山岳リゾートの国際化による再生過程に関する研究

山岳リゾートの国際化による再生過程に関する研究
A study on the Rejuvenation Process of Mountain Resort by Internationalization in Hakuba
公共システムプログラム
12M70017 青山敦
指導教員 十代田朗
Program Public policy Design Program
Atsushi AOYAMA, Adviser Akira SOSHIRODA
ABSTRACT
This paper aims to reveal the development process of mountain resort that become an
international resort by increasing of foreign visitors and the changes occurred in the region
and the roles and relationships of public and private sectors. Literature search, interview
survey and field survey were conducted.
The conclusions are as follows 1)Hakuba is in the rejuvenation process by internationalization as a international mountain resort. 2) In the process of internationalization, the
foreigner business persons and foreign capitals settle down in Hakuba and they made
Hakuba changed. 3)Public sector has cooperated with private sectors and foreign residents
to attract foreign tourists and make Hakuba more internationalized resort and relationships has changed by internationalization.4) In comparison of Niseko, Hakuba is less
internationalized and year-round mountain resort.
1 はじめに
1-1 研究の背景と目的
わが国におけるスキー人気は 1990 年代前半を境に減退
傾向にあり、多くのスキーリゾートが閉鎖され、盛んに開
発された山岳リゾート再生が大きな課題となっている 1) 。
一方で、2003 年度に政府によるビジット・ジャパン・キャ
ンペーンの開始以降、訪日外国人数は増加し、2013 年には
1086 万人に達している 2) 。一部の地域では外国人観光客
(以降、外客)の来訪により観光客数の減少に歯止めがか
かっており、外客入込みによる国際化は山岳リゾートにお
いても、再生へ向けた重要な要素となってきている。
ところで、観光地・リゾート地の発展過程に関して、R. W.
Butler は“Tourism Area Life Cycle (TALC)”という発展
段階モデルを提唱している 3)。同モデルでは PLC(Product
Life Cycle)を応用し、観光地発展過程について「時間」と
「観光客数」の 2 要素によってモデル化し、
【探検段階】
【参
加段階】
【発展段階】
【完成段階】
(場合によっては【停滞段
階】も)を経て、
【衰退段階】もしくは【再生段階】を迎え
ると説明される。そして「観光客数」の増減に伴い、各段
階では入り込む観光客の性質や観光関連施設、観光客に対
する官民の取り組み、地域への影響など現象が変化してす
ると説明している 4)。また【衰退段階】を迎えることが観
