高校生:化学実験「発色する化学」

高校生
化学実験「発色する化学」
担当者:
町支臣成、石津 隆、日比野 俐、藤岡晴人
延廣順子、岸田早由利、堤 広之、
協力学生: 2 名
場所:
薬学部 31 号館 1 階実習室
概要
実験の基本操作である「ピペットを使って試薬を移す」
、
「試験管を振り混ぜる」
、そして「化学
反応を素早く観察できる」といった点を体験してもらう。そこで、今回「ルミノール反応」
「生物
発光・ホタルの光」および「サイリューム」など化学発光の実験を通して、化学の楽しさを分か
ってもらう。さらに、我々の身の回りで、その原理を応用したものが使われていることを知り、
化学への興味を深めてもらう。
第 1 回 Science Lab 参加高校生と実施担当者
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学習内容
(1)実習に関する講義
化学発光には、2 つのタイプがあり、どのよう
にして発光するのかの基本的原理を講義した
(図 1)
。1 つは、物質が化学反応により、基底
状態から励起状態になり、再び基底状態に戻る
ときにそのエネルギーを光として放出するタイ
プ(図 2)。もう 1 つは、同様に励起した状態か
ら、元に戻るとき別の物質にそのエネルギーを
与え、その物質が光を放出するタイプ(図 3)が
講義風景
あることを説明した。
化学発光とは
ルミノール反応 物質が基底状態から励起状態になり、再び基底状態に
もどるときエネルギーを光の形で放出する。 これを化学発
光という。
O
O
NaOH
NH
N
NH2 O
・ 光のエネルギーを吸収したとき
O
H2O2
N
NH
励起状態になるには
(タイプ1)
O
酸化剤
NH2 O
ON
N
NH2 O
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・ 化学反応によって励起状態の物質(励起分子)を生じる
O
N2
光
O
*
O
O
O
hν
+
O
高エネルギー
NH2 O
åÐ
âªäwîžâû
NH2 O
基底状態
励起状態
緑分子
低エネルギー
赤分子(励起状態)
図1
赤分子(基底状態)
5
2
化学発光基本原理
図2
化学発光(タイプ 1)
その説明のあと、今回実際に行う「ルミノー
ル反応」
「生物発光・ホタルの光」および「サイ
(タイプ2)
Cl
Cl
Cl
リューム」の実験を安全に行うための注意と器
Cl
O C C O
Cl
具の基本的な扱い方の説明指導を行った。
+
H2O2
Cl
O
Cl
Cl
Cl
Cl
C
C
O
O
+
HO
Cl
Cl
O
C
C
O
O
+
FL
Cl
OH
+
2CO2
+
FL*
Cl
FL
FL*
O
Cl
OH
O
Cl
Cl
Cl
OH
O O
+
hν
Fluorescence
FL
CH2CH3
CH3CH2
N
CH2CH3
O
N
CH2CH3
C OH
perylene
naphthacene
O
rhodamine B
図3
駒込ピペットの扱い方について指導を受ける
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化学発光(タイプ 2)
Cl
(2)化学発光の実験
ルミノール反応は、まず各グループで 2 種類の試
薬を調製することから、始まった(写真 1)。早速、
ピペットを使って、各自がそれぞれの試薬を試験管
で混合し、そこへ血液に見立てたヘキサシアノ鉄
(III)酸カリウム水溶液を滴下し、講義した化学発光
の原理を確認してもらった(写真 2)
。次いで、疑似
体験として、事件現場の鑑識官になったつもりで血
液成分を染み込ませた布等を用い、ルミノール反応
写真 1
各グループで実験の説明を受ける
を体験した。
次に、生物発光は、ホタルの光が代表的なものと
して知られている(図 4)
。これは、ホタルのおしり
のところでルシフェリンという物質と ATP (アデノ
シン三リン酸)が酵素(ルシフェラーゼ)の作用で化
学反応を引き起こし、別の物質に変化する過程で光
を発する。この現象を各自が試験管内で再現、観察
した。ルミノールの青白い光と違い、黄色く非常に
明るい光を発していた。その実験の後、我々の身の
写真2 ピペットを使い試薬を混合している
回りで、この原理を応用し乳製品等の微生物による
NH2
蛍
汚染の有無を測定する ATP 法が開発され実用化され
N
N
O
O
O
HO P
O P
O P
OH
OH
O CH2
OH
H
H
OH
OH
H
ていることなどを解説した(図 5)
。
N
N
O
H
AMP
ADP
ATP
H
最後に、お祭りの屋台などで、売られているサイ
HO
N
N
S
S
COOH
ATP,
H
Mg2+
luciferase
O
N
N
S
S
COOAMP
firefly luciferin
O2
リューム(ケミカルライト)の化学発光を試験管の
luciferase
中で再現してみた。この場合、図 3 で示したタイプ
N
N
S
S
O O
O*
N
N
S
S
N
N
S
S
O
O
O
dianion
hν
2 の化学発光であり、シュウ酸ジエステルと過酸化
HO
水素の化学反応によって得られるエネルギーを別の
N
N
S
S
CO2
O
O
図4
10
monoanion
firefly oxyluciferin
物質である fluorescence (FL)に与え、その物質が
O*
生物発光
励起状態から基底状態に戻る時に蛍光を発するとい
うものである。よって、添加する FL によって化学発
光の色が異なるため、用意した 3 種類の FL から各自
1 つを選び何色の蛍光を発色するのか実験してもら
QuickTimeý Dz
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ǙDZÇÃÉsÉNÉ`ÉÉǾå©ÇÈǞǽDžÇÕïKóvÇ-ÇÅB
った。市販のものとは少し異なり、それぞれの試薬
を混ぜるだけでは速やかに化学発光は、起こらない
ため(企業秘密だそうです)、化学反応を促進させる
べく、暖めた電気水浴の中で試験管を激しく振混ぜ
る操作を行った(写真 3)
。その結果、数分振混ぜる
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図5
身の回りにある生物発光の実用化例
と黄色、オレンジ色や水色の鮮やかな蛍光を発し、
とても綺麗な色が観察できた。その後、この原理を
応用して、覚せい剤等の微量検出法などが開発され
つつあることも解説した。以上のように、簡単な操
作ではあったが、「ピペットを使って試薬を移す」、
「試薬を試験管内で混ぜる」、
「試験管を暖めて化学
反応を促進させる」などの基本操作をすべての学生
に体験してもらい、この実習を無事終了することが
できた。
写真3 試験管を振ったり、試薬を混ぜたり
(3)高校生からよせられた質問
質問 1:先生方は、もともと理科は好きだったのですか?
