オープンデータとスマートフォン内蔵センサを利用した地下鉄位置情報の

B05
Research Abstracts on Spatial Information Science
CSIS DAYS 2015
オープンデータとスマートフォン内蔵センサを利用した地下鉄位置情報の推定
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伊藤 昌毅 1,見生 元気,瀬崎 薫 1, 2
東京大学 生産技術研究所,2 東京大学 空間情報科学研究センター
Email: <[email protected]>
(1) 背景: スマートフォンの普及によって,位置情報
を活用したサービスが一般的になったが,地下鉄
車内では,ほぼ全区間で通信可能になった現在
においても,GPS の信号が届かないため,スマー
トフォンによる位置情報サービスの利用が制約さ
れている.駅構内の Wi-Fi を利用した位置情報の
取得は考えられるものの,走行中には機能しない.
各車両に無線ビーコンを設置する手法も考えら
れるが,コストを考えると現実的ではない.
(2) 手法: 提案手法では,車内で直接位置情報を
取得する代わりに,まずユーザが乗車した駅と時
刻を特定する.それを時刻表情報と照合すること
で現在地などの情報を得る.乗車駅の特定には,
スマートフォンのジオフェンシング API を用い,地
下鉄駅への接近を検知するたびにそれを記録す
る.時刻の特定には,スマートフォンに内蔵され
た万歩計機能を用いる.ユーザが地下鉄内で現
在位置を問い合わせたとき,まずは 1 時間以内の
歩数データを調べ,歩みを止めた時刻を発見す
る.駅で乗車する際は必ず歩くことになるため,こ
の時刻を,地下鉄への乗車時刻の候補と見なす.
次に,乗車時刻候補において近付いていた地下
鉄駅を見つける.この両者の情報が存在した場
合に,それを地下鉄への乗車駅と乗車時刻と見
なす.最後に,時刻表データと照合し乗車中の
電車を特定し,現在時刻から現在地や今後の到
着駅,到着時刻を推定する.
(3) 特徴: 提案手法の特徴は,一般的なスマートフ
ォンで実現可能で,アプリケーションがバックグラ
ウンドプロセスを必要としないため低消費電力な
点にある.ジオフェンシング API では,特定の領
域への出入りを OS レベルで監視しており,単一
のアプリケーションで同等の機能を実現するより
省電力である.また,常時通電しセンサデータ処
理に特化した低消費電力な演算装置であるコプ
ロセッサが提供する万歩計機能を利用することで,
センサ利用のための消費電力を抑えている.
(4) アプリケーション: 本手法を備えたアプリケーショ
ンを,M8 コプロセッサを備えた iPhone 6 向けに開
発し,App Store で公開した(伊藤, 2014).地下鉄
車内で本アプリケーションを起動すると,乗車中の
車両の今後の停車駅や停車時刻情報が得られる.
時刻表を確認せずに地下鉄に乗ったときでも,現
在地や到着時刻を確認し,それを知らせるメール
を送信出来る.
(5) 使用データ: 本アプリケーションでは,東京メトロ
オープンデータ活用コンテストにおいて公開され
た時刻表データを利用している.
(6) 参考文献:
伊藤昌毅 (2014) Smart Kompano. <https://itunes.
apple.com/jp/app/smartkompano/id93624079>.
図 1: アプリケーションの画面例
図 2: 乗車時刻推定に用いる万歩計データの例
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