光地の終焉を意味するのではなく、その後も対応策次第で
は【再生段階】に向かうと考えられる。国内山岳リゾート
発展過程を TALC モデルを援用した先行研究は少なく、事
例蓄積によるモデルの正当性を検討する必要がある。
そこで本研究では国際化により再生しつつある山岳リゾ
ートの一例として長野県白馬村を事例として①TALC モデ
ルを援用すると、どのように発展段階が整理できるのか②
外客入込みにより国際化してる山岳リゾートでは、
【 再生段
階】以降において観光関連業や空間面でどのように変化が
起こっているか、③上記過程において地域における官民の
果たした役割と組織間連携を明らかにし、リゾート再生に
おける国際化の意味を考察することを目的とする。
1-2 本研究の位置づけ
関連する既往研究には山岳リゾートの発展過程や TALC
モデル 5)6)、スキー観光・訪日外客に関する研究 7)8)等があ
る。しかし山岳リゾートの国際化による再生過程において
地域に起こる変化や官民の役割を扱った研究は見られない。
1-3 研究の構成と方法
2章では、TALC モデルを援用し、白馬村誌や観光統計
により、白馬村の山岳リゾートとしての発展過程に関して
整理する。そして外客入込統計の分析を通じて白馬村にお
ける国際山岳リゾート化の状況を把握する。
3章では、住宅地図と実地調査から、観光関連施設の数
的変化ならびに空間的変化の特徴を分析すると共に、その
要因を、ヒアリング調査等を通じて明らかにする。
4章ではヒアリング調査や文献調査を行い、白馬村の国
際リゾート化による再生過程において、官民各アクターが
果たした役割を明らかにする。
5章では、北海道ニセコの国際化・再生過程との比較分
析を行うことで、国内向けリゾートが国際化する条件の整
理を行い、山岳リゾートの国際化に着目した TALC モデル
構築のための事例分析の蓄積を担うことを試みる。
6章では、本研究の結論と考察を述べる。
2 白馬村の山岳リゾートとしての発展過程
2-1 山岳リゾートとしての発展過程の整理
「白馬村誌」 9) や「白馬村観光統計」を用い、TALC モ
デルを援用して 山岳リゾートとしての発展過程を整理し、
本研究で焦点をあてる段階の時代を同定する。(図1)
【探検段階】(~明治時代):明治 27 年近代登山の父であ
るウエストンが白馬岳登山、同 31 年河野零蔵による学術
研究登山がなされ、全国にその名が知られるようになる。
【参加段階】(大正時代~1954 年):白馬山麓にスキーが
伝えられ、山岳スキー場としても認識されるようになる。
【発展段階】(1954 年~1980 年):1954 年名木山スキー
場にリフトが架設され、ゲレンデスキーが大衆化した。高
3
衰退・再生段階における観光関連施設立地の変遷
八方尾根スキー場山麓の和田野、八方・山麓、エコーラ
ンド3地区を対象に、
『ゼンリン住宅地図』
(1991 年、2001
年、2012 年 10) 及び資料・実地調査(2014 年)を通じて、
現在まで観光関連施設の立地変遷を明らかにする。
3-1 施設立地の存否によるタイプ分類
1991 年、2001 年、2012 年(および 2014 年補足 (1))3
時点間での変化を見た時に、1991 年から現在まで存在して
いる観光関連施設を【継続型】、2001 年あるいは 2012 年
(2014 年)のいずれかに新規で出来た施設を【新規型(01)】
【新規型(12)】、1991 年から 2001 年あるいは 2012 年
(2014 年)のいずれかに消失した施設を【消失型(01)】
【消失型(12)】として、計 5 タイプに分類した。
3-2 各地区の存否タイプ・業種タイプ別の変遷
①和田野地区:和田野地区は3ヵ年でのべ 151 施設あり、
その内訳は宿泊施設 97(64%)、飲食施設 14(9%)、住宅施設
23(15%)、その他 17(11%)である。タイプ別にみると【新
規型(01)】21 施設【消失型(01)】14 施設であり、1991
~2001 年ではスキーブーム衰退により企業保養所が姿を
消す一方で、別荘や高級リゾートホテルが新しく出来た。