回答:理科は好きですが実験が好きだったというのが大きいです。ですから、大学に入学当初は、と
にかく実験をするのが楽しかったです。その後、原理が分り、それを自分なりに応用し、自分が期待
した化学反応が起ったときは最高でした。ただし、そのような喜びは、たくさん試行錯誤する実験の
中で1度得られればいいくらいです。と言う意味では、我慢強く実験することの方が多いですが、誰
もしたことのないことを達成できたときはうれしいものです(言葉で表現しにくいですが・・・)。で
すから、今も実験・研究が続けられているのかもしれません。(回答:町支臣成)
質問 2:今回の実験は理学部で使うのですか?それとも薬学部ですか?
回答:今回の実験の原理を利用し、別のものに活用するということを、研究テーマにしている人たち
は、理学部や薬学部のどちらにもいます。(回答:町支臣成)
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感想
◆高校生の感想
・とても分かりやすく説明してくれたので楽しめました。
・めったに行けない大学の実験室に入ったりできたので雰囲気が知れてよかったです。おもしろか
ったです。
・今までよりももっと理科に興味を持つことができました。
・とても楽しかったので、また体験学習を受けたいです。
・色々なものの発色が見れてきれいで良かったです。説明がたくさんあったので、分からないなり
にも少しは理解して実験できたので良かったです。
・今まで、ホタルはどうして光るのか疑問に感じていましたが、それが何となく分かったのでよか
ったです。興味の持てる実験ばかりでおもしろかったです。
・とてもきれいに発色して感動しました。
・実験とかすごく楽しく、大学がどういうところなのかまったくわからなかったけど、少し知れて
良かったです。
・体験学習もできて、福山大学を見て回る事も出来て楽しかったし、大学の事がよく分かって良か
ったです。
・体験学習をすることができ、大学施設の見学をすることができてよかったです。
・発色するのを見ているのはとても楽しくて好きでしたが、発色する理由を知るともっと興味を持
てるようになりました。化学をもっと勉強していきたいと思いました。
・蛍光はこのような反応の結果できるということが分かってよかったです。意外な結果が出たりし
てとても楽しかったです。
・身の回りのいろいろなところで、化学反応が使われている事を知り興味を持てました。
・1 班に 1 人ずつ先生がついてくださったのでとても分かりやすかったです。とっても楽しくて良
い勉強ができました。本当にありがとうございました。
・丁寧にやさしく教えて頂けてうれしかったです。
・実験を指導して下さった方々がとても親切で楽しい方ばかりで、興味を持って実験に参加するこ
とができました。
・いろいろな方法で自分で発光させたりすることができて楽しかったです。
・ルミノール反応をした時、事件現場の感じが分かってよかった。
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◆高校引率教員の感想
化学発光や生物発光の実験は、とても興味をひく実験であり、第1回目のテーマに選んでいただ
いたのはとても良かったと思います。実際、参加した生徒たちも試験管の中で青く光るルミノール
の化学発光を見たときは感激していました。生徒の感想にも「また体験学習に参加したい」とある
ように、第1回目の体験学習から理科に興味を持ってもらえたので、こちらとしても感謝しており
ます。また、内容的には難しい分野にもかかわらず、理屈についても高校生にもわかるように講義
していただいたので、生徒たちも実験して目の前で起きていることの理屈もある程度、理解できて、
良かったと思います。
◆担当者の感想(町支臣成)
第 1 回目ということもあり、どのように進めていけばいいのか不安であった。2 時間という限ら
れた時間の中で、講義と実習の割合をどれくらいにするのが丁度いいのか考えた。原理を説明する
際には、難しい化学構造式を出さなければならなかったが、極力それには触れず、とにかく身体を
動かして、実験をしてもらうことを中心に考え、内容的には多いのではとも思ったが「ルミノール
反応」
「生物発光・ホタルの光」
「サイリューム」の 3 つの化学発光の実習を計画した。次に、ちょ
うど良い化学発光を観察してもらうため、試薬の濃度や量を予備実験を繰り返し検討した。当日 1
グループ 4 人程度に 1 人の指導者が担当する形で実習が始まった。当初、指導する側、学生共に緊
張しているようであったが、実験開始後、ルミノール反応の鮮やかな蛍光を観察できたときの学生
の驚きの歓声とともに和やかな雰囲気に変わり、スムーズに実習は進み予定時間内にすべての実験
を終了することができた。反省点としては、より実験実習をリアルに体験してもらうためと、試薬
等の制服への付着を避けるためや安全性を考えると白衣と保護メガネを着用するのが望ましく、今
後の検討課題である。最後に、今回は化学実験の楽しさを分かってもらうことが重要であると考え
臨んだが、皆さんの感想を読み概ね良かったのではという感触を得た。また、
「構造式が気になっ
た。」という学生の感想があったが、これこそが実験を通して、さらに化学へ興味を持ってもらえ
るきっかけになったのではと思った。
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