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Forex Watch Koujiro Mori
2013 年 6 月 11 日
黒田日銀「二兎追うものは一兎をも得ず」のジレンマに陥る
1.0
円の対主要通貨相場の騰落率
(NYクローズベース)
2013/06/07⇒ 06/10
%
0.0
-0.94
-1.0
-1.27
-1.33
-1.38
-1.59
-1.60
-1.59
-2.0
USD
EUR
6.0
%
GBP
CHF
AUD
CAD
NZD
世界の主要株価指数・週間騰落率
<終値ベース 2013/06/07⇒ 06/10>
4.94
4.0
2.0
0.0
-2.0
1 0 5 .0
0.13
0.64
0.08
-0.03
( 米)
NASDAQ
( 米)
S&P5 0 0
-0.06
( 米)
NY ダウ
-0.21
-0.18
( 加)
トロント3 0 0
( 英)
FT SE1 0 0
USDJPY Daily Ch art
Global Ran ge
2013/02/11-06/10
( 独)
DAX
( 仏)
C AC 4 0
( 日)
日経2 2 5
1 0 3 .7 4
05/22
9 9 .9 5
04/11
1 0 0 .0
9 6 .6 9
03/12
9 4 .4 6
9 5 .0 0 2 / 1 1
9 6 .9 9
9 6 .3 5 0 4 / 3 0
04/15
9 4 .9 8
06/07
9 2 .5 7
04/02
9 0 .0
9 0 .8 5
02/25
※当レポートは、投資の参考となる情報提供を目的としたもので、投資勧誘を意図するものではありません。 投資の決定はご自身の
判断と責任でなされますようお願い申し上げます。 記載された意見や予測等は、作成時点における 森 好治郎 個人の見解であり、
その正確性、完全性を保証するものではなく、今後予告なく変更されることもありますのでご留意ください。
― 1 ―
Techno-fundamental Analysis
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週明けのマーケットは、前週末の米雇用統計発
表後の好地合いを引き継ぐ格好で、日経平均が 4
年 8 ヶ月ぶりの大幅な上げ幅を記録したほか、円
が主要通貨に対して独歩安の展開となった。
前週までの急激な「株安・円高」の反動を促すリ
ターン・リバーサルに向かわせる格好となったが、
日本株と円の振れ幅が突出して大きいのはボラ
ティリティーが高いことを示しており、主要イベント
に向け乱高下するリスクは依然として残りそうだ。
ドル/円は、前週末の NY クローズの 97.51 円
から東京 9 時の 98.36 円へプライスギャップを伴
って始まり、NY 序盤には S&P による米国債の格
付け見通しの引き上げを受けて、一時 99.29 円ま
で上昇した。 テクニカル面では、99.36 処に日足
均衡表の『基準線』と年初来高値 103.74 円から
94.98 円までの下落に対する半値戻しの Retrace
Point が控えており、ひとまず止められる格好とな
っている。
市場参加者の関心は、国内イベントでは昨日か
ら 2 日間の日程で開催されている日銀の金融政
策決定会合と、14 日の日経平均先物・オプション
のメジャーSQ(特別清算指数)算出に集まってい
るようだ。
日銀の金融政策決定会合については、市場の
ボラティリティー拡大にどのように対処するかが注
目されているが、一部で「黒田バズーカ第 2 弾、日
本版 LTRO」といった報道がなされる一方、現時
点で日銀が断固とした措置を打ち出すことはなさ
そうだとの冷静な見方も存在する。
LTRO とは、ECB が期間 3 年の長期資金供給
を固定金利で無制限に実施するオペであり、欧州
銀による大量の借換債の円滑なロールオーバー
が主目的であったが、実際には南欧債務国の銀
行に自国の国債を大量に購入させたことから、
「裏口の量的緩和」ともいわれていた。
今回の日銀決定会合では、長期金利の上昇抑
制策として、0.1%の低利資金を金融機関に最長
1 年間貸し出す固定金利オペを、2 年以上に延ば
す案が検討されるとみられる。
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とはいえ、4 月 4 日に導入した「量的・質的金融
緩和」で金融市場調整の操作目標を金利からマ
ネタリーベースに変更したことや、2 年で 2%の物
価安定目標を達成すること、ポートフォリオのリバ
ランスを促すこととの整合性の問題もあり、今朝
の日経新聞は政策委員の間で慎重論が強まって
いると報じている。
長期金利の安定のため長期の低利資金を金融
機関に提供して国債購入を促せば、「量的・質的
金融緩和」の波及ルートとして期待された金融機
関のポートフォリオ・リバランス効果や株式など資
産価格への働きかけ、そしてインフレ期待への働
きかけを妨げることになりかねず、黒田日銀は「二
兎追うものは一兎をも得ず」のジレンマに陥ってい
るといえるかもしれない。
仮に本日の日銀決定会合で何も対応策が発表
されなければ、黒田バズーカ第 2 弾を期待した短
期筋の失望を招く一方、固定金利オペの 2 年延長
を決定すれば異次元緩和のフレームワークへの
影響を与えかねず、難しい判断を迫られることに
なる。 市場との対話を重視する黒田総裁が、決
定会合後の記者会見でとのようなメッセージを発
信するかがもう一つの焦点となりそうだ。
■日銀の異次元緩和
「二兎追うものは一兎をも得ず」
・ 市場では「量的・質的金融緩和」導入後から「株高・円安」が進行