また【新規型(12)】34 施設【消失型(12)】21 施設であ
り、2001 年以降は外客増加に伴い、ロッジなど泊食分離型
宿泊施設や外国資本・外国人経営宿泊施設、別荘が増加す
ると共に、和田野地区入り口では飲食施設が増加している。
②八方・山麓地区:八方・山麓地区は 3 カ年でのべ施設 210
施 設 あ り 、 そ の 内 訳 は 宿 泊 施 設 113( 54% )、 飲 食 施 設
27(13%)、住宅施設 25(12%)、その他 45(21%)である。タ
イプ別では【継続型】132 施設(63%)であり和田野地区と
比較して割合が多い。新規宿泊施設や外国人経営施設は多
くない。
【新規型(01)】26 施設【消失型(01)】17 施設で
あり、1泊 2 食の旅館が減少し、ホテル形態の泊食分離型
の宿泊施設が増加している。また【新規型(12)】24 施設
【消失型(12)】11 施設であり、2001 年以降飲食施設の多
様性が広がり、バーや多国籍料理等レストランが増加し、
また温泉やマッサージなど周辺施設も増えることがわかる。
)
1
0
(
)
2
1
(
)
1
0
(
1
2
6
3 3
3 1
7 11
1 2
1 2
2 1
2 2
5
1
1
2
6
1
)
2
1
(
5 6 12
63 19 25
)
1
0
(
)
2
1
(
)
1
0
(
)
2
1
(
)
1
0
(
)
2
1
(
)
1
0
(
その他
1
63 20 25
2
1
6
2
1
4
2
2
12 5 2 1
14 5 9 1
61 21 34 14 21 151 132 26 24 17 11 210 121 38 57 13
合計
1
消失
飲食施設
4
1
新規
30
3
1
39
消失
5
新規
エコーランド地区
継続
合計
消失
消失
新規
新規
合計
継続
消失
消失
宿泊施設
合計
新規
新規
継続
種別
度経済成長期の第一次スキーブームを機に、スキー場開発、
宿泊施設等の建設が進み、スキーリゾートとして発展した。
【完成段階】(1980 年~1991 年):バブル好景気と相まっ
て第二次スキーブームが盛り上がり、白馬村への入込客数
が 1991 年にピークを迎えた(353 万人)。
【衰退段階】(1991 年~2005 年):スキーブーム終焉によ
り入込数は減少し、一部のスキー・宿泊施設が廃業に追い
込まれる。1998 年にオリンピックが行われ、国際リゾート
としての知名度は向上したが、全体の観光客入込数減少に
は歯止めがかからず、村全体で危機感を持ち始めるように
なる。そして外客誘致を目指し、2001 年「白馬村インバウ
ンド推進協議会」を設立し、2004 年官民一体で誘客に注力
すべく「白馬村観光局」が設立された。
【再生段階】
(2005 年~現在)
: 2005 年より豪州人を中心
に外客が急増するようになり、2011 年には全体観光客数が
増加し始め、国際山岳リゾートとして再生しつつある。
以上より、以降の分析における対象期間は【衰退段階】
【再生段階】である 1991 年以降現在までとする。
2-2 再生段階における白馬村の外客の動向
外国人観光客入込み統計」(2002-2013)
表 1 在否タイプ別の施設数の変化
をみると、外客数(延べ宿泊総数)は 0.29
和田野地区
八方・山麓地区
万人(2002)から 6.06 万人(2013)に
急増している。国籍別では 2002 年には
半数以上が韓国人であったが、2013 年に
は豪州(34,096 人)が半数以上を占め、
3 2
5 30
4 2 36
同時に入込客国籍が多様化している。国 旅館
ホテル
14 4 9 1 6 34 29 5 1
35
籍別の平均宿泊日数は、豪州人(5.8 泊) 民宿
0 15 1
1 1 18
9 1
2 3 15 5 1
6
など欧米豪からの観光客は長期滞在であ ペンション
14 5 11 2 4 36 10 2 2 1
15
るのに対し、韓国(2.0 泊)などアジア ロッジ
保養所
3 4 7 0 1
1 1 3
からの観光客は短期滞在であるといえる。 合計
