のソリューションとして期待されている。
次に行政における連絡用端末であるが、携帯電話のネットワークが、エリアカバー及び、
無線チャネル数(即ち、同時接続可能数)の問題に対して有効である。従来から、職員の自
己保有の携帯電話で連絡をとるケースも多く、実際の現場では有効に活用され機能している。
今般の事業では、ここにIP電話機能を持ち込み、音声通話と同時に必要とする情報を画像
やテキスト等で送る。また、指令に対する応答を掌握するなど、既往の設備や機能では、対
応しきれなかった課題解決を行う。
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■地域防災システム
①地域住民は、防災ポータル(仮称)にアクセスすることで登録や参照に関するメニュー
が、端末上に表示されるため、ICTリテラシーに依存することなく、サービスを利用
する。
②行政側職員は、ICT基盤によって分類される情報を逐次参照する事で消防、防災・減
災活動に役立てる。
③旅行等で地域を離れる場合でも、有事の際に自分の地域情報を知ることができる。また、
親戚等必要な人にアクセス権限を与えることで、近親者の連絡網としても利用が可能と
なる。
④消防無線を用いた連絡では、大雨などの激しい降雨の際や風向き等で連絡が聞き取れな
い場合が多々ある。ここに、ICT基盤から地域の加入者電話に対して架電する仕組み
を導入し、伝達の精度を向上する。なお、架電に要する時間は、3万番号で10分程度
を想定している。一般加入者電話番号、IP電話番号、携帯電話番号等を対象とする。
■無線VoIP通信システム
緊急車両と消防隊員並びに地域消防団には、有事の際の情報連絡手段として、携帯電話
網を使用した連絡手段を提供する。消防団員は、現在でも自己所有の携帯電話を使って連
絡を取り合う事が多く、有効な手段として使用されている。指示命令系統におけるツール
として、消防専用の情報連絡ネットワークとして構築する。
■まちなか監視システム
監視カメラを監視要区域に設置する。大雨などの自然災害における災害の拡大予見に対
して効果的である。人的リソースの不足を補うものとして、情報伝達における情報内容の
高密度化を促進するものである。主たる利用は地域の防災部門を想定しており、消防との
連携も密接になる。
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