・ 円債市場では10年物国債利回りが0.3%へ低下したあと乱高下
・ 5月末には「株高・円安」の好循環が崩れ、「インフレ期待」も低下
「量的・質的金融緩和」の波及ルート
量的緩和:マネタリーベースの拡大
長期国債買入れの拡大と年限長期化
質的緩和:長期国債とリスク性資産の拡大
ETFやJ-REITの買入れ増額
ルート①
イールドカーブ全体への低下圧力
ルート③
銀行や投資家の
ポートフォリオの調整
ルート②
資産価格へ働きかけ
金融環境の改善(借入コスト、銀行信用、株価など)
ルート④
インフレ期待へ働きかけ
実質金利の低下
支出の増加(消費、設備投資、輸出)
需給ギャップの改善
予想インフレ率の上昇
消費者物価の上昇(2%の物価安定目標を2年程度で達成)
2011年
4.0
%
3.7373
02/08
米10年物国債利回りの推移
2010/09/01-2013/06/10
3.5866
04/11
2
1
3.2044
03/16
3.0
2012年
2.3855
10/27
2.3753
03/19
2013年
4
2.3851
10/07
1.8695
09/14
2.0
3
1.7180
1.7953
01/31
2.0611
03/11
2.2133
06/10
1.5843
09/22
一方、米国では先週末に発表された 5 月の雇
05/01
5 1.3908 11/16
07/24
用統計が強過ぎず弱過ぎない絶妙な内容となっ 1.0
たことが好感され、米主要 3 株価指数は大幅高と
■FFレート先物市場
最強のFEDウォッチャー
なったものの、週明けは強弱マチマチの冴えない
・ FRBは12年12月に「低金利政策」の時間軸を「数値基準」へ変更
値動きとなっている。
・ FFレート先物市場は米金利見通しを示す最強のFEDウォッチャー
・ 金利変動リスクを抱える債券ディーラーによって価格が形成される
S&P が米国債の格付け見通しについて、税収
・ インプライド金利は2014年夏から利上げ開始を織り込み始める
増や経済情勢の改善などを理由に「ネガティブ
1.00
FF(フェデラルファンド)レート先物市場
FRB(米連邦準備制度理事会)
(弱含み)」から「ステーブル(安定的)」に引き上げ
限月別インプライド金利の推移
FFレート誘導目標 0.00-0.25%
■今後のFOMC開催日
・06/18-19 ・07/30-31 ・09/17-18
たことを受け、米国債市場では金融緩和の規模
5 0 bp の利上げライン
0.75
が縮小されるとの見方が強まり、長期金利の指標
2015年3月限の25bpの利上げの確率は・・・
追加利上げを
5月1日の8%から6月10日には82%まで上昇 織り込み始める
となる 10 年債利回りは一時 2.23%と昨年 4 月以
2 5 bp の利上げライン
0.50
来の高水準に接近した。
利上げ開始を
織り込み始める
本来、米国の格付け見通しの引き上げは米国
誘導目標の上限
債の買い材料と判断され、金利低下を促すもの 0.25
の、S&P が 2011 年 8 月に米国の格付けを最上
2013年
2014年
2015年
級の「AAA」から引き下げた際は、世界的な株安 0.00 6月限
1月限
8月限
3月限
10月限
05/01 FOMC声明は資産購入プログラムを変更する用意があるとの文言を初めて追記
データ: ロイター
の一方で質への逃避で米国債が買われ、10 年債
06/10 米5月雇用統計の改善に続いてS&Pによる米国債の格下げ見通し引き上げで金利正常化が進展
利回りは格下げ後の 2 週間で 2.56%から 2.06%
に低下した経緯がある。 今回のその逆パターンとみれば理解しやすいものの、来週 18-19 日に FOMC
(連邦公開市場委員会)の定例会合を控えて、FRB による「資産購入プログラム(QE3)」の買い入れペース
の早期縮小観測が燻っており、積極的なリスク選好にはつながっていないようだ。
最強の FED ウォッチャーとして知られる FF レート先物市場では、インプライド金利が 2014 年夏から利
上げ開始の可能性を織り込み始めるなど、前回 5 月 1 日の FOMC 時点から 8 ヶ月近くも前倒しされている。
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※当レポートは、投資の参考となる情報提供を目的としたもので、投資勧誘を意図するものではありません。 投資の決定はご自身の
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その正確性、完全性を保証するものではなく、今後予告なく変更されることもありますのでご留意ください。
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現状では、米金融当局者から金利上昇をけん制する発言は聞かれておらず、来るべき「出口」に向けた
「金利正常化(Return to Normality)」の予行演習と捉えることもできるが、緩和への依存度が強すぎた反
動もあり市場が落ち着くまでにはなお時間を要すものとみておきたい。
(6 月 11 日 11:30 記)
※当レポートは、投資の参考となる情報提供を目的としたもので、投資勧誘を意図するものではありません。 投資の決定はご自身の
判断と責任でなされますようお願い申し上げます。 記載された意見や予測等は、作成時点における 森 好治郎 個人の見解であり、
その正確性、完全性を保証するものではなく、今後予告なく変更されることもありますのでご留意ください。
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