40 12 20 8 17 97 89 10 3 7 4 113
1 1
2 6
2 1 1 10
国籍・月別の延べ宿泊総数を見ると通年 日本食
洋食
1
3
4 1
2
1 4
で入込がある台湾人を除いて、ウィンタ 多国籍料理
1
1 1 2 3
6
ーシーズンに集中していることが分かる。 カフェ
2 1
3 3
2
5
バー
1
1
2
3
3
2-3 本章のまとめ
その他
2
2
0
TALC モデルを援用し白馬村の発展過 合計
6 1 6 1 0 14 11 2 11 1 2 27
6 5 5 1
17 3 1
4
程を整理し、時代区分を行った。白馬村 住 別荘
宅 住宅
2
3
5 12 3
1
16
が 1991 年以降スキーブーム終焉に伴い 施 寮
1
1 2 1
1 4
衰退段階を迎えており、2001 年以降は外 設 アパート
0
1
1
9 5 5 4 0 23 17 6 0 1 1 25
客の入込が始まり、国際スキーリゾート 合計
スキーレンタル
2
2
4 4 3 5
2 14
として再生段階を迎えていることが分か レジャー関連
3
3 2
1
3
1
1 2
2
2
った。また国籍が多様化と共に豪州人を 温泉施設
0
3
3
中心に長期滞在外客が増え、国際リゾー マッサージ
その他
1 2 1 1 3 8 9 3 1 8 2 23
ト地として再生しつつある。
合計
6 3 3 1 4 17 15 8 10 8 4 45
)
2
1
(
図1 白馬村の観光入込客数の推移と観光発展段階
3
地
区
合
計
0 41
1 10 79
0 18
4 41 62
1 11 62
4 11 21
10 73 283
4 16
3 11
3 10
10 18
6 11
1 3
0 27 68
3 112 133
0 21
0 5
1 2
3 113 161
3 21
6 12
0 4
0 3
20 51
0 29 91
13 242 613
③エコーランド地区:エコーランド地区では 3 カ年でのべ
242 施設あり、その内訳は宿泊施設 73(30%)、飲食施設
27(11%)、住宅施設 113(47%)、その他 29(12%)である。
タイプ別に見ると、
【継続型】121 施設であり、その半数は
別荘であり、【新規型(01)】38 施設【新規型(12)】57
施設であり、大通りを離れた場所に別荘は断続的に増加し
続けていることがわかる。また大通りを中心に多国籍料理
やバーなど飲食施設はバラエティーが増え、スノボやアパ
レル、雑貨屋等若者向けのお店が増加している。
3-3 海外旅行ガイドブック掲載の観光関連施設の変化
「Lonely Planet Japan」1991 年(第 4 版)から 2013
年度(第 13 版) 11)白馬村の記事を収集し、どのような観
光関連施設が紹介されてきたか変遷を明らかにした。初期
には日本人向け民宿や国民宿舎が紹介されていたが、
2003 年版から英語対応のホテルやロッジ、高級リゾート・
コンドミニアム等掲載され、宿泊施設の種類が多様化した。
また外客入込みに対応して日本人向け一泊二食付きから素
泊まり や朝 食付 き の宿泊 施設 が 紹 介さ れる よ う になる。
2009 年ナイトスポットが紹介されるようになった。
4
衰退・再生段階における官民の果たした役割と変容
本章では白馬村における官民のアクターを対象に、ヒア
リング調査、文献調査を行い、組織の概要と外客増加に伴
う外客への対応等取組みの変容、組織間連携を明らかにし、
衰退・再生段階において果たした役割について考察した。
4-1 外客の入込による官民の果たした役割
①白馬村役場:地域観光振興計画(2007)や観光地経営計
画(2016)など観光振興計画策定を行っている。また観光
局の事業を円滑かつ速やかに展開できるように行政支援や
増加する白馬在住外国人へ行政サービスを行っている。
②白馬村観光局:2004 年官民一体で観光推進体制を確立す
べく観光局が設立される。小谷村や妙高など近隣地域や「白
馬ツーリズム」など民間団体と連携して外客向けに共同プ
