ロレアルの牙城に切り込む富士フイルム(4901)

SO-TI Technology Trend Watch No.67
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June 30th, 2010
XLUS を活用した技術開発動向分析
ロレアルの牙城に切り込む富士フイルム(4901)
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株式会社創知
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上記連絡先までご連絡ください。
*本レポートに記載した内容および図表の全ての著作権は(株)創知が保有します。無断転載は禁止いたします。
不況に影響されないと言われてきた化粧品業界が、国内のスキンケア市場の 2 年連続の減少に苦しんでいる。
いきおい資生堂(4911)など一部の企業では国外、とりわけ中国市場への期待が高まっている。
そのような中、独自のコア技術を強みに変えて、商品化に成功している企業がある。各社の得意とする技術領
域を把握するべく特許データを用いて俯瞰分析を行った。
日本国特許公報の要約・請求項に「化粧品」を含む全文献を対象とし、レーダー図に表すと化粧品組成物の巨
大な集合ができあがり、やや離れて化粧品容器に関する技術分野が存在している(図 1)。化粧品組成物の中核を
成すのはロレアル(4149)である。ロレアル(4149)の特許出願は、創薬に近接する化学分野としては、異例な
一点集中型である。家電メーカーのような出願件数を誇り、二位以下を大きく引き離している。
ロレアルの出願の周辺には、資生堂(4911)
、花王 (4452)といった日本のトップクラスのメーカーが外資系
化粧品メーカーに並んで挙がってくる。その中でも、とりわけ異質なのが富士フイルム(4901)である。
富士フイルムは独自の乳化・分散技術「ナノフォーカス技術」を用い、異業種で培ったノウハウを活かした製
品づくりを行っている。
主要メーカー間の重心の推移をみると、富士フイルムはロレアルの重心領域に入り込んでしまったかのように
「生体適合性の高い材
見える(図 2)。しかし、レーダー図を拡大して、詳細な違いをみると、富士フイルムは、
料を用いた安全性の高いナノ粒子を提供する」
、
「水中油滴型エマルション及びその製造方法、並びに機能性粉末
及びその製造方法」等の領域において独自性を発揮していることが分かる(図 3)。マーケティングの4P (P
RODUCT・PRICE・PLACE・PROMOTION)のプロセスが重要とされる化粧品業界であるが、
蓄積された独自のノウハウと技術にうらづけされた製品が市場を席巻する日は近いと思いたい。
©2010 SO-TI, Inc.
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June 30th, 2010
化粧品の容器関連
技術分野
化粧品組成物に
関する技術領域
図 1「化粧品」を要約・請求項に含む特許の俯瞰構造
50
40
30
20
10
0
-70
-50
-30
-10
10
30
50
-10
ロレアル
-20
ユニリーバー・ナームロー
ゼ・ベンノートシヤープ
株式会社資生堂
-30
花王株式会社
-40
富士フイルム株式会社
-50
図 2 主要企業の研究開発重心の推移
円の位置 : 開発重心、円の大きさ : 出願件数を表し、重心は各企業の研究開発ポートフォーリオを指している。
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富士フイルム
図 3「化粧品」組成物に関する領域と富士フイルムの位置づけ
(著者紹介)
中村 達生:創知代表取締役 CEO、早稲田大学非常勤講師、
早稲田大学ヒューマンリソース研究所客員研究員、工学博士
三菱総合研究所主任研究員を経て 2006 年より現職。
専門領域は、研究開発コンサルティング、オペレーションズリサーチ、知財分析。
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