ロモーションを行っており、また外客向け共通リフト券や
ナイトシャトル号運行など外客受け入れ体制を整備してる。
③白馬ツーリズム:2005 年和田野地区宿泊施設により結成
された。長野県観光協会や観光局と連携してプロモーショ
ンを行い、豪州を中心に多くの外客を獲得している。
④白馬村国際経営者団体(HIBA):2014 年白馬村在住外
国人経営者達によって情報交換やプロモーションへ参画を
目的として設立された。役場と連携し、外客へのマナー啓
発や外客統計等で国際リゾート地づくりに参画している。
4-2. 外客入込による地域のネットワーク変容
外客の入込によって、地域における官民のネットワーク
は以下の段階に分けられる。(図2)
【第一段階】(1998)
第一段階として、スキーブーム衰退の中で、1998 年五輪
により国際知名度を向上し、国際リゾートへ取り組みを始
める。しかし外客向け宣伝は皆無に近く、一部観光関連施
設は外客向け宣伝を行うも単独では効果は限定的であった。
第二段階として、2004 年観光局が設立されたことにより、
行政と観光局の役割分担が明確になり、観光振興・観光推
進は観光局が中心となって実施し、行政は観光局の事業が
円滑かつ速やかに展開できるよう支援する組織となる。ま
た翌年和田野地区における宿泊施設が「白馬ツーリズム」
を結成し、民間の観光関連施設も共同で外国へのプロモー
ションを行うようになった。また外客増加に伴い、外国人
経営の観光関連施設が増加し、白馬在住外国人が増加する。
第三段階として、小谷村と「Hakuba Valley」を結成し
プロモーションを行い、その結果として外客入込増加する
と同時に、豪州のみならず欧州やアジアからも入込が増加
し、多国籍化リゾートへの変容を始める。また外客急増に
よる騒音など外国人問題が発生し、白馬村役場は外国人問
題対策を求められる。同時に白馬在住外国人経営者が増加
して、白馬村の国際リゾート地づくりに参画すべく、白馬
国際経営者団体が結成され、行政と協力して共生した国際
リゾートづくりに関わり始めるようになる。
このように外客入込によって、白馬におけるネットワー
クは変容した。第一に半官半民である観光局が設立され、
行政・民間においてより連携がみられるようになり、共同
プロモーション活動を行うようになった。第二に地区間連
携が生まれた。外客入込前は地区間に連携がなかったが、
外客入込後は元気号や共通リフト券など地域を越えた試み
が行われるようになった。第三に他地域との連携が生まれ
た。外客入込前は村単独でプロモーションを行っていたが、
「白馬バレー」(2011)など共同でプロモーションを行う
ようになった。第四に外国人住民との連携が生まれた。外
客入込に合わせて、外国人が白馬村へ移住し、HIBA を結
成し国際リゾート地づくりに参加するようになった。
5
山岳リゾートの国際化過程に関する比較分析
本章では白馬同様国際山岳リゾート化しつつあるニセコ
を取り上げ、文献調査から国際山岳リゾートとしての発展
過程を明らかにする。そして白馬と比較を行い、国内リゾ
ートが国際化する条件を整理・事例蓄積し、山岳リゾート
国際化に着目した国際リゾート TALC モデル構築を試みる。
5-1 白馬村とニセコの国際リゾート比較分析
ニセコの国際リゾート地として発展過程について、先行
研究 4)12)や観光統計を整理し、TALC モデルより時代区分
を行い、衰退・再生段階における国際リゾート化の発展過
程について白馬と比較分析を行った。(図3)
【第二段階】(2005)
図 2 外客入込による地域のネットワーク変容
【第三段階】(2013)
発
外 客数の 増加
表 2 国際リゾート TALC モデル
1991 年スキーブーム終焉により入込数のピークを迎え、
②観光関連施設
③行政・地域
白馬・ニセコは山岳リゾートとして【衰退段階】を迎える。 段階 ①外国人観光
探究 外 客 入 込 は ほ と ん 外 客 対応 す る施 設 は 影 響 は ほ と ん ど な
1991 年以降の国際リゾートとしての外客入込数に応じて、 段階 どない
い
ほとんどない
TALC モデルを援用し、国際リゾートの発展段階を扱う。 参加 国 際 的 地 名 度 向 外 客 に対 応 する 観 光 外 客 向 け プ ロ モ ー
、 一 部 外 客 入 込 施設が増加(英語・泊 ション開始
【探検段階】
:白馬・ニセコでは外客入込はほとんどなく、 段階 上
食分離)
開始
国際的知名度はほとんどなく、外客対応施設はない。
外客入込急増
外 国 大型 資 本が 導 入 行 政 が 外 客 受 入 れ
( ピ ー ク 時 : 外 客 > 始 め る ( 不 動 産 や 宿 整備
【参加段階】
:白馬では長野五輪開催(1998)ニセコでは豪州
泊施設、スキー場等)
住民)
人事業家の夏季親水性スポーツ事業開始(1996)をきっかけ
ガ イ ド ブ ッ ク に 掲 外 国 人が 移 住し 、 外 近 隣 地 域 と 連 携 し
載 さ れ 、 国 際 リ ゾ 客 向 けに 観 光関 連 事 て プ ロ モ ー シ ョ ン
に国際的な知名度が上がり、一定の外客が入り込み始める
を行いはじめる
ートと認知度向上 業を始める
ようになり、一部の観光施設が外客対応を始める。しかし
外 客 入 込 が 多 国 籍 泊 食 分離 ・ 長期 滞 在 外 国 人 問 題 が 増 加
化
型 に 対応 す る宿 泊 施 し 、 行 政 が 対 応 を
観光客入込数の減少に歯止めはかからず、白馬では行政主
設が増加
行う
導で観光振興を図り、2004 年白馬村観光局を設立し、官民
外 客 の 入 込 が 通 年 泊 食 分離 ・ 長期 滞 在 外 国 人 に よ る 団 体
型 に な る よ う に な に よ り飲 食 施設 や ナ が 結 成 さ れ 、 行 政
一体で外客へ向けてプロモーションを行うようになる。
る
イトスポットが増加 と連携をはじめる
【発展段階】:白馬(2005)ニセコ(2002)では外客が急
ポット、周辺施設が増加し、総合的な国際山岳リゾートと
増してピーク時に外客が住民よりも多くなり、全体観光入
して発展する。
込客数の再生に影響を与え始めるようになり、観光地とし
③ 外客入込によって、国際リゾート化が進み、官民が地域
て【再生段階】を迎えるようになる。その後世界有数のガ
における官民のネットワークが再生している。
イドブックであるロンリープラネットで取り上げられるこ
④白馬村とニセコにおける国際リゾートとしての発展過程
とで国際的リゾートとして更に認知度が高まり、より多く
を比較して、国際リゾート TALC モデルを提唱した。
の国から入込みが増加・多国籍化する。また泊食分離や英
今後の課題として、国際リゾート TALC モデルを提唱す
語対応など外国人対応した観光関連施設が増加し始め、飲
食施設や周辺施設等が増加する。同時に外国人経営・外国
るには、2事例以外についても調査する必要がある。
大型資本が入込み始めるようになり、外客向けに商売を行
補注
う外国人が移住し始める。一方で行政は白馬観光局やニセ
コプロモーションボードなど外客向けのプロモーション団
(1)2014 年 ( 実 地調 査)は 変遷 がほと んど 変わって いな かった ので 、 2012 年 度と 同様 に扱う 。
体設立、観光計画策定、外国人問題対応を行うと同時に、
主要参考・引用文献
「白馬バレー」(2011)「ニセコ観光圏」(2014)など近隣
1)ウィンターレジャーリーグ編(2013)、「平成 25 年ウィンターレジャー白書」NPO 法人 ウィンターレジャーリーグ
地域と連携をしてプロモーションを行うようになる。
2)日本政 府観 光局(2014)、「訪日外国 人統 計資料」
3)The Concept of a Tourist Area Cycle of Evolution: Implication for Management of Resources
このように白馬とニセコにおける国際化過程は共通の発
(Butler, 1980)
4)成熟段
階を迎えたリゾートにおける課 題と将来 像を巡る論議 長 野県軽 井沢 町を事 例として(峯 苫、2008)
展段階を辿ることがわかった。一方で外国資本の入込や通
5)スポーツツーリズムの可 能性を探る―国 際リゾートをめざす北 海道ニセコ地域 の事例 から―(杉谷ら、2011)
6)Life Cycle Stages and Tourism History The Catalonia Experince(Luis et al,2011)
年型リゾート地へ発展度合いは異なっている。
7)日本におけるスキー観光 の衰退 と再生 の可能 性(呉 羽,2009)
5-2 国際リゾート TALC モデルの提唱
8)北 海 道ニセ コリ ゾート訪 日外 国人ス キー ヤー &ス ノー ボーダ ー調 査研究( 二宮 ら、 2011)
9)白馬村 村誌(2003) 「白馬の歩み」(編纂 委員会 、2013)
白馬・ニセコの国際リゾート化を踏まえ、外客の入込に
10)ゼンリン住宅地図 白馬 村・小谷村(ゼンリン社 1991,2001,2012)
11)「Lonely Planet Japan」 edit 4 -13rd (1991,1995,1997,2001,003,2007,2009,2011,2013)
よって山岳リゾートがいかに国際リゾート化するかを、外
12)国際リゾートとしてのニセコの成 立過程 に関する研究(鈴木 ,2009)
客、観光関連施設、行政・地域の 3 点について外客入込段
階により起こる現象を国際リゾート TALC モデルとして提
唱した。(表2)国際リゾ ート
年
ニ セ コ
白 馬 村
国 全 観光入込 ( 百万人 ) 全 国
TALC モデルでは、TALC モデ
で き ご と
で き ご と
2
3 4 体際
際体 9 6 3
ルと比べて、観光客の入込が為
スキー客入込ピーク
1991
スキー客入込ピーク
探
1992
(外客はほとんどいない)
替など外的要因により左右され
探
検
スキー客入込減少による
1993
スキー客入込減少による
検
段
やすいこと、国籍によって観光
スキーリゾート・施設の減少
1994
段 スキーリゾート・施設の減少
階
観光
1995
行動が異なるために施設は対応
衰
衰階
豪州人フィンドレー氏親水スポーツ事業進出
1996
が必要であること、地域がより
退
参退
一部外客が入込開始
1997
加段
各アクターや他の地域と連携し
五輪による国際知名度向上
1998
段
段
1999
て行く必要があることなどにお
階 参 一部外客が入込開始
階階
白馬21観光振興対策会議
2000
加 インバウンド推進協議会
いて異なる。
2001
展
段
階
th
6.結論
白馬村は外客によって国際山岳
リゾートとして再生しつつある。
①外客入込により観光地全体入
込み数が再生しつつある。入込
客は長期滞在、多国籍化し、国
際リゾート化している。
②外客入込によって、外国人対
応した宿泊施設が増加する事で、
国際リゾートとしてのバリエー
ションとキャパシティーが増加
する。また飲食施設やナイトス
外客入込急増
(ピーク時:外客>住民)
外国資本によるコンドミニアム増加、
地価上昇
豪資本HANAZONOスキー場買収
地域再生計画
「国際リゾートくっちゃん」
確立
外国人観光客誘致・受入促進協議会
ニセコ倶知安リゾート協議会発足
発 再 外客
PCPD社ニセコグランを買収
展生
LPにて大々的に取り上げられる。
マレーシアYTK社、
ニセコビレッジ買収
段段
外客入込が多国籍化する
LPに通年型リゾート地として紹介される
ニセコ観光圏が認定される 階階
20 10
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
0
0
段
階
再発
生展
段段
階階
白馬村観光局(外客誘致へ)
外客入込急増
(3万人)
LPで大々的に紹介される
米資本47スキー場買収
地域観光再生計画
LPにて大々的に取り上げられる
豪州フェニックスホテル導入
白馬村第四次総合計画後期
外国人問題増加、
村役場対策 外国人経営者団体設立
外客入込が多国籍化する
10 20
外客入込 ( 万人 )
図 3 国際リゾートとしての発展過程